この記事の要点
<a href="https://jfsc.jp/research/kensetsu-shoukei/">資本金300万円の会社でも、許可ごと渡せる|認可は1,092件、失効は17,998社――建設業法17条の2と、合併657社の行き先|株式会社日本財務戦略センター</a>文章での出典表記:株式会社日本財務戦略センター「資本金300万円の会社でも、許可ごと渡せる|認可は1,092件、失効は17,998社――建設業法17条の2と、合併657社の行き先」(2026年9月21日) https://jfsc.jp/research/kensetsu-shoukei/建設業の許可を持つ会社を、誰かに引き継ぎたい。そう考えたときに最初に気になるのは、許可がどうなるかです。
建設業法には、こう書かれています。
第十七条の二 建設業者が許可に係る建設業の全部(中略)の譲渡を行う場合(中略)において、譲渡人及び譲受人が、あらかじめ当該譲渡及び譲受けについて、(中略)認可を受けたときは、譲受人は、当該譲渡及び譲受けの日に、譲渡人のこの法律の規定による建設業者としての地位を承継する。
建設業法 第17条の2 第1項
事前に認可を受ければ、譲り渡した日に、許可ごと引き継がれます。
2項が合併、3項が分割、そして第17条の3が相続です。いずれも同じ形で、あらかじめ認可を受ければ、その日に地位が移ります。相続だけは事前にというわけにいかないので、死亡後30日以内に申請することになっていて、申請すれば死亡の日から認可の通知が届く日までは、亡くなった方への許可が相続人へのものとみなされます(17条の3第2項)。許可が切れている期間が生まれないようにした規定です。
この制度について、国土交通省は報道発表の中で「令和2年に開始した建設業許可の承継制度」と書いています。比較的新しい仕組みです。
国土交通省は毎年、建設業の許可業者数を調査して公表しています。令和8年3月末時点の許可業者は483,823社でした。この調査には、事業承継の認可が何件あったかも載っています。

本記事の内容は、出典リンクつきでご自由に引用いただけます(CC BY 4.0)。コピー用の引用タグは ページ冒頭の枠 にあります。
令和7年度に承継の認可を受けたのは1,092件です。同じ年度に許可が失効したのは17,998社でした。
失効の内訳は、廃業の届出を出した会社が8,273社、更新の手続きをしなかったことで許可が切れた会社が9,725社です。後者は前年度から111.6%増えています。
許可を失った会社が、渡した会社の16倍あった。
もっとも、この2つを並べるときには気をつける点があります。失効の中には、後継者がいても事業をたたむと決めた会社も、もともと休眠していた会社も、更新を忘れただけの会社も混じっています。全部が「渡せたはずなのに渡せなかった」わけではありません。また、承継の認可を使わずに、いったん廃業を届け出て許可を取り直した場合は、事業が続いていても失効の側に数えられます。その件数は公表されていません。
それでも、16倍の開きがあります。許可を渡すのではなく、失って終わりにする会社のほうが、はるかに多いという形にはなっています。

1,092件の内訳は、譲渡及び譲受けが954件、合併が79件、分割が33件、相続が26件です。譲渡及び譲受けが全体の87.4%を占めます。大臣許可が28件、知事許可が1,064件でした。
都道府県別に見ると、知事許可1,064件のうち多いのは福岡88件、大阪69件、東京55件、兵庫55件、京都53件です。ただしこれは許可業者の数が多い県ほど多くなります。県内の許可業者数で割ると、鳥取6.11‰、石川5.98‰、沖縄5.92‰、和歌山5.52‰が高く、千葉0.67‰、岩手0.74‰、北海道0.77‰、福島0.82‰が低くなります。全国では2.20‰です。
制度を使う頻度は、最も高い県と最も低い県で9倍ちがいます。ただし件数の少ない県では、1年分の数字は振れやすい点に注意が要ります。
許可のいる業種の法律を、合併したときにどうなるかで並べました。

飲食店は食品衛生法56条により、事業を譲り渡した場合でも許可が当然に承継され、手続きは事後の届出だけです。自動車の特定整備事業も道路運送車両法82条・83条で同じ扱いで、30日以内に届け出ます。
建設業は事前の認可が要ります。運送業も貨物自動車運送事業法30条で認可、旅館とホテルは旅館業法3条の3で承認です。宅地建物取引業にいたっては、合併で法人が消えれば免許も消えます。
そして建設業には、もうひとつ条件があります。17条の2第4項で第7条・第8条(特定建設業なら第8条・第15条)が準用されているので、譲り受ける側が許可の要件を満たしている必要があります。経営業務の管理体制、専任技術者、財産的基礎、欠格要件です。渡す側の資本金についての条件は条文に見当たりませんが、受ける側には財産的基礎などの要件がかかります。
もうひとつ、地味ですが効く規定があります。17条の2第7項により、承継後の許可の有効期間は、残っていた期間にかかわらず承継の日の翌日から起算し直されます。更新の時期が近い会社を引き継いでも、5年が振り直されることになります。
ここからは、制度の話ではなく、実際に起きたことです。
国税庁の法人番号公表データには、法人が合併によって消滅したことと、その事業を承継した法人の番号が記録されています。商号に建設に関する語を含む会社を抽出したところ、合併で消滅した法人が657、承継先まで判明したものが655ありました。

このうち315は、売り手と買い手が同じ住所にあるか、商号の語幹を共有していて、同じ企業グループ内の再編と見られるものでした。割合にすると48.1%です。残る340件を第三者への承継として扱います。

340件について、売り手の本店所在地と承継先の本店所在地を比べました。同じ市区町村にあったのは152件で44.7%、同じ都道府県まで広げると270件で79.4%です。県をまたいだ承継は20.6%でした。
当社が同じ方法で調べた他の業種と比べます。同じ市区町村だった割合は、介護40.2%、飲食34.1%、宅建32.6%、薬局10.9%でした。建設の44.7%が最も高くなります。
建設は、いちばん近いところで引き継がれている業種でした。
なぜ建設がいちばん近いのかは、このデータからは分かりません。
340件を引き取ったのは325法人です。そのうち310法人、95.4%は1回しか登場しません。2回登場した法人が15ありましたが、それが最多です。
建設会社を次々に買い集めている会社は、少なくともこの合併の記録の中にはいませんでした。
引き取った側の商号に建設に関する語が入っていたのは87件、25.6%です。残りの4分の3は、商号を見るかぎり建設とは限りません。ただし商号だけでは業種は分からないので、ここは目安にとどめます。
買い集める会社が見当たらない背景には、建設業そのものが小さい会社の集まりだという事情がありそうです。

国土交通省の同じ調査で、許可業者を資本金の階層で分けています。最も多いのは資本金300万円以上500万円未満の法人で21.0%、次が500万円以上1,000万円未満で20.1%、その次が1,000万円以上2,000万円未満で19.5%です。
個人事業主と資本金3億円未満の法人を合わせると481,538社で、許可業者全体の99.5%を占めます。
そして減り方には偏りがあります。許可業者が最も多かった平成12年3月末と比べると、全体では19.5%減っていますが、個人事業主は58.5%減、資本金1,000万円以上2,000万円未満の法人は43.2%減でした。小さいところから消えています。
建設業の許可は、2020年から返さずに渡せるようになりました。制度としては、渡す道が用意されています。
それでも、去年許可を失った会社は17,998社、承継の認可は1,092件でした。制度があることと、使われることは別のようです。
そして実際に引き継がれた案件を見ると、引き取ったのは同じ市区町村の会社で、その多くは一度きりの買い手でした。大きな会社が遠くから買い集めているという形ではありません。
数えられたのは合併だけです。会社ごと株式を譲る形は法人番号のデータに記録が残らないので、ここには含まれていません。その数は、外からは見えません。
引き継ぎ方は3つに分かれます。会社ごと株式を譲るなら、許可の名義人である法人が変わらないので、許可はそのまま続きます。事業譲渡・合併・分割で渡すなら、建設業法17条の2の認可を、事前に受けることになります。相続の場合は17条の3で、死亡後30日以内の申請です。
認可には、譲り受ける側が許可の要件を満たしていることが必要です。経営業務の管理体制と専任技術者は人に紐づくので、引き継ぎのときにその人がどうなるかは、早い段階で確かめておく論点になります。
また、一般建設業と特定建設業の組み合わせによっては、17条の2の対象から外れます。大臣許可と知事許可をまたぐ場合は、承継の日に大臣許可を受けたものとみなされ、知事許可は効力を失います(同条6項)。
当社では建設業のM&A・事業承継として手順を整理しています。自社の場合にどうなるかを一度整理したいという段階のご相談も、お問い合わせから承っています。
建設業の許可は、会社を譲っても引き継げますか。
引き継げます。建設業法第17条の2により、譲渡人と譲受人があらかじめ認可を受けたときは、譲り受けた側が譲渡及び譲受けの日に建設業者としての地位を承継します。合併は同条2項、分割は3項、相続は第17条の3です。この制度は2020年(令和2年)に始まりました。
認可を受けるのに、譲り受ける側の条件はありますか。
あります。第17条の2第4項で第7条・第8条(特定建設業なら第8条・第15条)が準用されるので、譲り受ける側が建設業許可の要件を満たしている必要があります。経営業務の管理体制、専任技術者、財産的基礎、欠格要件です。なお、譲り渡す側の資本金についての条件は条文に見当たりません。
承継したあと、許可の有効期間はどうなりますか。
第17条の2第7項により、承継の日における残りの期間にかかわらず、承継の日の翌日から起算し直されます。更新の時期が近い会社を引き継いだ場合でも、そこから5年になります。
相続の場合、いつまでに手続きすればよいですか。
第17条の3第1項により、被相続人の死亡後30日以内に認可を申請します。申請をしたときは、同条2項により、死亡の日から認可または不認可の通知を受ける日までは、被相続人に対してした許可が相続人に対してしたものとみなされます。許可が切れている期間が生まれないようにした規定です。
実際に、年に何件くらい承継されていますか。
国土交通省の調査によると、令和7年度の事業承継認可は1,092件でした。大臣許可が28件、知事許可が1,064件です。内訳は譲渡及び譲受け954件、合併79件、分割33件、相続26件で、譲渡及び譲受けが87.4%を占めます。同じ年度に許可が失効したのは17,998社でした。
合併で消えた建設会社は、どこに引き継がれていますか。
国税庁の法人番号公表データから合併で消滅した建設関連の法人657を抽出したところ、承継先が判明した655のうち315(48.1%)が同じ企業グループ内の再編と見られるものでした。残る340件について本店所在地を比べると、同じ市区町村が152件(44.7%)、同じ都道府県まで広げると270件(79.4%)です。同じ市区町村だった割合は、当社が調べた11業種で最も高くなりました。
引き継ぐのは、大きな会社ですか。
340件を引き取ったのは325法人で、そのうち310法人(95.4%)は1回しか登場しません。建設会社を次々に買い集めている会社は、この記録の中にはいませんでした。また建設業の許可業者483,823社のうち、個人事業主と資本金3億円未満の法人が481,538社、99.5%を占めます。
この集計に含まれていないものはありますか。
合併だけです。会社ごと株式を譲る形や、事業を個別に譲る形は法人番号のデータに記録が残らないため含まれていません。また母集団は商号に建設に関する語を含む法人で、商号だけでは業種は確定できません。
<a href="https://jfsc.jp/research/kensetsu-shoukei/">資本金300万円の会社でも、許可ごと渡せる|認可は1,092件、失効は17,998社――建設業法17条の2と、合併657社の行き先|株式会社日本財務戦略センター</a>文章での出典表記:株式会社日本財務戦略センター「資本金300万円の会社でも、許可ごと渡せる|認可は1,092件、失効は17,998社――建設業法17条の2と、合併657社の行き先」(2026年9月21日) https://jfsc.jp/research/kensetsu-shoukei/同じ方法で、業種ごとに「許可はどうなるか」と「実際にどこへ引き継がれたか」を数えています。