伴走支援型特別保証制度と「経営行動計画書」

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公開日:2023年10月23日 /最終更新日:2023年10月23日

伴走支援型特別保証制度

ゼロゼロ融資の返済が始まりましたが、思ったほど倒産・廃業件数の増加は見られず、コロナ前と同水準程度までの増加にとどまっているとの調査が出ています。
倒産の先行指標である代位弁済率は継続して上昇しているため、倒産件数は今後も増加が予測されますが、とはいえ一定程度の水準に抑えられているのは伴走支援型特別保証制度への一部切り替えが進んでいるからと言われています。

鹿児島県信用保証協会の説明が分かりやすいので引用します。

新型コロナウイルス感染症等の影響により、積み上がった債務の返済負担に伴って増加することが見込まれる借換え需要並びに事業再構築等の事業好転の契機となり得るような前向きな取組に対する資金需要等に応えることで、中小企業者の資金繰りの円滑化を図ると共に、金融機関が当該中小企業者に対して継続的な伴走型での支援を実施することにより、もって当該中小企業者の経営の安定や収益力改善を図ることを目的とする保証制度です。

本制度も令和5年1月にさらに使いやすい制度とされるべく改正が行われています。
改正後の条件についても以下に引用します。

保証内容

制度区分協会制度
保証限度1億円
保証期間(1)一括返済の場合1年以内
(2)分割返済の場合10年以内(据置期間は5年以内)
保証の対象次のいずれかに該当し、かつ経営行動に係る計画(以下「計画」という。)を策定した中小企業者。
(1)中小企業信用保険法(以下「保険法」という。)第2条第5項第4号の規定による認定(新型コロナウイルス感染症に係るものに限る。) を受けていること(注1)
(2)保険法第2条第5項第5号の規定による認定(売上高等の減少を要因とするものに限る。)を受けていること(注1)
(3)次の①又は②ⅰからⅵのいずれかに該当すること(注1)(注2)
①最近1か月間の売上高が前年同月の売上高と比較して5%以上減少していること
② ⅰ最近1か月間の売上高総利益率が前年同月の売上高総利益率と比較して5%以上減少していること
ⅱ最近1か月間の売上高総利益率が直近決算の売上高総利益率と比較して5%以上 減少していること
ⅲ直近決算の売上高総利益率が直近決算前期の売上高総利益率と比較して5%以上 減少していること
ⅳ最近1か月間の売上高営業利益率が前年同月の売上高営業利益率と比較して5% 以上減少していること
ⅴ最近1か月間の売上高営業利益率が直近決算の売上高営業利益率と比較して5% 以上減少していること
ⅵ直近決算の売上高営業利益率が直近決算前期の売上高営業利益率と比較して5% 以上減少していること注1:保険法第3条の3の規定による特別小口保険に係る保証を除く。
注2:保険法第3条の規定による普通保険に係る保証及び同法第3条の2の規定による無担保保険に係る保証(いずれも一般分に限る。)に限る。
注3:次の①及び②を満たす場合に、信用保証料率を0.2%上乗せすることにより経営者保証を免除することができる。
①令和2年1月29日時点における直近の決算から経営者保証免除対応確認書記入日時点における直近の決算までのいずれかにおいて資産超過であること。
②直近の決算における法人と代表者との関係において、法人と経営者の資産・経理が明確に区分されており、法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与、配当、オーナーへの貸付け等)について、社会通念上適切な範囲を超えていない。
保証割合保証の対象(1)については100%保証(責任共有対象外)

保証の対象(2)、(3)については80%保証(責任共有対象)
ただし、責任共有制度の対象除外となる既往借入金(平成19年9月30日以前に信用保証協会が保証申込受け付けした保証であって保証協割合が100%保証の保証を含む。)を保証の対象(2)又は(3)で借り換える場合(信用保証協会の保証付きの既往借入金の範囲内の額を借り換える場合に限る。)については、責任共有制度の対象除外とする。

資金使途保証の対象(1)、(2)については経営の安定に必要な事業資金
保証の対象(3)については事業資金
返済方法一括返済又は分割返済
保証料率保証の対象(1)、(2)については
●信用保証料率 0.85%
ただし、経営者保証免除対応(※)を適用する場合は0.2%上乗せする。
●信用保証料の補助 0.65%に相当する額を国が補助する。
経営者保証免除対応により0.2%が信用保証料に上乗せされている場合には、0.85%に相当する額を国が補助する。
ただし、条件変更に伴い追加して生じる信用保証料については国の補助の対象外とする。保証の対象(3)については、下図参照。
貸付利率金融機関の定めた利率
連帯保証人必要となる場合がある
担保必要に応じて徴求
取扱期間令和3年4月1日から令和6年3月31日までの信用保証協会が保証申込を受け付けた分
申込手続金融機関経由
借換えの特例 借換保証制度要綱(平成15年1月31日付け平成15・01・30中庁第1号)の定めにかかわらず、次の保証に係る既往借入金を保証の対象(1)で借り換えることができるものとする。ただし、次の保証に係る既往借入金の範囲内の額を借り換える場合に限る。
・中小企業信用保険法(昭和25年法律第264号)第12条に規定する経営安定関連保証(同法第2条第5項第5号に該当する特定中小企業者に係るものに限る。)であって令和2年経済産業
省告示第49号により経済産業大臣が認めた場合として定めた期間内(延長後の期間を含む。)に信用保証協会が保証申込受け付けし、かつ貸付実行された既往借入金

 

保証の対象もコロナに関する企業だけではなく、売上高や利益のの減少が従来の15%減少から5%の減少に緩和された企業も対象にされたことで、だいぶ使いやすくなったのではないでしょうか。
ただ重要なポイントとして、「経営行動にかかわる計画」を策定している前提が必要になります。
この「計画」とはいったい何なのでしょうか。

経営行動計画書

「経営行動にかかわる計画」、経営行動計画書とは中小事業者が自社の経営課題について認識し、金融機関と対話を行い、経営を見直していくためのツールです。
中小企業庁のサンプルのリンクを付けておきますが、内容を見ると形式的ではなく、取り組み目標について推移を明確にし金融機関と進捗確認を行うためのフォーマットのように見えます。
実際、伴走支援型特別保証制度を利用する場合は、四半期ごとの金融機関との打ち合わせを行う必要があり、どんぶり勘定ではなく、経営目標が達成できているか否か、できていない場合はどうしたらいいのかを検証するために利用されると考えられるでしょう。
また信用保証協会だけではなく、経済産業省にも情報提供が行われることが明記されていることからも、税金が投入されている保証協会融資が単なる形式ではなく、金融機関もコミットするプレッシャーとなっているのではないでしょうか。
なぜなら保証協会融資としてアプローチせず焦げ付きが多くなってしまった場合、税金が投入されることになるからですし、銀行協会経由で政府から出されている各種ガイドラインにおいても、金融機関が債務者と綿密に打ち合わせを行うことが繰り返し明記されているからです。
つまり政府としてはこの融資を通じてコロナで打撃を受けた中小企業の救済だけではなく、融資を通じて中小企業の経営の透明性を高めようと考えていると推察されます。

メリットデメリット

中小企業にとっては融資が受けられる反面、以下のような負担が生じるでしょう。

メリット

・自社の経営状況や課題を客観的に分析し、改善策を立案することで、経営力向上につながります。
・金融機関から継続的な伴走支援(アドバイスや指導)を受けることで、経営改善や生産性向上を促進できます。
・融資を受けることで資金繰りが楽になります。

デメリット

・経営行動計画書の作成には時間や労力がかかります。
・経営行動計画書の内容は金融機関によって審査されるため、実現性や妥当性が求められます。
特に月次試算表を作っていない中小企業も多いと思いますが、打ち合わせをタイムリーに行うために、今後は月次試算表の作成も必要になってくるでしょう。
・上記に関連して原則、四半期に一度以上、金融機関とのモニタリング(進捗確認やアドバイス)が行われるため、計画通りに実行する必要があります。計画から大きく逸脱した場合は、保証料率が引き上げられたり、保証契約が解除されたりする可能性があります。

以上のように、今回の融資制度にはメリットとデメリットの双方があります。
ただこの制度導入を通じて経営の改善ができればそれは会社にとってプラスですし、経営を明確化するということは経営者保証(連帯保証)の解除にもつながってきますので、長い目で見れば大きくプラスではないでしょうか。
(ご参考:「事例で見る経営者保証の解除」)

以上のように、コロナ禍対応を通じて政府は中小企業の経営の合理化を進めてきています。
前にもお伝えしましたが政府が中小企業庁のM&Aを進めていることも上記の流れに関連しています。
(ご参考:政府が中小企業M&A支援を行う背景

融資を機に今後の経営方針を考えてみるのも大事かもしれません。
M&Aを通じて経営の合理化も進めることができますので、今後についてお悩みの経営者の方はお気軽にご相談ください。

政府が中小企業M&A支援を行う背景
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