9/4週刊ダイヤモンド「廃業急増のウラ 倒産危険度ランキング」

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公開日:2021年9月8日 /最終更新日:2024年7月24日

週刊ダイヤモンド コロナ感染拡大特集

倒産と廃業の傾向について

今週の週刊ダイヤモンドの特集は新型コロナウィルス感染拡大が企業の倒産と廃業に対してどのような影響を及ぼしているのかを数値面から分析していて、私の肌感覚ともあうところがありましたので、記事の紹介を私の印象を交えながら記載したいと思います。

https://diamond.jp/articles/-/280602

倒産

記憶に新しいショックを伴う不景気と言えば「リーマンショック」が思い起こされると思いますが、リーマンショック時は倒産件数が通常の1.5倍に増えたのに対し、コロナ危機では通常の2割減と我々の抱くイメージとは異なり倒産件数が抑制的になっています。
これはリーマン時は金融ショックで融資が止まるなど運転資金に大きな影響を及ぼしたのに対し、コロナ危機では各国が緊急融資や補助金などの支援策を充実させたことから、当座の運転資金を確保し、延命できているからにほかなりません。
私の肌感覚でも借り入れが容易に行えることから、元々経営に行き詰っていた企業も、コロナを名目として負債規模の拡大をしながら運転資金を確保し、経営を継続している印象です。
他方、かなりの規模の債務超過に陥っており、保証協会からも借換えを断られたり、返済猶予期間後の返済について見通しが立っていない会社が多いです。
反面、コロナの影響を受けない、あるいは業態転換できた会社については手元資金を確保しながらM&Aを含めた規模の拡大を行い、市場での存在感を増しているため、水面下で優勝劣敗が明確に分かれてきており、返済猶予期間後あるいは政府支援終了後(コロナ危機終了後)、延命してきた企業の倒産件数という形で表面化するのではないかと考えております。
政府は直近に行われた成長戦略会議でも、中小企業の事業再生・事業環境構築について、ガイドラインや法整備の対応を検討していることから、コロナ後のショックを緩和するための準備を検討していますが、今まで行うべきだったことを先に延ばし、かつ先延ばした期間に比例して債務が大きくなっている企業が増加すれば、その影響はかなり大きいものがあるのではないでしょうか。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/seichosenryakukaigi/dai13/siryou1.pdf

廃業

他方、倒産の減少に反比例し、廃業が急増し、通常年間40,000件の廃業件数のところ、20年度は約50,000件と2000年以降で最多の廃業件数が指摘されています。
理由としては、上記に記載したように過剰債務が大きくなっていること、倒産形式ではない企業整理(ADR等)により倒産にカウントされず廃業にカウントされていること、ホテル業などで将来を悲観して倒産を選んでいることなどが指摘されていますが、廃業の増加についての分析はそれほど多くはありません。

ただ政府が事業承継が進んでいないことについて危惧しており、そのために事業承継ガイドラインを再度見直すとの話もあるため、コロナ危機による環境の悪化で、事業承継を避け、廃業を行っている企業も多いのではないでしょうか。
https://maonline.jp/articles/jigyo-shokei-guideline

倒産業種

コロナ危機によって倒産の影響が大きい業種についても触れられています。

昨年夏はホテル・旅館、飲食店、アパレルが多かったが足元では飲食店、建設・工事業、ホテル・旅館と順位が入れ替わっている

という趣旨の記載がありますが、これはまさしく私の肌感覚と同じで、飲食中心に対応していた不動産仲介業や工務店などは売り上げが著しく減ってしまい、他方給付金の対象ではないことから、飲食店以上にダメージを受けている印象です。

またこのほか、「高級志向」で伝統的な営業を行っていた企業も大きなダメージを受けている印象です。
具体的にはブランド力のある食品などを製造していて、百貨店を中心に卸していた企業などです。
平時では安定した販路で、かつ百貨店に採用されたという「お墨付き」を得ているという事でポジティブに働きますが、百貨店チャネルがコロナ危機で大きく売り上げを落とす中、それにつれて売り上げが下がり、企業によっては通常の半分まで売り上げが低下したなどという企業はよくあります。
他方、スーパーに強い企業はそれほど大きな影響を受けていなかったり、通販に強い企業は例年の1600%(!)増という企業もあるため、いいものを作っていた企業が苦境に立たされている話を聞くと非常にもったいない、という印象を受けます。
目先の売り上げ・現金の確保が大事なことはよくわかるのですが、セールなどを行うことで商品価値、ブランドを毀損している企業もあるため、単独で乗り切っていくのは厳しいという印象も受けております。

会社の終活

ここで週刊ダイヤモンドでは破産、解散・通常清算、M&Aの3つの手段を提示しています。
それぞれ一長一短はありますが、このほかにも私的整理による清算などの手段もあるため、この三択だけというのはやや乱暴ですが、大きく見ればこの三点のいずれかの選択肢をとることに集約されると思います。
個人的に検討の順番としては、

M&A⇒清算の検討⇒破産

が妥当と考えています。
なぜならM&Aで譲渡先が見つかれば場合によっては対価を得ることができますし、最悪でも個人保証の引継ぎなどを行うことで代表者個人から債務を切り離すというメリットがあるからです。
但し残念ながらそれで譲渡先が見つからない場合(負債が大きい、赤字解消見込みが立たないなどの理由が挙げられます)、私的整理を含む清算を検討することで、代表者(株主)個人の手元資金の確保ができるかを検討したらいいのではないでしょうか。
破産は最後の手段ですが、とはいえ事業再生、個人再生などを行うことで、昔と比べて個人が再起を図りやすい制度設計になっています。
あまり悲観的にならず、冷静にどうやって会社も含め代表者が生き残っていけるのか、という事を検討すべきだと思います。

M&Aについて

さて先ほどコロナ危機を大きく受けている業種が「飲食店、建設・工事業、ホテル・旅館」であるという事を引用しましたが、弊社には建設・工事業、ホテル・旅館をM&Aしたいとのニーズが多く寄せられています
赤字や債務超過でもエリアや業態次第ではロールアップのために積極的に検討したいとの話も寄せられていることから、今後についてお悩みの企業様はぜひ一度お声がけいただければと思います。
またその他にも弊社では事業再生サービスを行っていることから、トータルでの対応を行うことが可能です。

先日、とある経営者とお話しましたが、どうしても経営者は孤独で、相談できる相手がいないが、自分一人でできる範囲は限られてしまっていることが悩みだという事を仰っていました。
M&Aを行うことで、他社の経営資源や相談できる相手を確保し、既存の会社を大きくすることはご自分にとってもメリットがあると仰って頂き、M&Aに進み、やり方などを見直すことで、結果、M&A以前と比べ会社の売り上げも大きく上がったようです。
自分一人で悩むことでの限界はあると思いますので、まずはお気軽にご相談いただければと思います。

なお私的整理などに関する事業再生(企業再生)については以下のコラムも参考にしてください。

企業再生スキームとM&A
債務超過企業と企業再生(準則型私的整理編)
【事業再生】特定調停スキームとは
【事業再生】事業再生ADR制度について
地域経済活性化支援機構(REVICとは)
事業承継時の「経営者保証に関するガイドライン」の特則
「経営者保証に関するガイドライン」とは

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