M&A仲介業界の展望と新規参入を考えている方へ

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公開日:2024年4月3日 /最終更新日:2024年4月8日

M&A仲介会社の未来は

4月1日に斯界というか、M&A仲介が集まるコミュニティでちょっとした衝撃が走りました。
株式会社fundbook創業者の畑野代表が退任したのですが、そのポスト内容が衝撃的だったからです。

全文は長いのでリンク先からご確認いただきたいのですが、特に衝撃的だったのは以下の飲用部分です。

しかし、成熟期を迎えたM&A仲介業界の中で、業界未経験の私が新たなモデルを成功させることは簡単ではありませんでした。無謀ともいえる私の挑戦は、幾度もの失敗から、方針転換や仲間との別れを呼び、あげれば切りがないほどの苦難を招きました。私の至らなさで、多くの方々にたくさんのご迷惑をお掛けし、今では自責の念に堪えません。思い返せば苦しい局面ばかりで、理想と現実の乖離に押し潰されそうになりながらやってきた気がします。私は、今日まで約20年にわたってそんな事業家人生を送ってきましたので、この辺りで終わりなき道の一線から退き、これからは新たな道で生きていきたいと思います。

同社に対してM&A仲介の印象としては、新卒大量解雇問題日本M&Aセンターからの引き抜きなど何かと話題には事欠かないながら、業績自体は堅調に推移しているのでは?と思われていたからです。
採用計画も同日にリリースされ、100名規模での採用計画も発表されていたので、その意味で辞任自体も意外でしたし、メッセージももう少し明るい将来の予感や実績のアピールがメインとなるのかなと思ったからです。

二極化するM&A仲介業界?

先ほどfundbook社の採用計画について触れましたが、上場他社はどうでしょうか?
マイナビやリクナビなどの公開情報を見ると(数字は営業の募集人数)
・日本M&Aセンター 51~100名
・ストライク 26~30名
・M&A総合研究所 26~30名

と二桁単位で募集を行っています。
この他にも募集計画を進めている仲介会社はもちろんあるでしょうから、業界全体として数百名規模で人数が増えることが予想されるでしょう。
それに伴って迷惑電話…じゃなかった、営業電話も一日当たり人数×50~100くらいで増えるでしょうから、200営業日で考えると今に比べて800万件くらいM&A仲介会社からの営業電話が増えるわけですか。
中小企業の数が340万社なので、一社当たり単純に3件迷惑…営業電話がかかってくる計算になりますね。恐ろしい。。
(コラム:「また来たM&A仲介会社からのしつこい迷惑電話」もご参照ください)

反面、株価が上場来高値から数分の一になっているM&A仲介会社も珍しくありません。
個別に名前を出すのは差し控えますが、どこに差異があるのでしょうか。

手数料から見えるM&A仲介会社の競争力

弊社と連携して頂いているクレジオ・パートナーズ社が仲介会社の手数料をまとめているので見てみましょう(許可をいただいて転載しています)。

これを見ると、最低手数料が相対的に高い企業が採用件数を伸ばしているのに対し、そうでない企業は伸び悩んでいる傾向がある、と推認できるかもしれません。
最低手数料は各社の営業力の強さが垣間見えるという意味で面白いですね(営業力=案件発掘力×マッチング力なので、トラブル回避などのクオリティはまた別ですが)。
しかし中小企業庁ガイドラインではインターネットなどで手数料体系を明示するように明記していたはずですが、「変動方式」というのはガイドライン違反ではないかと思いますが…。
申請時に手数料が書いてあるサイトのリンクを示さないといけないのですが、どうやって承認をくぐったのかは謎です。

余談が長くなりましたが、営業力が強い会社は採用についてもインセンティブをアピールできますし、月間数百万円の広告費も負担して案件の継続流入を行えることから、案件対応のための採用拡大を行うちう好循環につなげることが可能なのでしょう。
反面、営業マンを抱えているけれども手数料を上げられない会社については、営業マンが採用できない(もしくは他社に流れてしまう)というリスクを抱えており、広告費不足から案件の取り負けも想定されてしまうため、単独独立系でやっていくことは難しいのかもしれません。
広告費が捻出できない場合、口コミか営業担当者のコール(営業電話)に絞られてきますが、数がモノを言う手法なので、相対的に取り負けてしまうのでしょう。
その意味からすると、中途半端に上場するのであれば弊社のように非上場でニッチを狙ってやっていった方が市場の暴力にさらされないので経営も運営しやすいと思いますし、上場するからには必要であれば増資を行って営業力(案件獲得力×マッチング力)を強化し、一定の地位を築く必要があるでしょう。
これは進化生物論の「赤の女王仮説」にもつながるところがあると思いますが、上場するからには中途半端な立ち位置だと厳しい目で見られてしまい、株価(時価総額)という形で外形的に評価されてしまうため、「他人の会社の株の売買仲介する前に自分の会社の心配をしろ」と言われてしまう可能性があるでしょう。

M&A仲介業界の今後

一部調査によるとM&A市場自体は2045年までは順調に推移するようです。
市場自体は伸びていくと予想されていく中で、大手企業がさらに営業職の採用拡大を図っていく中で、特色のない会社で固定費が高いところは厳しくなることが予想されます。
弊社は事業再生も含め、他社仲介が行っていないサービスの提供も行っておりますが、逆にコンサルティング的なサービスの提供については人材の確保が難しいため、規模の拡大との相性は悪そうです。
差別化できず、かといって最低手数料もあげられない会社は他社に吸収されるか、子会社化される可能性も想定したほうがいいかもしれません。
最近ではみずほ銀行が中小企業向けのM&A助言業に参入することが発表されました
みずほ銀行は本体のM&A助言業を何とかしたらどうかと思わなくもないですが、この例に限らず異業種がM&A仲介業に参入してきている傾向が高まっていますので、親会社からのルートで案件を取ることができれば営業力の弱さは低減できるでしょうし、親会社は異業種参入ができてグループ収益が拡大できるので、双方メリットがあるでしょう。
ユニークなところではNECも中小企業M&Aに参入しています。

このように俯瞰してみると、マーケットは拡大していくことから採用人数も増えていく。
特に大手企業を中心に年間人数が100人単位で増えていくことからさらに売買も活発になっていくと思われます。
ただし最低手数料が(相対的に)低い独立系のM&A仲介会社は、淘汰されるか他業種に吸収されていき、差別化できない会社は厳しくなるだろうと思われます。
とはいえ非上場企業であれば市場の暴力にさらされないため、ニッチを狙って行けば生き残りは可能かなと思いますが、現在中小企業庁に登録している2500社を超えるM&A仲介会社は収斂淘汰されていくと考えざるを得ないのではないでしょうか。

今からM&A仲介業界に参入を考えている方へ

この2010年代は日本M&Aセンターが掘り起こした中小企業M&A・事業承継というマーケットをMACPやストライクなど先行して上場した会社がさらに掘り広げて言った印象です。
そのタイミングで参入した会社は一定のポジションを作ることができました。
反面、現在は飽和しているため、新規参入企業は余程案件獲得のコネクションがないと差別化ができず、厳しくなってしまうのではないでしょうか。
コロナ前に参入した企業は、M&A総合研究所のように「AI」を掲げたり、あるいは業種特化型という触れ込みで参入した企業も多くあり、それなりに差別化を図ろうとしていたと思いますが、それらの差別化も今から参入する企業にとっては陳腐化してしまうことから、よほどの特色がないと難しいのではないでしょうか。
もしくは圧倒的な資本力で早期に人材を獲得し広告を売って規模を拡大しながら知名度を上げていくことです。
このスタイルはfundbook社やM&A総合研究所社が該当すると思います。

反面、資本力が乏しい企業はどうでしょうか。
安易に特色を手数料勝負にしてしまうと、採用の問題などから、クオリティの高い状態で規模の拡大できない可能性が高いでしょう。
また業界で数百人単位で採用が動いていることから、トレーニングの問題も出てくるでしょう。
周囲の話を聞くと、やはり人材の質や教育はまだ日本M&Aセンターに一日の長があるようです。
未経験者はトレーニングを受けられる会社に入社して適性を見てからでいいと思いますし、新規に事業として参入(起業)を考えている方はマーケットで生き残れる特色があるか一度考えてもいいかもしれません。
参入してしまってゼロベースから半年一年経過しても何も実績が出せないのであれば速やかに撤退の判断も必要でしょう(個人的には今からM&A仲介始めるよりM&A仲介向けの人材紹介会社やる方が儲かりそうです)。
M&A仲介業界に参入を考えている方はお気軽にご相談ください。
本コラムにご関心ある方は以下のコラムも参考にしてください。

2024年4月3日追記
…と書いていたらペアキャピタル社のリリースが出ました。
2020年設立ですが、かなりのペースで規模の拡大をしていますし、今後、47都道府県に進出というのも凄いですよね。
同社は業界でも有数のインセンティブ率が特色です(以下採用ページから抜粋)。

M&Aの業界ではインセンティブ制を導入する企業が多いですが、なかでも当社では「業界最高水準のインセンティブ率」を採用しています。ご成約時にいただく手数料の30%を保証し、実績を重ねていけば最終的に50%まで上昇していくのが大きな特徴です。業界内を見渡してみても、ここまで高いインセンティブ率を提示している会社は見当たりません。

確かにインセンティブ率を上げて営業力の源泉である手数料維持できれば、広告費に払う分をインセンティブにして、その分売り上げを上げてもらうというのは合理的かもしれません。
(それなら独立してもいいのでは…とも思いますが)
インセンティブ率に偏ると、モラルハザードが起きる可能性も否定できないのですが、やはり拡大できている企業は何か特色があるのだということがよくわかります。

2024年4月8日追記
マンパワー主体のコールが案件発掘の要素の一つと書きましたが、先ほどM&A支援機関登録事務局から迷惑営業の注意喚起が各社に入りました。
迷惑コールをものともしない会社は当局から排除される可能性がある(信用の低下や買い手・売り手は補助金の対象ではなくなるなど)ことから、人を抱えて固定費が高い会社はつらいことになりそうです。
(逆に税理士などとリレーションを持っている日本M&Aセンターにとってはプラスでしょう)
参考までにご確認ください。
営業電話を迷惑に感じている方は以下の画像先をクリックすると情報提供フォームに飛びますので、そちらでご相談されてもいいかもしれません。

お世話になっております。M&A支援機関登録事務局です。
平素より中小M&Aに係る支援に御尽力いただき、誠にありがとうございます。

事務局においては、登録M&A支援機関に係る支援の実態についての情報提供窓口を設置しておりますが、情報提供の内容としては、営業先が契約締結を断ったのにも関わらず、営業行為を継続する行為等の営業行為に係るものが多く寄せられております。

「中小M&Aガイドライン」においては、M&Aに必ずしも詳しくない中小企業の意思決定を適切にサポートし、依頼者の利益のために善意管理注意義務や職業倫理に基づいた支援を実施することをM&A支援機関に対して求めているところです。

こうした趣旨を踏まえると、契約締結に向けた営業行為についても依頼者となりうる中小企業の意向に沿って行う必要があると考えており、このため、今年度以降、営業に係る情報提供が寄せられた場合には、当該情報提供に係る登録M&A支援機関に対して通知し、注意喚起することといたします。

とりわけ、複数回の情報提供が寄せられる等、潜在的な依頼者である中小企業の意向に沿わない営業行為が組織的に許容されていると疑われる場合については、ガイドラインにおいて求めている「職業倫理」の醸成等が不十分との疑念が生じることとなりかねず、こうした場合には、M&A支援機関登録事務局としても追加的な対応を検討していくこととなります。

以上、引き続きよろしくお願いいたします。

 

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