【2026年衆院選】各党の消費税政策と中小企業への影響
衆院選後の政策動向は中小企業の経営環境を大きく左右します。不透明な時代だからこそ、データに基づいた経営判断が求められます。特に事業承継を検討中の方は、政府も推進するAI活用による最新のM&Aプロセスを把握しておくべきでしょう。
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高市早苗首相が衆院解散を表明し、2月8日投開票が有力視される衆院選。物価高対策として、食料品の消費税ゼロが与野党共通の争点に急浮上しています。インボイス制度の扱いも含め、各党の公約は中小企業の経理・取引・キャッシュフローに直結する内容です。
弊社は財務やM&Aの相談等で数百社の経営者社長と面談を行ってまいりました。
こうした経験から、税制変更が現場のキャッシュフローに与える影響を痛感しています。今回、日本財務戦略センターの代表である当職が、主な政党の消費税政策を整理し、中小企業全体へのプラス面・マイナス面を一般論で分析したいと思います。特に、税収減がもたらすマクロ経済への影響(国債金利の上昇、為替の変動、インフレの進行など)を広く検証しました。
結論から言うと、公約の実現性や財源論が曖昧な場合、現場のシステム改修・価格交渉に加え、金利上昇による借入コスト増や円安による輸入物価高騰などのリスクが避けられません。一方で、消費活性化による売上増のチャンスも大きい。
1. 自民党・日本維新の会(与党連合)
消費税政策:食料品(酒類・外食除く)の消費税を2年間時限的にゼロ。インボイス制度は維持(経過措置の縮小は予定通り)。財源は歳出見直しや租税特別措置の見直しを想定。
中小企業全体への影響:
- プラス面:食料品関連事業(小売・卸など)の消費者需要増で売上向上が見込め、短期的な景気刺激効果大。時限措置なので、財政悪化の長期リスクが抑えられ、インフレの過熱を防ぎやすい。円安進行が緩やかであれば、輸出関連中小企業も恩恵を受ける可能性。
- マイナス面:税率ゼロ導入と2年後の復活で、POS・経理システムの改修コスト(中小で数十〜数百万円)が2回発生。インボイス維持で免税事業者との仕入れ控除が続き、実質負担増。マクロ的には、税収減(年5兆円規模)が財政懸念を呼び、国債利回り上昇(10年物2.275%超の過去最高水準)を招き、借入金利が高騰。円安加速で輸入資材コスト増大、インフレ率が2%超えのリスクも。
これにより、中小企業の設備投資コストが平均15-20%上昇する可能性があります。
全体評価:準備期間が短いと混乱必至だが、短期売上増狙いの企業には有利。金利上昇が長期化すれば、設備投資意欲の減退を招く可能性。
2. 中道改革連合(立憲民主党 + 公明党)
消費税政策:食料品の消費税を恒久的にゼロ。インボイスについては激変緩和恒久化(公明は廃止主張も含む)。財源は政府系ファンド創設や運用益活用を挙げる。
中小企業全体への影響:
- プラス面:恒久ゼロで長期的な消費活性化が見込め、特に生活必需品扱う企業は価格競争力向上。インボイス緩和で仕入れ控除の柔軟化が進み、経理負担軽減。マクロ的には、需要増がGDP成長を0.5ポイント押し上げ、雇用創出につながる可能性。
- マイナス面:税収減が恒久化し、他の税・社会保険料引き上げリスク大。経理フローの抜本変更で初期投資増。財源の不透明さから国債発行増大を招き、利回り急騰(30年物3.58%超)と円安進行(158円/ドル超の弱含み)を加速。インフレが1.8-2.0%に上昇し、輸入依存中小企業のコスト圧迫が深刻化。
全体評価:生活者支援色が強く、売上増期待大だが、財政悪化による間接負担(金利・保険料)が中小を圧迫する恐れ。為替変動が輸出入バランスを崩すリスクも。
3. 国民民主党
消費税政策:消費税を一律5%へ減税(食料品含む)。インボイス制度の廃止。住民税控除拡大や再エネ賦課金廃止も併せて訴求。
中小企業全体への影響:
- プラス面:一律5%で税計算シンプル化、経理効率向上。インボイス廃止で免税事業者との取引がしやすく、仕入れコスト削減のチャンス。マクロ的には、減税が消費を刺激し、GDP成長を支える一方、円安が輸出競争力を高める可能性。
- マイナス面:廃止後の代替制度未提示で、取引先との価格・契約交渉が迷走。減税幅大で財政悪化リスクが高く、国債利回り上昇(10年物2.1%超)と円安が借入コスト・輸入価格を押し上げる。インフレが1.6-2.0%に加速し、物価高騰が長期化する恐れ。
全体評価:即効性の高い負担軽減だが、移行期の混乱が最大の懸念。金利高で資金調達が難しくなる中小企業が増える可能性。
4. れいわ新選組・日本共産党・参政党
消費税政策:消費税の完全廃止(または段階的廃止)。インボイス即時廃止。財源は富裕層課税強化などで賄う方針。
中小企業全体への影響:
- プラス面:廃止で税務負担ほぼゼロ、キャッシュフロー大幅改善。インボイス即廃で小規模取引がスムーズに。マクロ的には、積極財政出動(グリーン投資200兆円規模)が成長を促進し、雇用増・インフレ目標2%達成で景気回復を後押し。
- マイナス面:財源論の欠如で国債発行急増を招き、利回り急騰リスク大(債務対GDP比250%超の悪化)。円安進行で輸入インフレが加速し、2-3%の過熱インフレを招く可能性。税務ルール変更で経理全面見直し必要。
全体評価:短期恩恵大だが、経済全体の不安定化が中小存続を脅かす可能性。為替変動が貿易依存企業に打撃。
5. チームみらい
消費税政策:消費税減税に慎重(党首・安野貴博氏ら)。社会保険料負担軽減や子ども・未来投資を優先。消費税減税より現役世代の手取り増加を重視。
中小企業全体への影響:
- プラス面:税制安定で予測しやすい経営計画が可能。社会保険料軽減で人件費圧迫緩和、採用・定着に有利。マクロ的には、財政規律維持で国債利回り安定(1.1-1.5%水準)、円安抑制で輸入コストコントロールしやすくなる。
- マイナス面:変更なしで現行負担(インボイス経過措置縮小など)が続き、実質増税感。変化を避けたい安定志向の企業には安心だが、積極減税を求める層には物足りない。インフレが1.6%前後に留まる一方、成長鈍化リスク。
全体評価:派手さはないが、現実的な選択肢。長期視点の企業に適するが、金利低位安定がBOJ政策次第。なお党首の安野代表が消費減税がマウロ経済に及ぼすインパクトについて以下の通り見解を述べているのでそのまま引用します。
エネルギーと食料品を中心に消費者物価が上がり続ける一方、賃上げが追いついていない状況です。 そこで与野党から消費税減税案が出てきています。
・時限的な一律減税(例:時限的に税率10→5%)
・消費税撤廃 ・食品等に限った軽減税率のさらなる引下げ 一見、消費税減税は支出が減るように見えるので家計に対してプラスに見えます。しかし、よくよく紐解いてみると、拙速な消費税減税は家計に対して副作用も大きく、慎重になるべきと考えます。1. インフレ局面での減税は「火に油」を注ぐ危険性 消費税を下げると、需要が刺激されるため、価格を押し上げる圧力が掛かります。
すると、物価高対策として打った施策がますます物価高をもたらすことになってしまいかねません。 今回の物価上昇に対しては「コストプッシュインフレだから需要刺激しても大丈夫」との反論もありますが、実際に品目別で見ると食品・エネルギーはコストプッシュといえるものの、他の品目はそうとは言い切れない状況であり、減税が波及する広い品目で“単なる需要超過“が点火するリスクは小さくありません。2. 消費税減税しても値下げされない「価格据え置き」リスクがある 短期の減税ほど企業は“様子見“で終わりやすいです。
直近の英国でのVAT(消費税)の一時的な引き下げ(2020/7~2022/3)では半分以上は価格据え置き=企業サイドの粗利拡大に吸収された形でした。 “時限措置“の場合はメニュー改訂コストもありますし、再値上げ時の批判を恐れ、価格改定を嫌う企業が多くなってしまいます。3. 時限措置は「景気後退時に増税」トラップを生む
減税期間と再増税時期をあらかじめコミットすると、最悪のタイミングで税率を戻さざるを得ないリスクが高まります。 世界経済はトランプ大統領の関税引上げ・地政学ショックで近い将来の景気減速懸念が強まっています。また、トランプ氏は方針を急転換することも多く、「中間選挙前に好景気を作りに行くのでは?」という 観測もあり、先行きは極めて不透明です。 そのなかで「1〜2年後に税率を戻す」と決め打ちすれば、ちょうど景気が落ち込んでいる局面で逆噴射的に増税することになるかもしれません。財政政策の“自縄自縛“は避けるべきと考えます。景気後退期には需要刺激策として消費税率引下げを積極的に検討すべきと思いますが、だからこそ、その余力をいまむしろ残していく必要があると考えます。4. 食料品の減税は意外とお金持ち有利
食料品の軽減税率の減税は「低所得者支援」というイメージが強いです。しかし、日本ではエンゲルの法則と呼ばれる「高所得者になればなるほど家計支出に占める食料品の割合が下がる」という法則がなぜか諸外国と比較して弱いのです。(日本人は美味しいものを食べることに全力であるとも言えます) IMFのミクロ試算でも、食品8%軽減については「金額ベースでは上位20%世帯が下位20%の約2倍恩恵を受ける」と指摘されています。つまり「食料だけ下げれば低所得者救済」という単純なストーリーは日本では成立しません。 また、食品だけを下げると飲食店が不利になり、倒産が増えている飲食店の危機を加速させてしまう可能性があります。食料品だけを下げる操作もかなり慎重にやらなければ副作用が出てしまいます。5. 「税収増分を消費税減税に充てる」のは実質的には全世代負担→現役世代負担への世代間シフトの話
消費税減税の財源としては、今後税収が伸びるので問題ない、という議論があります。近年、税収がどんどん伸びているので、そこを消費税減税分に充当しようという議論です。 しかしこれは、全世代が負担する消費税から現役世代が支払う所得税へシフトが起きているだけとも言えます。増収分を還元するのであれば、むしろこの20年間膨張し続けている社会保険料の引き下げに使う方が公平性が高く優先度が高いと考えます。 以上5点「慎重になるべき」理由を記載しました。消費税の逆進性は確かに存在し、低所得層への配慮は不可欠です。しかし 「減税すれば即効で物価対策になる」という期待はリスクが高いと言えます。 ゆえに、チームみらいとしては、物価高対策に関しては下記のスタンスです
・1)消費税減税よりこの20年増額し続けてきてしまった社会保険料減額の方が優先度高い
・2)時限つきの一律減税、消費税撤廃は現役世代に不利なのですべきでない
・3)「軽減税率適用を生活必需品に恒久的に拡大」など、低所得者有利かつ一時的でない仕組みは検討すべき
・4)低所得者向けのピンポイント給付は物価高対策として有効だが一律給付は無駄が多いためやめるべき
・5)需要の刺激や抑制につながる打ち手だけでなく、供給力向上による打ち手を合わせて検討すべきまたどこかのタイミングで上記スタンスについても詳しく解説したいと思います
政治の「公約」に惑わされない現実対応
各党が減税を叫ぶ中、法改正が間に合わなければ2026年10月1日に現行法が発動します。インボイス経過措置縮小(80%→50%控除)で仕入れ控除激減、社会保険適用拡大(106万円の壁撤廃)と合わせ、営業利益10-20%下落の企業も出る可能性があります。
中小企業は、公約に踊らされず自社の経理・事業モデルを今すぐチェックを。
ほとんど多くの政党が消費減税を唱える中、マクロリスク(金利・為替)を織り込んだ計画が鍵です。
業界別影響
前半では各党の消費税政策とマクロ全体への影響を整理しましたが、ここでは具体的な業界(金融、小売、製造、外食、不動産)への波及を分析します。
食料品の消費税ゼロ(時限or恒久)が実現した場合、消費活性化による売上増のチャンスがある一方、税収減による国債金利上昇(10年物2.275%超の過去最高水準更新中)、円安進行(158円/ドル超)、輸入インフレ加速などのマクロリスクが業界ごとに異なって直撃します。中小企業はこれらを織り込んだ備えが急務です。
1. 金融業界(銀行・信用金庫・ノンバンクなど)
主な影響要因:国債金利上昇(財政悪化懸念)、円安進行、金利変動リスク。
- プラス面:金利上昇で貸出金利が上がり、収益改善のチャンス。変動金利ローンの需要増も期待。円安で輸出関連融資が増え、好影響も。
- マイナス面:長期金利急騰(30年物3.58%超)で保有国債の含み損拡大。借入依存の中小企業顧客の返済負担増で不良債権リスク上昇。インフレ加速で実質金利低下の可能性も。
全体評価:金利上昇が短期的に収益押し上げ要因になるが、顧客の資金繰り悪化が長期的に信用リスクを高める。金利変動ヘッジの強化を。
2. 小売業界(スーパー・コンビニ・専門店など)
主な影響要因:食料品関連の消費活性化、システム改修コスト、輸入品価格高騰。
- プラス面:食料品税ゼロで消費者需要急増(特に低価格帯)。まとめ買い・テイクアウト需要増で売上伸長。恒久ゼロなら長期的な価格競争力向上。
- マイナス面:レジ・POSシステム改修(2回分で数百万円規模)の負担大。円安・インフレで輸入食品・資材コスト上昇。還付金増加で資金繰り改善も、移行期の混乱リスク。
全体評価:食料品中心の小売は短期売上増の恩恵大だが、システム投資と輸入コストが重荷。テイクアウト強化や在庫管理の見直しを急げ。
3. 製造業(食品・一般製造など)
主な影響要因:原材料輸入依存、消費活性化、為替・金利変動。
- プラス面:食料品製造は需要増で生産拡大。還付金増加で資金繰り改善。輸出型製造業は円安で競争力向上。
- マイナス面:輸入原材料(エネルギー・部材)の円安インフレでコスト急騰。金利上昇で設備投資借入負担増。恒久減税なら長期財政悪化で景気後退リスク。
全体評価:国内消費型製造は売上増期待大だが、輸入依存型はコスト圧迫が深刻。ヘッジ取引や国内調達シフトを検討。
4. 外食業界(レストラン・居酒屋・ファストフードなど)
主な影響要因:税率差拡大(外食10% vs テイクアウト0%)、仕入控除減少、消費者シフト。
- プラス面:全体消費活性化で客足増の間接恩恵。テイクアウトメニュー強化で対応可能。
- マイナス面:税率差拡大で「外食離れ」加速(家食・中食シフト)。仕入税額控除減少で実質負担増(資金繰り悪化)。システム改修・メニュー区分負担大。
全体評価:店内中心業態は厳しい逆風。テイクアウト比率向上やデリバリー強化が生き残りの鍵。資金繰り対策を最優先に。
5. 不動産業界(賃貸・仲介・開発など)
主な影響要因:金利上昇、インフレ、消費活性化の間接影響。
- プラス面:インフレ進行で不動産価値上昇(実物資産優位)。消費活性化で商業施設需要増の可能性。
- マイナス面:国債金利上昇で住宅・事業用ローンの金利高騰(借入コスト増)。円安インフレで建築資材高騰。財政悪化で公共投資減のリスク。
全体評価:金利上昇が最大の逆風。変動金利ローンの固定化や、インフレ耐性のある物件選定を急げ。
業界共通の現実対応アドバイス
公約が実現しなければ2026年10月の現行法(インボイス経過措置縮小80%→50%)が発動し、実質増税+社会保険拡大で利益圧迫されます。
金利・為替リスクをシミュレーションし、資金繰り強化を今すぐおこないましょう。
選挙結果を見極めつつ、柔軟対応が鍵です。
M&Aも選択肢にしてもいいかもしれません。
本分析は一般論であり、個別相談をおすすめします。バイアスなく多角的に検証しています。
(日本財務戦略センター 代表 五十嵐 悠一)






































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