公開日:2021年4月1日 /最終更新日:2024年7月24日
帝国データバンクより「新型コロナウィルス関連倒産」の2020年3月分の最新情報が出ましたので、私の肌感覚を交えながら簡単に内容について見てみたいと思います。
新型コロナウイルス関連倒産は 1237 件
https://www.youtube.com/watch?v=ZzgggxCmpBE
法的整理や事業停止された企業について記載されており、民事再生は官報に名前が出てこないので、実数としてはこれ以上に多くの事業者が撤退している可能性があると思います。
また廃業も含まれていないことから、1230件の先にはさらに多くの事業者が影響を受けていると言えるでしょう。
また大型倒産が多いことも印象的です。
2021 年3 月31 日16 時現在、新型コロナウイルスの影響を受けた倒産〈法的整理または事業停止(銀行取引停止は対象外)、負債1000 万円未満および個人事業者を含む〉は全国に1237 件〈法的整理1113件(破産1056 件、会社更生法1件、民事再生法49 件、特別清算7 件)、事業停止124 件〉確認されている
負債総額は4409 億5500 万円で、1 億円未満の小規模倒産が679 件(構成比54.9%)を占めている。一方、負債100 億円以上の大型倒産はエアアジア・ジャパン(株)など4 件(同0.3%)発生
発生月別では2021 年2 月が135 件で最多。以下、2021 年1 月が127 件、2020 年12 月が121 件と続き、2020 年12 月以降急増。2021 年は累計で371 件発生している
業種別では「飲食店」(205 件)が最も多く、建設・工事業(110件)、ホテル・旅館(86 件)、アパレル小売(67 件)が続く。特に飲食店のほか、アパレル業や食品業(それぞれ製造・卸・小売計「食品」=135 件、「アパレル」=131 件)への影響が目立っている
都道府県別では「東京都」(290 件)が最多。以下、「大阪府」(121 件)、「神奈川県」(72 件)、「静岡県」(56 件)、「北海道」(54 件)、「愛知県」(51 件)、「兵庫県」(50 件)と続き、東京と大阪で33.2%を占める
12月以降急増しているのはGOTOの停止や2回目の緊急事態宣言、そしてオリンピックでの外国人観光客受け入れの停止という政治的イベントによって先行きが見通せなくなったという法人が多かったのではないでしょうか。
個別に業種を見ていきましょう。
私の印象としても外食についてはすでに買い手がつかず、外食専門のM&A仲介会社からも買い手探しの相談を受けるような状況ですので、マーケットとしてはかなり厳しく、かつ政府の施策も中途半端なものが多いことから中々将来の展望を見出すことができずあきらめてしまう経営者も多いのではないでしょうか。
同様にホテル・旅館などもそうだと思います。法的整理が最終手段だとして、その前に順に私的整理、M&Aによる大手資本への傘下入りという順で(大手への傘下入りが一番最初に来る)経営者が判断することを考えると、確かにホテルや旅館案件もマーケットに増えており、単純な不動産としての売買も出ています。
アパレルは外出をしなくなったため売れなくなったと言われていますが、これも自粛要請に伴いオフィスに行かなくなったことの影響を受けているのでしょう。
食品卸も外食産業を中心に卸していたところは売り上げが比例して下がっていることから、食品業種全体でみた減少と個別の企業の売上低下は企業ごとに大きく異なり、ほぼ無風である企業から壊滅的な低下に至っている企業まで幅広いという印象です。
都道府県別の件数については経済規模に比例していると言えますが、アウトバウンドで観光客を招いていた静岡(富士山空港を中心にホテルができていた)が神奈川の次に件数が多いところが印象的です。
おそらくホテルなどの装置産業が多いことから、地元経済に与えるインパクトも大きいと思います。
弊社にもコロナによってダメージを被った企業から相談を受けることは多々ありますが、一部の経営者は「コロナが終われば元に戻る」であったり「コロナ後の売り上げ増加を期待して借入れによって設備増産を行う」と言われている方もいらっしゃいます。
今までのマイナス分を取り戻すという意味ではもちろん気持ちは分かりますが、コロナが終わる時期が不分明であることから(最低でもワクチン接種が行き届くタイミングで、かなり早く見積もっても年内)、それまで体力(運転資金)が持つのかどうかということと、仮に運転資金がそれまで持ったとしても増産体制に入った際に、借入れを行えるのかどうか、という問題があるでしょう。
また同様に借入れを行って設備投資を行うという点は、さらにレバレッジをかけることにつながってしまうためリスク量はさらに上がると考えられます。
であれば、会社の存続を前提とするのであれば、大手と資本業務提携を行い、コロナ禍から回復したタイミングで、大手の資本や販売チャネルなどを用いてリカバリーしていく方が比較的安全ですし、リカバリーできる確実性も単独資本で行うより高いのではないかと思います。
優先順位を何にするのか、という問題はありますが、従業員の雇用や役員の継続等、担保できるのであればM&Aによる大手企業との資本業務提携は、会社の存続に大きく寄与すると思います。
どのような可能性があるのかご興味ある方や将来に対する不安がある方は、ご遠慮なく弊社までお問い合わせください。
2020年 2021年 合計
2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 破 産 1 11 56 61 96 94 88 92 94 73 99 106 99 86 1,056 会社更生法 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 民事再生法 0 3 8 5 8 3 0 0 0 3 5 4 5 5 49 特別清算 0 0 0 0 0 0 0 1 2 1 0 2 1 0 7 法的整理 1 14 64 66 104 97 88 93 96 77 104 113 105 91 1,113 事業停止 0 1 8 2 6 7 1 7 4 9 17 14 30 18 124 合計 1 15 72 68 110 104 89 100 100 86 121 127 135 109 1,237
月別・態様別発生件数(銀行取引停止処分は対象外)
負債別件数・構成比
負債額 件数 構成比 100億円以上 4 0.3% 50億円~100億円未満 10 0.8% 10億円~50億円未満 64 5.2% 5億円~10億円未満 80 6.5% 1億円~5億円未満 400 32.3% 1億円未満 679 54.9% 合計 1,237 100.0% 事業停止後に法的整理に移行した場合、法的整理日でカウント
飲食店
0
50
100
150
200
205
250
建設・工事業 110 ホテル・旅館 86 アパレル小売 67 食品卸 62 食品小売 41 アパレル卸 37 食品製造 32 アパレル製造 27 不動産 25 タクシー・バス運行 21 旅行業 17 広 告 16
〈参考〉主な新型コロナウイルス関連倒産(負債額上位)
商 号 負債 (百万円)
事業内容 所在地 日付・態様 (株)ホワイト・ベアーファミリー 27,800 旅行業 大阪市北区 2020年6月30日 民事再生法の適用を申請 エアアジア・ジャパン(株) 21,700 定期航空運送業 愛知県常滑市 2021年2月24日 破産手続き開始決定 WBFホテル&リゾーツ(株) 16,000 リゾートホテル事業 大阪市北区 2020年4月27日 民事再生法の適用を申請 大興製紙(株) 14,008 製紙業 静岡県富士市 2021年1月15日 会社更生法の適用を申請 (株)レナウン 9,360 東証1部のアパレルメーカー 東京都江東区 2020年11月27日 破産手続き開始決定 (株)エターナルアミューズメント 8,418 総合アミューズメント施設運営 東京都千代田区 2020年4月3日 破産手続き開始決定 WBFホールディングス(株) 7,300 グループ会社の事務代行 大阪市北区 2020年6月30日 民事再生法の適用を申請 キャスキッドソンジャパン(株) 6,500 英国「キャスキッドソン」ブランドの雑貨小売
東京都港区 2020年4月22日 破産手続き開始決定 旭東ホールディングス(株) 6,400 グループ持株会社 大阪市旭区 2020年5月8日 民事再生法の適用を申請 旭東電気(株) 6,298 安全ブレーカー、漏電遮断器製造 大阪市旭区 2020年4月28日 民事再生法の適用を申請 (株)枻出版社 5,788 雑誌出版 東京都世田谷区 2021年2月9日 民事再生法の適用を申請 (有)有楽商事 5,544 パチンコホール経営 群馬県沼田市 2020年4月30日 破産手続き開始決定 (株)ロイヤルオークリゾート 5,058 リゾートホテル経営 滋賀県大津市 2020年5月1日 破産手続き開始決定 (株)シティーヒル 4,996 衣料品の企画・製造・小売 大阪市中央区 2020年3月16日 民事再生法の適用を申請 (株)AIKジャパンコーポレーション 4,790 電気製品・厨房機器・什器卸 東京都中央区 2020年8月5日 破産手続き開始決定 (株)イワヰ 4,783 自動車部品用金属プレス加工 名古屋市昭和区 2020年7月31日 民事再生法の適用を申請 リデア(株) 4,600 アパレル小売業者 東京都港区 2020年11月17日 民事再生法の適用を申請 (株)MJG 4,380 接骨院チェーン 東京都新宿区 2020年4月10日 破産手続き開始決定 (株)綜合プランニング 4,060 不動産賃貸 群馬県前橋市 2020年12月25日 破産手続き開始決定 (株)ムツミグローバルフーズネットワーク 4,000 機内食向け食材卸 東京都中央区 2021年2月10日 事業停止 (株)赤玉 3,700 パチンコホール経営 東京都杉並区 2020年5月29日 再生手続き開始決定 (株)フェリーチェ 3,673 ホテル運営 東京都大田区 2021年3月10日 破産手続き開始決定 ホテル一萬里(株) 3,520 ホテル運営 長野県佐久市 2020年5月22日 破産手続き開始決定 桜木管理(株) 3,500 飲食店経営 千葉市若葉区 2021年1月22日 民事再生法の適用を申請 (株)ビスタホテルマネジメント 3,477 「ホテルビスタ」ブランドのホテルチェーン
東京都千代田区 2021年3月11日 民事再生法の適用を申請 (株)美岳カントリークラブ 3,094 ゴルフ場運営 岐阜県御嵩町 2020年11月6日 民事再生法の適用を申請 ※(株)赤玉は2020年4月15日に破産手続き開始決定を受けたのち、民事再生法に切り替え、5月29日に再生手続き開始決定を受けた
※(株)レナウンは2020年5月15日に民事再生法の適用を申請したのち、10月30日に再生手続き廃止決定を受け、11月27日に破産手続き開始決定を受けた
新型コロナウイルス関連倒産について
「新型コロナウイルス関連倒産」とは、原則として新型コロナウイルスが倒産の要因(主因または一要因)となったことを当事者または代理人(弁護士)が認め、法的整理または事業停止(弁護士に事後処理を一任)となったケースを対象としている。個人事業主および負債1000 万円未満の倒産もカウントの対象としているほか、事業停止後に法的整理に移行した場合、法的整理日を発生日としてカウントしている。
なお私的整理などに関する事業再生(企業再生)については以下のコラムも参考にしてください。
企業再生スキームとM&A
債務超過企業と企業再生(準則型私的整理編)
【事業再生】特定調停スキームとは
【事業再生】事業再生ADR制度について
地域経済活性化支援機構(REVICとは)
事業承継時の「経営者保証に関するガイドライン」の特則
「経営者保証に関するガイドライン」とは
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