M&Aを行ったときには気を付けよう、グループ法人税制!

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公開日:2021年12月7日 /最終更新日:2024年7月24日

法人がM&Aを行い、100%株式取得すると適用されることになるグループ法人税制とは?

2020年の税制改正に伴い、それまで行われていた連結納税制度の廃止が決まり、2022年4月1日開始事業年度からグループ通算制度が適用されます。
これとは別にグループ法人税制という完全支配関係のある企業グループに適用されるグループ法人税制というものがあります。
中小企業のM&Aでは100%子会社化を行うことが多いですが、M&Aを行っていくにあたり、グループ法人税制を理解することが必要でしょう。
なお税制度は複雑かつ変更も行われるため、適用をご検討されている方は専門家にご相談下さい。

今回はグループ法人税制について概観について触れてみましょう。
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/houjin/pdf/30/12.pdf
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/pdf/h22groupzeisei.pdf

グループ法人税制適用対象の法人とは

グループ法人税制は100%グループ内の内国法人間取引を適用対象としています(個人や外国法人は適用対象外)。
100%グループ内の各法人を一つのグループと見なし、グループ内の法人取引には課税が生じないように考慮された法人税に関する制度であり、今までは連結納税制度がその役割を果たしていましたが、修正や是正などの対応が煩雑という要望が出ている事でグループ法人税制へと移行することになりました。
グループ法人税制が適用されるのは親子会社間取引だけではなく、個人が100%株式を所有しているA社、B社(A社とB社との間には株式の持ち合いはなし)のような兄弟会社もグループ法人税制の適用対象となります。

グループ法人税制の特徴

グループ法人税制の特徴として、
①強制適用である(連結納税制度やグループ通算制度は選択適用)
②グループ内所得通産を行わない(連結納税制度やグループ通算制度は通算を行う)
③各法人が申告納付(連結制度は親法人が一括で申告納付)

という特徴の他、細かい違いがありますが、強制適用であるというところは念頭に置いておいた方がよろしいと思います。

グループ法人税制の具体的な制度

グループ法人税制の具体的な制度一覧は以下の通りです。
①100%グループ内での土地等の譲渡損益をいったん繰り延べる
②100%グループ内で寄付を行うと課税が生じない
③100%子会社を清算した場合の株式償却損は損金算入不可だが繰越欠損金は引き継げる
④100%グループ内で株式をその発行法人へ譲渡した場合は株式譲渡損益は発生しない
⑤100%グループ内の法人からの受取配当は全額が非課税(完全子法人株式等に該当)
⑥100%グループ内で現物分配をすれば無税で資産を動かせる
⑦資本金5億円以上の法人の100%グループ内では中小企業優遇措置が適用不可

では、それぞれの特徴について見ていきたいと思います。

譲渡損益をいったん繰り延べる制度

100%グループ内の内国法人間で土地など「一定の資産」を譲渡した場合、会計上の譲渡損益をいったん繰延べし、取得した法人がグループ内外問わず再譲渡したり、100%支配関係が解消されたときに繰り延べられた譲渡損益が実現税務上実現されます。
なおここでいうとは税務上の簿価が1000万円以上の固定資産、土地、有価証券、金融債権、譲渡損益調整資産ですが、一般的に想定されるケースは不動産となるのではないでしょうか。
子会社を売却する場合、支配権が喪失するため、親会社や子会社の間で土地の譲渡を行い課税の繰り延べを行っていた場合、M&Aをトリガーにして譲渡損益が実現してしまいます。
子会社に資産を移している場合などは注意した対応が必要です。

グループ内で寄付を行うと課税が生じない

100%グループ内の内国法人間で寄附行為を行った場合に寄附を行った側では損金不算入、寄附を受けた側では益金不算入とし、課税を生じさせないグループ法人税制の一つです。
ただし個人株主が保有している内国法人間取引は適用対象外になります。
また親会社への寄附は配当扱いと見なされてしまう可能性があります。
M&Aの場合、債務超過子会社案件の譲渡の際に親会社が寄附を行う(貸付金を放棄する)ことにより債務超過を圧縮するなどの利用が考えられます。
またその際、親会社は寄附分の譲渡益が減額するので、課税対象額を圧縮できます。

子会社を清算した場合の繰越欠損金の引き継ぎ

100%子会社を清算する場合、子会社株式簿価を損金算入できない代わりに子会社の繰越欠損金を引き継げます。
5年超支配関係があれば繰越欠損金の全額を引き継げますが、5年以内の場合は支配関係が生じる前の期の欠損金や生じた期以降の不動産などの特定資産の譲渡損は引き継げません。
支配権が100%でない場合は清算時の子会社株式簿価を損金算入できますが、他方繰越欠損金は引き継げないことを考えると、子会社の清算についてもメリデメが出てくると思います。
繰越欠損金がある場合は清算、無い場合は資産を別のグループ会社に寄附をして精算を行うか、そもそもM&Aをしてしまうのでもいいのかもしれません。

M&Aについては以下のブログも参考にしてください。

政府が中小企業M&A支援を行う背景
小規模M&A向け表明保証保険「M&A Batonz」についての解説
「M&A仲介への不信感4選」
仲介かFASか
「M&A仲介会社の手数料」上場・非上場会社との比較!
M&Aで会社を譲渡する際に失敗しないための21のポイント!
売り手がM&Aを始める前に確認すべき5つのこと
【年倍法】M&Aの「価格」と「価値」の違いとは
「御社を買いたい人がいるから売ってくれと言われているが本当か」問題
M&A仲介会社の「業界最安値」手数料問題とは
仲介会社が入る意味とは
「M&A仲介と契約を結ぶ前に。テール条項には気をつけろ!」
「中小企業庁から学ぶ! M&A仲介業者の見極め方」
「中小企業庁から学ぶ! M&A仲介業者の見極め方2」
日本政策金融公庫を使ったスモールM&Aのための資金調達!・・・と疑似PEファンドの組成?
コロナと資金調達と資本性劣後ローンの活用と
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