「数倍の価値はあったのに」「そんな…」160年続いた家業、仲介業者に“一晩のうちに買い叩かれた”あまりに低すぎる譲渡額【税理士が解説】、についてM&A仲介が解説

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公開日:2024年4月19日 /最終更新日:2024年7月24日

「事業承継をM&A仲介におねがいしたら安く買いたたかれた!」とは

ヤフーニュースで面白いコラムがあったので、今日はそれを紹介したうえで、仲介サイドの視点からどう見るか…ということについて解説していきたいと思います。

今回引用した記事を簡単にかいつまんで言うと

①160年続いた和菓子屋で秘伝のレシピがあったり百貨店に進出したりしているが、売り上げの低下や従業員の高齢化、店舗の赤字なので縮小傾向だ
②後継者も身内ではいない
③ある日M&A仲介会社からDMが来て面談して、健康面や従業員の雇用などの不安をあおられたので即契約して売却を任せた
④とんとん拍子で話がすすんで2000万円で売れたが、手数料で仲介会社に1500万円持っていかれたので、手元に残ったのは500万円だ
⑤仲介会社には税理士などに相談するなといわれていたが、税理士に聞いてみたら「なんでそんな低額で決めたのか」といわれた
⑥もう後の祭りで二束三文で売ったことを後悔している(年金暮らしでもある)

M&A仲介による検証

では実際に実務でM&A仲介を行っている立場から順に内容を見て検証していきたいと思います。
まず①~③についてですが、今後どうするかということについて悩んでいる会社にDMが送られて、会社をよろしくお願いしますということで即日契約を行うことはあります。
弊社もありましたし、どうするか悩まれている売り手様については、「押し売りではないので依頼するか考えてからハンコを押してください」といって、あとで郵送で送ってもらったこともあります(当たり前ですがこちらの方が多いです)。
ただ⑤とも絡みますが、今は河野太郎大臣(当時)が中小企業庁に指導したことを端に発したことにより、中小企業庁がM&A仲介会社に対してガイドラインを作成し遵守しない仲介会社にはペナルティを課す方向にシフトしています。
従って、基本的には税理士や弁護士など、それぞれの士業の法律で業務上知りえた秘密を守るように決めている業種について相談することは肯定するように指導しているはずです。
またセカンドオピニオンを求めることも中小企業庁は推奨しているので、上記のような説明をしている会社はアウトでしょう。
弊社でもセカンドオピニオンサービスを行っているので是非ご利用ください)

ただし税理士が言う「そんな低額で決めたのか」ということについても検証する必要があります。
本文では財務内容など書かれていませんので判断できませんが、仮に負債が大きく引き受け手がしり込みする場合は、顧問契約を切られたことによるポジショントークの可能性もあります。
この部分については客観的な財務状況を中心とした経営状況が不明なので、この点だけで判断するのはフェアではないでしょう。
(税理士が言った金額で売却できる…というのであれば別ですが、税理士は税務申告ができる資格なので、公認会計士が行うような財務会計を行って価値評価をすることはまた別であると考えるからです)

「とんとん拍子に話が進んだ」

全く否定する話ではないのですが、④については経験上、一つの交渉が完結するまでに3回くらい山があると思ってやっています。
そう考えると「とんとん拍子に話が進む」場合は、買い手側にとって山がなかったのかもしれません。
もし双方の交渉を調整するのであれば、最終的に合意するにしてもコンフリクトがあると思うからです。
(詳しくは弊社コラム、「提携仲介契約から14日間での成約」のプレスリリースに思う、早ければいいの? M&Aの相談から実行までの期間について、もご覧ください)

仮に売り手に少しでも有利な話があるなら(譲渡価格や条件)、仲介は買い手側と折衝を行い、フィードバックしながら進めるはずなので、それがない=「とんとん拍子に話がすすむ」ということであれば、よほど仲介が最初に今後起こることを説明したか、もしくは買い手側に有利な条件で仕切ったということでしょう。
ストレスなく進めることはもちろん大事なのですが、交渉事なので、ストレスがないことが自分にとって有利か不利なのかは考える必要があると思います。

後悔先に立たず、なのか

「契約してしまって後悔している」という点についてですが、民法上「禁反言」の原則があり、決めたことは守ってくださいというものがあります。
ただし「権利の上に胡坐をかくものは保護されない」ということもあり、もし一連のプロセスにおいて何かしら仲介側の故意もしくは不作為があるのであれば主張してみてもいいかもしれません。
特に今では中小企業庁もトラブルの報告を求めているので、下記の連絡先に情報連携してみてもいいでしょう。

2.情報提供受付窓口に関する問い合わせ先

情報提供受付窓口は、M&A支援機関登録事務局に設置し、メール又は電話にて情報提供を受け付けます。詳細はM&A支援機関登録事務局のホームページをご覧ください。
M&A支援機関登録事務局内 情報提供受付窓口
問合せ先Eメール: jouhouteikyou@ma-shienkikan.go.jpTEL:03-6867-1478
URL : https://ma-shienkikan.go.jp/inappropriate-cases外部サイト受付時間:平日 10:00~17:00

手数料水準

以上みてきましたが、本件は「2000万円で売れたが1500万円の手数料を取られた」ということも問題でしょう。
税理士が行ってるように安く売られた可能性もありますが(一般にM&A仲介も『この値段が妥当か』と聞かれたらポジショントークで『うちならもっと高く売れる(売れた)』というと思いますが)、もともと2000万円の会社が手数料1500万円の会社を使ってしまったことに問題がある可能性もあります。
それであれば会社の価値は2000万円なので、コストの内訳の選択肢を誤ったのは経営者判断になるでしょう。

以下、弊社と連携していただいているクレジオパートナーズ様の作成された手数料比較表になりますが、各社でまちまちなので、同じ買い手で同じ買収価格になるのであればコストを下げるところを選んだ方が合理的でしょう。

年金暮らしの件についても、基本的にレシピなどそろっている企業であればノウハウを引き継ぐために役員や顧問なので残ってほしいといわれる可能性がかなり大きいので、年金だけ、ということは考えづらいと思います。

まとめ

160年も続いている和菓子屋さんであると簿外も含めてどんな債務があるかもわかりませんし、本文を読む限りでは自由に経済生活できそうな子供に継がせないように債務を含めて引き継いだ方がすっきりするかもしれません。
また本文中で「CMなどでよくやっている会社」が「手数料1500万円」というくだりは、上記の報酬体系一覧と照らし合わせると実際にCMをよく打っている会社なのかどうかわかりませんが、注意喚起を行う事例としてはわかりやすいでしょう。
中小企業を経営されてきている皆様であれば、通常やっている商行為のほか、M&Aを行うこと自体も法律や契約など含めて色々と知識や経験など必要なことがご理解いただけたと思います。
ぜひ弊社にもお気軽にお問い合わせいただき、ご懸念点が解消できれば幸甚です。

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