DDで騙されるな!デューデリジェンスで不当な減額を防ぐ方法|仲介の利益相反と中小企業庁の警告

M&Aのデューデリジェンス(DD)で「不当な減額」を防ぐ方法|仲介会社の利益相反と中小企業庁の警告

公開日:2025年8月 最終更新日:2026年1月20日

著者:五十嵐悠一(日本財務戦略センター代表、M&Aアドバイザー)

中小企業M&A支援実績50件以上。
中小企業庁登録M&A支援機関及び一般社団法人M&A支援機関協会(特定事業者リスト参加社)として、第三者視点の財務戦略を専門に支援しています。

 

DDの闇 – 「中立調査」の建前が崩れる瞬間

大切に育てた会社を売却しようとし、基本合意を締結した後(省略される場合もありますが)、買い手や仲介担当者にDD(デューデリジェンス)を行いましょうと提案されます。
「健康診断」と優しい比喩をされることもありますが、買い手は金額を最終決定するために何か問題がないかを判断する重要な場です。
経験がある、もしくはいわゆる「やり手」といわれるような買い手は「値切りの口実」を探すための手段として考えているかもしれません。
またこれまで信じて二人三脚でやってきた仲介担当者が成約(手数料)優先で突然「買い手の代弁者」に豹変するケースが往々にしてあります。
「DDで疲弊して破談」「精神的苦痛が耐え難い」といった悲痛な話はよくあります。こうした恐怖を避けるため、本記事ではDDの闇を正直に暴き、表明保証違反のリスクを最小限に抑える実践的な方法を解説いたします。

DDの基本:目的と種類を正しく理解する(中小企業オーナー必見の詳細版)

デューデリジェンス(DD)とは、M&Aの買い手側が対象会社の実態を徹底的に調査するプロセスです。

表面的な目的は「会社の真の価値を把握し、適正な売買価格を決める」ことですが、現場の実態では「隠れたリスクや減額材料を探し出すためのツール」として機能することが非常に多いです。特に中小企業の場合、決算書がきれいに整っていないケースが多く、買い手はこれを「値下げの絶好のチャンス」と見なします。

M&A全体の流れの中では、通常以下の3のタイミングでDDが入ります:

  1. 基本合意(LOI:Letter of Intent)締結
  2. 売り手が買い手に独占交渉権を付与(Exclusive Negotiation Period)
  3. DD実施(標準で1〜2ヶ月、急ぎの案件では2〜4週間と短縮されがち)
  4. DDを経て買い手が条件を提示し、応諾すれば最終契約(DA:Definitive Agreement)締結

駆け込みM&A(例:売り手が運転資金が不足していて焦っていたり、2025年のミニマムタックスのような時限設定がある場合の駆け込み)ではDD期間が短くなり、調査が不十分になることで、後々の表明保証違反トラブルが増えています。売り手側は「早く終わらせたい」と思いがちですが、ここで品質を落とすと、基本的に2年以内に表明補償義務違反として高額な賠償請求のリスクを抱えることになります(後述します)。

DDの主な5種類と中小企業で特に注意すべきチェックポイント

以下に、代表的な5種類のDDをまとめました。中小企業の場合、財務DDと税務DDが特に重要で、全体の8割以上の減額材料がここから出てきます。

  • ✔ 財務DD(Financial Due Diligence)
    最もボリュームが多く、買い手の会計士が一番時間をかける部分。
    主なチェック項目

    • 決算書の正確性
    • 簿外債務(未払い残業代・退職金・リース債務)の有無
    • 売上・利益の水増し/過少計上
    • 運転資本の適正性
    • 在庫評価の妥当性
    • 固定資産の実態評価

    中小企業特有のリスク:オーナー経費の混在、家族従業員の給与未払い、粉飾決算の疑い、実態と帳簿の乖離(例:棚卸資産の実在確認不足)
    減額につながりやすい:潜在債務が数千万円規模で発覚すると、一律減額を迫られる。ただ金額で調整できるのなら正直に伝えた方が後々のトラブルが少なくなる部分でもあります。

  • ✔ 法務DD(Legal Due Diligence)
    契約書・訴訟リスクを中心に確認。
    主なチェック項目

    • 主要契約(顧客・仕入先・賃貸借)の内容
    • 競業避止義務
    • 知的財産権(商標・特許)の帰属
    • 労働契約・就業規則の適法性
    • 過去の訴訟・クレーム履歴

    中小企業特有のリスク:口頭契約の多さ、株主間合意書の不存在、反社チェックの不備
    減額につながりやすい:重要な顧客契約に解除条項がある場合、買い手が「事業継続リスク」と主張。後は損害賠償などが発生していた場合、知っていたか知らなかったかで大きな影響が変わってくる可能性があります(損害賠償は上限がないため)。

 

  • ✔ 事業DD(Business Due Diligence / Commercial DD)
    将来の収益性・競争力を評価。
    主なチェック項目

    • 市場規模・シェア
    • 顧客集中度(上位顧客依存)
    • 競合分析
    • 成長ドライバー
    • 事業計画の現実性

売り手がDDで身を守るには?|買い手と、買い手と癒着しているM&A仲介担当者からの防衛

M&A仲介において、売り手が最も警戒すべきは「買い手」だけではありません。先ほど申し上げたように本来味方であるはずの「仲介会社との利益相反」もDD(デューデリジェンス)での不当な減額を招く最大の要因となっています。
その証拠として中小企業庁も仲介会社がDDにおいて利益相反を行わないよう、わざわざ中小M&Aガイドライン第3版に明記を行っているからです(以下はその抜粋)。

 

1.改訂の趣旨

不適切な譲り受け側の存在や経営者保証に関するトラブル、M&A専門業者が実施する過剰な営業・広告等の課題に対応し、中小M&A市場における健全な環境整備と支援機関における支援の質の向上を図る観点から、中小M&Aガイドライン(第3版)において、中小企業向けのガイダンス及び仲介者・FA向けの留意事項等を拡充しました。

(略)

(3)利益相反に係る禁止事項の具体化

仲介者向けに、追加手数料を支払う者やリピーターへの優遇(当事者のニーズに反したマッチングの優先実施、譲渡額の誘導等)を禁止し、情報の扱いに係る禁止事項を明確化しました。

加えて、これらの禁止事項について、仲介契約書に仲介者の義務として定める旨を明記しました。

(後略)

1. なぜ「味方」のはずの仲介から身を守る必要があるのか

弊社も含め多くの仲介会社は、売り手と買い手の両方から手数料を受け取る「両手取引」を行っています。
この構造には、以下のリスクが潜んでいます。

  • 「成約優先」のバイアス: 仲介会社にとっての報酬は「成約」時に発生します。「高く売る」ことよりも「確実に成約させる」ことを優先し、DDで出た些細な問題を理由に、オーナーに減額を飲むよう説得し始めるケースが散見されます。

  • リピーター買い手への忖度: 何度も買収を行うファンドや大企業は仲介会社にとって「上客」です。一生に一度の売り手オーナーよりも、次も案件を振ってくれる買い手に恩を売るほうが、彼らのビジネスには得なのです。

2. 中小企業庁の「ガイドライン」は、あなたを守るための「ルール」

こうした実態を受け、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、仲介業者の利益相反について、単なる努力目標ではなく「明確な禁止事項」として具体化しました。

国がわざわざルールを厳格化したのは、それだけ「仲介会社にハメられ、数千万円を損するオーナー」が後を絶たないからです。以下の行為は、ガイドラインで明確に「アウト」とされています。

  • 追加報酬による便宜供与: 買い手から裏で追加手数料をもらい、不当に低い価格へ誘導すること。

  • 情報の秘匿: 片方にだけ有利な情報を伝え、もう一方には隠すこと。

  • 不適切な価格誘導: 合理的な根拠なく「DDの結果だから」と減額を強要すること。

現場のドロドロした利益相反の正体 – リピーター買い手に媚びる構造

仲介会社にとって、複数回買収する買い手(ファンドなど)は上客。一方、オーナーは一生に一度の売り手。どちらに媚びるか? 答えは明らかです。

なお弊社では当社ではDDを買い手から依頼されても仲介会社のため実施したことはありません(逆に何かあっても責任が取れるわけでもないですし)。提携先などの専門職を紹介することはあっても、当事者の了解のもと弁護士法など業法に則って対応しているため、何もやましいことはありませんが、ある仲介会社については特定の顧問先を紹介して、仲介会社にとって都合のいい結果を出すような話は側聞したことはあります。
余談になりましたが、弊社は利益相反を徹底回避し、そしてDDが売り手にとって心理的にプレッシャーがかかる場であることを承知しておりますので、双方に情報を公平に伝えつつ、気持ちは常に売り手に寄り添います。上場企業の現場では弁護士がずらり並ぶ中、売り手の隣に座るのは仲介の役割です。その時、自分の味方だと思っていた仲介が買い手の肩を持ち始めたら愕然としますよね?
当職は売り手買い手双方の感情的破談を防ぐ調整こそ、仲介本来の仕事だと考えています。

頻発する理不尽な減額事例と対抗策 – 表明保証違反を防ぐ

DDで逆に売り手から出た懸念点を仲介が「これくらいなら大丈夫」と買い手に伝えず握りつぶし、無理やり契約させるケースも側聞します。その結果、数年内(契約書上は2年内が多い)に買い手から損害賠償請求(表明保証違反)が来るのはオーナーになるでしょう。もちろん仲介は手数料を持って逃げた後で、言った言わないの話になるでしょう。

重要な懸念事項については仲介に伝えた記録を残すと同時に、面談の場で買い手側に改めて伝えた方がいいでしょう。正直こそ身を助けることになるからです。

セカンドオピニオンで解決 – 味方を変える勇気が手残りを守る

DD中にもし買い手や仲介に違和感を感じたら即行動したほうがいいかもしれません。
顧問士業がいる場合はそちらに相談して、今行われている流れが正しいのか確認してみるのも一つの手段でしょう。もし心当たりなければ信頼できる専門家を紹介することも可能です。DDの期限はあると思いますが、焦って進めてしまって損をするのは売り手です。
売り急がず、プロを味方につけましょう。
もしいきなり専門家に相談されるのが難しいようなら弊社でセカンドオピニオンも承れます。

結論

DDは買い手や仲介に言われるがまま資料を出す受け身の検査の場ではありません。
あなたが会社の価値をアピールする最後の戦場です。反対に、相手はもしかしたら減額をして安く買おうと思っている人かもしれません。そしてその際にどう仲介の担当者が動くかであなたの会社の価値が左右されてくるでしょう。
利益相反が起きる構造を知り、中小企業庁ガイドラインを活かして、納得して気持ちよく売却しましょう。迷ったら弊社の無料相談を。あなたの未来を守る一歩に。


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免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別具体的なアドバイスではありません。DDは専門家に相談の上、自己責任で進めていただきますようお願いします。
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