NPO法人のM&Aはできる? 営利法人との違いとM&A

NPO法人のM&Aはできる? 営利法人との違いとM&A

「NPO法人のM&Aという特殊な領域でも、情報の非対称性を解消する動きが進んでいます。一般企業においても、AIによる精密なデータ解析がM&Aの成約率を左右する時代となりました。」

非公開企業の価値をAIでどう見極めるか?M&Aの事前調査(DD)を効率化する最新テクノロジー

特定非営利活動法人(NPO法人)は、社会貢献を目的とする非営利組織ですが、昨今は事業継続や拡大のためにM&A(合併・買収)や事業承継を検討するケースが非常に増えています。

しかし、NPO法人には「持分」がないため、株式会社と同じ感覚でM&Aを進めると、思わぬ法的な落とし穴や、地域社会・職員からの不信感を招くリスクがあります。

本記事では、まず「NPO法人と営利法人(株式会社等)の違い」を税務や利益配分の観点から整理し、その上で、実務として選ばれる「NPO法人のM&Aの具体的な手法と、名誉を守るための出口戦略」について、日本財務戦略センターの視点で詳しく解説します。

1. NPO法人と営利法人(株式会社)の根本的な違い

まずは、M&Aを検討する上で避けて通れない「NPO法人の特殊性」を整理します。ここを誤解していると、後々大きなトラブルに繋がります。

利益の取り扱い

給与・報酬の支払いは可能、配当は禁止

誤解されることが多いのですが、NPO法人は事業継続や活動拡大のために利益を出すことは可能です。
また介護事業や教育プログラムの収益から、役員やスタッフに給与や報酬を支払うこともできます。
ただし報酬は「法人の目的に反しない適正な範囲」に限定され、過剰な報酬は非営利性の観点から問題となる可能性があります(役員報酬は開示されます)。
一方、剰余金を配当として構成員(社員や役員)に分配することは禁止されています。
剰余金は団体の目的達成や事業運営に再投資する必要があります。
この点が、株主への配当を主目的とする株式会社などの営利法人との大きな違いです。

税制優遇と営利法人への転換不可

「認定NPO法人」に認定されたNPO法人は、寄付者に対する税額控除や法人自身の非課税措置などの税制優遇を受けられます(内閣府NPOホームページ)。
この優遇は非営利性を前提としており、NPO法人が株式会社などの営利法人に転換することはできません。
解散時の残余財産は、他の公益法人や国・地方公共団体に帰属する必要があり、営利法人への移転は禁止されています。

NPO法人のM&Aの傾向

NPO法人と株式会社の間で合併ができないことや、営利法人への転換が制限されることから、いわゆるM&Aや事業承継では事業譲渡が比較的多く採用される傾向があります。
事業譲渡とは特定の事業や資産を他のNPO法人や営利法人に譲渡する形式で、非営利性を維持しつつ事業継続を可能にします。
たとえばNPO法人が運営する福祉事業を他の法人に譲渡するなどです。

他に代表変更という方法もあり、理事長のポストを確保する形でM&Aが進められる事例もあります。
この場合、定款に則った総会を開き、社員や理事なども新理事長との関係がある人たちを入れるなども検討する必要があるでしょう。

NPO法人と営利法人の違い:できること・できないこと

以下は、NPO法人と営利法人(例:株式会社)の主な違いを整理した比較表です。

項目
NPO法人
営利法人(株式会社)
利益の追求
事業継続や活動拡大のために利益を出すことは可能。剰余金は団体の目的に再投資。
利益追求が主目的。株主への配当や利益分配が可能。
給与・報酬の支払い
役員やスタッフへの給与・報酬の支払いは可能(適正な範囲に限る)。
役員や従業員への給与・報酬の支払いが可能。金額や形態に制限なし。
配当としての分配
剰余金を配当として構成員(社員や役員)に分配することは禁止。
剰余金を株主への配当として分配可能。
税制優遇
認定NPO法人であれば寄付金の税額控除や非課税措置を受けられる。
一般的に税制優遇はなく、法人税等の納税義務がある。
合併
NPO法人同士の合併は可能(吸収合併・新設合併)。営利法人との合併は不可。
他の株式会社や合同会社など営利法人との合併が可能。
組織転換
営利法人への転換は不可。残余財産は公益目的に帰属。
他の法人形態(例:合同会社)への転換が可能。
事業譲渡
事業譲渡は可能。営利法人への譲渡も可能だが、非営利性の維持が必要。
事業譲渡は自由に行える。
出資持分の譲渡
出資持分が存在しないため、持分の譲渡は不可。
株式や持分の譲渡が可能。
資金調達
借入れ、寄付金、助成金、事業収入による資金調達が主。出資募集は不可。
株式発行や融資、投資家からの出資など多様な資金調達が可能。

 

NPO法人はM&Aできるのか?

NPO法人は、特定非営利活動促進法(NPO法)に基づき設立され、非営利活動を通じて社会課題の解決を目指します。NPO法人は特定非営利活動促進法に基づき、「非営利」を目的として設立されています。そのため、株式会社のように「株を売ってオーナーが変わる」という概念が存在しません。では、どうやってM&Aを実現するのでしょうか?

1. NPO法人はM&Aできるのか?

結論から言うと、NPO法人のM&Aは可能です。
ただし一般企業のM&A(株式譲渡)とは、その「形」が全く異なります。

NPO法人は先ほど申し上げたように特定非営利活動促進法に基づき、「非営利」を目的として設立されています。そのため、株式会社のように「株を売ってオーナーが変わる」という概念が存在しません。では、どうやってM&Aを実現するのか? 主な方法は以下の2つです。

2. 合併(NPO法人同士のみ)

NPO法に基づき、他のNPO法人と一つになる方法です。

  • 吸収合併: 一方の法人が存続し、もう一方が消滅する

  • 新設合併: 両方が消滅し、新しい法人を立ち上げる

【ここがプロの視点!】 法律上は可能ですが、実は実務ではあまり選ばれません。なぜなら、社員総会の4分の3以上の賛成、所轄庁の認証、債権者保護手続き……と、完了までに半年以上の時間と膨大な事務コストがかかるからです。
「今すぐ後継者に引き継ぎたい」「財政上の理由で新しいスポンサーに引き継ぎたい」というスピード感には向きません。

3. 株式会社との「合併」はできない。でも「譲渡」はできる

よく聞かれるのが「株式会社にうちの事業を引き取ってもらえないか?」という相談です。 法律上、NPO法人と営利法人(株式会社など)の「合併」はできません。

  • 理由: NPOには「出資持分(オーナー権)」がないため、株式を交換して合体することが構造上不可能です。また営利法人が税制が優遇されている非営利法人を合併できると公平性の問題が出てくるからです。

しかし、諦める必要はありません。 「法人格をそのまま合体させる」ことはできませんが、「事業だけを株式会社に譲る(事業譲渡)」ことは可能です。また、NPO法人のままで存続させたい場合は、「社員(正会員)と役員を総入れ替えする」ことで、実質的な経営権のバトンタッチを行う方法もあります。

4. 「事業譲渡」か「役員の入れ替え」か? 実務で選ばれる2大ルート

NPOのM&Aで、合併(実務手続きが煩雑すぎるため。ただし例えば東京都のように特定事業の認可が下りず止むをない場合、分割吸収などを行うこともあります)の代わりに選ばれるのがこの2つです。
どちらを選ぶかで、理事長への「責任」と「対価」の形が変わります。

① 事業譲渡(株式会社へ引き継ぐならこれ!)

NPOが持っている「事業(介護・保育・サービスなど)」を丸ごと他の法人に売却する形です。

  • メリット:

    • 買い手が株式会社でもOK。

    • 借金(負債)や不要な資産を切り離して、良い事業だけを引き継げる。

    • 譲渡対価としてNPOに現金が入るため、それを原資に退職金や運転資金などを設計しやすい。

  • 注意点:

    • 行政の「指定(認可)」が一旦途切れる場合がある(新規申請の手間)。

    • 先ほど東京都のケースで述べたように自治体によっては譲渡が認められない事業があるため事前に確認する必要がある。自治体だけではなく業種によっても変わってくるため、経験がない担当者では注意が必要。
    • 「NPOの看板」そのものは残るので、残った法人の清算手続きが必要。

② 役員・社員の入れ替え(NPO法人を残したいならこれ!)

法人の「箱」はそのままで、意思決定機関である「社員(正会員)」と「理事(役員)」を、買い手側のメンバーに総入れ替えする方法です。

  • メリット:

    • 「〇〇NPO法人」という名前や歴史、行政の指定をそのまま継続できる。

    • 資産や契約関係をそのまま引き継げるので、事務作業が比較的スムーズ。

  • 注意点:

    • 目に見えない「負債(簿外債務)」や、過去の運営上のリスクも買い手が引き継ぐことになる。

    • 「売買」という形が見えにくいため、対価(退職金等)の支払い根拠をより厳格に作る必要がある。

    • 定款によるが、社員や理事会などのメンバーの人選が必要である。
    • 変更手続きを誤った場合、団体内でトラブルに発展する可能性があるため、どのタイミングで誰に話をすべきか(キーマンが誰か)を含め丁寧に確認する必要がある。

5. 理事長の「善管注意義務」をどう守るか

NPOの理事には「善管注意義務」があります。
もし「自分たちの退職金を捻出するために、法人の資産を不当に安く売った」と後から社員(正会員)に訴えられたら大変です。

社会福祉法人の理事長交代で逮捕された話など、ニュースで聞いたことはありませんか?
NPO法人は社福とは性質が異なるため逮捕はされなくても、自治体や地元コミュニティとの密着性が高いので、後々まで何か言われるのは避けたいですよね。
また営利法人のM&Aでも情報流出リスクはありますが、公益性の高いNPO法人であればなおさら秘匿性に注意が必要でしょう。
だからこそ、NPOのM&Aの場合は、きちんとした担当者を探す必要があると考えます。
(ご参考:M&A仲介の闇|大手担当者が「信頼できない」と言われた理由とは

私たちは『この譲渡が、法人の継続と受益者のために、なぜ最善だったのか』を客観的な資料(議事録や価値評価報告書)として残し、説明するためのお手伝いを行います。
これこそがNPO法人のM&Aを「成功」に導く秘訣になります。
譲り受ける側からしてもスムースに引き継げるよう、形が整えられていた方が「乗っ取り」や「快叩きに来た」などネガティブなイメージを社員や従業員に持たれるリスクを下げることができます。


6. まとめ:NPOの出口は「お金」ではなく「大義名分」

NPO法人のM&Aは可能ですが、営利法人のような「株式譲渡」や「合併」という形は取れません(合併は取れなくはないがケースとしては少ない)。
NPOは利益を出し、スタッフへ適正な報酬を支払うことは認められていても、剰余金の配当や営利法人への転換は禁止されているという、非営利組織特有の厳しい制約があるからです。

そのため、実務上は「事業譲渡」「代表者変更(役員入れ替え)」といった手法が主流となります。

しかし、NPOのM&Aを成功させる本当の秘訣は、単にスキーム(手段)の正解を出すことだけではありません。何より大切なのは、理事長が胸を張って『これで法人は救われた』と言い切れる理屈(大義名分)」を作ることです。

NPOだからこそ、正しく設計すれば、株式会社のようなスピード感と、非営利組織としての矜持を両立させた「出口」は必ず見つかります。

日本財務戦略センターでは、こうしたNPO特有の特性と「理事長個人の名誉」の両方を踏まえた支援を提供しています。法人の未来を次世代へ繋ぐために、専門家としての知見をフルに活用し、持続可能な運営をサポートいたします。

NPO法人のM&A・事業承継に豊富な実績がある弊社へ、まずはお気軽にご相談ください。
あなたの「大義名分」を一緒に形にしましょう。

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【あわせて読みたい】社会福祉法人や宗教法人のM&Aを検討する際の注意点

NPO法人の事業承継やM&Aについて解説しましたが、同じ非営利組織であっても、社会福祉法人(社福)や宗教法人は、準拠する法律や行政の指針が大きく異なります。

特に社会福祉法人は「社会福祉法」による厳格な制約があり、一般的な営利法人のような持分譲渡が認められていないなど、特有の留意点が存在します。また、宗教法人についても、2025年に業界団体から新たな注意喚起が出されるなど、近年ガバナンスへの視線が非常に厳しくなっています。

「非営利組織の特性」を正しく理解し、法人の社会的信用を守りながら次世代へつなぐために。知っておくべき「社福・宗教法人」の実務上のリスクと現状について、以下の記事で詳しくまとめています。

[→ 【M&A|社会福祉法人、宗教法人】 結論「社福はダメ絶対!」な理由と、業界に突きつけられた自粛勧告]
2026/1/19追記

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