「あなたの会社、実は身売りがもうバレてませんか?」
某大手上場M&A仲介企業のサイトに載っていた情報をGeminiに読み込ませたら、5秒で実名が出てきました。

「匿名だから大丈夫」——その言葉を信じている経営者は、今すぐ自社の掲載情報を確認してください。
某大手上場M&A仲介企業のサイトに掲載されている『匿名情報(ノンネームシート)』をAI(Gemini)に読み込ませたところ、わずか5秒で実名が出てきました。
もはや、これは『匿名』ではありません。
今回は、大手上場M&A仲介会社のサイトをのぞいて、実務家として背筋が凍った件をご紹介します(
ベテラン担当者なら絶対にやらない、ヒットというか、セーフというか、完全な「アウト」。そんな情報の開示が、上場企業の公式サイトに堂々と掲載され、内部チェックすら素通りしている。この恐ろしい現状に、警鐘を鳴らさずにはいられません。
「ノンネームシート」とは?
M&Aの検討を開始した際、最初に作られる資料が「ノンネームシート(実名秘匿の概要書)」です。
中小企業庁が発行している中小M&Aガイドライン第3版では以下のように定義されています。
○ノンネーム・シート(ティーザー)
ノンネーム・シート(ティーザー)とは、譲り渡し側が特定されないよう企業概要を簡
単に要約した企業情報をいう。譲り受け側に対して関心の有無を打診するために使
用される。
その名の通り、実名を伏せた状態で「こんな会社がありますよ」と買い手候補に伝えるためのもの。目的は大きく分けて2つあります。
関心の喚起:具体的な名前は出さず、業績や強みだけで「話を聞いてみたい」と思わせる。
情報の秘匿:冷やかしや競合他社に、自社の売却情報が漏れるのを防ぐ「防波堤」の役割。
つまり、「特定されないこと」がこの資料の絶対条件であり、存在意義なのです。
なおインターネットに掲載する場合、先ほどの中小企業庁の中小M&Aガイドライン第3版ではインターネット上の掲示について、以下の通り、注意喚起しています。
(1)情報の取扱い
まず、注意すべきことは情報の取扱いである。
ノンネーム情報であったとしてもインターネットの特性上、個者が特定されるリスク
を踏まえ、自社の情報をどの程度まで開示対象とするか慎重に検討しておく必要が
ある。
また、M&A プラットフォームごとに、情報を開示する相手方が異なることも注意が必
要である。例えば、法人・個人問わず閲覧・掲載が可能な M&A プラットフォームもあ
れば、法人のみに限った M&A プラットフォームもある。
どの程度の情報をどこまでの範囲で開示するのか、自身のニーズに照らし合わせ
て検討することが望ましい。
万が一、一度でもインターネット上に情報が流出してしまうと、それを完全にインタ
ーネット上から消去することは困難であるため、ある程度は公開されても受忍できる
程度の情報しか掲載しないといった慎重な姿勢が望まれる。この点は、インターネット
上でオープンに公開されていない、閉じられた(クローズドな)M&A プラットフォームで
あったとしても同様である。(出典:中小企業庁『中小M&Aガイドライン(第3版)』p.58)
ノンネームシートの重要性——なぜ「特定」されてはいけないのか?
「ちょっとくらいバレても、話が進めばいいじゃないか」と思われるかもしれません。
しかしM&Aの世界において、成約前の情報漏洩は「致命傷」になります。
従業員の離職リスク 「うちの会社、売られるらしいよ」という噂が立てば、不安になった優秀な人材から順に辞めていきます。
取引先とのトラブル 「あそこは経営が危ないのか?」と勘繰られ、取引条件の悪化や契約打ち切りを招く恐れがあります。
譲渡価格の下落 「あの会社は早く売りたがっている」という情報が漏れれば、買い手から足元を見られ、正当な評価(価格)で売れなくなるリスクが高まります。
ノンネームシートは、あなたの会社を「高く、安全に」売るための最強の矛となると同時に最強の盾でなければなりません。
その盾が、最初からすかすかで「透けて見える」状態だったとしたら……。
それは盾としての役割を果たしていないどころか、自ら弱点を晒しているのと同じなのです。
大手上場M&A仲介会社のトップページに置かれていたノンネームシート
私が先日、某大手仲介会社のサイトを訪れた際、トップページに堂々と掲載されていたノンネームシート(案件概要)を見て目を疑いました。
通常、リスクに敏感な担当者なら、Webに公開する情報は可能な限り抽象化するものです。しかし、そこに並んでいたのは、その所在地を普段歩いている人ならピンとくるでしょうし、ピンと来ないまでも情報をインターネットで検索すればすぐわかるような詳細かつ限定的な情報が書き込まれていたからです。
試しにGenemiに聞いてみたら、私と同じ答えがモノの数秒で「この会社ですよね?」と返ってきました。
このシートの中身を詳しく見てみましょう。そこには、以下のような項目が具体的に記されていました。
(すべてを乗せると私が漏洩したような感じになるので、一部黒字で伏せます)

所在地:東京都●●区(●●)
業種:和食レストラン(●●)
設立:1920年代(創業●●年超)
店舗数:10〜30店舗(大手チェーン)
売上高:数十億円規模
いかがでしょうか。
これだけだったら確かにわからないと思いますが、もしこの●●の伏字のところがなかったらどうでしょう?
そしてその●●が「うなぎ」や「割烹」のように、知名度が高く希少性が高い業種であったら…。
そしてダメ押しで、たぶんこの条件を満たす●●にあるこの業態は2社思いつくのですが、特記事項でもう一社に絞られてしまう。
はい、結論から申し上げますとノンネームとして扱われるレベルを逸脱しており、知らないところで自分の会社が売られている話が広まってしまうという恐ろしい話でした。
内部チェックはどうなっているのか?
不思議なのは、これが掲載されているのが上場企業のサイト(しかもトップページ)だということです。
本来なら情報の秘匿性について、社内で厳しいコンプライアンスチェックが入るはず。
しかし現実は、集客(買い手探し)の効率を優先するあまり、譲渡対象企業の情報保護が二の次になっている。
もしこの情報を競合他社の社長や、現場で働く従業員が見たらどう思うでしょうか?
「あ、これうちの会社だ」
「あそこ、売りに出してるんだな」
そう気づかれるのに、1分もかかりません。
他にも悪い仲介はいっぱいいます。
「あなたの会社、売りに出してますよね。ぜひ弊社でも売らせてください」
みたいな連絡が来るかもしれません。
あるいは直接、「そんなに売りたいなら買ってやってもいい」という連絡が直接入るかもしれません。
こんなM&Aの進め方をしたらアウトというよりでっとボールに近いかもしれません。
Web掲載は確かに買い手を探すには便利です。
しかしその「便利さ」の代償として、経営者が長年築き上げてきた「信用」という最大の資産を、これほどまでに無防備に晒していいはずはないしょうし、顧客が望んでも、注意喚起を行うのが仲介の役割なのではないでしょうか。
なぜ「情報の投げ売り」が起きてしまうのか?
なぜ、これほどのリスクを冒してまで、詳細な情報を公開してしまうのか。 その背景を知るために、現在のM&A仲介業界が置かれている状況を、業界を代表する上場企業のデータから紐解いてみましょう。
例えば、株式会社ストライクが公開している
新規受託件数(案件を預かった数):前年比 約28.0%増(923件→1,181件)
成約組数(実際に売買が成立した数):前年比 約9.1%増(252組→275組)
受託件数が大幅に伸びている一方で、成約組数の伸びはそれに追いついていないことがわかります。計画に対しても成約数は下振れしているとのことです。東洋経済でも『業界全体の成約率低下傾向』と指摘されており、業界全体で「受託したものの成約に至っていない案件」が滞留し、競争が激化していると思われます。
膨大な受託案件を抱えるなかで、一つでも多くの問い合わせを勝ち取り、成約に繋げなければならない。その焦りや集客の効率優先の姿勢が、本来「絶対死守すべき匿名性」を二の次にしてしまい、今回のような「AIで5秒でバレるノンネームシート」を量産する結果を招いているのではないでしょうか。
経営者が命の次に大事な「会社の信用」を預けている相手が、もし数字のノルマに追われて「情報の盾」を疎かにしているとしたら……。これは一社だけの問題ではなく、仲介会社選びの根本に関わるリスクだと言わざるを得ません。
弊社ならこうやる:情報の「盾」としてのこだわり
私たちがノンネームシートを作る際、一番神経を使うのが「情報の開示範囲」です。
特定キーワードをただ出したり消したりするのではなく、「意味は通じるが、検索には引っかからない」絶妙なラインを攻めます。
例えば、今回の「●●の老舗●●屋」さんなら、こう書きます。
(伏字が多くなってすいません…)
業種:「●●」→ 「和食惣菜・飲食事業」
所在地:「●●」→ 「都内主要商業エリア」
人気ですがニッチな業種について、「和食惣菜」という広い括りし、「●●」という日本人なら誰しも知っているであろう超ピンポイントな地名は、「主要エリア」という婉曲な表現に置き換えます。
こうすることで、興味本位でノンネームシートを見た人がインターネットで検索しても、検索結果はカスりもしなくなります。
「これじゃあ、買い手に魅力が伝わらないんじゃないか?」
そう心配されるかもしれませんが、それでいいんです。
「ここ、あのお店じゃない?」と万が一決め打ちで聞かれても、「いやいや、都内には似たような規模の和食チェーンなんてごまんとありますよ」と、涼しい顔でしらばっくれられる範囲に留めておく。
これがオーナー社長のプライバシーを守るための「プロの防波堤」です。
そして本当に検討したい人はその上で、秘密保持契約を締結してでも具体的に聞いてくるんです。
秘密保持契約前から一番肝心な顧客情報の出し方をコントロールできない仲介に、大事な会社の未来を預けてはいけません。
「自分でやればいい」という選択に潜む最大の罠
最近ではプラットフォームを利用して、オーナー様が直接買い手とやり取りするケースも増えています。
仲介手数料を節約したいという気持ちは、経営者として当然の感覚かもしれません。
しかし、今回お見せした「大手の危険球」以上のリスクを、専門家抜きで背負う覚悟はありますか?
「隠し方」を知らない情報開示:自ら情報を出しすぎて、ライバルに筒抜けになる。
「冷やかし」の見極め不能:情報収集が目的の「買わない相手」に、自社の弱みを握られる。
交渉の泥沼化:直接交渉は感情が入りやすく、決裂した瞬間に「あそこは売りに出ている」という噂だけが一人歩きする。
手数料は、単なる紹介料ではありません。
貴社が数十年かけて築き上げた「ブランド」と、従業員の「雇用」、そして社長がこれまで守ってきた「平穏」を、次の世代へ確実に引き継ぐための保険料です。
数百万円をケチって、数億円の価値がある「信用」をドブに捨てるような真似だけはしないでください。
最後に:あなたの会社、クイズのネタにされていませんか?
もし今すでに他社に依頼している、あるいは自分で登録しているという方。
一度、その「ノンネームシート」を第三者の目で読み返してみてください。
「これ、ググられたら終わりじゃないか?」
少しでもそう感じたなら、手遅れになる前にご相談ください。 弊社があなたの会社の「矛」であり、何より鉄壁の「盾」として、本当の意味でのプロの仕事をお見せします。
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※秘密厳守。無理な勧誘は一切ありません。
執筆者プロフィール
執筆:五十嵐 悠一(日本財務戦略センター 代表)
東証上場M&A仲介会社にて数多くの成約に立ち会い、業界の「光と影」を実務で経験。 「成約至上主義」の仲介業界において、経営者の想いが置き去りにされる現状に疑問を抱き、2020年に株式会社日本財務戦略センターを設立。
「M&Aを中小企業にとって身近な一歩に変える」を理念に、高額な手数料の壁を取り払い、弁護士や公認会計士と連携した低コストかつ高品質な「伴走型支援」を確立。 単なるマッチングではなく、経営者が長年築き上げた「信用」と「従業員の笑顔」を守るための「盾」として、日々現場で陣頭指揮を執っている。


































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