倒産しても経営者の住宅を守れる? 連帯保証と民事再生手続きの「住宅資金特別条項」

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公開日:2023年10月6日 /最終更新日:2023年10月6日

倒産しても自宅に住みたい! そのためにはどうしたら

東京商工リサーチの発表によると政府のコロナ支援もひと段落ついたこともあり、2023年上半期(1-6月)の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が4,042件と前年同期比32.0%増の水準に達し、コロナ危機が起きる前の水準まで戻ってきました。
倒産や廃業により経済の新陳代謝が進むのは資本主義市場で当然とされていますが、実際の中小企業経営者の心情を考慮すると、「好きに倒産してください」というのも無責任な話でしょう。
危機に直面した時に経営者が考えることは従業員や取引先のこともありますが、やはり家族を始めた自分たちが今後どう生活をしていけるか、ということではないでしょうか。
特に経営危機に陥って倒産も視野に入っている場合、倒産した場合に金融機関に処分されてしまうことを危惧し、倒産・破綻を決断できない経営者も多いのではないでしょうか。

住宅資金特別条項とは

住宅資金特別条項とは民事再生の手続きにおいて、住宅ローンを個人再生の対象から除外し、家を手元に残せる制度のことです。
え? 会社が破綻するのに家は残せるなんてそんなことできるの?と思う向きもあるかもしれません。
この制度を利用するには民事再生手続きを行う他、以下のような要件を満たす必要があります。

・住宅ローンとしての借入れであること
・個人再生の申立人が所有している住宅であること(持ち分については特に制限などはないようです。ただし店舗などと兼用している場合は床面積の半分以上が「住宅」であることが求められます)
・再生債務者の居住用の建物であること
・住宅を他の借入れの担保にしていないこと

住宅資金特別条項を利用するメリットは、以下のようなものがあります。

・住宅ローンを個人再生の対象から除外する代わりに、マイホームを残せる
・住宅ローンの返済のリスケジュールなども可能
・家・土地の差押えや競売も停止できる

またこの他、民事再生手続きの要件を満たす必要があります。

個人型の民事再生手続きの要件とは

ここから先は法的にテクニックな話になってきます。
まず個人型の民事再生手続きか通常の再生手続きかどうかで代わってきます。
まず住宅ローンを除いた債務総額が5000万円以内かどうかが要件判断の一つになってきます。

5000万円を1円でも超えている場合(遅延損害金を含む)、通常の民事再生手続きを行う必要があるため、費用や認定要件が厳しくなってくるのです。
次に公庫や保証協会が債務免除に応じてくれるかどうかということも論点になってきます。
最近では姿勢も変わってきたと聞きますが、基本的に公的資金で運営されていること、また都道府県によっては条例がないと氏名の公開などの個人情報の問題がかかってくるため、債務免除が厳しいエリアがあります。
それらの問題をクリアするために債権者の同意が必要ない(裁判所の職権でいける)「給与所得者等再生手続き」が進めやすいといえます。

給与所得者等再生手続きとは

給与所得者等再生手続きとは、主にサラリーマンなど、安定した収入を得る見込みのある個人債務者が利用できる個人再生の一種です。
個人再生とは裁判所の監督下で、債務者と債権者が話し合いを行い、債務の一部を免除することで債務者の再起を支援する手続きです。

給与所得者等再生手続きを利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。

・個人の債務者であること
・このまま何もしないと返済不能に陥る可能性があること
・将来にわたり継続的または反復的に収入を得る見込みがあること
・借金の総額(住宅ローンを除く)が5,000万円以下であること
・給与など定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれること
・前回に行われた給与所得者等再生・ハードシップ免責・破産免責から7年以内に申し立てられていないこと

です。
でもここまで読まれた経営者の皆様、こうは思われませんでしたか?

「会社をつぶしてサラリーマンになれるの?」と。

第二会社方式による事業再生と個人再生の提案

会社の再生スキームとして「第二会社方式による事業再生」というスキームがあります。
詳しくはこちらのコラムを参照してほしいのですが、簡単に言うと新しく法人を設立し、事業運営に必要な資産(機械や工具など)と債務(未払い賃金や買掛金)をそちらに引き継いだうえで元の会社を清算し、事業を継続していくというスキームです。
会社の方はこのスキームで再生することができ従業員や取引先との関係も継続することができますが、経営者の個人保証については継続して残ってしまうので、こちらについて何とかしないと住宅がなくなってしまいます。
そのため先ほど説明した個人型の民事再生手続きを行うことで住宅を保全する必要があるわけです。

さてここで「給与所得者型再生手続き」がどう関係するのかということですが、新しく設立した会社に顧問や従業員として「サラリーマン」として雇用されたらいいのです。
新会社で役員などを行ったり、親族に引き継いだした場合、詐害行為として債権者から指摘される可能性がありますが、適正に時価額を評価し、第三者や従業員が設立した新会社に第二会社方式で引き継ぐことは、むしろ破産法の理念にかなうでしょう。

この法律(筆者注:破産法)は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする(太字:筆者)。

つまり破産法の趣旨からも経営者の再生の機会を図ることを求めているため、経営が失敗してしまった理由や原因は反省すべきですが、失敗したこと自体は恥じ入ることなく、次のステップに活かせばいいと思うからです。

通常の再生手続きの場合は?

ここまで5000万円以下の負債を抱えて倒産した場合の住宅の保全についてはわかりました。
では5000万円を超えた場合、もしくは抵当などを入れた場合についてはどうしたらいいのでしょうか。
個別具体的な検討が必要ですが、その場合であっても保全は可能です。
もちろんスポンサーや一次買取などにご協力できる親族などの存在が必要になってきますが、通常の再生手続きの場合であっても生活の基盤である住宅に住むことは可能です。
この場合、倒産や再生に強い弁護士や時価算定を行える公認会計士などの協力が必要不可欠です。
弊社に置きましても提携している弁護士や公認会計士と協力しながら、会社の再生、そして経営者の生活の再生を行うことをお約束いたします。

・赤字ではあるが資産処分などで自主再建が行える状態
・自主再建が難しくなるような状態(慢性的な赤字が継続し、債務超過に陥った場合)
・社会保険や税金を滞納している状態
・それすらも難しく闇金などからも借り入れをしている場合

の各ステージによってやれることは変わってきます。
どのステージであっても再生の可能性がありますので、是非お気軽にご相談いただければと思います。

 

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