中小企業のM&A(合併・買収)は、事業の継続や拡大を支援する重要なツールとして、日本経済に貢献しています。しかし、昨今マスコミで取りざたされているような、悪質な買い手によるトラブルが近年増加し、M&A仲介業界に新たな課題を投げかけています。
日本財務戦略センターは、この問題に対する業界の対応を皆様にわかりやすく説明し、当社が信頼できるM&A環境の整備にどのように関わっているかを紹介します。
1. 不適切な買い手問題の概要と影響
M&Aは、中小企業オーナーが築いた事業を次のステージへ移行させる有効な手段です。しかし、悪質な買い手が関わるケースでは、取引が思わぬトラブルを引き起こすことがあります。
主な問題例として:
- 売り手側の資金を不正に活用するため、M&A時に手出しする資金を抑え、買収後遊興に被買収企業の運転資金を使う(LBO、分割購入、退職金での後払いなどのスキームを利用)。
- 支払い義務の遅延や経営者保証の未解除。
- 資金力が不十分な状態での取引推進。
これらのトラブルは、オーナーの事業価値を低下させるだけでなく、従業員の生活、取引先の関係、金融機関の安定性に悪影響を及ぼします。結果として、M&A全体への信頼が損なわれ、業界全体の課題となっています。
2. M&A仲介業界の現状とリスク要因
中小企業庁に登録されたM&A仲介事業者は2000社を超え、登録外の事業者も含めると業界はさらに多数のM&A会社が存在していると推察されます(自称も含め)。このような多様な環境では、事業者の経験や対応力が均一でない場合があり、一部の事業者による知識不足や不適切な取り扱いが、売り手側に予期せぬ損失を生むリスクがあります。
業界では、これに対応して買い手の背景調査や取引ルールの強化を推進していますが、業界の規模から、より体系的な対策が不可欠です。
3. 業界の信頼向上に向けた主な取り組み
M&A仲介業界では、信頼性を高めるための具体的な対策を講じています。
特定事業者リストの運用
中小企業庁に登録しているM&A仲介会社のうち、さらに厳格な自主規制ルールを講じて業界の健全化を図ろうとしている団体としてM&A支援機関協会が結成されました。構成企業は2025年8月9日現在で100‐200社程度の加盟状況です。その加盟企業の中から審査を通過した事業者だけが参加する「特定事業者リスト」というものがあり、悪質な買い手を共有し排除する効果的な取り組みを打ち出しました。中小企業庁登録事業者2000社以上、登録外事業者も含めた広大な業界の中で、このリストに参加するのは数十社程度の限られた事業者ですが、厳しいルールを遵守する意思がある責任ある事業者が共同で情報を管理しています。
リストは、取引後の不適切な行為(例: 保証解除の遅延、支払い不履行、資金不足によるトラブル)を記録し、共有することで予防を図ります。対象となった買い手は、長期間M&A市場から制限を受けます。この仕組みは、業界の透明
性を高め、安心できる取引環境を整えています。
詳細はこちら: 特定事業者リスト契約書の標準化
M&A支援機関協会では取引の明確化を目的とした契約書のテンプレートも活用しています。
日本財務戦略センターにおいても、以下の形式を踏まえ、売り手と買い手の保護を強化しています:
- 中小企業庁ガイドラインに準拠した契約書(事前合意を重視)。
- 自主規制に基づく契約書(譲渡後の保証管理を明確化)。
これらにより、取引条件を事前に定義および悪質な買い手をけん制し、リスクを低減します。
また、買い手の資金状況や信頼度の事前確認を徹底し、安全なM&Aを支援しています。
契約書詳細はこちら: 自主規制ルール啓発と知識共有の活動
業界では、専門家主催のワークショップや議論の場を通じて、悪質ケースの識別方法やリスク管理の知見を共有しています。これらの活動は、事業者のスキル向上を促し、業界全体の質を高めています。
4. 日本財務戦略センターの役割と責任
中小企業オーナーは、事業に精通していてもM&Aの複雑さに慣れていない場合があります。私たちM&A仲介事業者は、オーナーの立場を尊重し、事業の価値を守る義務があります。
日本財務戦略センターは、M&A支援機関協会に加盟し、特定事業者リストに参加していく事業者の一つとして、業界の信頼向上に努めています。このような取り組みを通じて、売り手オーナーの事業継続と関係者の安心を支え、健全なM&A市場の形成に貢献します。中小企業の発展を支援するため、日本財務戦略センターは引き続き責任あるサービスを提供してまいります。皆様のご理解をお願い申し上げます。


































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