モラル最悪!? M&A仲介の営業担当者残酷日記

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公開日:2024年2月14日 /最終更新日:2024年4月10日

M&A仲介会社の営業担当者ピンキリ残酷日記

今回も特定の会社についてコメントするのではなく、一例からM&A仲介の営業担当者がどのような働きをしているのかをお伝えすることで、M&A仲介会社から営業を受けている皆様に営業担当者の実態を理解してもらい、適切な距離感で接せられるようにしたい、という趣旨でコラムを記載しますので、その点、誤解無きようよろしくお願いします。
(今からM&A仲介に転職を考えている方は「M&A仲介会社には絶対に転職するな!」、M&A仲介会社の迷惑営業に悩まされている方は「M&A仲介会社の迷惑営業について」も参考にしてください)

M&A仲介会社社員の懲戒解雇

業種特化型のM&A仲介を行っているブティックス株式会社から社員を懲戒解雇した旨のIRが発表されました
一部抜粋すると

1.本不正行為の概要について 当社のコンサルティング事業部所属の元従業員3名が、在職時に不正な旅費交通費の申請等を行い、金銭を着服していたことが判明しました。本不正行為は、今年度の旅費交通費が前年度に対して過大になっている原因を社内調査している過程で発覚したもので、本不正行為の解明のため、徹底的な社内調査を行った結果、その全容が明らかになったものです。
なお、本不正行為による着服額は、総額約20百万円となっております。 また、当該社内調査の結果、複数名の当社従業員が、社内規程に反する不適切な旅費交通費の申請を行っていたことも明らかになりました。

何人が何年にまたがって着服していたかは読み取れませんが、総額2000万円の着服とかなり派手な着服が行われたようです。
体面営業が主流の業界のため(会社売る話をZOOMでやることに抵抗ある人はまだ多いと思います)、営業活動と出張が密接にかかわるからです。

M&A仲介社員の働き方

M&A社員の働き方を、売り上げが発生するまでに分解すると

案件の発掘(ソーシング)。ここで税理士経由等で紹介を受けたり、直接DMや電話を行ったりする。
売り手とのアドバイザリー契約締結中小企業庁から注意喚起されているテール条項などはこのタイミングで不誠実な説明を行っている仲介がいる。
③IMなどの資料作成。会社によっては分業化されていて担当者は楽な反面、別部署が作成するため理解に乏しい資料ができる可能性がある。
買い手を探す。買い手はもともとニーズが寄せられている会社もあるが、一から探すことも。ひたすら電話やメール。この際、情報管理がガバガバな仲介に任せると情報漏洩の可能性も
面談実施。条件のすり合わせや相性の確認など。頓珍漢な仲介担当者が入ると話がややこしくなる。
基本合意。初期的に条件を落とし込み進めることに双方合意。
買収監査(DD)。大体感情的になって決裂するとするときはここ。売り手に心理的体力的な負担がかかるので。
最終契約。最終契約日に来なくなる売り手もいるので、気が抜けない。
請求書発行し売り上げ入金確認。契約が締結されるだけではなく、入金されるまで試合が続くのです。

上記を見ていただくと、案件の発掘ありき、ということがお分かりになると思います。
日本M&Aセンターみたいに税理士や銀行などからの紹介がスムースなところは、大きなハードルである①の負荷が低いため案件にタッチしやすいという特徴があります。
ただ逆に売り手側からすると税理士や銀行にすると何でもかんでも日本M&Aセンターに誘導されてしまう…と考える方もいるようなので、売り上げ数十億以上の会社の代表者もネットで相談される方もいらっしゃるようです。

残酷日記

さて、上記を見て「じゃあ税理士や銀行から紹介されない仲介会社は…?」と思った方、鋭いですね。
そう、ひたすら電話かけです。
DMも費用が上がり、最近では「手書き風」というロボットが手で書くという活版印刷を全否定してグーテンベルクがあの世で泣いているようなビジネスも登場しており、こちらは1通数百円からです。
さすがに大量に営業マンが在籍しているとDM予算にも限りがあるため、「空いている時間は電話を掛けろ!」となるのは固定費を考えると当然といえば当然。
こうして案件が取れるまでひたすら迷惑電話が量産されるわけです。

電話を受けるほうは迷惑以外の何物でもないのですが、電話をする側もほぼ迷惑電話であるとわかっているので、ストレスが溜まってきます。
その際、「出張に行けば電話をしなくていい!」と気が付き、逃げるように出張を入れてしまった、とは考えすぎでしょうか。
とはいえ刹那的に1~2日職場から離れたいというのならともかく、今回は一人当たり数百万円の着服がされています。
別の側面があることも考える必要があるでしょう。

残酷モデル?

M&A仲介業界は上場企業の平均年収が1000万円台~3000万円台と非常に高いイメージが持たれています。
大量採用を開始している会社の中ではインセンティブによる高年収をうたい文句にしている会社もあるでしょう。
ただ入社後、思ったような年収水準にならなかった可能性もあるでしょう。
もちろん年収が低かった(思ったより稼げなかった)のでカラ出張をして旅費相当をぽっけに入れる…ということはあってはならないのですが、事前の説明と入社後の状況が異なっていたら被害者意識が出てくるのもわからなくもなりません。
例えば同社のケースですが、インタビューでは

実績で申しますと、入社後1年経過したM&Aアドバイザーの平均年収は1,300万円程度です。今期は年収数千万円となるアドバイザーも出てくる予定です。

と1年経過したアドバイザーの平均年収が記載されていますが、別の資料だと

ブティックス入社時:500~800万円(月60時間までの見做し割増賃金含む)
※年収は経験・スキルにより応相談

【年収事例】
1年目 560万円
2年目 950万円
3年目 1,330万円

2年目と3年目を平均しても1300万円には達しなさそうです(950万円も十分高いですが)。
ただ売り上げから逆算すると、M&A売上高17.7億に対し、営業マン49名(うち前年39名)であることから、
上記のコメントが正しいと仮定すると約40×1300万+560万×10人≒5.8億が人件費と想定されますが、
売上げの30%超が人件費となっており、業界平均(15%~20%)と比較してもかなり高いインセンティブ率になりますが、
周辺情報と比較してもなかなか考えづらく、こういった点で入社時の話と違った!と思ってしまう人も出てきたのではないでしょうか(だからと言って横領は許されないのですが、複数社員が手を染めていたということは一部社員が自主組織化し横領を行った会社風土などもあったのでしょう)。

同業他社の手数料水準

弊社と連携して頂いているクレジオ・パートナーズ社が仲介会社の手数料をまとめているので見てみましょう(許可をいただいて転載しています)。

 

ブティック社の手数料は最低手数料は100万円と安価なものの、レーマン方式の料率は他社が5%から開始するところを10%から開始するなど、割合が大きいため、単純にどちらが高いか安いかということを比較することはできませんが、小規模案件ではやりやすい手数料体系でしょう。
逆にいえば大手と同じような規模に至るためには小規模案件をこなす必要があることから、その点が採用した担当者になじむのかどうかという問題があるのかもしれません。
弊社としては案件をいただくことで仕事が発生するので、ありがたく思いますが、モラルのない担当者がいると、単価の低い(ゆえにインセンティブ額も低い)案件を大量にこなすのが面倒くさくなり、それなら経費でちょろまかそうという人間も入ってくるのでしょうか。
中小企業オーナーから自分の人生ともいえる会社を預かるM&A仲介担当者としては嘆かわしいことでありますが…。

まとめ

案件が取れるまでひたすら電話をし、案件が取れても思っていたような年収にもならなければ聞いていたような年収とは違った、となれば心がダークサイドにひかれてしまうのも理解はします(でも不正は絶対ダメ)。
問題はそのような社員が会社内にだけ生息しているのであれば、雇用者がリスクを負うのですが、給料をもらっている会社を裏切る営業担当が基本的には他人である売り手(や買い手)を裏切らない保障があるでしょうか?

前も書きましたが、買い手や売り手に手数料のバックを求める担当者の存在や、買い手が仲介会社に払う手数料をオークションして、その高い順(つまりM&A後は売り手に対して圧力をかける要因にも)に面談をあっせんする仲介会社があると仄聞しています。
万が一そのような会社に当たってしまった場合、売り手からしたら一生に一度あるかないかのM&Aで大きなリスクを負ってしまいますし、買い手もM&A後に何かしらトラブルが発生しても仲介が頼りにならない可能性も想定する必要があるでしょう。

見分け方?

では売り手が営業担当者を見分けるにはどうしたらいいでしょうか?
担当者のインセンティブ率が高い会社は成約重視になる可能性があるので避けた方がいいかもしれません(その代わり必死にやるかも、という期待はあります)。
インセンティブが高い会社は〇〇(会社名)+年収でググってみると出てくるので、検索してみてもいいでしょう。

また会社の口コミも見てみてもいいでしょう。
openworkのような社員口コミも見てみるとなおいいかもしれません。
一事が万事・・ではないのですが、火のないところに煙は立ちませんし、煙が出たらそれに対処するかどうかも重要です。

また社風だけではなく、担当者個人のレベルを見るために、面談時に過去にどういった案件をやったか聞いてみるのもおすすめです。
ただ先ほど挙げたように銀行や税理士から紹介を受けるような会社は案件を選べるため、修羅場をくぐっているかどうか深掘りしてもいいかもしれません。
例えば当職は「来月で資金ショートする」という会社の救済先の面談を1週間でアレンジしたり、「3か月後に資金ショートする」という会社の案件を60日で譲渡した実績があります。
こういった苦労した経験を聞き出すことで、自分が売り手になるときにどこまで対応してくれるのか見当をつけて見てもいいのではないでしょうか。

この業界、後継者難や経営の拡大などでお困りの経営者にとってはインフラとしてなくてはならなくなってきているのですが、大きなお金が動くため、金銭にインセンティブを感じる人たちが参入してきますし(それ自体は否定するものではないですが)、その結果として目先のカネでモラルを放棄してしまう担当者も増えていると感じます。

なかなか見分けることも難しいと思いますが、ぜひ初めての面談の際には担当者を深掘りし、可能なら会社のインセンティブシステムも確認してご自身の身を守ることをお勧めします。

<確認事項まとめ>
・会社の給与体系(インセンティブ率)
・Googleなどの口コミ(社員口コミも)
・担当者個人のきつかった経験

<2024年4月8日追記>
マンパワー主体のコールが案件発掘の要素の一つと書きましたが、先ほどM&A支援機関登録事務局から迷惑営業の注意喚起が各社に入りました。
迷惑コールをものともしない会社は当局から排除される可能性がある(信用の低下や買い手・売り手は補助金の対象ではなくなるなど)ことから、人を抱えて固定費が高い会社はつらいことになりそうです。
逆に税理士などとリレーションを持っているコールだけに頼らなくていい日本M&Aセンターなどにとってはプラスでしょう。
参考までにご確認ください(赤字太字筆者)。
営業電話を迷惑に感じている方は以下の画像先をクリックすると情報提供フォームに飛びますので、そちらでご相談されてもいいかもしれません。

お世話になっております。M&A支援機関登録事務局です。
平素より中小M&Aに係る支援に御尽力いただき、誠にありがとうございます。

事務局においては、登録M&A支援機関に係る支援の実態についての情報提供窓口を設置しておりますが、情報提供の内容としては、営業先が契約締結を断ったのにも関わらず、営業行為を継続する行為等の営業行為に係るものが多く寄せられております。

「中小M&Aガイドライン」においては、M&Aに必ずしも詳しくない中小企業の意思決定を適切にサポートし、依頼者の利益のために善意管理注意義務や職業倫理に基づいた支援を実施することをM&A支援機関に対して求めているところです。

こうした趣旨を踏まえると、契約締結に向けた営業行為についても依頼者となりうる中小企業の意向に沿って行う必要があると考えており、このため、今年度以降、営業に係る情報提供が寄せられた場合には、当該情報提供に係る登録M&A支援機関に対して通知し、注意喚起することといたします。

とりわけ、複数回の情報提供が寄せられる等、潜在的な依頼者である中小企業の意向に沿わない営業行為が組織的に許容されていると疑われる場合については、ガイドラインにおいて求めている「職業倫理」の醸成等が不十分との疑念が生じることとなりかねず、こうした場合には、M&A支援機関登録事務局としても追加的な対応を検討していくこととなります。

以上、引き続きよろしくお願いいたします。

 

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