介護業界のM&A動向

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公開日:2023年5月18日 /最終更新日:2023年5月18日

介護業界を取り巻くM&Aの動向

はじめに

日本は世界でも類を見ない超高齢社会です。
厚生労働省によると2020年には65歳以上の高齢者が全人口の28.7%を占め、2065年には38.4%に達すると推計されています。
このような高齢化の進展に伴い介護サービスの需要はますます拡大しています。
しかし介護業界には人手不足や後継者不足、総量規制などの課題も多く存在します。
そのため介護事業者の間ではM&A(合併・買収)が活発化しており、事業拡大や新規参入、事業承継などの目的でM&Aを利用するケースが増えています。

本記事では介護業界のM&Aの現状と動向について解説します。
介護事業を経営している中小企業の経営者の方はぜひ参考にしてください。

介護業界の市場動向

まずは介護業界の市場動向を見てみましょう。
厚生労働省発表の「介護給付費等実態統計の概況」によると、2019年度における介護サービスの利用者数は前年度比で2.2%増加し、約6,300万人となっています。
また同統計によると、2019年度における介護給付費(国・都道府県・市町村・利用者負担分)は前年度比で3.8%増加し、約10兆8,000億円となっています。
このように高齢化が進む中で介護サービスの需要と費用は増加傾向にあります。

一方で介護業界には人手不足や賃金低下などの課題もあります。
厚生労働省発表の「平成30年度介護職員等実態調査」によると、2018年時点で介護職員等(訪問介護員・施設介護職員・居宅支援職員・通所支援職員)の有効求人倍率は3.88倍となっており、慢性的な人手不足が続いています。
また同調査によると、2018年時点で介護職員等の平均月収は23.9万円となっており、全産業平均(29.4万円)よりも低くなっています。

そこで政府は「かかりつけ介護士制度」や「地域包括ケアシステム」などの新たな取り組みを推進しています。
また、2021年度からは介護報酬を0.7%引き上げることを決定しました。
これらの施策は介護職員等の処遇改善やサービス向上を目指しています。

介護報酬改定の影響

介護報酬改定は介護業界に大きな影響を与えています。
一方でその影響は事業者やサービスの種類によって異なります。

2021年度の介護報酬改定は、新型コロナウイルス感染症や大規模災害への対応力強化、地域包括ケアシステムの推進、自立支援・重度化防止の取組の推進、介護人材の確保・介護現場の革新、制度の安定性・持続可能性の確保の5つの柱に基づいて行われました。
改定率は0.70%でしたが、そのうち0.05%は感染症対策に関する特例的な評価であり、6ヶ月間限定でした。

感染症や災害への対応力強化では、介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)の策定が全サービス事業所に義務付けられたほか、感染防止策や通所系サービス事業所規模別報酬区分の特例措置などが行われました。

地域包括ケアシステムの推進では、認知症や看取りへの対応力向上に向けた取組や医療と介護の連携の推進などが図られました。
認知症専門ケア加算や看取り介護加算などが新設または拡充されました。

自立支援・重度化防止の取組の推進では、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化や介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進などが行われました。
科学的介護推進体制加算や口腔・栄養スクリーニング加算などが新設されました。

介護人材の確保・介護現場の革新では、処遇改善加算やICT活用加算などが拡充されたほか、無資格者に対する認知症介護基礎研修の受講義務付けなどが行われました。

制度の安定性・持続可能性の確保では、高額なサービス利用者に対する自己負担上限額を引き上げることや、サービス提供責任者(SPR)によるケアマネジメントを評価することなどが行われました。

介護業界のM&A動向

次に介護業界のM&A動向を見てみましょう。
レコフ株式会社が運営する「レコフM&Aデータベース」によると、2022年における医療・介護サービス業界(医療機関・診療所・歯科医院・薬局・在宅医療・訪問看護・訪問リハビリ・老人ホーム・有料老人ホーム・特別養護老人ホーム・グループホーム・デイサービス・居宅介護支援事業所等)で行われたM&A件数は155件となっており、直近4年間で毎年増加している傾向にあります。

年度M&A件数
201999
2020118
2021139
2022155

出典:レコフM&Aデータベース

この中でも特に多いのが「在宅系サービス」(訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援事業所等)や「施設系サービス」(老人ホーム・有料老人ホーム・特別養護老人ホーム・グループホーム等)へのM&Aです。
これらのサービスは「地域包括ケアシステム」や「かかりつけ介護士制度」などの政策的な背景や、「サービス付き高齢者向け住宅」などの新たなサービス形態の登場により需要が高まっています。

また、「医療系サービス」(医療機関・診療所・歯科医院・薬局等)へのM&Aも増えています。
これらのサービスは、「かかりつけ医制度」や「地域医療連携体制整備促進法」などの政策的な背景や、「在宅医療」や「予防医療」などの新たなサービス形態の登場により需要が高まっています。

さらに「異業種からの参入」を目的としたM&Aも増えています。
これらは、「ドラッグストア」「保険会社」「金融機関」「不動産会社」「IT企業」「飲食店チェーン」「教育企業」「製造企業」など多岐にわたります。
これらは「高齢化社会への対応」「新規事業開発」「シナジー効果」「ブランド力強化」「顧客基盤拡大」など様々な目的でM&Aを行っています。

これらの事例からも分かるように、異業種からの参入を目的としたM&Aは、介護業界に新たな価値やサービスを提供する可能性があります。
しかし異業種からの参入には、介護業界の特性や規制、競争環境などを十分に理解する必要があります。
また買収した介護事業と自社の事業との連携や統合にも課題があります。
次の章では、介護業界でM&Aを行うメリットとデメリットについて解説します。

介護業界でM&Aを行うメリットとデメリット

最後に介護業界でM&Aを行うメリットとデメリットについて解説します。
介護業界でM&Aを行うことには、以下のようなメリットがあります。

  • 事業規模の拡大:M&Aにより、事業規模を拡大することができます。
    事業規模が拡大すると、経営基盤が強化され、競争力や収益力が向上する可能性があります。また、事業規模が拡大すると、人材や資金の確保や活用もしやすくなります。
  • 事業領域の拡大:M&Aにより、事業領域を拡大することができます。
    事業領域が拡大すると、サービスの多様化や付加価値の向上が図れる可能性があります。また、事業領域が拡大すると、顧客ニーズに応える幅や深さも広がります。
  • 事業承継の解決:M&Aにより、事業承継の問題を解決することができます。
    介護業界には、後継者不足や経営者高齢化などの問題があります。M&Aにより、事業承継先を見つけることができれば、事業の存続や発展につながる可能性があります。
  • 知識・技術・ノウハウの共有:M&Aにより、知識・技術・ノウハウを共有することができます。
    介護業界には、サービスの質や効率を向上させるために必要な知識・技術・ノウハウがあります。M&Aにより、これらを共有することで、サービスの改善やイノベーションを促進する可能性があります。

一方で、介護業界でM&Aを行うことには、以下のようなデメリットもあります。

  • 組織・文化・人材の融合:M&Aでは、異なる組織・文化・人材を融合させる必要があります。
    組織・文化・人材の融合は、コミュニケーションや協調性などの面で困難や摩擦を生む可能性があります。
    また組織・文化・人材の融合は、時間や労力などのコストもかかります。
  • 規制・競争・リスクへの対応:M&Aでは、規制・競争・リスクへの対応も必要です。
    介護業界は、政策や法律などの規制に影響されやすい業界です。
    M&Aでは、規制への適合や変更への対応などを行う必要があります。
    また介護業界は、他社や新規参入者などの競争も激しい業界です。
    M&Aでは競争力を維持したり強化したりするために戦略的な判断や行動を行う必要があります。
    さらに介護業界は、市場変動や社会情勢などのリスクも高い業界です。
    M&Aではリスクへの対策や回避などを行う必要があります。

以上から分かるように、介護業界でM&Aを行うことにはメリットとデメリットがあります。
介護事業のM&Aは自社の経営状況や目的に応じて検討する必要があります。

まとめ

本記事では介護業界のM&Aの動向と介護報酬改定の影響について解説しました。
高齢化社会である日本では、介護事業は成長産業でありながらも多くの課題を抱えています。
その中でM&Aは有効な戦略でありますます活発化することが予想されます。
一方で介護報酬改定のように介護事業者は常に変化に適応しなければなりません。

弊社では介護業界のM&Aについて得意にしております。
ご関心のある方は是非お気軽にご相談ください

参照

介護報酬改定については、厚生労働省のホームページに詳しい情報が掲載されています。以下のリンクをご覧ください。

介護業界のM&A事情については、独立行政法人日本政策金融公庫(JFC)のホームページに分析レポートが掲載されています。以下のリンクをご覧ください。

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