2025年最低賃金引き上げ：中小企業経営者が知るべき影響と危機突破の戦略

最低賃金の大幅引き上げは経営に大きな影響を与える課題です。
厚生労働省によると、2025年度の最低賃金は全国平均1,121円（前年比6.3%増、66円増）となり、全47都道府県で初めて1,000円を超えました。
この引き上げは物価高騰への対応と生活水準向上を目指す政府方針（2020年代中に全国平均1,500円目標）に基づきますが、中小企業には固定費の引き上げに直結するため大変深刻な問題です。
また社会保険の「130万円の壁」による事実上の労働時間削減による生産性低下が収益を圧迫する可能性もあるでしょう。
帝国データバンクや東京商工リサーチの調査では、倒産件数も増加しています。
今回は最低賃金の影響をわかりやすく解説し、この問題に対する多角的な解決策を考えていきたいと思います。

最低賃金引き上げの概要

2025年10月から、最低賃金は全国平均1,121円に上昇。東京（1,226円）、神奈川（1,225円）、大阪（1,171円）など大都市圏で高額化し、秋田や沖縄などのCランク県でも1,000～1,050円に達します（厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金改定の目安」）。
これは2002年の時間給表示導入以来最大の上げ幅（6.3%）で、政府は2029年までに1,500円を目指し、年平均7.3%の引き上げを計画しています。
背景には2024年10月～2025年6月の消費者物価指数（CPI）の上昇（6.4%）や、労働力不足、首相・石破茂総理の「賃上げで経済成長」政策があります。

マクロ経済的影響：中小企業が直面する課題

最低賃金引き上げは、企業収益、消費力、倒産リスク、経済成長に影響します。
中小企業への影響を以下に整理します。

1. 企業収益と人手不足

コスト増と生産性低下最低賃金引き上げは人件費を押し上げ、労働時間削減が人手不足を悪化させ、収益を圧迫します。
帝国データバンクによると、2024年度の人手不足倒産は350件で過去最多です。
従業員10人未満の企業が倒産の82.2%を占め、中小企業の脆弱性が顕著です。
社会保険の「130万円の壁」の存在も大きいです。
ある調査によると35％弱の労働者が年収の壁を意識し働いており、最低賃金を増やしてもこれらの労働者にとっては、年収の壁に達する時間が早くなってしまうだけになります。
このような自主的な労働時間削減は、総労働時間を減らし、飲食業や小売業ではシフト不足でサービス低下や機会損失につながる可能性があります。
また経済産業省によると、中小企業の48.6%が人件費上昇を価格に転嫁できていません。
加えて最低賃金の上昇は正規労働者の賃金抑制につながる可能性があります。
この場合、正規労働者の離職リスクが高まり、採用難を悪化させてしまうでしょう。
これらの複合的な人手不足による生産性低下により、事業継続が難しくなります。

2. 年収の壁の影響による生産性低下

最低賃金引き上げは、低所得層（労働者の25％）の賃金を押し上げますが、先ほどの「130万円の壁」による労働時間削減により、35％の労働者は130万円までしか働かなくなる可能性が高く、その分、需要の増加を抑えます。
また賃金上昇率（4.48%）が物価をわずかに上回る程度であれば、消費力の大幅な向上は期待しにくいでしょう。
中小企業は労働者の7割を雇用していますが、市場の需要は増えず、コストが増加しているのに生産性も比例して増えない（むしろ減ってしまう）のであれば、むしろ経営にとってマイナス面しかないでしょう。

3. 賃金上昇による倒産圧力

最低賃金引き上げは人件費を押し上げ、倒産リスクを高めます。
帝国データバンクの人手不足倒産について触れましたが、日銀は、最低賃金が1%上昇するとサービス価格を0.07ポイント押し上げると推計していますが6.3%の賃金引き上げは価格を0.44ポイント上昇させる可能性があります。
しかし中小企業庁によると、中小企業の価格転嫁率は50%程度。
転嫁できない部分は企業が負担してしまうため、賃金と物価のダブル高騰が中小企業の資金繰りを悪化させます。
地方の中小企業は価格転嫁が難しく、利益率低下や倒産リスクが増加するでしょうし、資金力の弱い企業が特に打撃を受けます。

4. 経済成長と地域経済：消費拡大の限界と生産性低下

最低賃金引き上げは、一見、低所得層の賃金上昇で消費を増やす政策に見えますが、複雑な制度がその効果を制限しています。
「130万円の壁」による労働時間削減は、消費が賃金上昇率に比例して増えない原因となります。
また壁を意識したパート労働者の労働時間短縮は、企業の生産能力を低下させ、サービスや生産量が縮小し機会損失につながるでしょう。
Cランク県（64円増）がA・Bランク（63円増）を上回る賃上げは地域格差是正を狙いますが、地方の中小企業は資金不足で対応が難しく、12.7万社が倒産リスクに直面するとも言われています。
地方の中小企業は、人件費増と生産性低下で事業継続が困難です。
消費拡大の恩恵は都市部に偏り、廃業やM&Aが増えるでしょう。

危機を乗り切るために

戦略最低賃金引き上げの影響を軽減するには、以下の多角的な対策が有効です。

M&Aによる規模の強化:
同業他社との統合で機能を集約化し、効率化を図りましょう。
また労働集約産業であれば、シフトの共有などできるかもしれません。

技術投資で効率化:
AIや自動化システムで人手不足を補いましょう。
例えば飲食店向けシフト管理AIの導入で、労働時間削減の影響を軽減できます。
「IT導入補助金2025」等ででコスト軽減しましょう。

従業員エンゲージメント強化:
非金銭的報酬（柔軟な勤務体系、福利厚生）で離職を抑制しましょう。
中小企業庁の調査では、従業員満足度向上が生産性を改善しています。

日本財務戦略センターからのメッセージ

2025年の最低賃金引き上げは、コストの増加や生産性低下で中小企業を圧迫しますが、M&A、技術投資、従業員エンゲージメント、価格転嫁で危機を乗り切りましょう。
弊社は中小企業庁にも登録しているM&A支援機関です。
中小M&Aガイドラインを遵守し、皆さんの事業承継をサポートします。
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