中小M&A仲介業界はやばい!? 新規参入・転職をおすすめしない4つの理由

中小企業M&Aの新規参入
中小企業のM&A(合併・買収)は、事業承継や成長戦略の手段として注目され、2024年には過去最多の4,700件を記録しました。
しかし2025年現在、数年前の急成長期と比べ、年々業界の成長は鈍化し、新規参入や転職は極めてリスキーです。
本記事では
中小M&A仲介業界に新規参入・転職をおすすめしない5つの理由をデータと事例でお示ししたいと思います。
売り手や買い手の皆様についても実態を把握していただくことでM&A仲介リスクが生々しくご理解できると思いますし、M&A転職の懸念を理解したい人たちに届け!

業界の成長鈍化:数年前との違いと参入のハードル
数年前(2020~2022年)の第二次M&Aブームでは、後継者不足や新奇的な感じの再編需要で業界が急成長しました。
しかし2025年現在以下の要因で成長が鈍化している印象があります。

  • 後継者不足の改善と売却意欲の低下:帝国データバンクの2023年調査では、後継者不在率が53.9%(前年比-3.3%)と改善傾向(帝国データバンク)。
    事業承継・引継ぎ支援センターや地域金融機関の支援強化により、従業員承継や外部登用が増加。
    廃業予定企業のうち、後継者不足を理由とする割合が年々低下しており、すでに承継先を決めたりM&Aを選ばず内部承継を進める企業が増えています。
  • 金融機関の支援拡大:中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」では、2025年2月時点で登録支援機関が2,841件(法人2,166件、個人企業675件)に増加(中小企業庁)。
    日本政策金融公庫の事業承継ローンや補助金が充実し、M&A以外の選択肢が拡大。
    売却ニーズが相対的に低下しています。
  • 大手企業の時価総額下落大手M&A仲介企業の時価総額は、ピークと比べ、下落しています
    各社、期間によりピークの取り方が変わってくるのでご意見があればご指摘いただきたいのですが、

    • 日本M&Aセンター:2022年ピーク約3,500億円→2025年8月約1,800億円(約49%減)。2021年の不祥事(売上繰上計上)や競争激化が影響。
    • M&Aキャピタルパートナーズ:2022年ピーク約1,200億円→2025年8月約900億円(約25%減)。大型案件特化も市場期待低下。
    • ストライク:2022年ピーク約900億円→2025年8月約600億円(約33%減)。
    • M&A総合研究所:2022年7月ピーク約1,520億円→2025年8月約825億円。
  • トラブルによる信頼低下悪質な買い手による資金引き抜き(2024年40社買収後、11社が営業停止など)や、それに関連するM&A DXの登録取消など、M&A仲介リスクが表面化。
    仲介のリスク量が上がっています

これらの要因から、数年前のような急成長は期待できず、新規参入やM&A転職はリスクが高い状況です。
日本財務戦略センターは、引き続き全国対応、完全成功報酬制でかつ地元密着企業も含めて対応する方針を維持します。

新規参入・転職をおすすめしない4つの理由:M&A仲介リスクの現実
中小M&A仲介業界は「儲かる」という印象も強いと思いますが、市場環境の変化や毎日朝から晩まで迷惑電話をかけている人たちを見ると、モチベーションの面でも(成約が下がって低下している)年収の面でもお勧めできないかなと思います。
以下、4つの理由を解説します。

  1. コンプライアンス違反による登録取消リスク
    中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」(2,841件、2025年2月)では、「中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月)」の遵守が必須です。
    2025年1月、ある業者が不適切なマッチングで登録停止処分にされ実名とともに公表されました。
    今後はコンプライアンス体制構築に多額のコストがかかり、違反した場合は善管注意義務違反が問われる可能性があります。
    安易な気持ちで参入してきた転職者(特にコンプライアンスの厳しい銀行などからはなおさら)は違反リスクの高い環境で働くプレッシャーに思っていたのと違ったと思うでしょう。

  2. 不正な買い手による訴訟リスク
    先ほども述べましたが、ある買い手が複数企業を買収後、資金引き抜きや経営者保証解除を怠り、11社が営業停止、5社が倒産しました。
    新規参入者は買い手調査のノウハウ不足で訴訟リスクを負い、転職者はトラブル対応に追われる可能性が高い。
    日本財務戦略センターはM&A支援機関登録制度に登録するとともにM&A支援協会に加盟し、金融機関や専門家と連携し信頼性を高めていますが、新規参入企業の場合、それらの団体にリーチせず、結果善管注意義務を問われ、賠償リスクが高まる可能性があります。
  3. 手数料の透明化義務による収益圧迫
    ガイドライン第3版は手数料の詳細開示を義務化。
    平均手数料も自由競争の過程で低下していくでしょう

    新規参入者は以前の大手仲介のような手数料体系(最低手数料2500万円など)を設定することは困難でしょうし、転職者は手数料低下による報酬減リスクに直面してしまうでしょう。
  4. 市場の健全化圧力による淘汰リスク
    中小企業庁は不適切事業者の排除を強化。
    業界においても不適切な買い手を排除する取り組みを始めています。
    逆に言うと不適切な買い手と癒着していた仲介会社は売り手の不利益による収益を源泉を失うことになります。
    不適切な仲介が淘汰される傾向はさらに高まり、それにより社員も失職していくのではないでしょうか。

日本財務戦略センターからのメッセージ:信頼のM&Aで事業承継を成功へ
中小M&A仲介業界は後継者不在率の改善や支援機関の増加により、売却ニーズは増えているものの、需給バランスが弱含みになっているといえるでしょう。
上場M&A仲介会社の時価総額が下落していることがその証左ですし、実際に規制強化により数年前のような成長は難しいと言わざるを得ません(今までむしろ「何でもあり」という状況だったということでもありますが)。
以上により新規参入やM&A転職はリスクが高いです。
新規参入を行う分には経済活動の自由なので弊社がなにかを言う筋合いではないのですが、これからM&A仲介業界に転職しようと思う人たちは一度考え直してみてもいいのではないでしょうか。
(AIの発展もありますが、この点については現時点の個人的な感想も別途ブログでお伝えしようと思います)
引き続き情報を発信していきますが、何かございましたらお気軽にご相談ください。

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