債務超過でも大丈夫!? M&Aにおける「事業承継時に焦点を当てた 『経営者保証に関するガイドライン』の特則」の活用!

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公開日:2023年4月4日 /最終更新日:2023年4月4日

M&Aで事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則を活用!

 

以前、本コラムで事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則について取り上げました
弊社の買い手様でM&Aを行うにあたり、債務超過の会社の買収を含め面白い活用をしている企業様がいたので、買い手側の参考になるかと思い、再度、経営者保証に関するガイドラインの特則について取り上げた上で、スキームについて触れてみたいと思います。
もしかしたら積極的買収企業様にとっては有益な情報になるかもしれません。
ガイドラインの解説が長くなってしまうため、内容についてご存じの方は読み飛ばしていただいてもかまいません。

事業承継時に焦点を当てた 「経営者保証に関するガイドライン」の特則とは

まず簡単におさらいです。
中小企業の事業承継において、経営者保証が阻害要因となっていることから、平成28年3月31日に「経営者保証に関するガイドライン」が策定されました。
その後、令和元年12月に「経営者保証に関するガイドライン」を補完する特則が策定されました。
策定した主体は中小企業庁、財務省、日本銀行、金融庁、全国銀行協会、全国信用協同組合連合会、全国信用金庫協会です。

目的と背景

この特則の目的は、中小企業の事業承継において、経営者保証が阻害要因とならないようにすることです。
具体的には、前経営者と後継者の双方から二重徴求を行わないことを原則とし、主たる債務者や保証人に対して、法人と経営者との関係を明確に区分・分離し、財務基盤を強化し、財務状況を正確に把握することで透明性を確保するよう求めています。

背景としては、目的と一部重複しますが、中小企業の事業承継において、経営者保証が阻害要因となっていることが挙げられます。
また中小企業の高齢化が進む中で休廃業・解散件数が増加しており、後継者未定企業も多数存在するため、後継者不在により事業承継を断念し廃業する企業が増加すれば地域経済への支障が懸念されています。
このため政府の定める「成長戦略実行計画」で中小企業の生産性向上や地域経済への貢献が促される中で、経営者保証が事業承継の阻害要因とならないよう、前経営者と後継者の双方からの二重徴求を行わないことなどを盛り込んだガイドラインの特則策定が明記されました。

債権者(金融機関)に求められていること

この特則により、対象債権者には具体的に以下のような対応が求められています。

1. 前経営者、後継者の双方との保証契約
2. 後継者との保証契約
3. 前経営者との保証契約
4. 債務者への説明内容
5. 内部規程等による手続の整備

詳細については読み飛ばしていただいてもかまいませんが、基本的に後継者から保証契約を求めることはせず、仮に求める場合には合理的かつ納得性のある対応を求めています。
漫然と経営保証を取って事業承継を阻害する従来の担保主義的な金融機関の対応について内部規定などを整備することでけん制していると言ってもいいでしょう。

なおそれぞれを具体的に解説すると、

1. 前経営者、後継者の双方との保証契約
前経営者と後継者の両方から保証を求めることは原則として行わず、例外的に必要な場合には十分な説明を行うことが求められます。
また後継者との保証契約に当たっては、経営者保証が事業承継の阻害要因となり得る点を十分に考慮し、保証の必要性を慎重かつ柔軟に判断することが求められます。

2. 後継者との保証契約
後継者との保証契約においても、前経営者同様に保証を求めることは原則的に行わず、例外的に必要な場合には十分な説明を行うことが求められます。また、ガイドライン第4項(2)に即して検討しつつ、合理的かつ納得性のある対応を行うことが求められます。
具体的には金融機関が経営者保証を受ける場合において、その意味や効果、保全としての価値を十分に考慮し、合理的かつ納得性のある対応を行うことが求められることを規定しています。保証契約の必要性や提供された保証の範囲・期間・金額等について債務者に十分な説明を行うことや、保証解除時期や条件等についても適切な管理・見直しを行うことが求められます。

3. 前経営者との保証契約
前経営者との保証契約について、前経営者が第三者となる可能性があることを踏まえて保証解除に向けて適切に見直しを行うことが必要であることが述べられています。

4. 債務者への説明内容
この項目では、債務者に対して、保証契約の必要性や保証が提供されない場合の融資条件等について十分な説明を行うことが求められます。
また債務者との継続的なリレーションや事業性評価に基づいた判断を行うことも求められます。

5. 内部規程等による手続の整備
金融機関が内部規程等により、経営者保証の取扱いに関する手続を整備することが求められます。具体的には、二重徴求の防止や保証解除の適切な管理・見直しを行うことが挙げられています。また、対象債権者は事業承継時に乗じた安易な保全強化や二重徴求の拡大解釈を行わないよう留意する必要があることも述べられています。

具体的な活用方法

ではここから実務的な内容について触れていきたいと思います。
以前、本コラムでも触れたLBOとSPCの考え方に近いところもありますが

①SPC(特別目的会社、Special Purpose Company)を組成
②SPCにて対象会社を買収
③買収時に金融機関について本特則を用いて経営者保証の解除を依頼する

SPCの関連会社(親会社等)の資力が十分ある場合、解除に応じる金融機関もあるようで、また関連会社は直接の連帯保証に入らなければ与信などにも影響しないため、リスクを切り離しながら連続的に買収が行えるようです。
実際に弊社で仲介を行ったM&Aでも債務超過の場合でも連帯保証の切り替えができているケースが多いのですが、上記のように買収会社をSPCにすることで、より買収しやすい体制をとることができていると言えるのではないでしょうか。
これによって残すべき経営資源があるにもかかわらず引き受け手が限られてしまい、倒産・破綻をせざるを得ない企業が少しでも減るのかなと思います。
弊社のクレドである「経営者の皆様が大事にされてきた企業文化が喪われることを、断固拒否します。」からも必要な場面で適切に利用されるといいのではないかと思料します。
(*なお100%経営者保証を解除できる保証はないので、その点についてはご留意ください)

とはいえ売り手からすると一般的になじみのないスキームであることから、事前に丁寧な説明を行うことが必要であると考えられます。
M&Aの申し出を行った企業から何も知識がない状態で言われても「弊社ではなくこのスペシャルパーポスカンパニー(SPC)で買収します」と言われても「スペシャルペーパーカンパニーが買収?」って思ってしまいますよね。

このスキームは大変興味深い反面、ある程度M&Aの知識がある仲介でないと説明しきれないと思います。
ご関心を持たれた企業様に置かれましては遠慮なくお問い合わせください。

 

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