<買い手向け>M&Aを行うためにはどうすれば?

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公開日:2022年7月1日 /最終更新日:2024年7月24日

会社を買える人ってどんな人?

昨今、大企業だけではなく中小企業や個人が主体となってM&Aを行うケースが増えています。
弊社でも様々な企業様からお問い合わせがありますが、その中でもM&Aを行える企業や個人(以下、「買い手」という)、できないだろうなと思わせる買い手など様々です。
今回はどんな買い手がM&Aを行っているのか(あるいは断られているのか)を記載していきたいと思います。
仲介である弊社を通した目になりますが、相対取引でもおおよそ変わらないと思いますのでご参考にしていただければと思います。

なお交渉のテクニックというようなものについては触れませんので、予めお伝えいたします。

なぜ貴方に売らないといけないのか

身もふたもない言い方ですが、売り案件は1つですが、買い手は案件が魅力的であればあるほど、欲しい人は増えるので、増えます。
欲しい人が多くなればなるほど(案件に魅力があればあるほど)あなたのライバルは潜在的に多くなります。
そもそも売り手も売る必要があるのかどうかということに思い至るかもしれません。
M&Aを多く行っている買い手ほど、まずは交渉の土台に乗るために、非常に丁寧に売り手に接する傾向が高いです。
(交渉を誰とするかは売り手が決めますし、売り手は売らないという選択肢もとれます)
これは売り手と良好な関係を築けば交渉しやすくなりますし、M&Aを行ったのちも協力して運営を行っていくことが多いので当たり前と言えば当たり前です。

が、しかし、意外とその点を見落としている買い手が多い印象です。

スーパーで大根を買うのとわけが違い(もちろん小売りにおいても常識の範囲でふるまうのは当然ですが)、一つしかないものを多数の中から譲ってもらいます。
「買ってやる」という態度を出してしまうと売り手からすると他の買い手と交渉したくなりますよね。
また代表者が丁寧でもその部下や役員が横柄なこともままあり、これは買い手の企業とそこで使われている自己を同一して売り手に相対していると言えます。
売り手も多くは一国一城の主としてやってきています。
代表でもない人間から横柄な態度を取られると、代表者から横柄な態度を取られるよりも不快な思いをするので、代表者は交渉開始前によく留意させておいた方がいいでしょう。

初めての取引先にアポを取って商談を行う際には、きちんとした身なりで、丁寧に時間に遅れることなく訪問すると思います(特に売り込みに行く場合には)。
M&Aの場合も自分自身を売り込むという観点で言えば、同様のビジネスマナーに沿った対応をして損はないのではないでしょうか。
(むしろ横柄にして自分自身の売り込みに失敗する方が大損でしょう)

あなたを選んでもらうには?

もし貴方が販路をたくさん持っていたり資本が厚い大企業であるならば頭一つ抜けているでしょう。
ソニーやトヨタのように知名度も実力もある企業であればなおさらです。
ただそうでない場合にはどうしたらいいでしょうか?

これも「自分を売り込む」という観点からすると、

・なぜ今回、M&Aを検討するに至ったのか
・あなたという買い手はどういう買い手なのか

ということを丁寧に説明する必要があるでしょう。
M&Aを多数行っている企業の場合であれば、事業計画やその事業計画を達成するためのM&A計画、IRといった資料を用意している買い手もいます。
相手の規模の多寡にかかわらず行っておりますので、売り手側としてはそこまできちんと説明してもらえれば自分自身を尊重してもらっていると思い、信頼感を抱きますよね。
冒頭申し上げたように中小企業でも個人でも参入してきている昨今、なおさら差別化を図る必要があるため、最低限、「自己(自社)紹介」と「M&Aを行う目的」とそれがなぜ「今回の対象会社なのか」という点について丁寧に説明できる準備を行うことが必要なのではないでしょうか。

単に「紹介されただけ」であったり「ネットで興味があったので」だけでは多数問い合わせが来るような案件を買収することは難しいでしょう。
特に「自己(自社)紹介」のような資料については面談するのであれば、その際に紙で手交した方がいいです。
どうしても印象は薄れますし、他社と比較されることになった際に紙で残っている方が売り手も比較しやすいでしょうから。

交渉に入るには

ここから先はテクニカルな話になるので、抑えて記載しますが、話が進んで「この人と話していい」というタイミングで基本合意契約が締結され、独占交渉権が付与され買収監査へ移行します。
逆にいうと条件であったり具体的な話をするタイミングは後であります。
にもかかわらず初期のタイミングから色々と細かい条件の話や内容について話してくる買い手と、最初は大きく相性であったり経営の考えをすり合わせてこようとしてくる買い手とだったら、あなたはどちらと交渉を先に進めたいと思うでしょうか?
自分の言いたいことを言いたくなるのはよくわかりますし、経営者であればなおさらでしょうが、M&Aを行うという目的のためには相手の立場に立った振る舞いが必要でしょう。
売り手の経営について尊重し、否定せず、希望を持った話を行うことで胸襟を開いてもらい、「ゼロサムゲーム」ではない「プラスサムゲーム」になるような相手と見なしてもらうようふるまった方がいいのではないでしょうか。
そしてそのようにふるまうのはあなたの価値を毀損するのではなく、M&Aを成功させ、あなたやグループのM&Aの発展につながると考えられるからです。

仲介がいる場合

仲介は往々にして売り手とアドバイザリー契約を締結して買い手であるあなたと対峙しています。
彼らも「売れたら相手は何でもいい」という事ではなく(そういう仲介もいるかもしれませんが)、売り手から信用され買い手であるあなたと面談しています。
彼らの立場からしたら、先ほど申し上げたような「買えない買い手(横柄だったり時間を守らなかったりなど)」を売り手に紹介しても仲介としての信用がなくなるだけなので。

その意味では仲介に媚びる必要はないですが、最低限、売り手に相対するのと同じ態度で臨むべきでしょう。
仲介も買い手であるあなたを信用すれば、売り手に対して印象を適切に伝えるでしょうし、直接あなたから売り手に説明するよりも紹介という形になるので信用度は高まる可能性があります。
逆に仲介も最初に買い手であるあなたと面談した際に、遅刻してきたり、アイコスでタバコを吸っていたり、内容もきかないで資料だけ求めてきたりされると、紹介者責任が問われる可能性があるため慎重にならざるを得ないでしょう(この例示は実際にあった事実です)。

これらについてお心当たり有る方は一度ぜひご自省いただければと思います。

終わりに

今回は「こうやったらM&Aで上手に買える!」というような(正直どうでもいい)小手先の話ではなく、そもそもどうしたら交渉先としての俎上に乗れるのか、ということを記載いたしました。
M&Aを行うにつれ、悪い意味で「馴れて」しまって当初あった謙虚さがなくなり、「買えない買い手」になってしまって仲介から声がかからなくなってしまった買い手もよく見てきました。
買い手からすると何度も行っているM&Aの中の一つにすぎませんが、売り手からするとおそらく最初で最後になる可能性が高いM&Aであることをご理解いただいたうえで交渉に臨まれると、交渉相手として選ばれることは勿論のこと、お互いが譲渡対象会社を良くしていけるようなお話合いができるのではないでしょうか。

なお資産がない個人が買う場合は本当に難しと思います。
特にお金がなければなおさら。
売り手も経営者であるため、社員や取引先を個人に任すことに大変不安がある中で、資力がないとなればなおさらだからです。
リスクは大きいですが、債務超過の案件をきれいにできる自信があるのであれば、そういった案件をまず買収して実績をつけてから参入してもいいかもしれません。
ハイリスクなのでお勧めはしませんが、それでうまくやっている方もいるのは事実です。
100点の会社を買うよりも、49点の会社を買って60点に持っていこうとか、そういう発想の方が近道になる可能性も高いのではないでしょうか。

 

2022/7/1 追記 インターネット上プラットフォームの場合

バトンズなどインターネット上のプラットフォームでも買い手や買い手の意向を受けた専門家が参入してきています。
印象論ですが、前者は興味がどの程度あるのかよくわからない短文しか書かなかったり、同時に複数検討しているせいか、並行して別の案件にも打診が来ることがあります。
後者はビジネスライクで機械的な対応に終始しており(そういう人たちがやらされているのかもしれませんが)、本当に買い手の関心がどの程度あるのかうかがえないことがしばしばあります。
文字情報でどこまで関心や自己アピールができるか、また買い手の意向を受けているのであればどの程度買い手に対して興味を持ってもらえるのかということを真剣に考えないと、なかなか成約に至るのは難しいのかなと思います。
心証に配慮し、返信しやすい、継続的にやり取りを続けたいと思わせるような対応が必要ではないでしょうか。

 

M&Aについては以下のブログも参考にしてください。

粉飾決算の見分け方~粉飾決算をしてみよう!~
日本M&Aセンター 契約書偽造・不正計上問題とそこから学ぶべきこと

<売り手向け>やばい買い手には気をつけろ! マッチングだけが全てではない。
小規模M&A向け表明保証保険「M&A Batonz」についての解説
「M&A仲介への不信感4選」
仲介かFASか
「M&A仲介会社の手数料」上場・非上場会社との比較!
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