M&Aで自分の会社を少しでも高く売るために!

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公開日:2021年12月3日 /最終更新日:2021年12月12日

中小企業M&Aで留意すべきこと

 

企業の価値とは

M&Aでは色々な論点があると思いますが、企業の価値がどれくらいになるのか、ということは創業者利益の獲得という経済的な点でもまた会社を大きくしてきた自負を持つという点でも経営者の方には大きなテーマだと思います。
教科書的には将来的得られるキャッシュフローを現在の価値に逆算して企業価値を出す、簿価で換算する、EBITDA倍率で考える、など複数のアプローチ方法があります
ただ相対取引であることや将来的な担保が難しいことなどから上記については一定の目安になるものの、やはり買い手側と売り手側のそれぞれが考えている主観的な評価をすり合わせて落としどころを見つけていくというフローが中小企業のM&Aでは多いと思います。
特に相対取引では感情的な問題や意思決定の際に上場企業であれば複数の部署や役職者が関わってくることから、その意思決定プロセスも考えていかに価値を毀損させずに合意形成に結び付けていくか、という事も考える必要があるでしょう。
今回のコラムでは利益も出ていて資産もある会社も、そうでない会社もどうやって価値を毀損させずに譲渡していけるのか、というところを考えてみたいと思います。

売り出し方

殆どの人か自社が売りに出ていることを知られたくないと思います。
そのため順に一対一で交渉し、ダメだったらまた別の企業と話をしてみて・・・という事を考えられる方もいらっしゃると思いますが、あまりお勧めはしません。
というのは価格については交渉力の強さで決まるからです。
交渉力の要素の一つに希少性や他にライバルがいるかどうか、という点があるでしょう。
他に買い手がいなければ買いたたけるのではないか、と思われてしまうかもしれません。
反対に複数の買い手候補がいればそれだけの価値がある案件と思われるでしょうし、希少性のある案件、買い手にとってのシナジーのある案件だと思われれば、他の買い手に買われないようにするために条件面を良くしようとするでしょう。
したがって売り手が考えることはいかに手を挙げる買い手候補を増やすか、という事になってきます。
もちろん仲介が作成する匿名概要書や企業概要書などで自社の魅力が適切に記載されていることは大前提になってきます。
その上で間口を狭めることなく広く手を挙げさせる(先入観で断らない)ことが必要だと思います。
というのもM&Aの目的は企業によってさまざまであり、買収意図やシナジーについては買い手側が本来考える事なので、売り手側が「この買収意図はおかしい」「シナジーがない」と言って断ってしまうのは自ら縁を切ってしまうことにつながるからです。
もちろん取引履歴があったり近隣などここは知られたくない、というのは別にしますが、幅広に候補企業として検討させ競わせるようにした方がいいでしょう。

情報の出し方

先ほど「自社の魅力を適切に」匿名概要書や企業概要書に記載させるようにすると書きましたが、ネガティブ情報については特に先に出しておくべきです。
もちろんネガティブ情報は隠したいものですし、特に事業が上手く行っていないときは自分を大きく見せようとしてそのようにしたいという気持ちはよくわかりますが、
後でネガティブな情報が出てきたときは買い手側に対し不信感を抱かせてしまいます。
相対取引のため不信感が芽生えてしまうとそもそもM&Aをやめようという話が出てきますし、相手方が上場企業など複数部署が窓口になっている場合でも同様の猜疑心が産まれてしまうでしょう。
したがって問題点や経営を行うにあたり今後、不安なことがあるのであれば先に出していただいたほうがトラブルになりません。
仮に隠してM&Aが行われたとしても後で何か起きた場合、表明保証義務違反で賠償責任が発生してしまう可能性があります。
それなら事前に伝えたうえで特別条項として買い手と売り手で問題が起きないようにフォローしていく方が譲渡後も円満に進む可能性が高くなります。

なお慣れた買い手では買収監査時に瑕疵を見つけ金額を下げてくる根拠にしてくるところもあったりします。
逆に先に伝えておけば、瑕疵を織り込んで初期的に金額を検討した前提で交渉が進められます。
気になる点があれば先にお伝えいただくことを強くお勧めします。

回答のスピード感

これも交渉が進んでいく中で大きなポイントになってくると思います。
先ほどの「情報の出し方」ともかかわる話なのですが、質問事項や資料についてのレスポンスにかかる時間は重要視されます。
特にネガティブな質問に対してのレスポンスが遅い場合、何か回答できない理由があるのかと思われ不信感を覚えられてしまうことがあります。
とはいえ出してもらう資料や質問については膨大になることから、まとめて出すのではなく散発的にでも回答することで動いているという姿勢を相手方に見せることが必要でしょう。
もちろんこれは買い手だから何をしてもいいという事ではなく、あまりにも買い手側が優越的な対応を求めてしまうと逆に売り手側が不信感を抱いて破談になる可能性もあります。
この辺はバランス感覚であると思いますが、出せる資料や回答できるものから早期に対応するという、ビジネスでも当たり前の対応を行っていくことが必要かと思います。

その他資料

事業計画や資金繰り表などの存在で価値を上げられるかという議論があります。
例えば今の経営状況よりもバラ色の事業計画書があれば買い手がそれをもとに価値を判定してくれるのでは?という期待です。
結論から言うとそれはありません。
買い手側からすると今の運営状況よりもあまりにも乖離している事業計画書が出てきても、その根拠が不明ですし、なぜ今そのようになっていないのかと思うでしょう。
場合によっては不信感を抱いて破談になってしまう可能性もあると思います。
逆に現実的な事業計画を出して具体的に打ち合わせをしていく姿勢があるのであれば、売り手個人に対して好感を感じ、残ってもらうのであればその時の処遇で考慮してもらえる可能性があるかもしれません。
資金繰り表についても同様です。
それらの点については正直に説明をしていただき、丁寧に答えて今後の関係を築いていくように考えて頂いたほうがスムースに行くかもしれません。

まとめ

「高く売る」というM&Aのサイトは多くありますが、大きく分けると「企業の価値自体を高める(利益を出す、資産を増やす)」、「交渉時に下げられないようにする」の2点に集約されるのではないかと思います。
譲渡スキームによって税制効果などを訴求することはできますが、買い手側シナジーになってくるため、単純にスキームを変えただけでその分、売却額が上がるのかと言われるとそれには疑問が残ります。
それよりは現在の企業の価値をいかに毀損させずに譲渡し、その過程で信頼関係を築いていくのかという事を検討された方がM&Aの「成功」につながるのではないでしょうか。

・広く買い手を募集する(利害関係のある先は別として先入観で此方から断らない)
・適切かつ魅力的な情報をきちんと出す
・ネガティブ情報は特に最初に出し、一緒に解決する姿勢を見せる
・質問などについてはスピーディーに回答する
・今後の事業計画などは現状を反映したものを作成し、それに則って誠実に交渉する

上記について留意しつつ交渉を進めていくことで、売り手様が今まで育ててきた企業を適切に譲渡することが可能になってくると考えます。

今回は売り手側に焦点を当てた内容でしたが、買い手側についても同様に買える買い手買えない買い手が出てきます。
次回はその点についても触れてみたいと思います。

ご不明な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。

M&A仲介については以下のブログも参考にしてください。

小規模M&A向け表明保証保険「M&A Batonz」についての解説
「M&A仲介への不信感4選」
仲介かFASか
「M&A仲介会社の手数料」上場・非上場会社との比較!
M&Aで会社を譲渡する際に失敗しないための21のポイント!
売り手がM&Aを始める前に確認すべき5つのこと
【年倍法】M&Aの「価格」と「価値」の違いとは
「御社を買いたい人がいるから売ってくれと言われているが本当か」問題
M&A仲介会社の「業界最安値」手数料問題とは
仲介会社が入る意味とは
「M&A仲介と契約を結ぶ前に。テール条項には気をつけろ!」
「中小企業庁から学ぶ! M&A仲介業者の見極め方」
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