事業再生のための「第二会社方式」とは

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公開日:2023年8月18日 /最終更新日:2023年8月18日

事業再生スキームで多く活用されている「第二会社方式」

事業再生の方法としては「中小企業再生支援スキーム」や「第二会社方式」など様々なスキームがあります。
今回は中小企業再生支援協議会で圧倒的に利用されている第二会社方式について解説したいと思います。
令和3年3月までに、債権放棄案件だけでも1,409件中1,052件と、75%近くが中小企業再生支援協議会で利用されています。
以上からその便利さがうかがえるのではないでしょうか。

第二会社方式とは

では第二会社方式とは何でしょうか。
簡単に説明すると、債務超過になった企業が、事業譲渡や会社分割により収益性のある事業を別の会社に移す一方、不採算部門は旧会社に残して清算する方法です。
第二会社方式のメリットは、債権者である金融機関も税制メリットがあることからの債務免除を得やすく、また債務免除によりスポンサーからの協力を受けやすいことです。

では具体的にどのような手続きを行うか順にみてみましょう。

手続きプロセス

①収益性のある事業(Good事業)と不採算事業(Bad事業)を分離するためのスキームを選択します。スキームには、事業譲渡型と会社分割型があります。

②Good事業を承継するための受け皿会社(第二会社)を設立します。第二会社は、旧会社の株主や従業員、スポンサーなどが出資することができます。

③旧会社は、選択したスキームに基づいて、Good事業を第二会社に移転します。移転する資産や負債の範囲や譲渡対価の算定方法は、旧会社と第二会社との間で協議して決定します。

④旧会社は、Bad事業や過剰債務を処理するために、特別清算や破産などの法的整理手続きを行います。この際に、債権者からの債務免除や税務上の優遇措置を受けることができます。

第二会社方式を採用するメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

メリット

・優良事業のみを残せることで、利益体質になり、事業展開がしやすくなります。
・社員や取引先への影響が少なく、信用の失墜を回避できます。
・債務免除益課税を回避できる可能性があり、税務上の優位性があります。
・債務が軽くなることはもちろん、簿外債務のリスクが極端に減るのでスポンサーの信用や支援を得やすくなります。

他方デメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

デメリット

・許認可を再取得する必要がある場合があり、それに伴うコストや時間がかかります。
・不動産取得税など不動産移転コストが発生する場合があります。
・債権者から融資を受けられないため、新会社の資金調達が難しい場合があります。
・旧会社の清算費用が発生します。
・債権者への対応が必要で、債権者を無視した事業の移転などは詐害行為取消権などの法的措置を受けるリスクがあります。
したがって債権者と従前に打ち合わせを行ってスキームを開始する必要があるでしょう。

税制について

特に税制については、第二会社方式を利用することで債務免除益課税を回避できる可能性があるというメリットがあります。
債務免除益課税とは、債権者から借金返済を免除された場合に発生する収入に対する課税です。
第二会社方式では、旧会社から新会社に資産と負債を時価移転することで譲渡損を計上したり、不良債権や不良在庫の整理による損金計上をしたりすることで、債務免除益と相殺することができます。
債権者も旧会社が特別清算を行うことで放棄した債権を損金算入することが可能になります。
ただし滞納している税金がある場合、譲渡先が親しい関係である場合(特殊関係者)によっては税金も移転します。
これらの範囲については平成28年に改正されているもののかなり広くなっているため、事前の確認が必要になります。

結論

第二会社方式やメリットデメリットについてのイメージは沸きましたでしょうか。
第二会社方式を使った会社再建も自主再建の他、スポンサーが入って再建するいわゆる「スポンサー型」と言われている再建方式があります。
再生支援協議会が行った再建支援では、平成25年では23%がスポンサー型だったのに対し、令和元年では80%近くがスポンサー型の再建支援になっています。
この間、再建数自体も52件から131件と2.5倍になっています。
スポンサーが入って再建する方式はM&Aの普及と相まって一般的なものになっているといえるでしょう。

事業の再建にお悩みの経営者はお気軽に弊社までご相談ください。
事業再生を得意にしている法律事務所と提携を行っているため、抜本的な再生スキームをご提案することが可能です。
是非お気軽にご相談ください。

<ご参考>
中小企業庁:
中小企業承継事業再生計画に係るQ&A (meti.go.jp)
090810Shiryou3.pdf (meti.go.jp)

経済産業省:
20200904001-1.pdf (meti.go.jp)

 

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