公開日:2024年1月15日 /最終更新日:2024年7月24日
中小企業事業再編投資損失準備金制度とは
現在、経済産業省や中小企業庁が中小企業M&Aの促進を行っておりますが、中小企業がM&Aにより他の中小企業の株式を取得した場合、その取得価額の一定割合を損金に算入できるという税制が策定されました。
このコラムでは、この制度の概要とメリット、活用方法について解説します。
制度の概要
中小企業事業再編投資損失準備金制度を利用するには、以下の条件を満たす必要があります2。
- M&Aの対象となる中小企業は、中小企業等経営強化法の中小企業者等であって、租税特別措置法の中小企業者に該当するものでなければならない。
- M&Aの実施者は、青色申告書を提出する中小企業者でなければならない。
- M&Aの実施者は、令和6年3月31日までに、経済産業大臣に対して、M&Aによりどのように経営力を高めるかについての説明や実施するデューデリジェンスの内容などを記載した「経営力向上計画(事業承継等事前調査に関する事項が記載された)」の認定を受けなければならない。
- M&Aの実施者は、認定を受けた計画に基づいて、他の中小企業の株式を購入により取得しなければならない。取得価額は10億円以下でなければならない。
- M&Aの実施者は、株式の取得後、その株式の帳簿価額を減額しないこと。また、取得した株式を有し続けること。
これらの条件を満たした場合、M&Aの実施者は、その事業年度において、株式の取得価額の最大100%(令和5年度までは70%)を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てることができます。積立率については2回目のM&Aは90%、3回目以降は100%と変動します。準備金積立の据置期間を長期化(10年間)したうえで、租特の適用期間を3年間延長される予定です。
制度のメリット
中小企業事業再編投資損失準備金制度のメリットは、主に以下の2点です。
- M&Aによる株式取得の際に発生する費用(手数料やコンサルティング料など)を含めた取得価額の最大100%を損金に算入できるため、M&Aの財務的な負担を軽減できる。
- M&Aにより取得した株式に関して、簿外債務や偶発債務などのリスクに備えるための準備金を積み立てることができるため、M&Aの安全性を高めることができる。
制度の活用方法
中小企業事業再編投資損失準備金制度を活用するには、以下のような手順を踏む必要があります。
- M&Aの相手方が決まったら、主務大臣に対して「経営力向上計画」を申請する。申請時には、M&Aの目的や効果、実施するデューデリジェンスの内容などを記載した「事業承継等事前調査チェックシート」を添付する。
- 認定を受けたら、計画に基づいてM&Aを実施する。M&Aを実施したら、主務大臣に対してM&Aの実施報告と確認書の交付を受ける。
- 税務申告の際に、株式の取得価額の最大100%を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てる。積み立てた金額は、その事業年度の所得から控除する。申告書には、認定申請書、認定書、確認書の写しを添付する。
まとめ
中小企業事業再編投資損失準備金制度は、中小企業のM&Aを促進するための税制です。
この制度を利用することで、M&Aの財務的な負担を軽減し、M&Aの安全性を高めることができます。
M&Aを検討している中小企業は、この制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
ご不明な点があればお気軽にお問い合わせください。
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