この記事でわかること
<a href="https://jfsc.jp/research/unso-shoukibo-ma/">小さい運送会社でもM&Aできるのか|合併711社を規模で数え、運送業許可の承継を条文で整理した|株式会社日本財務戦略センター</a>文章での出典表記:株式会社日本財務戦略センター「小さい運送会社でもM&Aできるのか|合併711社を規模で数え、運送業許可の承継を条文で整理した」(2026年9月21日) https://jfsc.jp/research/unso-shoukibo-ma/トラックが8台ある。従業員は9人。荷主との付き合いは、先代のころからのものもある。
大きく儲かっているわけではないけれど、会社は普通に回っている。売りたいというほど困っているわけでもない。ただ、社長はもう60代半ばになった。
息子は継がないと言っている。自分がずっとやるわけにもいかない。
廃業するという道はある。けれど、トラックを処分して、従業員に話をして、荷主に説明して、車庫をどうするか決めて、借入を返して――と考えると、それはそれで簡単な話ではない。
そこで、ふと思う。
会社ごと、誰かに引き継いでもらうことはできないものか。
ただ、次の瞬間にはこうも思う。
いや、うちは8台しかない。こんな会社を買う人が、そもそもいるのか。
この疑問は、もっともだと思います。M&Aと聞けば、何十台、何百台とトラックを持つ会社や、売上何十億円という会社を思い浮かべるのが普通です。
では、本当にそうなのか。
今回、官報に記録された運送会社の合併を711社まで遡り、そのうち規模を確認できる会社について、実際に何台のトラックを持っていたのかを調べました。あわせて、運送会社を引き継ぐとき、肝心の運送業の許可はどうなるのかを、法律の条文まで遡って整理しました。
この記事は、M&Aを勧めるための記事ではありません。廃業するのか、親族に引き継ぐのか、従業員に託すのか、第三者に引き継ぐのか。その判断をする前に、自分の会社にも第三者への承継という選択肢があるのかを知るための記事です。
国税庁の法人番号データベースには、合併で消えた法人と、その事業を承継した法人が記録されています。そこから運送会社を抜き出すと、2015年から2026年までに711社が合併で消えていました。
ただ、この記録には会社の規模が入っていません。そこで、消えた会社の法人番号を、国土交通省が公開している一般貨物自動車運送事業者の許可名簿(法人番号で名寄せして44,100法人)と突き合わせました。

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711社のうち、現在の名簿と照合できたのは103社。そのうち車両数まで確認できたのが100社でした。
照合できる割合が低いのには理由があります。合併で消えた会社は、現在の許可名簿から落ちているためです。実際、承継先の法人は351社(49.4%)が照合できました。今も営業しているからです。消えた側と残った側で、この差が出ます。

車両数を確認できた100社の中央値は20台でした。四分位でみると、下から4分の1の位置が11台、上から4分の1の位置が47台です。
| 車両数 | 社数 | 割合 |
|---|---|---|
| 1〜5台 | 4社 | 4% |
| 6〜10台 | 20社 | 20% |
| 11〜20台 | 29社 | 29% |
| 21〜50台 | 25社 | 25% |
| 51台以上 | 22社 | 22% |
10台以下が24社、全体の24%でした。冒頭の8台の会社は、この帯に入ります。
この数字の読み方には注意が要ります。まず、ここで確認しているのは法人番号データベースと官報に記録された「合併」であり、すべてが第三者による買収を意味するわけではありません。実際、この100社のうち35社はグループ内の再編でした。残る65社は、承継先が運送業以外の会社(36社)または同業の別会社(29社)です。
また、これは「小さい運送会社の24%がM&Aされる」という意味でもありません。官報で確認した合併事例のうち、規模を確認できた会社の分布です。母数は711社ではなく、規模を確認できた100社です。
照合できたのが14.5%しかない以上、「小さい会社ほど名簿から早く消えるので、実態はもっと小さいのではないか」あるいは逆に「小さい会社が抜け落ちているのではないか」という疑いが立ちます。そこで合併の年ごとに分けて確かめました。
| 合併年 | 件数 | 照合できた数 | 照合率 | 車両数の中央値 |
|---|---|---|---|---|
| 2015〜2017年 | 151 | 0 | 0.0% | ― |
| 2018〜2022年 | 305 | 9 | 3.0% | ― |
| 2023年 | 73 | 6 | 8.2% | 35台 |
| 2024年 | 65 | 34 | 52.3% | 17台 |
| 2025年 | 81 | 32 | 39.5% | 20台 |
| 2026年 | 36 | 22 | 61.1% | 22台 |
照合率には年代による大きな差がありました。2024年以降は40〜60%、2022年以前は3%未満です。一方、照合できた会社の車両数の中央値は、年代をまたいで17〜35台の範囲にありました。
今回確認した範囲では、古い案件ほど小規模な会社だけが系統的に抜け落ちている、とは確認できませんでした。照合率の差は、合併からの経過年数で説明がつきます。
なお、名簿には売上の欄もありますが、この103社については1社も入っていませんでした。そのため、この記事では車両数と売上を分けて扱います。全日本トラック協会の経営分析による別の物差しでは、車両10台以下は売上規模1億円前後に相当する目安とされています。
では、引き継いだのは誰なのか。
すでに公開している運送会社の合併711社を官報から数えた調査で、買い手の姿は出ています。買い手は593社。そのうち90.9%が一度きりで、二度目の買収をしていません。上場企業が直接買ったのは3.1%。そして46.7%が同じ市区町村の会社でした。
つまり、買っているのはファンドでも大手でもなく、隣の会社です。
今回の100社を承継先の類型で分けると、もう一つ分かったことがあります。
| 承継先の類型 | 社数 | 車両数の中央値 |
|---|---|---|
| 運送業以外の会社が承継した | 36社 | 15台 |
| 同業(運送会社)が承継した | 29社 | 20台 |
| グループ内の再編 | 35社 | 23台 |
運送業以外の会社が承継した場合が、いちばん小さい(中央値15台)という結果でした。荷主、倉庫、建設、製造。自社の物流を内側に取り込みたい会社にとっては、大きさより「今すぐ動くトラックと人と許可」が要るのだと読めます。
社数がそれぞれ29〜36社と少ないため、この差は参考値です。ただ、少なくとも「小さい会社は同業にしか売れない」という話ではありませんでした。
冒頭の社長の疑問に戻ります。「8台しかない会社を買って、いったい何を引き継ぐのか」
車両だけではありません。
このうち、小さい会社ほど急所になりやすいのが人です。
運行管理者は、選任したときも解任したときも、そのつど国土交通大臣への届出が必要です(貨物自動車運送事業法 第16条第3項)。整備管理者は、選任の日から15日以内に地方運輸局長へ届け出なければなりません(道路運送車両法 第52条。こちらは別の法律です)。
資格者が複数いる会社なら誰かが残ります。1人しかいない会社で、その1人が引き継ぎを機に辞めると、後任を立てて届け出るまでの穴が開きます。車両や車庫と違って、人は契約書で移せません。
そして、最後に挙げた許可。これが、引き継ぎ方によって扱いが変わります。
ここがこの記事の中心です。「会社を売る」と一口に言っても、その売り方は一つではありません。そして売り方によって、許可の扱いが変わります。

| 引き継ぎ方 | 許可の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 株式譲渡 | 認可は要らない | 許可の名宛人は法人(法第3条)。株主が替わっても法人は変わらない |
| 事業譲渡 | 認可が要る | 法第30条第1項 |
| 合併(運送会社どうし) | 認可が要る | 法第30条第2項 本文 |
| 合併(相手が運送業でなく、運送会社が存続する) | 認可は要らない | 法第30条第2項 ただし書 |
| 会社分割(運送事業を承継させる) | 認可が要る | 法第30条第2項 本文 |
| 会社分割(運送事業を承継させない) | 認可は要らない | 法第30条第2項 ただし書 |
| 相続 | 60日以内に認可 | 法第31条第1項 |
「合併は認可が要る」と一言では言えません。条文にただし書があり、そこで分かれます。
第三十条 一般貨物自動車運送事業の譲渡し及び譲受けは、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 一般貨物自動車運送事業者たる法人の合併及び分割は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。ただし、一般貨物自動車運送事業者たる法人と一般貨物自動車運送事業を経営しない法人が合併する場合において一般貨物自動車運送事業者たる法人が存続するとき又は一般貨物自動車運送事業者たる法人が分割をする場合において一般貨物自動車運送事業を承継させないときは、この限りでない。
3 第五条及び第六条の規定は、前二項の認可について準用する。
貨物自動車運送事業法(e-Gov 法令検索)
いま引用した条文の第3項が、実務では効いてきます。
第5条は欠格事由、第6条は許可の基準です。つまり事業譲渡・合併・分割の認可では、入ってくる側が、新規に許可を取るのとほぼ同じ基準で審査されます。第6条第3号には「その事業を自ら適確に、かつ、継続して遂行するに足る経済的基礎」という条件があり、買い手の体力も見られます。
株式譲渡の場合、許可の名宛人である法人が変わらないため、この審査は発生しません。
ここが、小規模なM&Aで株式譲渡が選ばれやすい理由の一つです。税務や簿外債務の話だけではなく、制度の側が手続きの重さで差をつけているということです。
第三十一条 一般貨物自動車運送事業者が死亡した場合において、相続人(…)が被相続人の経営していた一般貨物自動車運送事業を引き続き経営しようとするときは、被相続人の死亡後六十日以内に、国土交通大臣の認可を受けなければならない。
2 相続人が前項の認可の申請をした場合には、被相続人の死亡の日からその認可をする旨又はその認可をしない旨の通知を受ける日までは、被相続人に対してした一般貨物自動車運送事業の許可は、その相続人に対してしたものとみなす。
貨物自動車運送事業法(e-Gov 法令検索)
申請さえ出しておけば、結論が出るまでは許可が続いているものとして扱われます。逆に言えば、60日のあいだ何もしなければ、その先の選択肢が狭まります。

関東運輸局は、申請の処理にかかる標準的な期間を公示しています。
| 申請 | 地方運輸局長権限 | 大臣権限 |
|---|---|---|
| 一般貨物自動車運送事業の許可(新規) | 3〜5ヶ月 | ― |
| 譲渡し及び譲受けの認可 | 1〜3ヶ月 | 2〜3ヶ月 |
| 合併又は分割の認可 | 1〜3ヶ月 | 2〜3ヶ月 |
| 相続の認可 | 1〜3ヶ月 | 2〜3ヶ月 |
新規に許可を取れば3〜5ヶ月、引き継げば1〜3ヶ月。ゼロから始めるより、引き継ぐ方が早く動けます。
ただし、同じ公示には続きがあります。
標準処理期間は適法な申請を処理するために通常要すべき標準的な期間であると解釈されていることから、標準処理期間の算定には以下の期間は含まれないものとする。
① 申請者が不備のため当該申請の補正をするために要する期間
② 申請の処理の途中で、申請者が申請内容を変更するために必要な期間
③ …1回目の法令試験を実施した結果、合格基準に達しない場合に、1回目の法令試験受験日から再度の法令試験を受験するまでの期間関東運輸局 公示「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可及び事業計画変更の認可申請等の処理方針について」
1〜3ヶ月というのは、書類に不備がなく一度で通った場合の期間です。補正が入ればその分は加算されません――正確には、標準処理期間の計算から外れます。3ヶ月のつもりでいたら半年かかった、ということが起こり得るのは、この構造によります。
この数字は関東運輸局の公示によるものです。標準処理期間は運輸局ごとに公示されているため、他の地域では確認していません。
承継の認可とは別に、営業所や車庫の位置が変わるのであれば、事業計画の変更の認可が必要です(法第9条第1項)。車両の増減は、あらかじめの届出です(同条第3項)。
なお、合併や会社分割そのものの登記手続きは法務局側の話で、司法書士や弁護士の領分になります。ここでは運輸局に対する手続きだけを扱っています。
ここまでは「小さくても引き継がれている」側の話でした。逆の側も書いておきます。
車両が50台あっても、次のような事情があれば話は簡単には進みません。
運送業は、全体でみて営業赤字の会社が48%、車両10台以下では62%という調査があります(全日本トラック協会の経営分析報告書)。黒字であること自体が、それほど当たり前ではありません。
規模は、価値そのものではありません。大きければ買い手が付きやすいわけでも、小さければ付かないわけでもない。見られているのは、引き継いだあとに事業が続くかどうかです。
この記事はM&Aを勧めるものではないので、もう一方の道についても書いておきます。
会社を閉じる道は一つではありません。自主的に解散して清算する道と、支払いが立ち行かなくなって破産する道とでは、まったく別のものです。その違いは会社の閉じ方を法人番号データベースと登記統計から数えた調査にまとめています。
運送業では、破産した会社を158社まで確認しています(法人の破産を官報と民間データベースから数えた調査)。
そして、先ほどの相続の60日。何も決めないまま時間が過ぎると、選べる道が減っていきます。これは、売るか売らないかという話の手前にある問題です。
買い手が何を見ているかについては、既存の調査の第10章「では、売る側は何を比べればいいのか」で詳しく書いています。ここでは、小規模な会社に固有の点だけを挙げます。
これらは売るために必要な準備であると同時に、売らない場合にも効く整理です。従業員に継がせるにしても、息子が気を変えるにしても、同じことを確かめる必要があります。
ここまでの内容を、確かめる順に並べます。
| 見るもの | 確かめること |
|---|---|
| 規模 | 車両は何台か。今回の調査では、他社へ引き継がれた会社の中央値は20台、10台以下が24%でした |
| 収益 | 直近3期の営業損益。赤字が続いていても買われている例はありますが、条件は変わります |
| 財務 | 借入の残高と返済の見通し。車両のリースがどれだけ残っているか |
| 人 | ドライバーの人数と年齢。運行管理者・整備管理者が何人いるか |
| 荷主 | 上位1社が売上の何割か。契約書の有無 |
| 許認可 | 許可の内容と、営業所・車庫の名義。行政処分の履歴 |
| 買い手候補 | 同じ市区町村の同業。荷主。周辺業種。買い手の46.7%は同じ市区町村でした |
小さいからM&Aできない、とは限りません。ただし、小さいから簡単、でもありません。
官報で確認した711社のうち、規模を確認できた100社では、中央値が20台、10台以下が24社ありました。ただしこの100社のうち35社はグループ内の再編で、第三者への承継は65社です。運送業以外の会社が承継した場合は、中央値15台とさらに小さいという結果でした。冒頭の8台の会社は、この調査の対象に入る規模です。
一方で、引き継ぎ方によって手続きは変わります。株式譲渡なら許可はそのまま。事業譲渡・合併・分割なら、入ってくる側が新規許可と同じ基準で審査され、1〜3ヶ月かかります。書類に不備があれば、その期間には含まれません。
そして、見られているのは規模ではなく、引き継いだあとに事業が続くかどうかでした。荷主、人、許可、そして社長がいなくなっても回るかどうか。
冒頭の社長は、まだ売ると決めたわけではありません。それでいいのだと思います。
まず、自分の会社にどういう選択肢があるのかを知る。そのうえで、廃業するのか、親族に渡すのか、従業員に託すのか、第三者に引き継ぐのか。決めるのはその後です。
トラックが10台以下の運送会社でも、M&Aの対象になりますか。
今回の調査では、官報で確認した合併711社のうち規模を確認できた100社の中に、車両10台以下の会社が24社(24%)含まれていました。中央値は20台です。ただし、ここで確認しているのは法人番号データベースと官報に記録された「合併」であり、すべてが第三者による買収を意味するわけではありません。この100社のうち35社はグループ内の再編で、第三者への承継は65社です。また「小さい会社の24%がM&Aされる」という意味でもなく、確認できた合併事例の中での分布です。
運送業の許可だけを売ることはできますか。
許可そのものを単独で売買することはできません。事業として譲渡する場合は、貨物自動車運送事業法第30条第1項により国土交通大臣の認可が必要で、認可を受けなければ効力が生じません。認可の審査では、譲り受ける側が新規に許可を取るのとほぼ同じ基準(第5条の欠格事由、第6条の許可の基準)で見られます(同条第3項の準用)。
株式を売るのと、事業を売るのとでは、許可の扱いはどう違いますか。
株式譲渡では、許可の名宛人である法人が変わらないため、運送業許可について国土交通大臣の認可は必要ありません。一方、事業譲渡・合併・会社分割では原則として認可が必要です(法第30条)。ただし合併と会社分割には条文にただし書があり、相手が運送業を営まない法人で運送会社が存続する場合や、分割で運送事業を承継させない場合は認可が不要です。
承継の認可には、どれくらい時間がかかりますか。
関東運輸局の公示では、譲渡し及び譲受け・合併・分割・相続の認可はいずれも地方運輸局長権限で1〜3ヶ月、大臣権限で2〜3ヶ月とされています。新規に許可を取る場合は3〜5ヶ月です。ただし同じ公示に、書類の補正に要した期間、申請内容を変更した期間、法令試験の再受験までの期間はこの標準処理期間に含まれないと明記されています。
社長が急に亡くなった場合、運送業の許可はどうなりますか。
相続人が事業を続ける場合、貨物自動車運送事業法第31条第1項により被相続人の死亡後60日以内に国土交通大臣の認可を受ける必要があります。申請を出していれば、認可の可否が通知されるまでは被相続人に対する許可が相続人に対してされたものとみなされます(同条第2項)。
運送会社を引き継いでいるのは、どんな相手ですか。
既存の調査では、買い手593社のうち90.9%が一度きりの買収で、上場企業が直接買ったのは3.1%、46.7%が同じ市区町村の会社でした。今回の集計では、運送業以外の会社が承継した場合の車両数の中央値が15台と、同業(20台)やグループ内再編(23台)より小さいという結果でした(ただし各29〜36社と社数が少ないため参考値です)。
<a href="https://jfsc.jp/research/unso-shoukibo-ma/">小さい運送会社でもM&Aできるのか|合併711社を規模で数え、運送業許可の承継を条文で整理した|株式会社日本財務戦略センター</a>文章での出典表記:株式会社日本財務戦略センター「小さい運送会社でもM&Aできるのか|合併711社を規模で数え、運送業許可の承継を条文で整理した」(2026年9月21日) https://jfsc.jp/research/unso-shoukibo-ma/