公開日:2024年1月12日 /最終更新日:2024年7月24日
NPO法人の事業承継の方法と課題
NPO法人とは
NPO法人とは特定非営利活動促進法(NPO法)に基づいて設立される法人のことで、社会的な貢献活動を行うことを目的としています。NPO法人は、人口減少や高齢化などの社会構造の変化に伴い、官民いずれの担い手も対応できない需要の「隙間」を埋める役割を担っています。また、ライフスタイルの変化などにより多様化するニーズに対応していくためには、多様な担い手が必要となっており、NPO法人はその一つとして期待されています。
NPO法人を取り巻く状況
しかしNPO法人にも様々な問題やトラブルが発生しています。例えば、以下のような事例があります。
– NPO法人の役員やスタッフが犯罪に関与したり、活動の実態がないのに法人格が残ったままになっている(休眠NPO法人)などの事実関係が明らかとなり、所轄庁から設立認証を取り消されたり、刑事事件として立件されたりしたケース。
– NPO法人がコロナウイルスの影響で活動が制限されたり、寄付金や事業収入が減少したりして、財政的に苦境に陥ったケース。
– NPO法人が自団体のウェブサイトやSNSを利用した戦略的な情報発信の方法や効果が分からないケース。
これらの問題やトラブルは、NPO法人の信頼や活動の質を低下させるだけでなく、社会に対する責任や貢献も損なう可能性があります。NPO法人は、自主的な法人運営が尊重される一方で、情報開示や市民からの監視を通じて透明性や説明責任を高めることが求められています。また、NPO法人は、自らの活動の目的や効果を明確にし、社会のニーズに応えることができるように、組織や人材の強化、資金調達や協働の拡大、評価や改善の仕組みの整備などを行うことが必要です。
一方で、NPO法人の経済力や社会的影響力は、近年拡大しているという側面もあります。NHKの報道によると、NPOの名目GDPは平成23年には11兆円に達し、全体に占める割合は2.4%に上りました。また、NPOの就業者数は平成23年には約100万人に達し、生産年齢人口に占める割合は1.8%に上りました。これらの数字は、諸外国に比べてまだ低い水準ですが、今後も増加する可能性があります。
NPO法人は、社会課題解決に向けて、多様な事業やサービスを展開しています。例えば、以下のような事例があります。
– NPO法人ママの働き方応援隊は、子連れで学べる無料の「ママの職業訓練校」を開講するなど、子連れの母親の就職機会を拡大する取り組みを行っています。
– NPO法人ツネイシ・スポーツアクトは、サッカー・カッターボートを中心に、様々なスポーツの振興を通じた青少年の健全育成を進めています。
– NPO法人霧多布湿原ナショナルトラストは、北海道厚岸郡浜中町の霧多布湿原を保全するため、市民が主体となりナショナルトラスト運動により、民有地の買い取りを進めています。
– NPO法人カタリバは、高校生向けに、学生ボランティアを活用した動機付けキャリア教育を実施するなど、教育分野での取り組みを行っています。
これらの事例は、NPO法人が社会に対して創造する公共的価値の一部に過ぎません。NPO法人は、その活動の内容や規模にかかわらず、社会のニーズに応えることができる柔軟性や独創性を持っています。しかし、NPO法人は、その活動の成果や効果を社会に伝えることが十分でない場合があります。NPO法人は、その活動の意義や価値を社会に認めてもらうために、情報発信や広報活動を強化することが必要です。
NPO法人は、社会の変化に対応して、新たな事業や雇用の担い手として期待されています。しかし、NPO法人は、その活動の質や量を維持・向上させるために、様々な課題や困難に直面しています。その中でも、特に重要な課題の一つが、事業承継です。事業承継とは、NPO法人の活動を継続するために、代表者や役員、スタッフなどの人的資源や、事業のノウハウやネットワークなどの組織的資源を、次世代に引き継ぐことをいいます。事業承継は、NPO法人の存続や発展にとって不可欠なプロセスですが、同時に、多くの困難や障壁があります。
NPOの事業承継
外部承継による事業承継
外部承継とは、NPO法人の外から、他のNPO法人や株式会社などの法人や個人などに対し、法人の代表変更や事業を譲渡または合併する方法です(NPO法人と営利法人の合併はできません)。外部承継による事業承継のメリットは、次のとおりです。
– NPO法人の活動を継続するために、適切な後継者を見つけることができる
– NPO法人の資産や施設、ノウハウやネットワークなどの組織的資源を有効に活用することができる
– NPO法人の規模や資本力、サービスの多様化や高度化などの経営効率や競争力を向上することができる
外部承継による事業承継のデメリットは、次のとおりです。
– NPO法人の解散や設立、合併などの手続きが必要である
– NPO法人の財産や施設の評価額が高くなる可能性がある
– NPO法人の業務や組織の統合に伴う調整や摩擦が発生する可能性がある
– NPO法人の理念や文化が変化する可能性がある
外部承継には、事業譲渡と合併の二つの方法があります。事業譲渡とは、NPO法人が自らの事業用資産の全部または一部を他の法人に譲渡することをいいます。合併とは、2つ以上の法人が一つになることをいいます。合併には、吸収合併と新設合併の2種類があります。吸収合併とは、一方の法人が他方の法人を吸収して存続することで、新設合併とは、両方の法人が解散して新たな法人を設立することです。以下では、それぞれの方法の概要とメリット・デメリットを紹介します。
事業譲渡による事業承継
NPOの活動が拡大する中で様々な理由から株式会社と同様、NPOの事業承継が活発になってきています。
NPOを事業承継することで事業を後世に残しながら創造的に拡大していくことができると考えられます。
事業譲渡による事業承継のメリットは、次のとおりです。
– NPO法人の活動を継続するために、適切な後継者を見つけることができる
– NPO法人の資産や施設、ノウハウやネットワークなどの組織的資源を有効に活用することができる
– NPO法人の業務や組織の継続性が高い
事業譲渡による事業承継のデメリットは、次のとおりです。
– ケースによってはNPO法人の解散や設立の手続きが必要である
– 譲渡を行う過程で税金などが発生する
事業譲渡には、NPO法人の定款に定められた承認や同意の手続きが必要です。また、譲渡される事業用資産には、NPO法人の財産だけでなく、従業員や利用者の情報なども含まれる場合があります。その場合、従業員や利用者の権利や利益を保護するために、適切な対応や説明が必要となります。事業譲渡の際には、NPO法人の業務や関係者の状況を把握し、適切な方法を選択する必要があります。
合併による事業承継
合併による事業承継とは、2つ以上の法人が一つになることをいいます。合併による事業承継のメリットは、次のとおりです。
– NPO法人の規模や資本力、サービスの多様化や高度化などの経営効率や競争力を向上することができる
– NPO法人の資産や施設、ノウハウやネットワークなどの組織的資源を有効に活用することができる
– NPO法人の理念や文化が変化する可能性がある
合併による事業承継のデメリットは、次のとおりです。
– NPO法人の解散や設立、合併などの手続きが必要である
– NPO法人の業務や組織の統合に伴う調整や摩擦が発生する可能性がある
NPO法人の存在感が高まる中で、M&A市場についても株式会社と同様に重要視されてきています。
新規参入を行いたい、あるいはNPO法人を譲り渡し後進に託したいと思われる方は是非お気軽にご相談ください。
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