【売り手様向け】買収監査(DD)とは

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公開日:2020年10月14日 /最終更新日:2024年7月24日

【目次】
1.買収監査とは
2.そもそも買収監査はなぜ行うのか
3.大量の資料を要求されたりするが、本当にM&Aをするつもりがあるのか
4.買収監査で金額を下げる会社もあるのか
5.【最後に】買収監査は本来、何のために行うのか

1.買収監査とは
M&Aのお話が進んでいく中で、買い手と売り手の力関係が逆転するタイミングが買収監査(デュー・デリジェンス、DDとも呼ばれます)と言われています。
買収監査までは、売り手が買い手を選び、複数の買い手から意向表明が出されたらその中から選ぶことができる立ち位置です。
ただしいざ、買収監査が始まると買い手がどういう買収監査を行うかによっても変わってきますが、本格的な買収監査の場合では大量の資料の提出とともに、数十にも及ぶ財務・法務の質問事項を依頼を受けたり、そのうえで複数の弁護士や公認会計士からインタビューを受けるため弁護士事務所で終日拘束されたりなど、それまで受ける対応とだいぶ異なる扱いを受け、場合によっては感情的になってしまうこともあります。
買収監査について一般的に説明を行っているサイトは多いので、ここでは実務的な面から買収監査について売り手様向けに説明していきたいと思います。

2.そもそも買収監査はなぜ行うのか
一般的には「買い手が買収を行うための最終価格を決めるため」とされており、これはおおむね間違っていないと思います。

ただし単に価格を決めるだけ、というのは組織論を踏まえると一面的であるとも思います。

譲受企業(以下、買い手)が株式会社の場合、基本的には取締役会で決定し、買収を行います。
仮にM&Aで瑕疵があった場合、株主に対して説明責任が発生してきますし、場合によっては役員賠償へ発展する可能性もあります。
つまり適切に買収監査を行ったか否か、は取締役会が株主に対して、善管注意義務を果たしていることのアリバイであるとも言えるでしょう。

3.大量の資料を要求されたりするが、本当にM&Aをするつもりがあるのか
冒頭申し上げたように、大量の資料や大量の質問、終日拘束されてのインタビューなど、まるで疑われているようで本当に嫌ですよね・・・。
我々も仲介として売り手様の隣席で一緒にインタビューを受けますが、本当にお気持ちはよくわかります。
ただしこれはやりたくないから、ではなくむしろ逆です。

どのような買収監査を行うのか、というのは買い手企業の判断になりますが、費用負担ももちろん買い手が行います。
買い手が依頼した弁護士事務所(および会計士)は彼らの責任と受けた予算の範囲において誠実に仕事を行います。
つまり大規模に人が動くという事はそれだけ買い手の費用負担が多く、むしろM&Aをやりたいという意思の表れと考えられます。

またここまで大きく費用をかけているため、買い手担当者としてもM&Aが進まないと社内での立場がなくなりますし、取締役会のメンバーも
レポートラインでM&Aの報告は受けているでしょうから、組織として進めたいという意思はもちろんあります。

ただし、ここで問題となるのが先ほどの1でお伝えした株主に対しての責任と、もう一つ、社外取締役の存在があります。
社外取締役は文字通り社外の人間が株主のために監督するという意味で、社内に常駐している取締役よりも独立性が高いです。
また弁護士や公認会計士などが選ばれていることや、取締役会に参加する以上、何かしらの発言をしなければならないという動機から、M&Aの
ような、企業としての意思決定が強く行われることについては口を出したくなる・・・と内部の方は言われておりました。

さてここでもう一度M&A担当者の立場になってみましょう。
M&Aを行いたい、という点では売り手様と気持ちは同じになります。ここでこじれて破談にさせたくはないのです。
逆にいうとここで「買ってやる」という気持ちが少しでも出てしますと破談になる傾向が強いと感じています。
個人的に、私がM&Aの仲介を行った企業でM&Aが成立した企業は一部上場企業で、かつ小規模案件に対しても非常に丁寧な対応であったと思います。

4.買収監査で金額を下げる会社もあるのか
先ほどお話した通り、大規模な買収監査を行い、破談のリスクを冒してまで金額を下げようという企業は通常ありませんが、金額を下げる目的で行う企業はまれにあります。
ただしそれは少数派で、金額が下がる要因としては会計基準に対する考え方の違いに起因することが多いと思います。
例えば、税務申告では従業員の退職金を引き当てる必要はないのでバランスシートには計上していない中小企業がほとんどだと思います。これは税務会計が特段、引当てを
求めていない(引き当てても損金算入できない)ので当たり前と言えば当たり前です。

ただしこれが上場企業が一般的に用いる財務会計になってくると話は違います。
財務会計基準は株主などに対して説明を行うため、保守的に見積もる必要があります。つまり、将来的な支出となる退職金は引き当てないといけません。
上場企業の買い手側からするとM&A後に引当てを行わないといけないため、売り手が思っている資産から引き当て分を控除して価値を再計算することもあります。

この会計基準の違いが齟齬を生むことになり、この辺を仲介が分って事前に説明できないと「下げるために買収監査を行った」と言われてしまい、破談する要因にもつながりかねません。

5.【最後に】買収監査は本来、何のために行うのか
買収監査は性質上、価格を決定することにフォーカスが当てられがちです。
これは買収監査で発見された瑕疵に対して、特別保証で問題が顕在化したときにペナルティを科すよりも、事前に金額で調整しましょう等の交渉が行われることが多いからです。

ただ本当に買収監査で見るべきは価格だけなのでしょうか。
とあるファンドの方は「統合後に向けた地図の共同制作」とおっしゃっていました。
買収監査を行う過程で色々な問題やビジネスプロセス、あるいはシナジー効果が見えてくると思いますが、それらを事前に整理し、統合後から何をすべきか、
という事を事前にすり合わせるという意味だと私は理解しています。

また不要に資料を出さなかったり、誤った説明を行ってしまうと、せっかく前に進めたいと思っている担当者の気持ちをないがしろにしてしまいますし、
担当者が不信感を感じてしまうとM&Aはうまくいかないでしょう。
であれば、当初より資料を開示して説明を行うことにより、不安定要因は減るでしょうし、実績のある仲介会社が入ることにより先ほどのような会計基準の説明などを事前に行うことで、
売り手様が買い手に対する不信を覚えることを事前に減らすこともできると思います。

売り手様も継続して譲渡企業に残ってもらうことはよくありますし、そうでなくともせっかく譲渡したのであれば、やはり発展してもらいたいという気持ちは強くあると思います。
であるからこそ、買収監査時に何をどう改善していくか、という事を改めて買い手売り手双方で検討できる機会であると思いますし、弊社もそのお手伝いを仲介として行いたいと考えております。

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