【買い手向け】個人がM&Aを行うことについて(再考)

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公開日:2020年10月30日 /最終更新日:2020年10月31日

以前、個人がM&Aを行うことについてはネガティブな印象があったので、そのようなブログを作成しました。
現在は、バトンズさんの表明保証保険のようなインフラが整ってきたこともあり、考え方が変わってきたので、個人の場合、どういう風に参入したらいいのかというところも掘り下げて記載をしてみます。
なおコストをかけて今あるインフラを使う前提になるため、費用負担が発生する点についてはご留意ください(逆にいえば費用負担さえすれば危険度は下がると思います)。

なお今回は一連の流れの中の注意点を書くため、NDAの締結や基本合意の締結など各手順のうち、一部省略がある点についてはご了承ください。

1.M&A支援者(士業、仲介、FASなど)を使う
案件の探索自体はM&Aプラットフォームというインフラが整備されており、幅広く案件の選択を行うことができる。
ただし、プラットフォームに出てきている案件は仲介を行おうとしたが売れ残ってしまっている、顧客のソーシングに手が回らない(それだけ重要視されていない)、価格目線が市場と乖離している(これは下に乖離していることもある)など、まちまちであることから玉石混交と言える。
基本的に「優良案件」というものはM&A支援者の中で完結できてしまうこと、また情報流出を懼れるためプラットフォームに出さないことが一般的。
(これは逆の立場になってみたら理解できるはず)
そのためプラットフォームを使いつつ、良さそうな支援者に対して関係を作り、案件をプラットフォームに出る前に紹介してもらえる関係を作る。

2.M&A支援者との関係を作る(含む作り方)
M&A支援者は基本的には案件を制約させるために、買い手よりも売り手に対して慎重な対応を行う。
(買い手はいなくなっても他にいるが、売り手はいなくなったら案件がなくなってしまうため)
そのため他にも買い手がいることを理解し、支援者や売り手から「選んでもらえるようになる」ことが重要。では具体的にどういうところについて、気を付けたらいいのか。

(1)自己紹介及び今回検討した理由を説明する
これ、非常に当たり前の話だと思うんですが、「よろしくお願いします」としかコメントがないままNDAの締結申請を行うとか実際にあるんです。
契約は拘束力はあるものの、約束を守れるだろうという人としか締結しようとは普通は思いませんし、よく知らない人が約束守るのかどうかは分かりませんよね?
逆に契約をしても履行するのかどうかが怪しいのであれば、通常は売り手に迷惑をかけたくないので避けます。
そうならないようにするために、
①自分がどういう人間でどういう経歴があるのか
②なぜこの案件についてM&Aを行おうと思ったのか
は最低限、最初に伝えたほうがいいと思います。複数検討するのであれば①はテンプレートを作ってもいいでしょう。作ることで案件との親和性が見えてくることもあると思います。

(2)M&Aを行う場合、どのように譲渡対価を支払うのかも説明する
次のステップとして見られるところは、「この人、熱意は分かったけど、実際にM&Aを行う資力はあるのだろうか」というところです。
少額の有利子負債の引継ぎ、であれば問題ないと思いますが、実際には大きな金額が動くわけで、その点をどのように担保できるのかは予め説明したほうがいいでしょう。
先に説明したほうが、売り手も安心しますし、トップ面談を行う際も具体的かつ前向きな話ができると思います。

(3)余計な情報も出す
人間関係作り、とでもいうんでしょうか。出身地や経歴、趣味などが分ることで、ブレイクした後でも支援者の印象に残れば、次の案件が出てきたときに声がかかる可能性が高まります。
ただここで注意してほしいのは上記の(1)と(2)ができている前提です。(1)も(2)もできていない中で自分の話だけされても、「話長いなー」という印象しか持たれないでしょう。

(4)やり取りは丁寧に行う
これも当たり前の話なのですが、プラットフォームやネットでのやり取りが一般化してきてしまっており、いきなり連絡が取れなくなったり、言うだけ言って交渉が中断される、などの買い手がいます。
中断された以上、その話はそれで終わりなのですが、当たり前ですが、次に案件があって、声をかけてもらったとしても、売り手に対してもそのような対応を行うのではないか、と思われてしまい
敬遠されてしまうと思います。
条件が合わないため見送りやブレイクしてしまうのは一般的にあるはなしなので、今までのやり取りについてお礼と止める理由をお伝えして、次回以降も声をかけてくださいと伝えたほうが今後につながると思います。
(プラットフォームやネットでのやり取りが一般化してきているので、それほど負担ではないはずですがなぜそれをやらないのかが理解できないです。。)

3.トップ面談時
ここは2と同じ内容になりますが、この段階でも相手は買い手を複数選ぶことができる状況です。
「選ばれるため」には先ほどの2-(1)、(3)、(4)が重要になってくるでしょうか。
お金の話は支援者がするので(そのための支援者です)、「今まで築いてきた事業を譲ってもらう」気持ちを前面に押し出し、事業に対してリスペクトの気持ちを出しながら譲り受ける理由を説明してください。
特に譲渡後一緒にやっていくことを想定した場合、ここが面と向かってアピールする機会になります。
買収監査時に条件などで先方の気持ちが揺れてしまうことがありますが、ここでアピールしておくことで揺れ幅を減らすこともできるでしょう。
きちんと丁寧に説明してください。

なおこの後、意向表明というステップに進みます。
この点も和紙で手書きがいいとか、通常通り行うとかいろいろとあるかと思いますが、売り手によっても濃淡があると思うので、支援者とお打合せください。

4.買収監査(DD時)
ここではバトンズさんのような表明保証保険を使う前提で考えます。
というのも個人の資力全開で譲受を行った場合、譲渡後に何か持ち出しが発生してしまい融資が受けられないなどあると、事業が詰んでしまう可能性が極めて高いからです。
買収監査についてはひな形があるようなので、それに基づいて買収監査を行うことになるでしょう。
また適切な支援者であれば、譲渡後の運営も含めて、リスクとなりそうなことを買い手であるあなたに確認するはずです。
そのリスクファクターをご自身で解決するのか、あるいは保険でリスクヘッジを行うのか、という選択肢が出てきます。
この点についてはご自身の資力とご相談いただき、リスクの保有を行うのか保険化なのか、あるいはそれ以外の手段をとるのかを支援者と相談の上、検討されるとよろしいかと思います。

5.最終条件の提示及び譲渡実行
最終条件の提示について、買収監査で見つかった瑕疵をどう扱うのか、という問題のケアが必要になります。
金額で調整なのか、分割払いでリスクヘッジを行うのかなどありますが、仮に保険でカバーできるのであれば交渉する範囲が減るでしょう。
逆にカバーできない(定型的なひな形の範囲ですらでてしまった瑕疵)であれば特別条項として別に独立して定めることも多いです。
この点は私も保険商品が実際にどのように運用されるのか不明ですが、適切な支援者がいれば間に入って協議できるでしょうし、この調整こそが支援者の大きな役割と考えています。
(単なるマッチングが役割だと思っている方もいらっしゃいますが、動いている事業を条件を調整しながら、波風立てないように受け継ぐのは結構大変です)

この後は、譲渡実行を行いPMIに従って引き継いでいく、という流れになりますが、個人レベルであればDDの段階のやり取りでビジネス面での課題も出てくると思いますので、協力して解決していく流れが一般的かもしれません。

上記の流れでご不明な点がございましたら遠慮なくお問い合わせください。

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