はじめに:DMの数だけ、経営者の「違和感」は募っている
今朝も、あなたの会社に身に覚えのないM&A会社からDMが届きませんでしたか?
その封を切る経営者の心境は、期待ではなく「疲弊」や「不信感」に変わりつつあります。
SNSでは、「郵便物が届くたびに嫌悪感を覚える」「危機感を煽るマーケティング手法に品がない」という切実な声が絶えません。なぜ、上場企業という看板を掲げたM&A仲介会社が、これほどまでに「信頼できない」と言われるようになったのか。
そこには、国内に概算で【5,000人弱】という異常な数まで膨れ上がった「M&A営業マン」たちが、ノルマのためにひた隠しにする業界の構造的問題があるからでしょう。
2026年1月19日 追記 大手の実態については過去の記事でも触れてきましたが、つい先日、もはや笑えないレベルの「デッドボール級」にガバガバな案件を見つけてしまいました…。あなたの会社が「特定クイズ」のネタにされる前に、[こちらの最新記事]を必ず読んでおいてください.
1. 急造コンサルタントの深刻な実態
「大手には、百戦錬磨のプロが集まっている」というのは、もはや過去の話です。 最大手仲介会社のIR資料を分析すると、驚くべき実態が見えてきます。
採用者の前職は、証券、銀行、不動産、メーカー等の「他業界のトップセールス」が占めています。M&A実務経験者の採用割合は、極めて小さいのが現実です。 未経験の営業エリートを大量採用し、数ヶ月で現場に投入するシステムが確立されています。
ある若手担当者が、工場の社長にこう言われ、商談が20分で打ち切られたという話があります。
「兄ちゃんからは、インクと紙の匂いしかしない。現場の油の匂いがしねえんだよ」
専門用語で武装しても、経営の苦労を知らない「インクの匂い」の担当者に、30年守ってきた会社の重みは理解できないことを伺わせる逸話です。
2. 一人1件の成約が招く利益相反
現在、日本全体のM&A成約件数は年間約5,000件。対して、営業マンの数も約5,000人。つまり【一人の担当者が年間で成約させているのは、平均してわずか「1件」】です。
一人の担当者が年間1件しか成約できない世界で、高いノルマを課せられたらどうなるか。「説明がお客様目線ではなく、自分の手数料目線にすり替わる」という事態が起きます。
成約を急がせるために、デメリットを隠蔽する。
自分の成績(期限)のために、不当な条件で強行する。
信頼できそうな経歴を持つ担当者でさえ、この構造の中では「自分の成績」を優先せざるを得ないのです。
3. 毎年3割が入れ替わる組織の歪み
「一人1件」しか決まらない厳しい世界。その結果、業界では【毎年2割から3割】、千人単位の営業マンが脱落しています。しかし業界規模は拡大しているので、代わりにまた未経験者が補充される「自転車操業」が続いているといえるでしょう。
この激しい入れ替わりが、実務に致命的な欠陥をもたらします。
伝達ミス: 重要な条件が伝わっておらず、最終局面でトラブルになる。
無責任な集客: インターンに電話をかけさせ、獲得したアポを「辞める前提」の若手が担当する。
成約を急ぐあまり【仲介者としての善管注意義務】を尽くさず、買収監査(DD)の進行支援や資料の交通整理を放棄し、現場が混乱するケースが側聞されます。
4. 手数料優先による倫理の崩壊
最も恐ろしいのは、仲介者が手数料のために、リスクのある買い手を推奨するケースです。 近年、大臣が異例の注意喚起を行うほどの深刻な社会問題となった事例では、売り手が不安を訴えた際、担当者はこう言い放ちました。
「僕を信じてください」
しかし担当者は買い手が他の売り手とトラブルになっていたことを知ってこの発言をしていたとのことです。
結果、買い手は資産を吸い上げ、元経営者には多額の負債が残る「吸血型M&A」の被害が拡大しました。「説明すると手数料が入らなくなるから、あえて隠す」。そんな、プロとしてあってはならない姿勢が潜んでいます。
これでは騙されたというより共犯だったといわれても仕方ないかもしれません。
5. 成約後の現実と不当な交渉
M&Aは「成約して終わり」ではありません。むしろ、そこからが本当の試練です。
成約直前の理不尽な交渉: 契約締結のわずか数日前、賑やかな飲食店で買い手から「3,000万円値引きしてくれ」とハード交渉を迫られる。仲介者がこの土壇場の強弁を抑えられないケースすらあります(この場合、本当に知らなければ仲介会社の担当者も被害者と言えるかもしれませんが)。
成約後の統合失敗(PMI): 譲渡後、決算書には載らない「企業風土の違い」が露呈し、キーマンとなる従業員の離職に悩む。これが買収後の統合プロセスである「PMI」の難しさです。そもそも、買収監査(DD)の段階でリスクを誠実に洗い出し、買い手と誠実な調整を行っていれば、これほど多くのPMIトラブルは防げたはずです。成約を急ぐあまり、このプロセスを軽視することこそが、最大の不信感の正体なのです。
大手仲介会社は成約(手数料発生)までが仕事です。その後の「結婚生活」であるPMIで経営者がどれほど苦しもうと、彼らは次の案件を探して電話をかけ続けているのです。
6. 信頼できる担当者を見抜く5つの質問
後悔しないM&Aのために、【今すぐ、あるいは次回の面談時に必ず以下の5点を確認してください】。
「過去に『売却の中止』を進言した事例はありますか?」
「買い手の『過去の買収後の状況』を具体的に把握していますか?」
「連帯保証解除ができなかった場合のリカバリープランはありますか?」
「DD(調査)の際、買い手の過度な要求に対して交渉してくれますか?」
「あなたが退職した場合、誰が最後まで責任を持ちますか?」
これらの問いに淀みなく答えられない担当者に、あなたの人生を預けてはいけません。手遅れになる前に、今すぐ担当者の本質を確かめてください。
7. 結論:看板ではなく人間レベルの判断
「スピード成約」「業界No.1」。これらは、効率よく手数料を稼ぐための看板に過ぎません。
M&Aは、本来「面倒くさい」ものです。泥臭い調整、緻密な戦略、そして経営者の空気感の読み合い。それを「シンプル、迅速」と謳うこと自体、リスクの裏返しです。
M&Aの成功を分けるのは、看板の大きさではありません。
専門用語ではなく、現場の苦労に寄り添えるか。
成約直前のあなたの「震える手」を見て、「今はやめましょう」と言える勇気があるか。
譲渡後に訪れる「静かすぎる朝」に、共に居てくれる人間か。
後悔しないために、【今すぐ、面談時に担当者の本質を確認してください】。
5,000人の営業マンの中から、誰に命運を託すべきか。 その答えは、看板を剥がした【一人の人間としてのレベル】ただ一点に集約されます。
もしあなたが今、仲介担当者の対応に「違和感」を感じているなら、その直感を無視せず、以下の窓口を状況に合わせて使い分けてください。
■ 「これって不適切な行為では?」と疑っている場合
特徴: 国が定めた「中小M&Aガイドライン」に違反するような、不適切な仲介行為の具体例と報告窓口です。
活用シーン: 「強引な勧誘を受けた」「手数料の説明が不透明」「リスクを隠された」など、具体的なトラブルに直面している場合、まずここにある事例と照らし合わせてください。
■ 行政の中立な窓口で相談したい場合
特徴: 全国47都道府県に設置された公的機関。
活用シーン: 「仲介会社に相談する前に、まずは中立・公正な立場の意見が聞きたい」「親族承継も含めて幅広く検討したい」という方に最適です。
■ 業界のルールや健全性を確認したい場合
特徴: 業界の自主規制ルールを策定している主要団体。
活用シーン: 担当者の振る舞いが倫理規定に違反していないか、業界標準のルールを確認したい場合に有効です。
私たちのスタンス
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 ここまで業界の裏側を率直にお伝えしたのは、私たちが「件数」や「効率」のみを追うモデルとは一線を画すと決めているからです。
私たちが実務において遵守しているのは、以下の3点です。
現場の歩みに対する理解と尊重
決算書上の数字(EBITDA等)のみで判断するのではなく、その会社が長年積み上げてきた文化や現場の機微を理解した上で、適切な候補先の検討を行います。リスクを直視したDD(買収監査)の支援
成約を急ぐあまりリスクを曖昧にすることはいたしません。買収監査(DD)において発見された課題は誠実に共有し、成約後の統合プロセス(PMI)を見据えた現実的な調整を行います。また、必要に応じてPMIに精通した適切な専門家の紹介を含め、成約後を見据えたサポート体制を整えます。一貫した実務責任の遂行
私たちは、案件ごとに担当者が頻繁に入れ替わるような体制はとりません。一人の担当者が、初期のご相談から実務の細部に至るまで、責任を持って真摯に対応いたします。
もし、現在の進め方に少しでも違和感を覚えたり、客観的なセカンドオピニオンが必要だと感じられたなら、弊社に対してもいつでもお声がけください。私たちは看板の大きさではなく、一人の実務家として、誠実に事実と向き合うことをお約束します。
































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