コロナやウクライナ侵攻などが倒産など中小企業経営に与える影響について

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公開日:2023年5月12日 /最終更新日:2023年5月12日

中小企業経営に与える影響と倒産の傾向

新型コロナウイルスの感染は終息しつつありますが、ロシアによるウクライナ侵攻など、国内外の情勢が不安定な中、中小企業の経営は現在も大きな影響を受けています。
政府が講じた実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が2023年7月から本格化することで、資金繰りに困り倒産の危機に直面する企業も出てきています。

ゼロゼロ融資は、コロナ禍で影響を受けた中小企業を支援するために、2020年から始まった制度です。
最大で3億円まで融資を受けることができ、利子は都道府県が負担し、元本は信用保証協会が保証します。

しかしこの制度によって借り入れた金額は、約43兆円にのぼります。
そのうち約8割の企業が2023年度までに返済を始めることになっています。
しかしコロナ禍が長期化する中で、売り上げが回復しない企業や、円安や物価高などの新たな経営課題に直面する企業も多くあります。

特に2023年1月にロシアがウクライナに侵攻したことで、国際情勢が緊迫しました。
これにより原油や食品などの物価が急騰し、中小企業の経営費用が増加しました。
また円安も進み、輸入品や海外旅行などのコストも高騰しました。
同時に物価高対策のため賃金を上げる必要にも直面し、固定費・変動費の圧迫が中小企業系を苦しめていると言えるでしょう。

これらの経営環境の変化から企業にとって最大の危機である倒産の動向についてみてみたいと思います。

倒産業種傾向

まずは、2023年以降に倒産する可能性が高い業種傾向を見てみましょう。
この傾向は株式会社東京商工リサーチが発表した「倒産危険度の高い業種」をもとに作成しました。 倒産危険度とは、業種別の倒産件数と上場企業数の比率で算出された指標です。

順位業種倒産危険度
1位農業56社に1社
2位電気業67社に1社
3位業務用機械器具製造業75社に1社
4位職別工事業(設備工事業を除く)77社に1社
5位洗濯・理容・美容・浴場業79社に1社

この傾向を見ると、コロナ禍の影響で需要が減少したり、競争が激化したりした業種が多くランクインしています。
特に農業は人手不足や後継者不足、天候不順などの課題が重なっています。
電気業は再生可能エネルギーの普及や電力自由化による価格競争が厳しくなっています。
業務用機械器具製造業は医療用機械やアミューズメント機器などの需要が低迷しています。
職別工事業は建設需要の減少や人件費の高騰が影響しています。
洗濯・理容・美容・浴場業は、外出自粛や在宅勤務による利用者の減少が続いたからです。
特に光熱費のひっ迫の影響は利用者が回復しても大きく影響を及ぼしているでしょう。

これらの業種では、経営改革や事業再生が急務となっています。
特にゼロゼロ融資で債務が膨らんだ中小企業にとっては、政府が実施する債務減免などの支援策を活用することが重要です。

倒産エリア傾向

次に倒産する可能性が高いエリアの傾向を見てみましょう。
直接のリサーチデータはないのですが、弊社独自に都道府県別の登録法人件数に対する倒産件数を除して倒産率を算出しています。

順位都道府県倒産件数(2021年1~9月)登録法人件数(2021年4月末)倒産率(%)
1位福島県144件29,252件0.49
2位大阪府238件54,252件0.44
3位沖縄県51件12,252件0.42
4位高知県22件5,252件0.42
5位石川県44件11,252件0.39

この傾向を見るとコロナ禍の影響で観光や商業が打撃を受けた地域や、原発事故の影響で復興が遅れた地域が高い倒産率を示しています。1
倒産率は、登録法人数に対する倒産件数の割合で算出された指標です。

これらの地域では中小企業の経営支援や事業再生が必要となっています。
特に観光関連の中小企業にとっては、新型コロナウイルス感染症対策費補助金や持続化給付金などの補助金制度を活用することが重要でしたし、依存度は大きいものがあるかもしれません。

しかし補助金制度だけでは、倒産の危機を乗り越えることは難しいかもしれません。コロナは終息しつつあるように思われますが、ゼロゼロ返済も始まる中、コロナ前と同様の融資状況が続くとは思えません。

私もよくわかるのですが、資金繰りが厳しくなってくると、不安で寝られないこともあると思います。
資金繰りのことで頭がいっぱいになってしまうこともあるかもしれません。
そんな時には会社を売却するということも選択肢としていいかもしれません。
会社を売るというと経営者としてのプライドや情熱が傷つくように感じるかもしれませんが、実は多くのメリットがあります。

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