M&A後、譲受企業への繰越欠損金の引継ぎについて

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公開日:2021年7月9日 /最終更新日:2024年7月24日

譲受企業への繰越欠損金の引継ぎ

 

繰越欠損金とは

青色申告法人では1事業年度中に発生した損金が益金を上回った場合、その上回った欠損金部分は翌期以降一定年数繰越し、古い年度に生じたものから順番に翌期以降に生じた所得に充当(マイナス)できます。
分かりやすく言うと、将来の所得と相殺できるという事です。

繰越欠損金の引継ぎ法

M&A後、100%子会社となった譲渡企業の繰越欠損金を譲受企業に取り込みたいというケースがあります。
買い手側は往々にして利益が出ている(からこそ買収できる)ため、譲渡対象企業に繰越欠損金があれば、その損失と自社の利益を相殺し、節税をしたいというインセンティブが働くからです。

この場合の引継ぎ手法としては適格合併と譲渡企業の精算の2つになります。

 

適格合併による引継ぎ法

譲受企業が100%子会社になった譲渡企業を合併により吸収すると、適格合併となり無税で合併を実施できます。

①子会社後5年超の合併
50%超の支配関係が「譲受企業の合併日が属する期の開始日から5年前の日」以降継続した後に適格合併すれば繰越欠損金の全額を引き継げます。

②子会社化後5年以内の合併
5年以内に合併した場合には、みなし共同事業要件を満たせば繰越欠損金の全額を引き継げますが、満たさなければ子会社化された期の前期以前に生じた欠損金や、子会社化された期以降に生じた欠損金のうち不動産の特定資産の譲渡損等などが切り捨てられ引継ぎができません。

なお、みなし共同事業要件についてですが
(1)事業関連要件
(2)規模要件
(3)規模継続要件
(4)経営参画要件
のうち、(1)~(3)または(1)および(4)を満たすことが必要になります。

詳細については末尾に国税庁の適格判定及び欠損金の引継ぎについて照会するサイトを掲載しておきます)。

 

100%子会社を清算した場合の繰越欠損金の引継ぎ

今度は清算による引継ぎを見てみましょう。
完全支配関係のある内国法人を清算する場合、残余財産確定時に以下の取り扱いができるグループ法人税制があります。

①法人株主では清算法人の株式償却損を損金算入できない。
②法人株主の持分割合に応じて、清算法人の繰越欠損金残高を引き継げる。

つまり親会社が100%子会社を清算した場合、子会社株式簿価を損金算入できない代わりに、子会社の繰越欠損金を引き継げる形となり、譲渡企業の子会社を清算する場合などで適用を検討することができます。
なお清算の場合も適格合併と同様に

①子会社後5年超の精算
50%超の支配関係が「譲受企業の合併日が属する期の開始日から5年前の日」以降継続した後に精算すれば繰越欠損金の全額を引き継げます。

②子会社化後5年以内の精算
5年以内に清算した場合には、一定の場合を除き支配関係が生じた期の前期以前の欠損金を引き継ぐことはできません。
(みなし共同要件はありません)

結局、繰越欠損金を引き継ぐには?

100%譲渡がされている場合、合併を行うことで支障がなければみなし共同事業要件に該当するか照会を行い、試してみるのもいいのではないでしょうか。
ただし照会を行って一次回答を得ても、最終的に引き継げるか否かの判断がなされるのは合併後のため、引き継げなかった際に、どういう問題が起きるのかを想定する必要があるでしょう。

照会を行い適格判定が難しい場合、あるいは適格合併を行わず、M&A後5年経過しても繰越欠損金が残っているのであれば清算してしまい繰越欠損金を引き継ぐ、という手段を検討してもいいかもしれません。
事業体として5年経っても繰越欠損金が残っている場合、何らかの問題がある可能性がありますし、そのような法人と合併を行うという手段が果たして妥当なのかという問題があるからです。

繰越欠損金だけを目的にM&Aを行うことはなかなかないと思いますが、せっかく活用できるのであれば活用するに越したことはないでしょうし、活用できる前提で検討すれば、よりM&A先も広がってくるのではないでしょうか。

弊社ではそのような見地からもM&Aのご提案をさせて頂きます。
お気軽にお問い合わせください。

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https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/kobetsu/saikenshien/04.htm

《照会の前提となる事実関係について》

1 組織再編成の概要

※当事会社の名称、組織再編成の態様、実行日などを記載してください。

 株式会社A社(東京都●区●1-1-1(●署))は、株式会社B社(東京都■区■1-1-1 (■署))を被合併法人とする吸収合併(以下「本件合併」といいます。)を行う予定です。なお、合併契約の効力発生日は、平成×年4月1日です。

2 組織再編成の目的・経緯・背景

 A社は、主に●●業を営んでいますが、売上先との契約の解消が続き、それ以降、収入が大きく減少したため債務超過の状態に陥り、事業の継続が困難となっています。
一方、A社の関係会社であるB社は、主に■■業を営み、一時期経営状況が悪かったものの、近年は業績が好調であり、借入金の返済も順調です。
このような状況下、B社は、A社保有の事務所等を新たな拠点として事業を拡大することを企図し、A社は、B社との新規事業展開により存続を図ることができると考え、本件合併を行うこととしました。

3 組織再編成の当事会社が行う事業の内容及び組織再編成後の事業の異動状況

(1) A社の事業

1 主な事業
●●業(・・・する事業。平成×年度の売上金額は××円。従業員×人)

2 その他の事業
▲▲業(・・・する事業。平成×年度の売上金額は××円。従業員×人)

(2) B社の事業

1 主な事業
■■業(・・・する事業。平成×年度の売上金額は××円。従業員×人)

2 その他の事業
▲▲業(・・・する事業。平成×年度の売上金額は××円。従業員×人)

(3) 合併後の事業の継続見込み

合併法人であるA社は、B社から引き継ぐ■■業、▲▲業をともに継続する予定です。

4 組織再編成の当事会社の資本金及び株主の状況

合併法人被合併法人
A社B社
設立年月日昭和Y年4月1日昭和Z年4月1日
決算期3月3月
資本金○○○円○○○円
株主甲一族(個人甲とその親族)70%その他株主 30%個人甲 100%

5 資本関係の変遷

※一連の組織再編成の内容を記載するとともに、組織再編成前後の資本関係を図示してください。

(1) 本件合併前の平成×年3月○日に、甲は、保有しているB社株式の全部をA社に譲渡します(以下「本件株式譲渡」といいます。)。

(2) 甲は、B社設立の日から本件株式譲渡まで継続してB社の全株式を保有しています。また、A社は、本件株式譲渡から本件合併前まで継続してB社の全株式を保有します。

(3) 甲一族は、A社設立の日から本件合併の日まで継続してA社の発行済株式の70%を保有しています。

(4) 甲一族は、本件合併後もA社の株式を継続して保有する見込みです。

(5) 本件合併前後のA社とB社の資本関係の変遷は次のとおりです。

資本関係の変遷

6 組織再編成に伴い支払う対価の有無とその内容

本件合併においては、本件合併前に合併法人A社が被合併法人B社の発行済株式の全部を保有する関係があることから、被合併法人B社の株主であるA社には、合併法人A社の株式その他の資産は交付されません(無対価)。

7 引継ぎを受ける未処理欠損金額

本件合併により、A社はB社の未処理欠損金額●●円を引き継ぐ予定です。

8 照会者において確認したい事項

1から7の事実関係がある場合、本件合併は、適格合併に該当すると考えて差し支えないでしょうか。また、適格合併に該当するとした場合、A社は、B社の未処理欠損金額●●円について欠損金の引継制限の規定の適用を受けないと考えて差し支えないでしょうか。
具体的には、引継制限の規定の適用に当たっては、被合併法人と合併法人との間に当該合併法人の適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日から継続して支配関係があると考えてよいでしょうか。

(注)合併の前に「完全支配関係」がない場合や合併を行った事業年度開始の日の「5年前の日から支配関係が継続」していない場合には、上記の事実関係のほか、組織再編成により移転する事業の継続見込みや移転する事業に関する従業者の従事見込み、当事会社の事業規模(売上金額・従業者数・資本金など)、役員の継続見込み、株式の継続保有見込みなどについても説明していただく必要があります。

《確認したい事項に対する照会者の見解とその理由について》

※記載が困難な場合には、分かる範囲で記載してください。

【関係法令】※平成28年4月1日現在の法令を基に作成しています。

1 合併の適格判定について

(1) 完全支配関係

完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下「当事者間の完全支配の関係」といいます。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいいます(法法2十二の七の六)。
そして、上記の政令で定める関係とは、一の者が法人の発行済株式の全部を保有する場合における当該一の者と当該法人との間の関係をいいます(法令4の22)。

(2) 適格合併

合併前に合併に係る被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係がある場合の合併で、当該被合併法人の株主等に合併法人株式以外の資産が交付されないものは、適格合併に該当します(法法2十二の八イ、法令4の32)。

(3) 無対価合併

上記(2)の合併が被合併法人の株主等に合併法人の株式その他の資産が交付されない合併(以下「無対価合併」といいます。)である場合には、合併法人が被合併法人の発行済株式の全部を保有する関係があるものに限り、適格合併に該当します(法令4の32一かっこ書)。

2 適格合併が行われた場合の被合併法人の有する未処理欠損金額の引継制限について

 内国法人を合併法人とする適格合併が行われた場合には、被合併法人の未処理欠損金額は合併法人に引き継がれることとされていますが(法法572)、当該適格合併が次の(イ)から(ハ)のいずれの場合にも該当しないときには、合併法人は、被合併法人の未処理欠損金額について引継制限を受けます(法法573、法令11234)。

(イ) 当該適格合併がみなし共同事業要件を満たす場合(法法573、法令1123)。

(ロ) 被合併法人と合併法人との間に当該合併法人の適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日から継続して支配関係(※)がある場合(法法573、法令1124一)。

(ハ) 被合併法人又は合併法人が当該5年前の日後に設立された法人である場合であって、当該被合併法人と当該合併法人との間に当該被合併法人の設立の日又は当該合併法人の設立の日のいずれか遅い日から継続して支配関係があるとき(法法573、法令1124二)。

(※)支配関係

支配関係とは、一の者(支配関係の判定における一の者が個人である場合には、その者及び親族などこれと関係のある個人をいいます。)が法人の発行済株式の総数の50%超の数の株式を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下「当事者間の支配の関係」といいます。)又は一の者との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係をいいます(法法2十二の七の五、法令41、法令4の21)。

そして、上記の政令で定める関係とは、一の者が法人の発行済株式の総数の50%超の数の株式を保有する場合における当該一の者と法人との間の関係(以下「直接支配関係」といいます。)をいい(法令4の21前段)、この場合において、当該一の者及びこれとの間に直接支配関係がある法人又は当該一の者との間に直接支配関係がある法人が他の法人の発行済株式の総数の50%超の数の株式を保有するときは、当該一の者は当該他の法人の発行済株式の総数の50%超の数の株式を保有するものとみなされます(「みなし直接支配関係」。法令4の21後段)。

【照会者の見解】

1 本件合併の適格判定について

本件合併前において一の者であるA社は、B社の発行済株式の全部を保有していることから、被合併法人であるB社と合併法人であるA社との間にはA社による完全支配関係があることとなります。また、本件合併は無対価合併であるところ、本件合併前にA社がB社の発行済株式の全部を保有する関係があることから、本件合併は適格合併に該当することとなります。

2 本件合併に係る未処理欠損金額の引継制限について

(1) 支配関係について

A社の設立の日から本件合併前まで、甲一族は継続してA社の発行済株式の総数の50%超の数の株式を保有しています(一の者(甲一族)による直接支配関係)。また、B社の設立の日から本件株式譲渡前まで甲は継続してB社の発行済株式の全部を保有しています(一の者(甲一族)による直接支配関係)。そして、本件株式譲渡後から本件合併前までの期間については継続してA社がB社の発行済株式の全部を保有しており、当該期間においては、甲一族との間に直接支配関係があるA社がB社の発行済株式の総数の50%超の数の株式を保有していますので、甲一族はB社の発行済株式の総数の50%超の数の株式を保有するものとみなされます(一の者(甲一族)によるみなし直接支配関係)。

(2) B社の有する未処理欠損金額の引継制限について

上記(1)のとおり、本件合併(適格合併)に係る被合併法人であるB社と合併法人であるA社との間には、A社の適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日から継続して支配関係(一の者(甲一族)との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係)があることとなります。したがって、A社は、B社が有する未処理欠損金額の引継制限を受けません。

 

 

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/kobetsu/saikenshien/05.htm

《照会の前提となる事実関係について》

1 組織再編成の概要

※当事会社の名称、組織再編成の態様、実行日などを記載してください。

 株式会社A社(東京都●区●1-1-1(●署))は、資本関係のない株式会社B社(東京都■区■1-1-1(■署))の発行済株式の全部を取得した後、B社を被合併法人とする吸収合併(以下「本件合併」といいます。)を行う予定です。なお、合併契約の効力発生日は、平成×2年4月1日です。

2 組織再編成の目的・経緯・背景

 A社は、首都圏を中心に不動産販売業を営んでいますが、この度、商圏を拡大すべく、関西圏を中心に不動産販売業を営んでいるB社を吸収合併することを検討しています。具体的には、B社の発行済株式の全部を平成×1年12月1日に×社(A社との資本関係はありません。)から取得します。4カ月の準備期間を設け、平成×2年4月1日にB社を吸収合併することを計画しています。

3 組織再編成の当事会社が行う事業の内容及び組織再編後の事業の異動状況

(1) A社の事業

 A社は、設立以降継続して店舗を保有するとともに従業員を雇用し、A社自身の名義で不動産販売業を営んでいます。×1年3月期における売上金額は××円、同期末の従業員は80人(×2年3月期中に従業員数の変更見込みなし)です。

(2) B社の事業

 B社は、設立以降継続して店舗を保有するとともに従業員を雇用し、B社自身の名義で不動産販売業を営んでいます。×1年3月期における売上金額は××円、同期末の従業員は60人(×2年3月期中に従業員数の変更見込みなし)です。なお、今回の合併に伴い、B社の取締役は全て退任することとし、A社の取締役が経営に従事する見込みです。

(3) 合併後の事業の継続見込み

 合併法人であるA社は、B社から引き継ぐ不動産販売業を継続する予定です。

4 組織再編成の当事会社の資本金及び株主の状況

合併法人被合併法人
A社B社
設立年月日昭和Y年4月1日昭和Z年4月1日
決算期3月3月
資本金10億円2億円
株主甲社(50%)、乙社(50%)X社(100%)

5 資本関係の変遷

※ 一連の組織再編成の内容を記載するとともに、組織再編成前後の資本関係を図示してください。

(1) A社は、平成×1年12月1日にB社の発行済株式の全部を×社から取得します。なお、A社と×社との間には資本関係はありません。また、B社と甲社及び乙社との間には資本関係はありません。

(2) A社は、(1)によりB社株式を取得してから本件合併前まで継続してB社の全株式を保有します。

(3) 本件合併前後のA社とB社の資本関係の変遷は次のとおりです。

資本関係の変遷

6 組織再編成に伴い支払う対価の有無とその内容

 本件合併においては、本件合併前に合併法人A社が被合併法人B社の発行済株式の全部を保有する関係があることから、被合併法人B社の株主であるA社には、合併法人A社の株式その他の資産は交付されません(無対価)。

7 引継ぎを受ける未処理欠損金額

 本件合併により、A社はB社の未処理欠損金額●●円を引き継ぐ予定です。

8 照会者において確認したい事項

 1から7の事実関係がある場合、本件合併は、適格合併に該当すると考えて差し支えないでしょうか。また、適格合併に該当するとした場合、A社は、B社の未処理欠損金額●●円について欠損金の引継制限の規定の適用を受けないと考えて差し支えないでしょうか。
具体的には、引継制限の規定の適用に当たっては、みなし共同事業要件を満たすと考えてよいでしょうか。

《確認したい事項に対する照会者の見解とその理由について》

※記載が困難な場合には、分かる範囲で記載してください。

【関係法令】※平成28年4月1日現在の法令を基に作成しています。

1 合併の適格判定について

(1) 完全支配関係

完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下「当事者間の完全支配の関係」といいます。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいいます(法法2十二の七の六)。
そして、上記の政令で定める関係とは、一の者が法人の発行済株式の全部を保有する場合における当該一の者と当該法人との間の関係をいいます(法令4の22)。

(2) 適格合併

合併前に合併に係る被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係がある場合の合併で、当該被合併法人の株主等に合併法人株式以外の資産が交付されないものは、適格合併に該当します(法法2十二の八イ、法令4の32一)。

(3) 無対価合併

上記(2)の合併が被合併法人の株主等に合併法人の株式その他の資産が交付されない合併(以下「無対価合併」といいます。)である場合には、合併法人が被合併法人の発行済株式の全部を保有する関係があるものに限り、適格合併に該当します(法令4の32一かっこ書)。

2 適格合併が行われた場合の被合併法人の有する未処理欠損金額の引継制限について

(1) 引継制限の概要

内国法人を合併法人とする適格合併が行われた場合には、被合併法人の未処理欠損金額は合併法人に引き継がれることとされていますが(法法572)、当該適格合併が次のイからハのいずれの場合にも該当しないときには、合併法人は、被合併法人の未処理欠損金額について引継制限を受けます(法法573、法令11234)。

イ 当該適格合併がみなし共同事業要件を満たす場合(法法573、法令1123)。

ロ 被合併法人と合併法人との間に当該合併法人の適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日から継続して支配関係がある場合(法法573、法令1124一)。

ハ 被合併法人又は合併法人が当該5年前の日後に設立された法人である場合であって、当該被合併法人と当該合併法人との間に当該被合併法人の設立の日又は当該合併法人の設立の日のいずれか遅い日から継続して支配関係があるとき(法法573、法令1124二)。

(2) みなし共同事業要件

みなし共同事業要件を満たす適格合併とは、適格合併のうち次のイから二までの要件又はイ及びホの要件に該当するものをいいます(法令1123)。

イ 被合併法人が適格合併の前に営む主要な事業のうちのいずれかの事業(被合併事業)と合併法人が適格合併の前に営む事業のうちのいずれかの事業(合併事業)とが相互に関連するものであること(事業関連性要件)

ロ 被合併事業と合併事業のそれぞれの売上金額、従業者の数、被合併法人と合併法人のそれぞれの資本金の額又はこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと(事業規模要件)

ハ 被合併事業が被合併法人と合併法人との間に最後に支配関係があることとなった時からその適格合併の直前の時まで継続して営まれており、かつ、その最後に支配関係があることとなった時とその適格合併の直前の時における被合併事業の規模(ロで採用したのと同じ指標)の割合がおおむね2倍を超えないこと(被合併事業の規模継続要件)

ニ 合併事業が合併法人と被合併法人との間に最後に支配関係があることとなった時からその適格合併の直前の時まで継続して営まれており、かつ、その最後に支配関係があることとなった時とその適格合併の直前の時における合併事業の規模(ロで採用したのと同じ指標)の割合がおおむね2倍を超えないこと(合併事業の規模継続要件)

ホ 被合併法人の適格合併の前における特定役員(社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいいます。以下同じ。)である者のいずれかの者と合併法人の適格合併の前における特定役員である者のいずれかの者とがその適格合併の後に合併法人の特定役員となることが見込まれていること(特定役員引継要件)

(3) 事業関連性要件

上記(2)イの事業関連性要件について、次の全てに該当する合併は、事業関連性要件を満たすものとされています(法規31、26)。

イ 被合併法人及び合併法人が、合併の直前において、それぞれ次に掲げる要件の全てに該当すること

1 事務所、店舗、工場その他の固定施設を保有し、又は賃借していること

2 従業者があること

3 自己の名義をもって、かつ、自己の計算において商品販売等をしていること

ロ 被合併事業と合併事業との間に当該合併の直前において、被合併事業と合併事業とが同種のものであるなどの関係があること

【照会者の見解】

1 本件合併の適格判定について

 本件合併前において一の者であるA社は、B社の発行済株式の全部を保有していることから、被合併法人であるB社と合併法人であるA社との間にはA社による完全支配関係があることとなります。また、本件合併は無対価合併であるところ、本件合併前にA社がB社の発行済株式の全部を保有する関係があることから、本件合併は適格合併に該当することとなります。

2 本件合併に係る未処理欠損金額の引継制限について

 被合併法人であるB社と合併法人であるA社との間の資本関係は、平成×1年12月1日以後生じていますので、上記の関係法令の2(1)のロとハのいずれにも該当しません。したがって、以下では、本件適格合併が2(1)のイのみなし共同事業要件を満たすかについて検討します。

(1) 事業関連性要件について

被合併法人であるB社と合併法人であるA社は、合併の直前において、それぞれ店舗を有するとともに従業者を有しています。また、設立以降継続して、自己の名義において不動産を販売し収入を得ていることなどからすると、自己の名義をもって、かつ、自己の計算において不動産販売業を営んでいるといえます。
そして、被合併法人であるB社が適格合併の前に営む主要な事業(被合併事業)と合併法人であるA社が適格合併の前に営む事業(合併事業)は、いずれも不動産販売業であり、同種の事業といえますので、事業関連性要件を満たします。

(2) 事業規模要件について

B社が適格合併の前に営む被合併事業(不動産販売業)の従業者は60人であり、A社が適格合併の前に営む合併事業(不動産販売業)の従業者は80人です。したがって、被合併事業と合併事業の規模(従業者の数)の割合は5倍を超えず、事業規模要件を満たします。

(3) 被合併事業の規模継続要件について

B社が適格合併の前に営む被合併事業(不動産販売業)は、合併法人であるA社との間に資本関係が発生した平成×1年12月1日から適格合併の直前の時まで継続して営まれています。また、平成×1年12月1日における従業者の数と適格合併の直前の時における従業者の数は同数ですので、被合併事業の規模継続要件を満たします。

(4) 合併事業の規模継続要件について

A社が適格合併の前に営む合併事業(不動産販売業)は、被合併法人であるB社との間に資本関係が発生した平成×1年12月1日から適格合併の直前の時まで継続して営まれています。また、平成×1年12月1日における従業者の数と適格合併の直前の時における従業者の数は同数ですので、合併事業の規模継続要件を満たします。

(5) 特定役員引継要件について

被合併法人であるB社の適格合併の前における特定役員である者は、全て退任することが見込まれていますので、特定役員引継要件は満たさないこととなります。

  (1)から(5)のとおり、本件適格合併は、上記の関係法令の2(2)に掲げる要件のうち、ホ以外の要件(イから二までの要件)を満たしますので、みなし共同事業要件を満たします。したがって、合併法人であるA社は、被合併法人であるB社の未処理欠損金額を引き継ぐことができます(引継制限を受けません)。

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