【TDB】2024年 5月報 倒産件数、12年ぶりの1000件超

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公開日:2024年6月10日 /最終更新日:2024年7月24日

2024年5月期倒産 リーマンショック以来の増加件数に!

帝国データバンクから2024年5月期の倒産状況についてのリリースが出ました。
GWがありながら1000件の大台に達したのは意外ではないものの少し驚きましたので、中身について見ていきたいと思います。

概況・主要ポイント
■倒産件数は1016件(前年同月694件、46.4%増)と、25カ月連続で前年同月を上回った。2012年5月(1013件)以来、12年ぶりに1000件を超えた。前年同月より322件多く、増加数はリーマン・ショック直後の2008年9月(337件増)に次ぐ2番目の多さだった
■負債総額は1260億9700万円(前年同月2797億4000万円、54.9%減)と、3カ月連続で前年同月を下回った。負債トップは、児童教育などを行っていた(株)コペルの69億円
■業種別にみると、全7業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月159件→244件、53.5%増)が2009年6月(242件)を超え、2000年以降で最多。『運輸・通信業』では「道路貨物運送」(同13件→45件)が3倍超、2000年以降で過去最多となった
■主因別にみると、『不況型倒産』の合計は843件で、25カ月連続で前年同月を上回り、増加期間は2000年以降で最長となった
■態様別にみると、「破産」は957件発生し、約11年ぶりの900件超えとなった
■規模別にみると、負債「5000万円未満」(624件)が最多。資本金「個人+1000万円未満」(722件)は、全体の約7割を占めた
■業歴別にみると、『新興企業』が315件で、2000年以降で最多を更新
■地域別にみると、全9地域で前年同月を上回った。『九州』(前年同月57件→99件、73.7%増)で、5月としては2000年以降で最多となった

通年ベースで見ても倒産件数は増加トレンドにありますが、前年より40%超の倒産件数となっており、リーマンショック直後以来の増加件数とのこと。
負債額の平均は1億円超ですが、リンク先レポートにあるように5000万円~5億円の負債が33%程度とのことなので、構成比としては小規模な倒産が多かったといえるのではないでしょうか。
また今回、全体の倒産トレンド(46.4%増)を上回っている要素を個別で見に行くと

・業種

サービス業と小売業、運送業などで全国平均を上回る倒産率。

・倒産理由

販売不振などの倒産理由49.9%でトレンドよりやや高い程度だが、売掛金回収困難や設備投資の失敗、経営者の病気・死亡の増加率がトレンドより大きいものがあります。
病気や死亡は突発的なので仕方ないといえますが(とはいえこの傾向が続くなら高齢化が進み事業承継が上手くいっていないとも考えられます)、設備投資の失敗については後程述べるように、コロナ期の事業再構築補助金などで業態転換しようとしたが、失敗してしまった企業もある可能性があります。
この点については引き続き傾向を中止することが必要でしょう。

・業歴

業歴が4~5年、10~30年の企業がトレンドを超えて倒産しています。
前者についてはコロナ直前に設立した会社が乗り切れずに倒産したと思われますが、後者については以前からコラムでも記載していたように、もともと経営に問題がある企業がコロナを契機に資金繰りなどがさらに悪化し、この時期になったと考えるのが順当かもしれません。

・エリア

北海道、関東、北陸、四国を除くエリアでトレンドを超える倒産が増えているようです。
特に順に九州、中国、東北で優位に増加しており、地方から倒産が増えていることを伺わせます(北陸は能登地震の支援が入っているのかもしれません)。

・ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産

倒産のトレンドと同程度なので特に顕著に増加しているということではないですが、件数自体は78件と過去2番目の水準とのことです。
倒産予備軍がどの程度あるのかフェルミ推定的に判断してみたいと思いますが、帝国データバンク2月のアンケートから見ていきたいと思います。

まずゼロゼロ(コロナ)融資について「返済に不安」と考えている企業が13%です。
ゼロゼロ(コロナ)融資を現在借りている企業は41.9%なので、このうちの13%が不安であると考えていいでしょう。
返済状況のグラフからも未返済・3割未満の返済企業は50%程度なので、借りている企業のうち13%をボトムとして50%程度までは予備軍として見れるのではないでしょうか。
そう考えると、5.4%から20.9%の範囲でゼロゼロ(コロナ)融資の返済に影響があると推測できます。
この割合をコロナ融資を受けた件数102万件に適用すると、5万社~20万社程度が返済が難しい予備軍とみられるかもしれません。
もちろんこの件数は重複して借りている企業は複数カウントされているのでこれよりも低くなると思いますが、頭の体操として念頭に置いておいてもいいかもしれません。

もしこのコラムを読まれている方が過剰債務や資本の不足に悩まれる経営者でしたら、事業再生もしくはM&Aによる生き残りも検討されてはいかがでしょうか。
弊社ではその双方とも対応しておりますので、お悩みの経営者は是非お気軽にご相談ください。

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