公開日:2022年9月5日 /最終更新日:2024年7月24日
日経新聞の本日の記事、「コロナ長期化で「息切れ倒産」 ゼロゼロ融資で過剰債務」で企業倒産の拡大について取り上げられています。
長引く新型コロナウイルス禍に起因する企業倒産が広がっている。帝国データバンクによると、7月の倒産件数は2020年3月以降では初めて3カ月連続で前年同月を上回り、コロナ関連倒産も5~8月で計683件と前年比22%増えた。実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)などの支援を受けたものの、過剰債務で再建を断念する「息切れ倒産」が生じ始めた。
当コラムでもたびたび取り上げてきましたが、コロナ融資の返済が始まったこと、緊急事態宣言が発令されないことによる補助金等の支給がない中で、売り上げが回復していないことが元々コロナ前から問題があった企業を中心に影響が出ているとの記事です。
日本政策金融公庫によると、21年3月末までに実行されたコロナ関連融資の57%は22年3月末までに元金返済が始まった。全体の13%は予定通りの返済が難しいとして追加融資や条件変更を申し出たといい、重い返済負担が倒産を急増させている。
全国信用保証協会連合会のまとめによると、融資を返済できなくなった事業者の返済を肩代わりする代位弁済の件数は7月に前年同月比4割増えた。「足元の倒産増加が影響している」(中国地方の信用保証協会)とみられる。中小企業の大半は客数減だけでなく足元の原材料価格上昇にも苦しんでいる。
同連合会によると、保証債務残高は7月時点で約41兆円とコロナ前(19年度)の約2倍に膨れ上がっている。東京商工リサーチの原田三寛・情報部長は「過剰債務に陥った事業者もある。感染がある程度収束しても倒産の増加傾向は変わらない」とみている。
以前から本コラムでも予測していたことが現実感をもって顕在化してきた印象です。
他方、失業率は2022年9月5日現在で2.6%とコロナ発生前の水準まで戻ってきているため、政府が企業救済を中心にする政策を継続するという印象もあまりありません。
<引用>新型コロナウイルス感染症関連情報: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響
国内統計:完全失業率
金融機関ガイドラインや経営者保証に関するガイドライン、私的整理に関するガイドラインなどを制定してきているため、コロナで競争力をそがれてきた企業に対して退場を促していくのではないかと推察しています。
経済政策として、前政権の菅内閣は中小企業の生産性向上ということでマーケットの整理を行うのではないか、他方岸田政権は「新しい資本主義」にともない違う路線なのでは、という話もありましたが、緊急事態宣言発令をし助成金を供給してきた前政権と、現政権はむしろ逆の印象を感じるところもあります。
「スタートアップ」について新規産業を創出していこうとしているようですが、既存の中小企業については独自の政策など手当てされていないようなので、今のところ現状のトレンドが続く可能性が高いと考えられます。
また日経新聞の本文中では「地方企業の破綻が表面化している」とありますが、統計的には東京や大阪が多く、企業に対する割合としては大阪が多い印象を受けており、地方に限定されていないと思います。
また倒産している企業もたんにコロナの影響を受けているだけではなく、
「コロナ前から業績不振だった企業を中心に、感染長期化による景況低迷に耐えきれなくなっている」
と書かれているように、倒産している企業も単にコロナだけではなく、元々の問題により倒産してしまうというコンセンサスが広まると、救済よりも退出の方に政策圧力が働く可能性があります。
そう考えると繰り返しになりますが、運転資金が枯渇する前にM&Aを検討することも一つの経営の選択肢になってくると考えられます。
M&Aでシナジー効果能ある企業と提携し、その際に併せて個人保証を外す(切り替える)ことで精神的な負担も減らしながら引き続き経営を行うことも可能です。
どのような選択肢がいいのかは、置かれている状況にもよりますので不安を感じられている経営者はお気軽にご相談ください。
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