M&Aを行うと従業員はリストラされる!? 実態と買い手の考えているコト

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公開日:2023年4月5日 /最終更新日:2023年4月5日

会社を譲渡すると従業員はリストラされるのか

M&Aが進んでいくと「従業員の雇用維持だけはお願いします」と言われることがよくあります。
M&A(合併・買収)は企業間の経営統合を伴う大きな変革であり、売り手側には多くの懸念があることはよくわかります。
その中でも、今まで苦楽を共にしてきた従業員の雇用が維持されるかどうかという点は非常に重要なポイントであることは間違いないでしょう。
そのため多くの売り手は、上記のように自社の従業員を心配し、M&Aに関して不安を持つことがあります。

しかし実際のところ、M&Aが実施される場合、従業員の雇用は維持されることが多いのです。
むしろ実行の際に従業員が減っていると問題になることがあります。
以下に、なぜ雇用が維持されるのかを解説し、初めての方にわかりやすいようにご紹介します。

買い手が雇用を維持したがるワケ

1.戦略的な人材の維持

買い手企業はM&A時に譲渡起業の今後の成長性を織り込んでM&Aを実行します。
そのため売り手企業の優れた人材や組織の維持が重要視されます。
従業員がいなくなることで買収時の将来予測が狂ってしまうことは問題になるわけです。
そのため買い手企業にとってはM&A後も売り手企業の人材を活用し、経営資源を最大限に活性化するため、雇用を維持していこうと考えることが多いです。

2.法律上の義務

M&Aには、大きく分けて株式譲渡と事業譲渡の二つがあります。
株式譲渡の場合、株の所有者だけが変わるので会社と従業員との間の権利義務関係(雇用条件など)はそのまま引き継がれます。
また事業譲渡の場合は再度、譲り受け先と雇用契約を結びなおす形になりますが、日本では雇用関係に関する法律や規制が存在します
転籍の場合も労働者の同意を得ることが求められているので、乱暴な転籍は法令上も困難です(逆にこのタイミングで辞める従業員は一定存在します)。
例えば厚生労働省から出している「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」では事業譲渡の場合、

– 承継予定労働者との事前協議を十分に行うこと
– 労働組合等との事前協議を行うこと
– 労働契約の承継について、承継予定労働者の承諾を得ること
– 事業譲渡等指針を参考にしながら、円滑な手続きを進めること

をに留意するよう記載されています。
これらの権利義務関係や労働法令などにより、雇用が維持されることが一定、保証されます。

3.組織文化の継承

M&Aは企業文化の統合も伴いますが、売り手企業の価値や文化を尊重し、継承することが多いです。
従業員が組織文化に馴染み、自社に貢献してきたことを評価し、雇用を維持する傾向があります。
特にキーマンの存在は重要で、キーマンが退職することで他の従業員も離脱してしまうこともあるため、譲渡のタイミングでケアが必要になるでしょう。

4.人材の確保

介護事業や運送事業、建築業などの労働集約産業では買収の目的として人の確保が優先順位として高い傾向があります。
目的が人の確保であることから、これらの業種ではリストラされることは考えづらいでしょう。
特に法令で人員配置基準などが定められている場合であればなおさらです。

結論

以上のことからM&Aを行うことによって従業員が解雇される可能性は少ないということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
確かに余剰人員を抱えている再生系の法人ではM&A実行時に削減も考えないといけないのでしょうが、一般的な企業のM&Aでは雇用が維持されると考えていただいて問題ないケースが多いです。
売り手に対してもむしろそのまま残ってほしいというオファーが出されることも多いです。
リストラについてはあまり心配せず、将来の展望を考えながらM&Aを進められるといいですね!

 

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