ファクタリングには気をつけろ! 換金一秒、拘束一生!

今回は弊社が対応した取引先であった事例について紹介したいと思います。
特に中小企業経営者の皆さん、特に建設業を営む方々にぜひ読んでいただきたいです。
運転資金がピンチになったとき、「即日現金化」「審査不要」「借金じゃない」と甘い言葉で誘うファクタリングサービスを見たことはありませんか?
一見、救世主のように思えますが、実際は「換金一秒、拘束一生」というような落とし穴が待ち受けている可能性があります。
今回は、実際に起きた建設業者の悲惨な末路を基に、その恐ろしさを解説するので、資金繰りにお困りの事業者の片、一度立ち止まっていただき、あなたの会社が同じ道を歩まないよう、ぜひ最後までお読み頂いたうえでご検討ください。

事例:建設業者が招いた破滅とは

弊社の取引先の建設会社(仮にA社とします)の事例です。
元々業績はよく、売り上げも10億円を超えるなど、エリアでも認知の高い事業者でした。
ただコロナで受注が減り、粗利の低い受注が増え、材料費や人件費の支払いが重なる時期に、運転資金が底をつきそうになりました。
地元の信金がメインバンクだったのですが、定期預金の資金拘束をされたり、キャッシュに余裕がなくなりつつある時期でした。
そこで頼ったのがファクタリング業者です。
「売掛債権を買い取るだけ。借金じゃないから安心ですよ」との誘い文句に乗り、数千万円の債権をファクタリングの対象とし、数千万の現金が振り込まれました。
手数料は年利に換算すると100%を超える規模で高めでしたが、「一時しのぎだから」と納得し、手を出すことに。
しかし問題はここからです。
元々粗利が低い仕事を受注していたのに、年利換算とはいえ100%を超える金利のファクタリング。
気づいた時には自転車操業に火がついた状況です。
また別事業として行っていた建築の遅れもあり、追加のファクタリングを繰り返すことに。
業者からは最初は「現金化すぐできますよ」「簡単な書類だけでOK」と次々提案され、A社の代表は深く考えずに依存を深めていきました。
そんな中、ついに資金は底をつきます。
売掛先からの入金が遅れ、ファクタリングの返済(買取代金の充当)が滞りジャンプしようとします。
すると業者からは「なぜ、支払いが遅れたんですか。追加の債権はありますか? 無い? ではこれにハンコを押してください。そうしたら今回は帰ります。ハンコ一つで済みますよ」との一方的な押しかけの面談があったとのこと。
A社の社長は、疲労と焦りの中で詳細説明をろくに聞かず、言われるままに捺印しました。
実はこれが「債権譲渡契約の追加条項」で、全売掛債権の包括的な差し押さえ権を業者に与える内容でした。
よく読めば、返済遅延時は即座に売り上げについての債権回収を始め、裁判所を通さず強制執行可能と記されていたのです。
結果、A社の主要な売掛債権(数千万円規模)が一気に業者に押さえられ、取引先への支払いがストップしました。
もちろん施工中の工事もストップです。
協力業者や下請け会社に未払いが連鎖し、A社は倒産を余儀なくされました。
本件、弊社が弁護士を含め関与したことでA社の社長はその後、再起を期するようなダメージコントロールを行うことができたのですが、ファクタリング業者の言いなりになっていたら連鎖倒産により信用を失い、業界に戻ることはできなかったのではないでしょうか。
それくらい安易なファクタリングは注意を要すると言えるでしょう。
ファクタリング会社も数か月の間、年利換算で100%を超えるような手数料でファクタリングを行っていたら、それは倒産した際に債権回収できる前提で手数料収入を得るという頭があったのかもしれません。
つまり、A社を救う、というよりもA社が潰れる前提で、どういうリスクコントロールで収益を上げようか、という考えだったのでしょう。

ファクタリングの「隠れた毒」:なぜこんな事態になるのか?

ファクタリングは確かに「債権売買」ですが、以下の点で借金以上のリスクを孕んでいます。

1.手数料の罠と連鎖利用
表面上の手数料は10~30%と言われていますが、遅延時は違約金が上乗せされます。
また年率換算で100%超えるケースもざらです。
A社のように一度利用すると、資金繰りの悪化で繰り返し、雪だるま式に債務が増大します。

2.契約の不明瞭さと強引な押印誘導
業者の多くは「簡単」「即日」を売りに、詳細説明を省略する悪質な業者がいるようです。
A社の場合も大手業者でしたが、追加契約で「包括譲渡」「一括回収条項」が埋め込まれていました。
民法上、債権譲渡は有効ですが、説明不足は「公序良俗違反」で争える余地もあります。
ただし、今回はハンコを押してしまったことと倒産寸前で係争するための余力がなかったため、戦う余力はなく、ダメージコントロールを行うことになりました。

3.債権差し押さえの即時性
ファクタリングは「買取」なので、返済遅延で即座に債権を回収可能です。
銀行融資なら担保執行に時間かかりますが、ここは即時に可能です。
ファクタリング会社の顧問弁護士からすぐ、事前にヒアリングしている取引先に通知が行きます。
今回もA社の売掛先は混乱し、「誰に支払えばいい?」と取引停止に追い込まれました。
「何とかしてくれたら金は払う」と言われたのはA社の社長との関係でしたが、逆にそれも無ければすぐ取引が切られたでしょう。

4.貸金業法の規制外ゆえの乱暴な業者氾濫
ファクタリングは売掛債権の譲渡契約であるため、貸金業法の適用を受けず、貸金業登録が不要です。
これにより金利の上限規制(利息制限法)や取り立て禁止規定が及ばず、悪質業者が野放しになりやすいのが実情です。
金融庁もファクタリングを装った高金利貸付(ヤミ金)を違法として注意喚起しており、登録なしの偽装業者が給与や売掛を悪用する事例が急増しています。
過去には、ファクタリング業者が金利を得て貸金業法違反で逮捕されたケースもあり、取り立ての厳しさ(脅迫めいた連絡や即時差し押さえ)が問題視されています。

日本貸金業協会も、こうした「ファクタリング偽装ヤミ金」の事例を例示して警鐘を鳴らしています。
A社のケースも、この規制の隙間を突いた業者の強引さが倒産を加速させた典型例です。
…という上記についての注意喚起をしている大手が今回のファクタリング先だったこともあり、ファクタリングを行う際は自分個人だけの判断ではなく、メインバンクには聞きづらいと思うものの、様々な顧問先に確認してみる必要があるのではないでしょうか。

結論

弊社はファクタリングを一概に否定しているわけではありません。
創業時にファクタリングを利用しキャッシュフローを安定させ、売り上げを2億程度の規模に拡大した介護事業者などとも取引があるので、成功した事例も存じております。
ただし売り上げが下降気味な際に利用することについて、しかも十分な説明を受けていなかったり、理解せず利用してしまうことに対して注意喚起を行いたいと考えております。
今回の件もファクタリングを利用しなかったとして倒産に至った可能性は高いと思いますが、ただどう事業を整理するかによって、取引先に迷惑をかけないか、つまり公平に債権者に対して債権の分配ができたのではないかという考え方はあると思います。
下請けその他にしてもファクタリング会社が契約とはいえ、優先的に差し押さえをしたらそれは面白くないでしょうし、自分たちに対しても影響が出ますよね。

会社が追い込まれても責任の取り方がきちんとしていたら再起はできますし、そういう例はいくらでもあります。
ファクタリング会社を利用することによってそのようなチャンスを失うのはあまりにももったいない。
そうなる前に一度どのように再起を図るかを検討するのは一つの選択肢でしょうし、弊社もお力になれると思いますのでお気軽にご相談ください

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