ストライク社のDM大幅削減に見るM&A仲介業動向について

「M&A仲介大手ストライク『DM大幅削減』の波紋/競争激化で業界全体の成約率は低下傾向、業界再編の兆しも」に読む業界動向

 

M&A仲介業界は、事業承継ニーズの拡大を背景に急成長を続けています。
今回は東洋経済オンラインの報道(2025年11月号)で取り上げられたストライク社のDM(ダイレクトメール)営業の大幅削減はについて触れてみたいと思います。
同社は2025年9月期に売上高203億円(前年比12%増)を達成したものの、営業利益は63億円(同6.5%減)と計画未達となりました。
成約件数は275件(同23件増)と堅調ですが、DMの効果低下と競合激化が変動費を上昇させ、利益を圧迫したといえるでしょう。
競合のM&A総研HDも営業利益41%減と苦戦しており、比較的新興といえる大手企業の業界でのパフォーマンスが下がっているように見受けられます。
ストライク社の動きに対するSNSとネットニュースの反応は、二極化しています。
一方では「コストコントロールの賢明な判断」と評価する声が目立ちます。
匿名アカウントも「うちもDMはするなといわれた」というポストが見られました。
また投資家アカウントからは「DM依存からの脱却で、デジタルシフトが進む。成約率低下は一時的で、再編チャンス」との投稿が見られます。

ブログなどでも「広告費抑制が財務健全化の鍵」と好意的に分析されています。
一方、否定的意見は優勢で、「そもそもDMが響かないというということは業界全体で新規リードが減り、成長停滞のシグナルではないのか」と警鐘を鳴らしている考え方もあります。

加えて一般郵便の郵送料値上げが追い打ちをかけています。
日本郵便は2024年10月1日から30年ぶりの大幅改定を実施し、定形郵便物の料金が17%~31%上昇しました。
例えば25g以内の定形郵便は84円から110円へ、はがきは63円から85円へ値上げされました。
さらに2025年11月1日にはゆうメールの基本運賃も10円~20円引き上げられ、DMのような大量郵送事業者にとってコスト負担が急増しています。
これによりM&A仲介業のDM依存モデルは負担が増えてきていると言えるでしょう。

またDMのレピュテーションリスクも無視できません。
X上で「M&A  DM 晒し」などのキーワード検索をすると、DMの苦情投稿が散見されます。
例えば経営者からの投稿では「***から来たDM、内容がテンプレで胡散臭い。ゴミ箱行き」との声があり、画像付きでDMの文面が公開されています。
別の投稿では「M&AのDMが毎日届く。***のやつは特にしつこくて、晒して警告」と、具体的なDMサンプルが共有され、ビューを集めています。
これらは単なる不満を超え、業界全体の信頼低下を招いています。
このようなレピュテーションリスクが発生しているため、コストが上がり、成約率低下を低くなっているDMをするのは、ネガティブなイメージからの脱却としても、必要悪なのかといえるのかもしれません。

DM削減の代替として、電話営業やメール、SNSなどのチャネルシフトが注目されます。
しかしここで懸念されるのが「迷惑電話の増加」です。
M&A仲介の電話営業は、元々「しつこい」との悪評が高いようで、ネット上で「ゾンビ軍団のような電話が毎日かかってくる」との愚痴が溢れています(切っても切っても襲ってくるっていう話なんでしょうね)。
中小企業の社員から「社長に取り次げと強引に迫る」「断っても担当が変わって再コール」との苦情が相次ぎ、愚痴がネット上でもこぼされています。

ストライクのDM削減が電話営業のシフトを促す可能性は高く、業界の営業モデルは「人海戦術」に依存しています。
テレアポ1日200件がノルマの会社も少なくなく、ダイヤモンド・オンラインの現役社員インタビューでは、「DMが効かなくなったら、コールドコールが増える」と暴露されています。
Xの投稿でも「DM減でコールが増え、迷惑度アップ」との指摘があり、経済産業省のM&A支援機関登録事務局からも「迷惑営業の注意喚起」が2025年4月に発出されました。
この結果、業界全体のイメージ低下を招き、成約率をさらに押し下げる悪循環が生じています。
さらに深刻なのは、採用増加による「労働集約型」への回帰です。
この労働集約化は財務面でも課題になるでしょう。
というのはDMなどのルートでの獲得が減り、営業電話への負荷が上がるのであればさらに人の確保が必要になると推定されるからですし、それにより迷惑電話はさらに増えるでしょう。

こうしたジレンマを乗り越えて案件を獲得できるチャネルがある企業(M&Aセンター?)以外が脱落していくことになるのでしょうか。

弊社では引き続ぎご依頼いただける企業様のご迷惑にならない形をとりつつ、業界の活性化に資していきたいと考えております。
迷惑営業にお困りの方は、監督官庁にご相談されるか、弊社までお気軽にお問い合わせください。

コメント

この記事へのコメントはありません。

先着順
おすすめ記事
人気の記事
  1. 2025年最低賃金引き上げが中小企業に与える影響は? 

  2. 不動産賃貸仲介・管理会社のM&A! ニーズが高まる理由と注意点

  3. 不動産M&Aで後継者問題を解決! 売り手社長が日本財務戦略センターに語る体験記

  4. 事業承継の希望を繋ぐ:大阪の食品製造業オーナーのケース

  5. 2025年度上半期の企業倒産動向:中小企業の忍耐力が試される時代到来?

  6. NPO法人のM&Aはできる? 営利法人との違いとM&A

  1. 事業再生とM&A:危機を乗り越え、未来を切り開く

  2. M&Aとは? メリット・デメリットや手法を日本財務戦略センターが解説!

  3. 2025年導入のミニマムタックスがM&Aに与える影響とは?

  4. M&Aを成功に導くPMI(経営統合):中小企業が押さえるべきポイント

  5. M&Aの未来をAIは変えるか?:事業承継の新たな選択肢

  6. 中小企業M&Aの信頼を支える:不適切な買い手問題と業界の取り組み

  1. NPO法人のM&Aはできる? 営利法人との違いとM&A

  2. 大手上場M&A仲介企業が敗訴! 競業避止義務の争いから何が見えるのか:M&A仲介の光と影

  3. 高市政権支持率82%の衝撃! 自維連立、“女性首相旋風”による中小企業に対する影響は!?

  4. M&A仲介の迷惑電話をぶっ飛ばせ! ストレス撃退のマル秘テクニック

  5. ストライク社のDM大幅削減に見るM&A仲介業動向について

  6. 特定事業者リスト制度、2025年4月1日大幅改訂!不適切な買い手から売り手を守り、安心のM&Aを

関連記事