この記事の要点
<a href="https://jfsc.jp/research/inshoku-shoukei/">1店だけの店でも、M&Aされている|引き取ったのは、施設4つほどの会社だった――飲食447社の行き先と、食品衛生法56条|株式会社日本財務戦略センター</a>文章での出典表記:株式会社日本財務戦略センター「1店だけの店でも、M&Aされている|引き取ったのは、施設4つほどの会社だった――飲食447社の行き先と、食品衛生法56条」(2026年9月21日) https://jfsc.jp/research/inshoku-shoukei/飲食店を営むには、食品衛生法第55条により都道府県知事の許可が要ります。この許可を持ったまま事業を他人に渡せるのかどうかが、店を畳むか譲るかを考えるときの出発点になります。
条文はこうなっています。
第五十六条 前条第一項の許可を受けた者(以下この条において「許可営業者」という。)が当該営業を譲渡し、又は許可営業者について相続、合併若しくは分割(当該営業を承継させるものに限る。)があつたときは、当該営業を譲り受けた者又は相続人(中略)、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人若しくは分割により当該営業を承継した法人は、許可営業者の地位を承継する。
2 前項の規定により許可営業者の地位を承継した者は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。食品衛生法 第56条
譲渡でも合併でも相続でも、許可は当然に引き継がれます。
承認も認可も要りません。手続きは、引き継いだ後に届け出るだけです。しかも期限は日数ではなく「遅滞なく」と書かれています。
この扱いがどれくらい軽いのかは、他の業種と並べないと分かりません。同じように許可や免許のいる事業について、合併したときにどうなるかを条文で確かめました。

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自動車の特定整備事業も、道路運送車両法第82条と第83条により、合併・相続・分割だけでなく事業の譲渡でも地位が承継され、30日以内の届出で済みます。飲食と並んで軽い側です。
旅館とホテルは旅館業法第3条の3により、都道府県知事の承認を受ければ承継されます。運送業は貨物自動車運送事業法第30条で認可が要ります。医療法人については、厚生労働省が通知で「病院開設の許可…を自動的にかつ包括的に承継する」としています。
薬局と介護は、承継についての規定そのものが見当たりません。そして宅地建物取引業では、合併で法人が消えれば免許も消えます。
同じ「許可のいる商売」でも、譲るときの重さはまったく違う。
国税庁の法人番号公表データには、法人が合併によって消滅したことと、その事業を承継した法人の番号が記録されています。ここから商号に飲食に関する語を含む会社を抽出したところ、合併で消滅した法人が447、承継先まで判明したものが443ありました。

このうち258は、売り手と買い手が同じ住所にあるか商号の語幹を共有していて、同じ企業グループ内の再編と見られるものでした。割合にすると58.2%です。残る185件を第三者への承継として扱います。

185件について、売り手の本店所在地と承継先の本店所在地を比べました。同じ市区町村にあったのは63件で34.1%、同じ都道府県まで広げると113件で61.1%でした。県をまたいだ承継は38.9%です。
当社が同じ方法で調べた他の業種と比べると、介護は同じ都道府県が79.3%、宅建業は76.0%、薬局は41.1%でした。飲食はその中間にあたります。
厚生労働省の食品衛生申請等システムから公開されている営業許可の一覧には、法人番号の欄があります。これを使って、承継に関わった会社が許可を受けている施設の数を数えました。

承継先については89法人を確認できました。施設数の中央値は4です。1施設だけの法人が21.3%、2〜3施設が24.7%、4〜10施設が29.2%を占めます。51施設以上を持つ法人は3.4%しかありませんでした。
売り手については12法人しか確認できませんでした。合併で消滅した法人は一覧からも消えるためです。参考として示すと、12法人のうち7法人は施設がひとつだけでした。12という数では分布は語れませんが、店がひとつだけの会社も合併の相手になっている、ということは確かめられます。
比べる相手として、この一覧に法人番号が入っている112,112法人全体を見ると、施設数の中央値は1、1施設だけの法人が56%を占めます。
引き取った側の半分は、施設が4つ以下の会社でした。
当社が別に調べた薬局では、承継先の店舗数は中央値24でした。飲食は4です。同じ合併でも、引き継ぐ相手の大きさがまったく違います。
この一覧について、ひとつ断っておくことがあります。掲載されているのは、申請者が掲載に賛同した分だけです。すべての営業許可が載っているわけではありません。また法人番号の欄が埋まっているのは全体の40.7%です。ここでの数字は、その範囲の中での話になります。
第三者への承継185件を合併の年で数えると、2016年15件、2017年20件、2018年22件、2019年14件、2020年11件、2021年22件、2022年14件、2023年16件、2024年13件、2025年30件でした。2026年の5件は年の途中までです。2020年が最も少なく、2025年が最も多くなっています。
飲食店の許可は、譲っても合併しても引き継がれます。制度の側から見れば、店を譲るときの障害がいちばん少ない業種のひとつです。
実際に起きていたのは、施設が4つほどの会社が引き取り手になるという、小さな規模の動きでした。第三者への承継185件を引き取ったのは174法人で、そのうち168法人、96.6%は1回しか登場しません(5章の89法人は、この174法人のうち営業許可の一覧と突き合わせて施設数を確認できた分です)。同じ会社が繰り返し買い集めている、という形ではありませんでした。
数えられたのは合併だけです。会社ごと株式を譲る形や、店舗を個別に譲る形は、法人番号のデータに記録が残りません。それがどれだけあるのかは、外からは分かりません。
許可の扱いは、渡し方で変わります。会社ごと株式を譲るなら、許可の名義人である法人が変わらないので、そのまま続きます。事業を譲渡する場合も、合併や分割の場合も、食品衛生法第56条により許可は承継され、遅滞なく届け出ることになります。個人で営んでいて相続が起きた場合も同じです。
ただし、許可が引き継げることと、店が引き継げることは同じではありません。店舗の賃貸借契約、設備のリース、従業員の雇用、仕入先との取引は、それぞれ別に移す必要があります。合併では包括的に移りますが、事業譲渡では一つずつ契約を結び直すことになります。
また、許可には有効期限があり、施設基準を満たしていることが前提になります。設備が古くなっていて更新のときに基準に合わない、という事態は、譲り受ける側が最初に確認するところです。
当社では飲食業のM&A・事業承継として手順を整理しています。自社の場合にどうなるかを一度整理したいという段階のご相談も、お問い合わせから承っています。
飲食店を譲渡すると、営業許可はどうなりますか。
食品衛生法第56条により、営業を譲り渡した場合、譲り受けた者が許可営業者の地位を承継します。承認や認可は要りません。承継した者が遅滞なく、その事実を証する書面を添えて都道府県知事に届け出ることになります。合併・分割・相続の場合も同じ扱いです。
届出の期限は何日ですか。
食品衛生法第56条第2項は「遅滞なく」と定めており、日数では書かれていません。参考までに、自動車の特定整備事業では道路運送車両法第82条第2項により30日以内、宅地建物取引業の廃業等の届出は宅建業法第11条により30日以内とされています。
許可が引き継げるなら、店もそのまま引き継げますか。
許可の承継と、店の承継は別です。店舗の賃貸借契約、設備のリース、従業員の雇用、仕入先との取引は、それぞれ移す必要があります。合併であれば包括的に移りますが、事業譲渡では一つずつ契約を結び直すことになります。また許可には有効期限があり、施設基準を満たしていることが前提になります。
他の業種と比べて、飲食の許可の承継は軽いのですか。
軽い部類です。事業の譲渡でも当然に承継されるのは、今回条文で確かめた範囲では飲食(食品衛生法56条)と自動車の特定整備事業(道路運送車両法83条)でした。旅館・ホテルは承認、運送と建設は認可が要ります。宅地建物取引業では、合併で法人が消えれば免許も消えます。
合併で消えた飲食の会社は、どこに引き継がれていますか。
国税庁の法人番号公表データから合併で消滅した飲食関連の法人447を抽出し、承継先が判明した443のうち258(58.2%)が同じ企業グループ内の再編と見られるものでした。残る185件について本店所在地を比べると、同じ市区町村が63件(34.1%)、同じ都道府県まで広げると113件(61.1%)で、県をまたいだ承継は38.9%でした。
引き継ぐ側は、大きなチェーンが多いのですか。
そうではありませんでした。営業許可の一覧と法人番号で突き合わせたところ、承継先89法人の施設数は中央値4で、51施設以上を持つ法人は3.4%でした。売り手側は12法人しか確認できず、そのうち7法人は施設がひとつだけでした。当社が別に調べた薬局では承継先が中央値24店舗でしたので、飲食の引き取り手はかなり小さい会社です。
この集計に含まれていないものはありますか。
合併だけです。会社ごと株式を譲る形や、店舗を個別に譲る形は法人番号のデータに記録が残らないため、含まれていません。また施設数の集計に使った営業許可の一覧は、申請者が掲載に賛同した分だけが載っており、法人番号の欄が埋まっているのは全体の40.7%です。
<a href="https://jfsc.jp/research/inshoku-shoukei/">1店だけの店でも、M&Aされている|引き取ったのは、施設4つほどの会社だった――飲食447社の行き先と、食品衛生法56条|株式会社日本財務戦略センター</a>文章での出典表記:株式会社日本財務戦略センター「1店だけの店でも、M&Aされている|引き取ったのは、施設4つほどの会社だった――飲食447社の行き先と、食品衛生法56条」(2026年9月21日) https://jfsc.jp/research/inshoku-shoukei/同じ方法で、業種ごとに「許可はどうなるか」と「実際にどこへ引き継がれたか」を数えています。