2025年度上半期の企業倒産動向:中小企業の忍耐力が試される時代到来?

2025年度上半期の企業倒産動向:中小企業の耐久力が試される時代に

日本経済は、2025年度に入っても変わらず高物価の影響や人手不足に悩まされています。
さらに日本銀行の金利引き上げや最低賃金の上昇が始まり、企業への負担が増えると予想されています。
そんな中、東京商工リサーチ(TSR)が最新の報告書を発表しました。
倒産件数ですが、2025年4月から9月までの上半期の企業倒産は5,172件で、前年より1.5%増えました。
これは2013年以来の高水準で、4年連続の増加です。
負債総額は6,927億7,000万円と前年より49.6%減っていますが、これは大型倒産が少なかったという事情でしょう。
平均負債総額は約1.3億円なので個社当たり、それほど大きな負債ではないように思いますが掘り下げて考えてみたいと思います。

なぜ倒産が増えているのか

倒産の内訳について、9割以上(90.1%)が「破産」で、これは4年連続で90%を超えています。
特に負債1億円未満の小さな倒産が全体の76.4%を占め、30年ぶりの高水準となっています。
一方、大きな会社(負債1億円以上)の倒産は103件と13.4%減りました。
大型企業の連鎖倒産とは異なり、「小さな会社の目立たない崩壊」と言える状況が進行しているといえるでしょう。
またコロナ禍で受けた「ゼロゼロ融資」の返済に苦しむ倒産は214件といまだ残存しており、多くの会社が借金の重さに苦しんでいます。
また「人手不足が原因の倒産」は1~9月で285件(31.3%増)と過去最多、「後継者がいない倒産」は332件と2番目に多い数字です。
事業の行き詰まりの理由として、人が足りない、継ぐ人がいない――こうした問題が、会社の土台を揺るがしています。

どの業種が苦しんでいるのか

・サービス業(特に飲食・小売):1,762件(4.0%増)で全体の34%のウェイトを占めていて、30年ぶりの高水準です。人手不足と、円安で高くなった食材費が経営を圧迫しています。
・建設業:1,036件(7.4%増)。資材が高騰し、4年連続で増えています。また猛暑により人の出足が減ったことも影響しているようです。
・小売業:594件(7.6%増)。実質賃金の低下により消費が冷え込んでいます。
・不動産業:169件(18.1%増)。不動産市況の悪化と言われていますが廃業なども多いようです。

一方、製造業(565件、3.4%減)や卸売業(564件、11.7%減)は減りましたが、印刷業や建材卸など一部では増えています。
ロシアによるウクライナ侵略からコストプッシュ側のインフレが始まりましたが、米中対立による世界のサプライチェーンの乱れが、中小企業に影響を与えているといえるでしょう。

地域別ではどうか

全国の25都道府県で倒産が増えています。
関東は1,840件と2.0%減りましたが、東北(7.1%増)、中部(3.9%増)、近畿(3.6%増)では4年連続増加しており、特に北陸は49.3%増と急増しています。
また地方の中小企業は、都市部の同業他社に比べて事業の将来性の観点から資金調達が難しく、そういった外部要因も厳しい状況に輪をかけ、地方衰退のデフレスパイラルが加速しているといえるのではないでしょうか。
また季節的に資金需要が必要な時期(年末など)に融資が受けられないと、事業が拡大できなくなりますし、資金ショートの可能性も出てきてしまいます。

中小企業の将来について

リスク管理をしっかりしている業界は安定しています。
例えば金融・保険業は9件(30.7%減)と減っています
企業が今できることとして何があるでしょうか?

例えば資金調達として
・売掛債権担保融資(ABL)の活用という手段があります。ただしファクタリングの安易な活用は金利の問題もさることながら再建の差し押さえもされてしまうため注意が必要です(別途コラムを書きます)。
・取引先との共同補償スキームによる資金調達
・契約者生命保険の解約返戻金を担保に入れた追加融資

などの資金調達の多様化を考えてもいいでしょうし、収益構造を多様化するために
・EC+全国配送
・観光連携ビジネス
などの拡大もあるでしょう。

ただ実質GDPもマイナス成長予測が出ていることもあり、それ以外の選択肢も考えてもいいかもしれません。

例えばM&Aによる解決ということも視野に入るでしょう。
M&Aを行うことにより負債の引継ぎ、雇用の維持、企業の成長、株式売却によるオーナー利益の獲得などのメリットもあります。
弥縫的な対応ではなく、ドラスティックな改革を行うことが、明日の成長につながっていくのかもしれません。
経営についてご不安があればお気軽にご相談ください!

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