2025年、休廃業・解散が過去最多の7万件超へ 中小企業庁が注目する「円満廃業」の潮流とメリット
休廃業・解散が急増、年間7万件台の可能性
帝国データバンクの調査によると、2025年1~8月の全国の休廃業・解散件数は4万7078件に達し、前年同期比9.3%増で3年連続の増加となりました。
このペースが続けば、年間では過去最多の2024年を上回り、初めて7万件台に到達する見込みです。
中小企業庁はこうした企業の「市場退出」の加速に強い問題意識を持ち、中小企業の持続可能性と適切な事業終了を支援する施策を強化しています。
特に「資産超過型」(総資産が債務を上回る状態)の休廃業が64.1%と過去最高を記録する一方、直近決算で「黒字」だった企業の割合は49.6%と、2016年以降で初めて50%を下回っています。
「黒字かつ資産超過」の休廃業は全体の16.2%に留まり、業績悪化を背景に「余力あるうちの廃業」を選択する企業が増えていることが特徴です。
中小企業庁が問題視する経営環境と「円満廃業」の背景
コロナ禍の2020~2022年では、社会不安を抑えるため、持続化給付金や雇用調整助成金により休廃業・解散が抑制されていました。
しかし2023年以降、支援策の縮小に加え、エネルギー価格高騰や物価高、後継者不足、代表者の高齢化といった課題が中小企業を直撃しています。
さらに日銀が金融緩和を終了したことにより、ゼロ金利時代から「金利のある世界」へ回帰しました。
これにより借入金の返済負担が増加し、資金繰りの厳しさが増す企業も現れています。
中小企業庁はこれらの複合的な経営環境の悪化が休廃業の増加を招いていると分析し、適切な事業終了を支援する施策を重視しています。
このような環境下、事業再生ガイドラインや経営者の再挑戦、引退後の生活基盤保証を目的とした官民の廃業支援を充実させようとしてきました。
「円満な廃業」や「前向きな廃業」が現実的な選択肢として広がり、将来の業績悪化や金利負担の増大を見越して、手元資金に余裕があるうちに事業を畳む「あきらめ廃業」が増加しています。
中小企業庁も、こうした計画的な廃業が経営者や地域経済への負担を軽減すると評価し、支援策の拡充を進めています。
「円満廃業」「前向きな廃業」のメリット
「円満廃業」や「前向きな廃業」は、計画的な事業終了により経営者や関係者に多くのメリットをもたらすことが可能になるかもしれません。
経営者の未来を切り開く:
余力があるうちに廃業することで、資産を保ち、次の事業への挑戦や安定した引退生活に備えられます。
特に金利上昇が上がる現在、資金繰り圧迫を回避できる点が大きいです。
取引先への配慮:
計画的な廃業により、取引先に突然取引を停止するなどの影響を与えず、サプライチェーンの安定を維持できます。
事前に代替パートナーを紹介したり、取引の移行をスムーズに行うことで、信頼関係を損なわずに事業を終えられます。
従業員への責任を果たす:
従業員の再就職支援や雇用継続を計画的に進めることで、突然の解雇や生活不安を回避します。
従業員が新たな一歩を踏み出しやすい環境を整えられます。
M&Aによる価値の最大化:
M&Aを活用して事業や資産を第三者に引き継ぐことで、事業の価値を保ちつつ、従業員や取引先の継続性を確保。地域経済への貢献も維持できます。
中小企業庁は、こうした「円満廃業」が取引先や従業員への影響を最小限に抑え、地域経済全体の安定に寄与すると評価し、支援策の強化に取り組んでいます。
経営者年齢の変化と現役世代の退出傾向
休廃業時の経営者平均年齢は71.65歳で、5年連続で70代です。
また「50代」(11.3%)や「60代」(19.9%)の割も増加しており、現役世代の市場退出が目立つ一方、「80代以上」(24.7%)も上昇し、体力面や後継者問題から廃業を余儀なくされるケースも増えています。
国も事業・引継ぎ支援センターなど公的な窓口も作っていますが、なかなかそれだけでは限界あるところでしょう。
中小企業庁の視点と今後の課題
休廃業・解散件数の増加は、企業倒産(年間1万件台予想)を上回るペースで進んでいます。
中小企業庁は、休廃業について、平常時なら事業継続可能な「資産超過型」の割合が高まる一方、黒字企業の割合が低下する傾向に注目しています。
また金利上昇による資金繰り圧迫も加わり、経営者は引き続き「自力継続」を行うか、今「円満廃業」かの判断を迫られることになるでしょう。
支援策もコロナの頃の資金繰り支援から事業再生やM&A活用へとシフトし、無理な継続で資産を目減りさせるより、戦略的な廃業を選択する動きが加速することになると思います。
一方、取引先の突然の廃業による連鎖倒産リスクも課題です。
中小企業庁は、「経営者保証に関するガイドライン」の改定や「サプライチェーン事業承継」の導入を推奨し、連鎖リスクの軽減を重視しています。
こうした取り組みを通じて、円満な廃業が地域経済の安定に貢献するよう広く促しています。
ぜひ一読してどういう動きがあるのか見てみましょう!
本ブログでもいろいろと解説していきたいと思います。
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