持ち株会社についての一考察

Pocket

公開日:2020年10月1日 /最終更新日:2024年7月24日

M&Aのお手伝いをしていると、ある程度の規模から持ち株会社(ホールディングス会社)の設立を考えられる方が多いです。
やはり会社を買っていくことで、組織をどのように扱うのか、引き継いだ会社の債務などを引き継ぎやすくする、同一業種内でブランドを併存させるなど色々考えて持ち株会社を設立しようと思うようになったのかなと思います。

確かに持ち株会社化をすると、上記の他に

1.経営と事業の分離
2.資本政策がとりやすい
3.リスク分散
4.責任の所在の明確化
5.人事制度などをカスタマイズ
6.買収はもとより売却もスムースに

など色々とメリットがあると思います。
例えば、1についてはグループ全体で傘下の事業体を見て経営し、子会社の事業を監督することができます。2については増資をした場合、持ち株会社全体で増資を行うのか、子会社単体で増資を行うのか、という意思決定を行うことができます。

これは増資をする側も、有望な事業体には増資は考えられるが、全体に対しては出資をしたくないというケースにも対応可能であるため、個々の事業ごとに判断を行うことができるようになるでしょう。
3や4に関連しますが一つの法人で複数の事業(仮にA,B,Cとします)を行った場合、Aという事業で賠償責任が発生した場合、他のBやCといった事業の利益を毀損しますし、代表取締役は執行に携わっていなくても当然に経営者責任が発生してしまいます。

ただし子会社での事業であれば、子会社の範囲内にとどまりますし、そこの役員を兼ねていなければ持ち株会社の代表まで法的な責任は及ばないでしょう(道義的な責任はいわれると思いますが)。
他のグループ会社に対しても同様です。

仮に同一法人の中でAという事業の失敗でBやCといった事業で利益を上げていても、全体の利益は減ることから賞与などもBやCの事業に携わった従業員も下げざるを得ないかもしれません。
ただしこれが独立した子会社であれば、子会社内の判断で賞与や役員報酬などを決められますし、5にも関連しますが、多様な業種が増えてきたら、それぞれの事業にフィットする社内規則や労務管理を行うことができるようになると思います。

また子会社が増えてきた場合、会社を売る、という事も同一法人内から切り出すよりもやりやすくなるでしょう。

同一法人内から切り出す場合、事業譲渡か会社分割を行う必要がありますが、手続きや税制(後者であれば適格かどうか)の問題などが出てきて煩雑になることから、売るという選択肢がある前提であれば、やはり持ち株会社の下にぶら下げたほうがいいでしょう。

デメリットは子会社ごとに登記費用や、ランニングコストとして最低でも法人住民税や士業への費用などが掛かることだと思いますが、上記のメリットとコスト(初年度100万円くらいでしょうか)とを比較してコストを取るのか、リスク回避を含めたメリットを取るのかという経営判断になると考えます。

<免責事項:上記は私見であるため、実際に行う場合については専門家へのご相談を推奨いたします>

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

過去ブログ抜粋

  1. 2社のその後に学ぶ「M&Aを決断する」ということ

  2. 経営者の世代によってM&Aに対するイメージが異なるのは転職と似てる?

  3. 政府が中小企業M&A支援を行う背景

  4. 事業再生のための「第二会社方式」とは

  5. 医療法人の法務・税務・事業承継について

  6. 種類株式について(資本政策を考えるにあたり)