公開日:2021年9月10日 /最終更新日:2021年12月12日
M&A仲介との契約を結ぶ際に、報酬体系よりもトラブルになるテール条項
弊コラムでも何度も何度も取り上げてきて正直未だにこんなトラブルあるの?と思いますが、現在も最もトラブルが多く、中小企業庁も問題視しているようなのでその点について独立して記載したいと思います。
テール条項とは
経済産業資料の定義としては「契約期間終了後も手数料を取得する契約」とされています。
平たく言うと、仲介会社は紹介した顧客を仲介会社を飛ばされて契約されてしまうとタダ働きになってしまうため、仲介会社が紹介した後の一定の期間については仲介会社が紹介したとみなし、仲介会社が入らない形でM&Aが行われたとしても、手数料を支払ってくださいという条項です。
もう少し具体的にいうと、例えば、弊社が売り手に買い手を紹介したとします。
ただ何らかの理由ではブレイクしてしまいました。ただお互いに未練があり、ブレイクした半年後に弊社を除いてM&Aを成立させました。
この場合、弊社がいたから紹介ができ、M&Aが成立したので、弊社が動いたとみなして当初の手数料をお支払いください、という内容です。
テール条項の問題点
これだけ聞けば別に当たり前の話で、なぜトラブルになるのか疑問に思われる方が殆どだと思います。
私が聞いたトラブルの事例としては、悪質な仲介会社が、売り手に対して一般的な期間を超えるような長期間テール条項で縛った上、膨大なロングリストに乗っている全ての先(紹介もされていないし、本当に買う気があるかもわからない先)にテール条項をかけることで、実質的に解約を不可能にするという手法を用いているそうです。
また同じ会社か否かは不明ですが、別の大手会社で似たようなことが行われているような話も聞いたことがあります。このような契約を結んでしまった場合、成立すればまだいいのでしょうが、解約もできず相手も見つからないという事であれば、会社の経営方針が束縛されてしまい、場合によっては経営方針を確定することができなくなってしまうので、業績に影響を与えてしまうでしょう。
そのため中小企業庁は、テール条項について必要性を認めたうえで、透明性を担保するため、仲介会社が直接接触し、明示的に紹介した相手に限り、テール条項の対象として、必要最低限にするよう働きかけています。
これは当たり前ですよね。
悪質仲介会社が「これが弊社が紹介する予定の買い手です」と言って日本全国にある264万社のリストを売り手に見せたら、売り手は日本国内の企業と数年交渉できなくなってしまいますが、常識的に考えたらそれはおかしい。
中小企業庁が具体的にテール条項についてかくあるべしとしているのは、
・テール期間は最長でも2年~3年以内を目安とする。
・テール条項の対象は、あくまで当該M&A専門業者が関与・接触し、譲り渡し側に対して紹介した譲り受け側のみに限定する。
と明示することでトラブルの発生を抑制しようとしています。
3年はさすがに長すぎだと思いますが、逆にいうと3年以上の期間で拘束している仲介会社も存在するという事でしょう。
弊社の場合
弊社は紹介した企業について2年間の期限とするテール条項としているので、中小企業庁のガイドラインの範囲内です。
M&A、特に会社の譲渡についてはほとんどの方が初めてのケースになると思いますので、悪意のある仲介会社にあたってしまうとトラブルになってしまうと思います。
中小企業庁のガイドラインではこのほか、他の支援機関、弁護士や税理士など法令による秘密保持義務がある者や事業引継ぎ支援センターなどの公的機関に限定してセカンド・オピニオンを求めることを許容するよう促していることから、弊社に限らず何か疑問に思った点や不審な点、お困りの点については専門家に相談されるとよろしいと思います。
弊社からもM&Aに詳しい専門家の紹介は可能ですので、お困りの方はお気軽にご連絡ください。
M&A仲介については以下のブログも参考にしてください。
政府が中小企業M&A支援を行う背景
小規模M&A向け表明保証保険「M&A Batonz」についての解説
「M&A仲介への不信感4選」
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