RESEARCH

薬局の買い手は、県の外から来る

6割が県をまたぎ、引き取ったのは24店舗の会社だった――薬局580社の行き先と、薬機法に承継の規定が無い許可
2026年9月21日 株式会社日本財務戦略センター

この記事の要点

  1. 薬局を引き継ぐとき、手続きが二重に走ります。薬機法の開設許可と、健康保険法の保険薬局の指定です。前者には承継の規定が置かれていません。
  2. 後者の運用が2026年9月1日に組み替わりました。昭和32年から使われてきた通知が8月31日限りで廃止され、新しい判断基準に置き換わっています。
  3. 新しい基準では、保険の指定を前の薬局の廃止日までさかのぼらせるために、患者・調剤録・管理薬剤師・薬剤師の継続を7つの項目で見ます。
  4. 合併で消えた薬局580社のうち、第三者に引き継がれた450社では、6割近くが県をまたいでいました。引き取った側の店舗数は中央値24です。
【引用・転載について】
本記事は、事前のご連絡なしにご自由に引用・転載いただけます(CC BY 4.0)。引用の条件として、当記事へのリンク(出典明記)をお願いします。
Webサイトでの引用タグ(そのままコピーしてお使いください)
<a href="https://jfsc.jp/research/yakkyoku-shoukei/">薬局の買い手は、県の外から来る|6割が県をまたぎ、引き取ったのは24店舗の会社だった――薬局580社の行き先|株式会社日本財務戦略センター</a>文章での出典表記:株式会社日本財務戦略センター「薬局の買い手は、県の外から来る|6割が県をまたぎ、引き取ったのは24店舗の会社だった――薬局580社の行き先」(2026年9月21日) https://jfsc.jp/research/yakkyoku-shoukei/
※ 他機関(官公庁・調査会社など)の公表数値を含む箇所は、それぞれの元資料の利用条件に従ってください。

1 薬局を引き継ぐとき、止まるのは許可ではありません

薬局を他社に引き継ぐ場面で、売り手がまず気にするのは「許可はどうなるのか」だと思います。ところが実務で問題になるのは、そこではありません。

薬局には、性格の違う二つの公的な地位があります。ひとつは医薬品医療機器等法(薬機法)第4条の薬局開設許可で、都道府県知事などが出します。もうひとつは健康保険法第65条の保険薬局の指定で、地方厚生局長が出します。前者が無ければ薬局を開けません。後者が無ければ、開いていても保険調剤ができません。

引き継ぎで収入が止まるのは、後者が途切れたときです。開設許可を取り直している間も、保険の指定が無い日があれば、その日の調剤は保険の対象になりません。

薬局開設許可(医薬品医療機器等法第4条・都道府県知事等)と保険薬局の指定(健康保険法第65条・地方厚生局長)という二つの地位を並べた図
薬局には性格の違う二つの地位がある。収入が止まるのは保険薬局の指定が途切れたとき

本記事の内容は、出典リンクつきでご自由に引用いただけます(CC BY 4.0)。コピー用の引用タグは ページ冒頭の枠 にあります。

2 薬機法には、薬局の承継規定が置かれていません

薬機法のうち薬局を定めているのは第4条から第11条までです。この範囲を全文で検索すると、「承継」「相続」「合併」「分割」という語は一度も出てきません。事業を譲り受けた側が前の開設者の地位を引き継ぐ、という条文が無いということです。

これを「法律に書いていない」と言ってしまうと、少し違います。同じ薬機法の第14条の8には、承継の規定がはっきり置かれているからです。

(承継)第十四条の八 第十四条の承認を受けた者(以下この条において「医薬品等承認取得者」という。)について相続、合併又は分割(当該品目に係る厚生労働省令で定める資料及び情報(以下この条において「当該品目に係る資料等」という。)を承継させるものに限る。)があつたときは、相続人(中略)、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割により当該品目に係る資料等を承継した法人は、当該医薬品等承認取得者の地位を承継する。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第14条の8

この条文が対象にしているのは医薬品等承認取得者、つまり医薬品の製造販売承認を持つ者です。薬局開設許可ではありません。

同じ法律の中に承継の条文を書く場所はある。それでも、薬局開設許可には置かれていない。

他の業種の法律と、薬局の承継規定を並べてみる

薬局だけを見ていると、これが普通のことなのか判断できません。そこで、同じように許可を要する他の業種の法律を条文で確かめました。

食品衛生法・旅館業法・貨物自動車運送事業法・医薬品医療機器等法で、事業譲渡と合併分割と相続のときに許可を承継できるかを比べた表。飲食は届出で承継、旅館とホテルは承認で承継、運送は認可だがただし書で不要の場合あり、薬局は3つとも規定なし。相続の空白を埋めるみなし規定も薬局だけ無い
許可を引き継げるかどうかは業種の法律で違う。薬局だけ承継の条文が置かれていない

飲食店は食品衛生法第56条で、譲渡・相続・合併・分割のいずれでも「許可営業者の地位を承継する」と定めています。手続きは届出です。旅館とホテルは旅館業法第3条の2と第3条の3で、都道府県知事の承認を受ければ承継できます。運送業は貨物自動車運送事業法第30条で認可が要りますが、第2項にただし書があり、相手が運送業を営まない法人で運送会社が存続する場合などは認可が不要です。

相続についても差があります。旅館業法第3条の4第2項と貨物自動車運送事業法第31条第2項には、死亡の日から承認や認可の通知を受ける日までは前の許可が相続人に対してされたものとみなす、という規定があります。手続きが終わるまでの空白を埋める条文です。薬局には、その条文そのものがありません。

3 2026年9月1日、保険薬局の遡及指定が建て替わりました

薬機法に承継の規定が無いぶん、実務は保険側の仕組みで吸収されてきました。それが遡及指定です。新しい薬局の保険指定を、前の薬局の廃止日と同じ日か翌日までさかのぼらせることで、保険調剤ができない日を作らないようにする扱いです。

この遡及指定の取扱いが、今年の9月1日に全面的に入れ替わりました。

なお、この取扱いは原則として令和8年9月1日より適用することとし、「保険医療機関及び保険薬局の指定の遡及について」(昭和32 年7月18 日保険発第104 号)、「保険医療機関及び保険薬局の指定期日の遡及について」(昭和33 年8月21 日保険発第110 号の2)(中略)は、令和8年8月31 日限り廃止する。

保険医療機関等の遡及指定及び機能移転の取扱いについて(令和8年6月5日 保医発0605第2号)

昭和32年と昭和33年に出された通知が、69年を経て廃止されました。通知は見直しの理由を、令和7年12月3日の中央社会保険医療協議会総会を踏まえたものとしたうえで、「経営上の予見可能性の確保」と「申請手続き等の全国統一的な運用」を挙げています。

昭和32年保険発第104号から令和8年6月5日保医発0605第2号までの年表。旧通知は令和8年8月31日限り廃止
遡及指定の取扱いは、昭和32年の通知から69年を経て建て替えられた

遡及指定の対象として挙げられているのは、開設者の変更、所在地の変更、開設者を個人から法人に(または法人から個人に)変更する場合、病院と診療所の間の変更です。薬局の引き継ぎは、このうち最初のものに当たります。

病院・診療所には限定があり、薬局には置かれていません

手続きの速い方の道に入る条件として、通知は次のように書いています。

ア 至近の距離(同一都道府県内における直線距離で2km 以内)への移転(開設者に変更がない場合に限る。)
イ 所在地移転を伴わず開設者のみの変更(ただし、病院及び診療所については、次のいずれかに該当する場合に限る。)
 ・変更前の開設者が個人であって、血族その他勤務する保険医等の個人に変更する場合
 ・変更前の開設者が個人であって、当該個人を代表者(理事長)とする法人に変更する場合
 ・変更前の開設者が法人であって、当該法人の代表者(理事長)を個人の開設者に変更する場合

同通知 別添 1.(2)②

イのかっこ書きは「病院及び診療所については」と限っています。血族や代表者といった縛りは、病院と診療所にかかるもので、薬局には置かれていません。

条文から読み取れるのはここまでです。薬局であれば第三者への譲渡でも必ず遡及指定が認められる、ということではありません。可否は次に見る要件をすべて満たしたうえで判断されます。

4 遡及指定が認められる条件は、7つの項目で見られます

通知は「基本的には認める要件」として、「次の全ての□に該当すること」と書いたうえで項目を並べています。病院・診療所向けの項目を除くと、薬局に関係するのは7つです。

遡及指定の「基本的には認める要件」7項目。1つの廃止と1つの開設、調剤録の引継ぎ、問い合わせ対応、患者の継続、管理薬剤師の同一性、薬剤師8割、常勤薬剤師5割
「基本的には認める要件」は7つ。すべての項目に該当することが求められる

順に見ていきます。

最初の項目は事例の形についてのものです。1つの保険医療機関等の廃止と1つの開設を伴う事例であること、複数の廃止や複数の開設を伴う事例ではないこと、と書かれています。

複数の店舗をまとめて譲り受ける場合は、この項目に該当しません。

該当しないからといって遡及指定ができなくなるわけではありません。後で見る「その他の場合」の判断基準による扱いに移る、という意味です。ただし手続きの重さは変わります。

二つ目と三つ目は、過去に調剤した患者についてのものです。診療録・調剤録等の引継ぎが行われること、旧薬局を受診した患者の調剤に係る問い合わせへの対応を新薬局で行うこと。四つ目は現に調剤中の患者で、旧薬局の患者への調剤が新薬局で引き続き行われること。

五つ目が管理薬剤師です。新薬局の管理薬剤師が、旧薬局の管理薬剤師と同一の薬剤師であること。開設者が個人で管理薬剤師を兼ねている場合に、血族等との間で開設者と管理薬剤師を同時に変更するときは、この限りではないという例外が付いています。

六つ目と七つ目が人数です。旧薬局で調剤にあたっていた薬剤師(常勤及び非常勤)のうち概ね8割以上が、新薬局で常勤または非常勤として引き続き雇用されること。そして旧薬局の常勤薬剤師のうち概ね5割以上が、新薬局で常勤薬剤師として引き続き雇用されること。いずれも小数点以下は切り捨てです。なお所在地の移転を伴わず開設者のみを変更する場合については、原則として当該開設者を除く全ての職員が引き続き雇用されること、と書かれています。

この道に入る場合、事前相談の手続きは不要とされています。通知は、要件への該当性に疑義等がある場合は必要に応じて問い合わせを行うこと、としています。

5 距離が離れる場合や複数店舗の場合は、別の基準になります

2kmを超える所在地の移転、移転と開設者の変更を同時に行う場合などは、通知の「その他の場合」に整理されています。こちらは判断基準が別に置かれていて、手続きも変わります。

職員については、薬剤師の概ね5割以上が引き続き雇用されることとされ、先ほどの8割より緩くなっています。一方で距離の基準が加わり、薬局の場合は「同一市区町村内」または「同一都道府県内の直線距離で6km以内」であることとされています。管理薬剤師が変更となる場合については、他の薬剤師や職員の引継ぎ状況を踏まえ、調剤の実態に変更がないかという観点から特に慎重な判断を要する、と書かれています。

手続きは、遡及指定を希望する日の原則3か月前までに予定届出書を提出し、地方厚生局の要請に応じて事前相談を行うこととされています。

7つの項目は「基本的には認める要件」であり、ここで挙げた5割や6kmは「その他の場合」の判断基準です。別の体系なので、足し合わせて数えるものではありません。

6 施設基準の実績は、引き継ぐことができます

金額に直結するのに見落とされやすいのが、施設基準の扱いです。通知は、旧薬局で既に届出が受理されていた施設基準について、新薬局でも要件を満たしているものとして期日までに届出が行われたものは、遡及指定日から算定できるとしています。

さらに、旧薬局では届出がされておらず新薬局で新たに届け出る施設基準のうち、届出に実績を要するものについても、旧薬局における実績を届出の実績として取り扱ったうえで、遡及指定日の属する月から算定できるとされています。旧薬局に実績が無い場合は、新薬局で実績を持っていることが必要になります。

7 三つの時計が、別々に動いています

ここまで出てきた期限は、根拠がそれぞれ違います。ひとつのスケジュール表にまとめると混ざるので、分けて置きます。

薬機法10条の30日以内の届出、健康保険法79条の一月以上の予告期間、保医発0605第2号の3か月前までの予定届出という三つの期限を並べた図
三つの時計が別々に動いている。根拠が違うので一つの表にまとめると混ざる

薬機法第10条は、薬局を廃止し、休止し、休止した薬局を再開したとき、または管理者その他の事項を変更したときは、30日以内に届け出なければならないとしています。これは起きた後に出す届出です。

健康保険法第79条は、保険薬局は一月以上の予告期間を設けてその指定を辞退することができる、としています。こちらは先に予告が要ります。

そして保医発0605第2号の「その他の場合」では、遡及指定を希望する日の3か月前までに予定届出書を出すこととされています。

薬機法の30日は事後、健康保険法の1月は事前、通知の3か月も事前です。同じ引き継ぎの中で、性格の違う三つの時計が同時に動いていることになります。

8 薬局のM&Aで、実際にどこの誰に引き継がれているのでしょうか

制度の話はここまでです。最後に、実際の引き継ぎがどう起きているかを数えます。

公的統計で見えること

厚生労働省の衛生行政報告例をもとにした厚生統計要覧の第2-77表に、薬局数が都道府県別に載っています。全国の薬局数は令和5年度末の62,828から令和6年度末の63,203へ、375増えました。

同じ表には、薬局数の内訳として「開設者が自ら管理している薬局」と「開設者が自ら管理していない薬局」が分けて載っています。前者は令和5年度末の3,748から令和6年度末の3,544へ、204減りました。率にすると5.4%の減少です。

薬局の総数は増えているのに、開設者が自ら管理している薬局は減っています。

この統計が直接示しているのは、開設者が自ら管理する薬局の数が減った、というところまでです。減少がそのまま法人やチェーンへの移行を意味するわけではなく、廃業や管理薬剤師の交代など他の要因もあり得ます。ただ、個人経営に近い形の薬局が減っていることを示す変化ではあり、集約を考えるうえで注目される数字だと考えています。

合併の記録から見えること

国税庁の法人番号公表データには、法人が合併によって消滅したことと、その承継先の法人番号が記録されています。ここから商号に薬局に関する語を含む会社を抽出したところ、合併で消滅した会社が580社、承継先まで判明したものが555社ありました。

このうち105社は、売り手と買い手が同じ住所にあるか商号の語幹を共有していて、同じ企業グループ内の再編と見られるものでした。残る450社を第三者への承継として扱います。

この450社について、売り手の本店所在地と承継先の本店所在地を比べました。

第三者へ承継された薬局450社のうち、同じ市区町村の会社が49社10.9%、同じ都道府県が185社41.1%、県をまたいだ会社が265社58.9%という棒グラフ
第三者へ承継された薬局450社の、承継先の所在地(本店どうしの比較)

同じ市区町村にあったのは49社で、10.9%でした。同じ都道府県まで広げても185社、41.1%にとどまります。裏返すと、6割近くが県をまたいで引き継がれていることになります。

同じ方法で数えた他の業種では、同じ市区町村だった割合は建設44.7%、介護40.2%、飲食34.1%、運送21.7%でした。薬局の10.9%は、当社が数えた11業種の中で最も低い数字です。

引き継いだ側の規模

承継先の会社について、地方厚生局が公表している保険薬局の一覧から開設者ごとの店舗数を数え、法人名で突き合わせました。本店のある都道府県に実際に店舗があることを条件にして、135社の店舗数を確認できました。

中央値は24店舗でした。分布を見ると、51店舗以上を持つ会社が46社で34.1%、11〜50店舗が42社で31.1%を占めます。1〜3店舗の会社は9社、6.7%でした。

薬局は、遠くにある大きな会社に引き継がれている。

売り手の規模は、測れませんでした

売り手の店舗数についても同じ方法を試しましたが、条件を満たして確認できたのは10社だけでした。分布を示せる数ではありません。

理由ははっきりしています。合併で消滅した法人は、保険薬局の一覧からも消えるためです。法人名だけで突き合わせれば148社が当たりますが、本店のある都道府県に店舗があるかどうかで絞ると10社まで落ちます。差の138社は、同じ名前の別法人を拾っている可能性が高いと考えられます。売り手の規模は、公表資料からは追いにくい情報です。

年ごとの件数

第三者への承継450社を合併の年で数えると、2016年29社、2017年42社、2018年33社、2019年39社、2020年34社、2021年44社、2022年23社、2023年73社、2024年47社、2025年68社となりました。2026年の12社は年の途中までの集計です。2023年と2025年に多くなっていますが、年による振れの範囲かどうかは、この件数では判断できません。

9 調べてみて

薬局を引き継ぐという行為は、外から見ると一つの取引です。しかし制度の側から見ると、承継の規定が置かれていない許可と、承継のための仕組みが作り込まれてきた保険指定という、二つの別々のものが同時に動いています。そして後者の運用が、今月から新しいものに入れ替わりました。

その制度の下で実際に起きていることを数えると、引き継ぎ先は同じ町の同業者ではなく、県をまたいだ規模の大きい会社であることが多いという結果になりました。遡及指定の要件が患者と調剤録と薬剤師の継続を見ているのは、引き継ぐ側が誰であっても、その薬局に通っている人にとっては同じ薬局であり続けるかどうかが問われているからだと思われます。

10 自社の薬局を引き継ぐなら

株式譲渡であれば、薬局開設許可も保険薬局の指定もそのまま続きます。事業譲渡や合併では開設者が変わるため、開設許可を取り直し、保険指定も新たに受けることになります。そのときに保険調剤ができない日を作らないための仕組みが、遡及指定です。

遡及指定で見られるのは、調剤録の引継ぎ、患者への調剤の継続、管理薬剤師が同一であること、薬剤師の継続雇用といった項目です。いずれも、契約を結んだ後で用意できるものではありません。相手を探す段階から、誰に残ってもらうかを考えておく必要があります。

複数の店舗をまとめて引き継ぐ場合は「基本的には認める要件」の最初の項目に該当しないため、遡及指定を希望する日の原則3か月前までに予定届出書を出し、事前相談を行うことになります。日程の組み方が変わるので、早い段階で確かめておく方が安全です。

当社では薬局のM&A・事業承継として手順を整理しています。自社の場合にどうなるかを一度整理したいという段階のご相談も、お問い合わせから承っています。

よくある質問

薬局を事業譲渡で引き継ぐとき、薬局開設許可は承継されますか。

医薬品医療機器等法のうち薬局を定めた第4条から第11条までには、承継・相続・合併・分割に関する規定が置かれていません。同じ法律の第14条の8には医薬品等承認取得者についての承継規定がありますが、これは製造販売承認を対象としたもので、薬局開設許可ではありません。食品衛生法第56条や旅館業法第3条の2のような承継の条文が、薬局にはないということです。

株式譲渡と事業譲渡では、手続きはどう違いますか。

株式譲渡では許可や指定の名宛人である法人が変わらないため、薬局開設許可と保険薬局の指定はそのまま続きます。代表者の氏名が変わる場合は医薬品医療機器等法第10条の届出が必要です。事業譲渡や合併では開設者が変わるため、薬局開設許可を新たに取り、保険薬局の指定も新たに受けることになります。このとき保険の空白を作らないための扱いが遡及指定です。

遡及指定とは何ですか。

新しい薬局の保険薬局としての指定日を、前の薬局の廃止日と原則として同日または翌日までさかのぼらせる扱いです。通常は申請した翌月1日が指定日になるため、そのままでは保険調剤ができない期間が生じます。2026年9月1日から、令和8年6月5日 保医発0605第2号による新しい取扱いが適用されています。

複数の店舗をまとめて引き継ぐ場合はどうなりますか。

通知の「基本的には認める要件」の最初の項目は、1つの保険医療機関等の廃止と1つの開設を伴う事例であること、複数の廃止や複数の開設を伴う事例ではないことを求めています。複数店舗をまとめて引き継ぐ場合はこの項目に該当しないため、「その他の場合」の判断基準による扱いとなり、遡及指定を希望する日の原則3か月前までに予定届出書の提出と事前相談が必要になります。

管理薬剤師や薬剤師は、引き続き働いてもらう必要がありますか。

「基本的には認める要件」では、新薬局の管理薬剤師が旧薬局の管理薬剤師と同一の薬剤師であること、旧薬局で調剤にあたっていた薬剤師(常勤及び非常勤)の概ね8割以上が継続して雇用されること、旧薬局の常勤薬剤師の概ね5割以上が新薬局で常勤薬剤師として継続して雇用されることが挙げられています。いずれも小数点以下は切り捨てです。

薬局の数は増えているのですか、減っているのですか。

厚生労働省の衛生行政報告例をもとにした厚生統計要覧によると、全国の薬局数は令和5年度末の62,828から令和6年度末の63,203へ375増えました。一方、同じ表の内訳にある「開設者が自ら管理している薬局」は3,748から3,544へ204減っています。この統計が示しているのは数の変化までで、その理由までは読み取れません。

引き継ぎ先は、近くの薬局が多いのですか。

国税庁の法人番号公表データから合併で消滅した薬局580社を抽出し、承継先が判明した555社のうち同一グループ内の再編と見られる105社を除いた450社について本店所在地を比べたところ、同じ市区町村にあったのは49社(10.9%)、同じ都道府県まで広げても185社(41.1%)でした。同じ方法で数えた建設は44.7%、運送は21.7%でしたので、薬局はかなり広い範囲から引き継がれていることになります。

参照した資料

【引用・転載について】
本記事は、事前のご連絡なしにご自由に引用・転載いただけます(CC BY 4.0)。引用の条件として、当記事へのリンク(出典明記)をお願いします。
Webサイトでの引用タグ(そのままコピーしてお使いください)
<a href="https://jfsc.jp/research/yakkyoku-shoukei/">薬局の買い手は、県の外から来る|6割が県をまたぎ、引き取ったのは24店舗の会社だった――薬局580社の行き先|株式会社日本財務戦略センター</a>文章での出典表記:株式会社日本財務戦略センター「薬局の買い手は、県の外から来る|6割が県をまたぎ、引き取ったのは24店舗の会社だった――薬局580社の行き先」(2026年9月21日) https://jfsc.jp/research/yakkyoku-shoukei/
※ 他機関(官公庁・調査会社など)の公表数値を含む箇所は、それぞれの元資料の利用条件に従ってください。

この調査の設計・分析・執筆

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役。京都大学経済学部経営学科卒業。損害保険ジャパンを経て、東証上場のM&A仲介会社で中小企業の譲渡案件に従事。2020年に株式会社日本財務戦略センターを創業し、M&A・事業承継・財務戦略を専門としています。日本CFO協会認定 プロフェッショナルCFO M&Aエキスパート、中小企業庁 M&A支援機関登録事業者、一般社団法人M&A支援機関協会 正会員、中小M&Aガイドライン第3版 遵守宣言済。

本調査では、医薬品医療機器等法・健康保険法・食品衛生法・旅館業法・貨物自動車運送事業法の条文の読み取り、厚生労働省保険局医療課長通知の読み取り、法人番号公表データの抽出設計と集計、および原稿を担当しました。同じ方法による調査に運送会社の合併711社の全数調査法人の破産19,616社の調査があります。

株式会社日本財務戦略センター 〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町1-1-8 神山ビル3A

この調査は、6業種の1本です

同じ方法で、業種ごとに「許可はどうなるか」と「実際にどこへ引き継がれたか」を数えています。