コロナ危機後を見据えた「中小企業の私的整理ガイドライン」改定について(推測)

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公開日:2021年9月8日 /最終更新日:2024年7月24日

前回のコラム「9/4週刊ダイヤモンド『廃業急増のウラ 倒産危険度ランキング』」を記載するにあたり、コロナ危機後の成長戦略について政府の各種分科会や成長戦略会議の資料を確認しました。
その内容について記載するほか、今後政府方針や中小企業の私的整理に関するガイドラインがどのように改定されていくかという点について推測を交えながら備忘録的に記載しておきます。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/seichosenryakukaigi/dai10/gijiyousi.pdf

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/seichosenryakukaigi/dai11/siryou1-1.pdf

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/seichosenryakukaigi/dai13/siryou1.pdf

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210316_01.html

上記を読むと、政府としては成長戦略として、国が投資できる産業分野の選択・設定という前向きな対策の検討の他、コロナ危機で傷んだ企業の対策をどうするか、という事を慎重に検討していると考えられます。
菅総理の退陣によって動きはあるものの、経済産業省を中心として取りまとめをしており、内閣官房にあげているので、今の総裁選のメンバーを見ても大きくは変わらないだろうという前提です。

まず大企業や空港、航空産業と言った金融機関の経営の健全性を与える影響の規模やインフラといった重要な部分について、資本性の資金を入れることを想定しているようです。
資本性の資金とは、通常の融資とは異なり、一定期間低利で返済義務がなかったり(あるいは少ない)、エクイティに転換できるような資金を検討していると思われます。
たしかに大きくダメージを受けた上記産業で大規模な資金を入れても返済すると資金繰りに影響を与えてしまうでしょうし、資本性資金の注入は過去に金融危機の際、竹中金融担当大臣が銀行にやって一定の成果を
上げた実績がありますから(それに至るまで、長い紆余曲折がありましたが)、ある意味やりやすいのかもしれません。

他方、中小企業についての動きは私的整理をやりやすくする方向に舵を切っており、その中でも大きく2つの動きが出ているように思います。

まずはADRといった私的整理を行う機関の利用をしやすくすること。
具体的には今までは債権者の全会一致が必要でしたが、社債などのように過半数、あるいは三分の二以上の債権者の同意があればいい、というように形式的な要件を下げること。
これにより誰か一人が反対して、裁判所で法的整理を行わざるを得ない、というようなケースを避けることがしやすくなります。
法的整理に比べて私的整理は営業を継続できることから取引先に迷惑をかけないこと、また官報などにも乗らないことから信用棄損が少ないと言われていますので、ポジティブな変化でしょう。

もう一点は個人保証を外すことです。
これは起業促進や破産や廃業による新陳代謝を行う際に個人保証が邪魔になっていて進まないという事を危惧しているからのようです。
金融機関の言い分は「中小企業の場合、個人商店になることが多いのでガバナンスを保つために個人保証を付ける」と考えているようですが、個人的にはこれは本末転倒で、金融機関の融資評価能力が低いことを個人保証を付けることで担保しているのでは?と思います。
ガバナンスが効かないことで倒産する会社があるのであれば、コベナンツ条項を設定して期限の利益の放棄とするのか、あるいは代表者を詐害行為で訴えればいい話なので、事前に個人保証を付けるというのは本末転倒でしょう。

商工リサーチの調査によると、現在、債務が過大だと考えている中小企業は中小企業の三分の一を上回っているようですが、上記の2点はそのような中小企業がコロナ危機後どのように経営を進めていくかを考えるにあたってかなり大きな要素になってくると思います。
債務が過大な企業はガイドラインの改定を横目でにらみながら会社経営の判断をしていく必要があるでしょう。

なお私的整理などに関する事業再生(企業再生)については以下のコラムも参考にしてください。

企業再生スキームとM&A
債務超過企業と企業再生(準則型私的整理編)
【事業再生】特定調停スキームとは
【事業再生】事業再生ADR制度について
地域経済活性化支援機構(REVICとは)
事業承継時の「経営者保証に関するガイドライン」の特則
「経営者保証に関するガイドライン」とは

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