M&Aで買い手に見られるポイント! 会社を売る前に
こんにちは、日本財務戦略センターの五十嵐です。
今回は売り手様向けに、買い手がM&Aを行う際に何を見るのかお伝えしたいと思います。

M&Aで見られるのは決算書?
M&Aで会社を売却する際、買い手は初期的に決算書を見て事業の価値やリスクを判断することが多いですが、決算書だけでは見えない部分、例えば顧客基盤や従業員の状況、経営者の信頼性も同じくらい重要に検討されます。
買い手が何を重視するのか、売り手はどう準備すべきなのでしょうか。
では会社を正当に評価してもらい、円滑に売るためのポイントを一緒に見ていきましょう。
買い手が重視するポイントと売り手の準備
M&Aでは、買い手が売り手の「本当の姿」を知るために、財務から事業運営、組織の安定性まで幅広くチェックします。
中小企業庁のガイドラインでも、透明な情報開示とリスクの事前整理が成功の鍵とされています。
以下、買い手がよく見るポイントと、売り手がどう対応すべきか、実際のM&Aの現場の雰囲気そのままにお伝えします。
財務の健全性:債務比率が物語るもの
買い手が最初に手に取るのは、たいてい決算書の貸借対照表です。
その中でも、債務比率(総負債 ÷ 純資産)は、会社の負債の重さを一目で示す指標です。
買い手も会社運営をするにあたり借入れを起こしているので、まずはここを厳しく見ます。
例えば、製造業なら債務比率が100%くらいが業界の目安ですが、これが2倍を超えると「資金繰り大丈夫?」と警戒されるでしょうし、交渉において足元を見られてしまう可能性があるでしょう。
売り手としては、可能であればM&A前に借入金を整理するのが賢明です。
銀行融資やリース契約の内訳を契約書でクリアにし、返済スケジュールも整理しておきましょう。
もし債務比率が業界平均より高いなら、「なぜこうなったのか」を説明できる資料を準備しておくと、買い手の不安を和らげられます。
例えば、攻めの姿勢による設備投資で一時的に借入が増えたなら、その投資がどう売上に繋がっているかを示せば、マイナス印象をプラスに変えられます。
目先の運転資金のためなのか、そうでないかで印象も変わってくるでしょう。
在庫のリアルを暴く:回転率のチェック
決算書の話が続きますが、在庫回転率(売上原価 ÷ 平均在庫高)も買い手がよく見るポイントです。
なぜなら在庫は粉飾の隠れ蓑になりやすいからです。
売れ残った商品や期限切れの在庫を「まだ売れる」と資産に計上して利益を水増しするケースは、M&Aの現場ではよくあります。
M&Aのために行っている、というよりは資金繰りのためにメインバンクに説明するためですね。
売り手側では、M&A前に実地棚卸を徹底し、在庫リストを整理するのが鉄則。
売れない在庫は減損処理して、決算書をクリーンにしましょう。
買収監査(DD)で指摘されるより印象がいいですし、もし現損処理ができないならトップ面談時に開示しましょう。
過去3年の回転率の推移を準備し、もし変動があれば「新商品の投入で一時的に在庫が増えた」など、理由を説明できるようにしておくと安心です。
売掛金の回収スピード:お金の流れをどう見せるか
売掛金の回収期間(売掛金 ÷ 売上高 × 365日)も、買い手が決算書で初期的に確認するポイントです。
業種にもよるので一般化はできませんが、あまりにも長いと「回収できない売掛金を資産に計上してる?」と疑われます。
売り手としてはM&A前に売掛金の年齢分析をして、回収不能な分は貸倒引当金を計上しておくのが賢い対応ですし、回収できない債権については先に説明しましょう。
主要顧客との支払サイトを整理し、取引条件を明確にしておくと、買い手の質問にすぐ答えられます。
回収できないのに回収できるものとして説明した場合、表明補償違反と言われてしまう可能性があります。
役員とのお金のやり取り:透明性が命
中小企業では役員借入金(会社が役員から借りたお金)や役員貸付金(会社が役員に貸したお金)が決算書に載ることが多いです。
公私混同という点で銀行に見られるポイントにもなります。
また買い手はこれを公私混同のみではなく、「隠れ債務」や「資産の水増し」のリスクと見てチェックします。
経営者保証のガイドラインでも、関連当事者取引の透明性が強調されています。
売り手としては、役員借入金は契約書(金利や返済期限)を整備し(無利息だと贈与として税務署に否認される可能性がある)、可能ならM&A前に清算をしましょう。
役員貸付金は早めに回収するか、回収不能なら損失処理をしましょう。
業務上の貸付なら証拠書類を揃えておきましょう。
顧客基盤の強さ:売上の安定性をアピール
決算書を離れて、買い手が重視するのが顧客基盤です。
弊社の経験上も主要顧客への依存度や契約の継続性を重視する買い手は多いです。
例えばですが売上上位1社が50%を占め、契約に解除条項がある場合、買い手は「その顧客が離れたらどうなる?」とリスクを考えるでしょう。
逆に昔からの付き合いで、複数取引先があるなら、むしろクロスセリングで評価されるかもしれません。
売り手としては、M&A前に顧客基盤を多角化できれば、1社への依存度が下げるのでプラスになるでしょう。
ただ売り上げを理由にして売却する場合、そんなことまでできるか!というのも仰る通りなので、主要契約の期間や解除条件を整理し、買い手に安心感を与えましょう。
従業員の定着と労務環境:組織の隠れた価値
従業員の定着率や労務環境も、買い手が決算書外で注目するポイントです。
未払残業代や退職金債務が簿外リスクになります。
逆に従業員の離職率が低い会社は、組織の安定性をアピールできます。
実際、結果として採用費などに反映するので、業績もよくなり、バリュエーションも上がるでしょう。
売り手としては、M&A前に労務監査を実施し、未払債務を清算しましょう。
就業規則や勤怠記録を整理し、従業員満足度の高さを示すデータもあると効果的かもしれません(基本的にM&A中に従業員に買い手は接触できないので)。
利益とキャッシュのリアル:EBITDAと営業CF
決算書に戻ると、EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)と営業キャッシュフローは、事業の収益力とキャッシュ創出力を示す重要な指標です。
PLで見かけ上の利益が出ていても、CFがマイナスだと「絵に描いた餅」と疑われます。
売り手としては、一時的収益を除いた「正常化EBITDA」を開示し、営業CFの推移を整理しましょう。
マイナスなら原因を説明しましょう。
逆にPLがマイナスでも減価償却などが大きくEBITDAがプラスならもちろん評価されると思います。
売り手が心がける3つの鉄則
透明な情報開示と事前準備がM&A成功の大きな鍵です。
実際の現場でも、これによりブレイクするかどうかが変わります。
まず、全体の透明性を高めること。
決算書は会計基準に整え、税務リスクを事前に確認しましょう。
顧客契約や労務資料も整理し、買い手の質問にすぐ答えられるようにしましょう。
次に、専門家の力を借りることがあるでしょう。
当社のような中小企業庁登録の支援機関なら、無料相談も可能です。
最後に、資料を揃えること。在庫リスト、契約書、労務記録を一元化し、DDで即開示できる体制を整えましょう。
スピード感は買い手に対してポジティブな印象を与えます。
でも、最後に見られるのは売り手の人柄です!
買い手は初期的に決算書で数字をチェックしますが、最終的には売り手の「人柄」と「経営のストーリー」が心を動かします。
買い手は「この経営者なら、事業の未来を任せられる」と感じて決めることも多いです。
地域での信頼、従業員や顧客との絆、これまでの苦労や成功の物語を、自信を持って伝えましょう。
数字だけじゃなく、あなたの「人間力」がM&Aを成功に導きます。
まとめ
債務比率、在庫、売掛金、役員との取引、顧客基盤、従業員環境、決算、これらを整え、事業全体を透明にすることがM&Aの第一歩です。
でも最後は決算書の数字を超えて、あなたの経営哲学や実績をアピールすることが、買い手の心をつかむ鍵です。
日本財務戦略センターは無料相談やセカンドオピニオンを提供しています。
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