事業譲渡! 株式譲渡と違うメリットデメリットとは
M&Aと聞くと株式譲渡のイメージが多いですが、事業譲渡や会社分割など手法は多岐にわたります。
また中小企業にとっても事業承継や成長戦略の強力な手段でもあります。
今回、事業譲渡という、特定の事業や資産を売却し、資金調達や戦略見直しを柔軟に実現する手法についてブログにしてみたいと思います。
株式譲渡は株式を譲渡して会社全体を譲渡する一般的に知られている方法です。
今回はどちらが自社の目標に合うのか、事業譲渡のメリット・デメリットを中心に、税制面(のれん5年償却など)や実務のポイントを、ビジネスの現場目線でわかりやすく解説します。

事業譲渡:
会社の特定の事業や資産(例:店舗、特許、顧客リスト)を売却する手法です。
会社自体は存続し他の事業を継続可能です。
イメージは、事業の一部を切り出して次のステップへ進むようなイメージです。
他方、株式譲渡は会社の株式を売却し、経営権ごと譲渡。
資産、負債、契約すべてが引き継ぎます。
会社全体を新たなオーナーに託すようなイメージです。
要点まとめ
事業譲渡は特定の事業や資産をピンポイントで売買し、柔軟性を保てます。
株式譲渡は会社全体を譲渡し、シンプルに完結できます。
事業譲渡のメリット
売り手と買い手の視点事業譲渡は、売り手と買い手に独自の価値を提供します。
実務的なメリットを詳しく見ていきましょう。
売り手のメリット
戦略的な選択肢: 不採算部門を売却したり、主力事業を切り出して資金調達したり、事業ポートフォリオを最適化できます。
例えば飲食企業が地方の赤字店舗を売却し、都市部の主力店舗に注力するなど、です。
負債の管理: 会社の借金やリスクを譲渡せず、資産だけ売却できるので合意がしやすいですし、財務体質の改善に直結します。
会社存続: 売却後も会社は残るため、他の事業を継続したり、新たな事業展開を模索可能。
資金確保: 売却益でキャッシュを得て、設備投資、債務返済、新事業の資金に活用。
買い手のメリット
必要な資産のみ取得: 会社全体ではなく、必要な事業や資産(例:人気ブランド、特許)だけ取得。
不要な負債やリスクを回避。
事業の強化: 自社の弱点を補う事業や、シナジーの高い資産をピンポイントで取り込み。
例えばIT企業が競合のAI技術を取得し、サービスを強化。
税制上の利点: 取得資産は耐用年数で減価償却可能。特に「のれん」は5年で償却(詳細は後述)。
価値の最適化: 資産を市場価格で取得(ステップアップ)。将来の売却益を抑え、税務面で有利に。
2020年、介護事業者が事業譲渡で事業所を売却。
売り手は資金を確保して赤字になっている他の事業所に資金を入れました。
事業譲渡のデメリット:注意点を押さえる事業譲渡の課題も、売り手・買い手双方で確認しておきましょう。
売り手のデメリット手続きの複雑さ: 売却対象の資産や負債を個別に選定し、契約書に記載。
法務・税務の手続きに時間とコストがかかる。
税務負担: 譲渡益に法人税が発生。
資産ごとの簿価と売却価格の差を計算する必要があり、専門家の支援が不可欠。
従業員・契約の調整: 対象事業の従業員の転籍や、取引先との契約再締結が必要。
調整の手間が発生。
価格交渉の難易度: 事業や資産の価値を個別に評価するため、買い手との交渉が難航する場合も。
買い手のデメリット
繰越欠損金の利用不可: 株式譲渡では、買収企業の繰越欠損金(過去の赤字)を税務控除に活用できる可能性があるが、事業譲渡では会社を取得しないため利用不可。
追加コスト: 不動産の名義変更費用や従業員の転籍コストが発生し、初期投資が増える。
事業統合の課題: 取得した事業を自社のシステムや文化に統合するには時間と労力が必要。
ミスマッチがリスクに。
戦略的考察:
事業譲渡は柔軟性とリスク管理に優れるが、手続きの複雑さや統合コストが課題です。
戦略的目標とコストを慎重に評価する必要がある。
事業譲渡の税務
5年償却のポイント事業譲渡の税務は、買い手にとって重要な検討ポイントです。
特に資産の減価償却や「のれん」の5年償却について、詳しく解説します。
買い手側の税務メリット
資産の減価償却: 取得資産は税務上の耐用年数で償却します。
主な資産の耐用年数は以下の通り:
建物: 鉄筋コンクリート造の店舗は39年、鉄骨造は20~34年、木造は22年。
機械装置: 製造業の機械は7~12年、特定産業機械は5年。
ソフトウェア: 5年(税務標準)。例
のれん(Goodwill): 事業譲渡で発生する「のれん」(事業価値のプレミアム)は、税務上5年で均等償却。
ステップアップ効果: 資産を市場価格で取得(簿価引き上げ)。
消費税還付の可能性: 一部資産の購入で、条件次第で消費税還付を受けられる(ただし税務リスクも上がる)。
買い手側の税務デメリット
繰越欠損金の非適用: 株式譲渡では赤字企業の繰越欠損金を税務控除に活用できる可能性があるが、事業譲渡は会社を取得しないため利用不可。
消費税負担: 在庫や一部資産に消費税がかかり、初期コストが増加。
税務処理の複雑さ: 資産ごとの簿価と譲渡価格の差を計算し、申告手続きに専門知識が必要。
株式譲渡との税務比較株式譲渡の税務
メリット:
繰越欠損金の活用が可能(条件あり)。
株式購入自体に法人税や消費税はかかりません(印紙は必要)。
デメリット:
個別資産の簿価引き上げ(ステップアップ)ができず、償却メリットが限定的。
過去の税務リスクを引き継ぎます。
要点まとめ:
事業譲渡はのれん5年償却や資産償却で税負担を軽減できるが、繰越欠損金は利用不可。
株式譲渡は繰越欠損金の活用に有利だが、償却メリットが少ない。
まとめ
日本財務戦略センターではあなたのM&Aを株式譲渡、事業譲渡など様々なスキームに基づいて支援します。
事業譲渡は、株式譲渡では難しいソリューションを解決するための戦略的な一手になりえますが、税務や手続きの複雑さが課題になります。
日本財務戦略センターは、売り手・買い手双方の目標達成を支援します。
是非お気軽にご相談ください。


































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