チケットを安売りしても客は増えない ── アマオケのチケットが売れる理由は、これだ!

株式会社日本財務戦略センター|独自調査|2026年9月21日公開・9月27日更新(数字を訂正)

チケットを安売りしても客は増えない ── アマオケのチケットが売れる理由は、これだ!

演奏会ごとに、実際にどれだけの席が押さえられたかを4,079公演ぶん集計しました。社会人オーケストラ434公演について、値段・会場・曲・指揮者・独奏者と動員の関係を測っています。


アマチュアオーケストラの演奏会で、客席がどれだけ埋まったか。これを外から数える方法があります。

オンラインで販売された席については、公演ごとに「その日、何席が押さえられたか」を後から集計することができます。何年も遡って数えられます。

これを4,079公演ぶん集めました。そこから社会人のアマチュアオーケストラ434公演を取り出して、値段、会場、曲、指揮者、独奏者が、動員とどう関係しているかを調べました。

結論を先に言えば、500円から2,000円というアマオケの値段の幅の中では、安くしても客は増えていませんでした。


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1. 何を、どう数えたか

クラシックの区分で売り出されたアマチュアオーケストラの公演について、公演ごとの販売実績を独自に集計しました。4,079公演です。

ここから条件で絞りました。

終わった公演だけ(本番より前に数えた回も外しています)。有料の公演だけ。指定席の公演だけ(自由席は席ごとの数が出ません)。プロオーケストラと企業のオーケストラ、プロの楽団を招いて公演を打つ音楽事務所の回は外しました。オンラインで売れた席が30席に満たない回も外しています。窓口や別のプレイガイドで大半を売っていて、オンラインにはごく一部しか出していない回が混ざるためです。同じ理由で、オンラインに出した席数(売れた席+残り席)が300席に満たない回も外しました。

そのうえで、2022年以前は外しています。感染症の影響で客席の使い方そのものが違っていた時期で、同じ物差しに乗りません。

そしてもうひとつ、大学のオーケストラも、本編からは外しました。ただし大学のOBオーケストラは、卒業生が続けている団体なので、社会人オーケストラの側に入れています(名前に「OB」「OG」「同窓」が入る団体。大学生が毎年同じ名称で結成する卒業記念の楽団も、続いている団体として社会人オーケストラの側に入れています)。学生オーケストラは学内の動員が効くので、市場として別物です。合唱つきの回ひとつ取っても、社会人の団体では同じ団体のほかの回より218席多く入るのに対して、学生の団体では62席少なくなります。同じ表に載せると、どちらの実態でもない平均が出てきます。ただし外したままにはしていません。大学オーケストラは「宣伝の道具の使い方が揃っている集団」として使えるので、宣伝がどれくらい効くのかを測るのに使いました(10節)。

残ったのが、社会人オーケストラの434公演・150団体です。以下の数字は、すべてこの434公演のものです。

オーケストラではないものは外しました。実行委員会や後援会、会場そのもの、合唱団、ピアノの団体が主催者として登録されている回があります。マンドリンオーケストラも、編成が違うので外しています。大学のオーケストラは、校名に「大学」が入らない団体(同志社交響楽団など)まで拾って、すべて別の集団として扱いました。

この434公演がどういうものかというと、こうです。

売れた席中央値 752席(上位25%は1,049席、最大2,012席)
集客率中央値 46.6%(上位25%は61.2%)※434公演すべて
値段(大人向けの有料の券種の平均)中央値 1,500円(一番安い大人券では1,000円)

集客率の分母は、売りに出された席数ではなく、ホールが公称している定員を使いました。売りに出す席数は主催者が決めるので、そちらを分母にすると団体ごとに物差しが変わってしまいます。

ただしこの取り方には裏があります。オンラインに出していない席は、分母には入るのに分子には入りません。窓口や別のプレイガイドで半分近くを売っている団体は、その分だけ集客率が低く出ます。ホール定員のうちオンラインに出た割合は中央値78%で、50%を切る回が74回(17%)あります。以下の集客率は、どれも下限だと思ってください。動員数の方を主役にしているのは、これが理由です。

もうひとつ。ホールの公称定員は、434公演すべてで確かめられました。集客率も、434公演すべてで出しています。

数え方について、ひとつ断っておきます。集計しているのは「押さえられた席」であって、実際に代金が支払われた席とは限りません。主催者の押さえや招待席が含まれている可能性があります。ここではこれらをまとめて「売れた席」として数えました。

もうひとつ。一部の公演は、売れた席と券種の値段は取れても、日付・会場・曲目・指揮者・独奏者が空欄でした。そうした公演は、保存されていたチラシ、各団体の公式サイトの演奏会記録、ホールの公演アーカイブ、楽団の公式SNSで補い、条件に合う32公演(社会人5・大学27)を、ほかの公演と同じ扱いで本編と10節の数字に入れています。32公演すべてで曲目と指揮者が埋まりました(告知に「ほか」とある曲は入っていません)。本文に曲目が載っていなかったそのほかの9公演も、主催者のチラシで曲目・指揮者・独奏者を確かめて補いました。また2公演は、取り込んだ日付と会場が別の催しのものになっていたので、主催者側の記録に合わせて直しました。

「同じ団体の平均との差」を使う集計には、2公演以上ある団体の回だけを使っています。1公演しかない団体は、差が必ず0になるからです。

複数の要素を同時に見るときは、団体ごとの固定効果を入れた回帰を使いました。3公演以上ある団体に限るので319公演・65団体で、残差の標準偏差は194席です。以下に出てくる「+○席」は、この194席と比べて読んでください。40席の差と558席の差は、同じ「差」でも意味が違います。


2. 値段を下げても、客は増えない

まず、いちばん手をつけやすいところから。

回帰では、値段(大人向けの有料の券種の平均)が1,000円上がるごとに+93席でした(誤差の幅は±45席)。同じ団体の中では、高い回の方がむしろ入っています。5%水準で有意な数字です。

これは「値上げすれば客が増える」という意味ではありません。特別な回に値段を上げている団体があり、その回がよく入っている、という可能性があります。はっきり言えるのは逆の側で、1,000円値下げして客が増えるという向きの数字は、誤差の幅の中にもほとんど出てきません。

帯で分けると、こうなります。

値段(券種の平均)公演数集客率
〜1,000円19848.4%
1,001〜1,500円9343.7%
1,501〜2,000円8649.5%
2,001〜3,000円4346.8%
3,001円〜1441.8%
値段(券種の平均)の帯ごとの集客率。どの帯も4割から5割の間で、1,000円までの帯でも5割に届かない
図1 値段(券種の平均)の帯ごとの集客率。どの帯も4割から5割の間で、1,000円までの帯でも5割に届かない(クリックで拡大)出典:株式会社日本財務戦略センター 独自集計(2023-2026)

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どの帯も40〜50%の間に並び、安い帯ほど入っているという形はありません。ただしこの表は、別々の団体どうしを比べた数字です。同じ団体の中で値段を変えた回どうしを比べても、上の回帰のとおり、安い回の方が入っているという形は出てきません。1,000円までの帯でも、集客率は5割に届いていません(48.4%)。

値段を公演ごとに数えると、434公演のうち1,000円までが198公演(45.6%)で、中央値は1,500円です。

値段(大人向けの有料の券種の平均)の分布(社会人オーケストラ434公演)。区切りは本文の値段の帯と同じ
図2 値段(大人向けの有料の券種の平均)の分布(社会人オーケストラ434公演)。区切りは本文の値段の帯と同じ(クリックで拡大)出典:株式会社日本財務戦略センター 独自集計(2023-2026)
値段(券種の平均)と売れた席(社会人オーケストラ434公演、1点が1公演)。団体をまたいだ単純な比較で、団体の規模の違いが混ざる。本文の結論は同じ団体の中で比べた回帰による
図3 値段(券種の平均)と売れた席(社会人オーケストラ434公演、1点が1公演)。団体をまたいだ単純な比較で、団体の規模の違いが混ざる。本文の結論は同じ団体の中で比べた回帰による(クリックで拡大)出典:株式会社日本財務戦略センター 独自集計(2023-2026)

値段と売れた席を公演ごとにそのまま並べると、相関は+0.07でした。この図は団体をまたいだ単純な比較で、団体の規模の違いが混ざります。上の回帰(1,000円あたり+93席)は同じ団体の中で比べたもので、この図とは測り方が違います。

値段を下げて動員が増えるという関係は、出ませんでした。

それより目につくのは、値段の幅が狭いことです。値段の中央値は1,500円(一番安い大人券では1,000円)で、86.9%が500円から2,000円の間に収まっています。年季で分けると、第1〜19回の団体は中央値1,000円、第50回以上の団体は1,500円でした。

年季と動員の関係も見ておきます。公演名から「第N回」が取れた113団体で、直近の回数と1公演あたりの売れた席の相関は+0.14(回数を対数にすると+0.19)でした。1公演あたりの中央値は、第1〜19回の団体が636席、第20〜49回が865席、第50〜99回が795席、第100回以上が944席です。始めて間もない団体(第19回まで)は少なめですが、20回を超えるとほぼ横ばいで、歴史が長いほど入る、とまでは言えません。

一番安い大人券で見ると、サントリーホールを2,012席埋めた回も、120席だった回も、同じ1,000円でした。値段が動員を決めているかどうか以前に、値段の幅そのものが狭いのです。

なお、ここでいう値段は、大人向けの有料の券種(SS・S・A・B・一般・自由など)の値段を、席種ごとに1つずつ数えて平均したものです。学生・ユース券、後援会・維持会などの会員制の枠、招待・無料券は、団体ごとに設け方が違うため計算から外し、値段はすべて一般向けの有料券で計算しました。実際に客が払った1枚あたりの平均は、これより低くなります。券種ごとに何枚売れたかが分からないという限界があるため、一般向けの券で揃えました。販売システムが持っている最低額をそのまま使うと、招待席(3円)や未就学児の割引券(200円)を拾ってしまうため、値段は券種の一覧から取り直しています。

大人が入れる一番安い券だけで測ると、席種を分ける団体(たとえばSS4,000円・S3,000円・A2,000円・B1,500円の団体は1,500円)の値段が低く出て、値段の差が小さく見えます。その物差しで同じ回帰をすると、1,000円あたり+111席(誤差の幅±56席)で、値下げで客が増える向きが出ないことは変わりません。


3. 効いているのは、箱の大きさより「どのホールか」

いちばん大きく動いたのは会場でした。

会場推定差有意
サントリーホール 大ホール+558席***
東京芸術劇場 コンサートホール+366席***
横浜みなとみらいホール 大ホール+311席***
ミューザ川崎シンフォニーホール+210席***
すみだトリフォニーホール 大ホール+166席***
会場ごとの推定差。サントリーホールは残差の標準偏差194席の2.9倍
図4 会場ごとの推定差。サントリーホールは残差の標準偏差194席の2.9倍(クリックで拡大)出典:株式会社日本財務戦略センター 独自集計(2023-2026)

同じ団体が別の会場でやった回と比べています。残差の標準偏差が194席ですから、サントリーホールの+558席はその2.9倍です。

効いているのは、箱の大きさだけではありません。この5つのホールは、すみだトリフォニーホール(1,801席)を除けば、どれも定員2,000席前後です。それでも推定差は+558席から+166席まで開いていて、定員の順には並びません。定員を変数に加えて同じ回帰をやり直しても、サントリーホールは+474席、東京芸術劇場は+278席が残りました。動員を分けているのは、どのホールを取ったかです。

記念公演の回は+58席でしたが、こちらは誤差の幅の中です。

ただし、これは「サントリーホールを取れば客が増える」という意味ではありません。会場の係数には、会場そのものの効果以外のものも入っています。サントリーホールを取る回は、その団体にとって特別な回であることが多い。そこは分けきれていません。

公演ごとに会場の定員と売れた席を並べると、434公演のうち250公演(57.6%)が定員の半分に届かず、4分の1に届かない回も63公演(14.5%)ありました。

会場の公称定員と売れた席(社会人オーケストラ434公演、1点が1公演)。点線は満席・半分・4分の1の位置
図5 会場の公称定員と売れた席(社会人オーケストラ434公演、1点が1公演)。点線は満席・半分・4分の1の位置(クリックで拡大)出典:株式会社日本財務戦略センター 独自集計(2023-2026)

4. 入るのは《復活》と第九

社会人オーケストラで、合唱つきの回は同じ団体の合唱なしの回より+218席多く入っていました(回帰)。団体の中で直接比べると+286席、集客率で+13.1ポイントです(26団体30公演、20団体で増え6団体で減少)。

これが「合唱だから」なのかを確かめるため、一緒に付いてきやすいものを順に外しました。

外したもの団体/該当推定差率上/下
そのまま26団体30公演+286席+13.1pt20/6
記念公演を外す18団体21公演+237席+10.3pt14/4
第九を外す20団体21公演+240席+10.8pt14/6
同じ団体×同じ会場だけ14団体14公演+221席+11.8pt11/3
三つとも外す5団体5公演+254席+11.2pt4/1

記念公演・第九・会場の三つを外しても、+254席が残りました。ただし比較できた組は5つしかありません。

記念公演の回を外すと+286席が+237席に、第九の回を外すと+240席になりました。どちらを外しても、差は大きく残ります。ただし外すたびに比べられる団体が減る(26団体から18団体、20団体へ)ので、縮んだ幅を「記念公演のぶん」「第九のぶん」と読むことはできません。

ただし、合唱つきなら何でもいいわけではありません。

合唱つきのうち、2公演以上ある団体の45公演を、曲で割るとこうなります。

公演数推定差上/下
マーラー《復活》11+296席10/1
第九10+271席10/0
その他の合唱つき24−16席8/16

その他の合唱つきは、24公演で8勝16敗。合唱を入れれば入るのではなく、《復活》と第九の2曲が効いているというのが実際のところでした。

《復活》は11公演やって、団の平均を下回ったのは1回だけです。第九は10公演すべてで上回りました。


5. それが無理なら、協奏曲

協奏曲を組んだ回は、回帰で+94席でした。

「協奏曲をやれば94席増える」という意味ではありません。協奏曲ありの公演が、平均的にそれだけ上に出ている、ということです。

合唱つきの+218席と比べれば小さい数字ですが、符号は安定しています。合唱団を集めるより手数が少ないぶん、選択肢としては現実的でしょう。


6. 独奏者は、若い方が入っている傾向がある

では、誰を呼ぶかで変わるのか。

協奏曲の回で名前が取れた独奏者40人のうち、生年が判ったのは30人です。Wikipediaのカテゴリ、コンクール入賞記録に残る受賞時の学年、所属事務所や本人のプロフィール、この3つを突き合わせました。

年齢と動員の相関は−0.309(25公演)でした。向きは「若いほど入っている」ですが、5%水準には届きません(t=−1.56)。傾向は見えますが、確かめられたとは言えません。

公演時の年齢団体/公演推定差上/下
25歳以下2団体2公演+227席2/0
26〜39歳12団体13公演+92席10/3
40歳以上10団体10公演−70席4/6

ただし25歳以下は2公演しかありません。この帯は参考までの数字だと思ってください。

そしてこの傾向は、会場と曲を揃えるとさらに弱まります。会場・曲・値段・年・指揮者・団体の効きをすべて抜いた残差と年齢の相関は−0.169(23公演)でした。

水星交響楽団の例が分かりやすく、47歳の独奏者を迎えた回はマーラーの5番、34歳の回はシューベルトの「グレート」でした。社会人オーケストラでマーラー5番は、団の平均とほぼ同じ(−3席)にとどまる曲です。年齢と曲が絡んでいます。

肩書きでも、Wikipediaでも分かれない

有名な独奏者を呼べば入るのか。物差しを2つ用意しました。ひとつは肩書きで、プロオーケストラのコンサートマスターや首席奏者と明記されている回。もうひとつはWikipediaに記事があるかどうかです。

独奏者団体/公演推定差
プロオケのコンマス・首席3団体5公演+79席
Wikipediaに記事あり7団体8公演+84席
記事なし(名前は取れた)14団体16公演+129席

どれもプラスで、記事の無い独奏者の回の方がむしろ多く入っています。公演数が5件から16件しかなく、この差を知名度の効果と読むことはできません。

Wikipediaという物差し自体も粗いものでした。調べてみると、プロオーケストラの首席やコンサートマスターでも記事が無い人が珍しくありません。青木尚佳、石上真由子、須田祥子、西本幸弘、伊藤文嗣、津田裕也、中島郁子。いずれも記事がありませんでした。

性別では分かれない

独奏者が女性の回は+40席、男性の回は−12席でした。

公演時の年齢の中央値は、女性39.5歳、男性39歳で、ほとんど差がありません。念のため年齢と性別を同時に入れると、こうなります。

変数推定差t
年齢(1歳あたり)−3.8席−0.95
女性であること+40.9席0.43

どちらも誤差の中です。男女それぞれで年齢の傾きを引くと、女性が1歳あたり−4.2席、男性が−3.2席で、ほぼ同じでした。若い方が入っている傾向は男女に共通していて、女性だから入っているとは言えません。

女子大生ソリストを出すと観客は増える?

女性の独奏者の8公演を年齢順に並べると、こうなります。

年齢差独奏者
19歳+237席中野りな
26歳+85席角野未来
31歳+35席
32歳−93席
47歳−162席
48歳+268席
52歳+76席
61歳−125席

10代・20代の2公演はどちらもプラスで、30代は+35席と−93席です。ただし40代以降は+268席から−162席までばらばらで、年齢とともにきれいに下がっているわけではありません。

19歳と26歳の2人は、その公演の時点でどちらも在学中でした。桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コースと、リヨン国立音楽院マスター課程です。ほかにも在学中の20代前半の女性を迎えた回が2つありましたが、音楽大学のオーケストラとマンドリン合奏の回で、本編の対象から外れています。

今回のデータだけなら、「そうかもしれない」とは言えます。10代・20代の女性の独奏者の回は、どちらもプラスだったからです。

ただし、そう簡単ではありません。この2公演は同じ団体のもので、その団体は独奏者のいない回でも+377席、+244席、+229席を出しています。逆に−397席の回もあり、もともと回ごとの振れが大きい団体です。

女子大生だから入ったのか、その回がたまたま強かったのか。2公演では切り分けられません。今回のデータからは、増えるとも増えないとも言えない、というのが答えです。


7. 曲は「作曲家」ではなく「曲」で見る

ここまで曲の名前を何度か出しましたが、作曲家の単位でまとめると、見えるものが消えます。

回帰に作曲家ごとの変数を足しても、5%水準で残ったのはマーラー(+111席)だけでした。チャイコフスキー、ベートーヴェン、ブラームス、ドヴォルザーク、ブルックナーなどは、どれも誤差の幅の中です。そのマーラーも、《復活》を別に分けると+73席まで下がって、有意ではなくなります。作曲家の名前が客を呼んでいるのではなく、特定の曲が呼んでいる、ということです。作曲家ごとの数字は付録Dに載せました。

同じマーラーでも、《復活》は+277席、5番は−3席。同じブルックナーでも、8番は+42席、4番は−68席です。

434公演から、曲が取れたのは411公演(95%)、異なる曲で209曲。団の平均との差が出せる(2公演以上ある団体の)379公演のうち、5団体以上が演奏した43曲を「読める層」として見ます。なお4節の《復活》は合唱つきと明記された11公演、ここは曲名で拾った12公演なので、数字が少し違います。

そして曲を見るときは、平均だけでは足りません。ばらつき(団の平均との差の標準偏差)が要ります。同じ+40席でも、毎回+40席の曲と、+400席と−320席を行き来する曲では、意味がまったく違うからです。

手堅い曲

曲団/公平均差ばらつき最小上/下
マーラー《復活》12/12+277席262席−288席11/1
第九9/10+271席216席+44席10/0
ブラームス1番14/14+115席231席−180席9/5
《祝典序曲》(ショスタコーヴィチ)14/14+137席236席−225席10/4
(参考)火の鳥4/4+149席126席−13席3/1

第九は、マイナスに振れた回がありません(いちばん小さくても+44席)。《復活》は12公演で11勝1敗。下回ったのは1回(−288席)だけです。火の鳥は演奏した団体が4つなので、参考までに置いています。

当たり外れが大きい曲

曲団/公平均差ばらつき最大最小
エルガー1番10/10−56席250席+420席−434席
ブルックナー8番5/5+42席256席+244席−318席
アルプス交響曲5/8+33席209席+377席−158席
(参考)ショスタコーヴィチ9番4/4+129席373席+680席−111席
(参考)英雄の生涯2/2−3席467席+328席−334席
5団体以上が演奏した曲の、団平均との差とばらつき。右上は当たれば大きいが外すと沈む曲
図6 5団体以上が演奏した曲の、団平均との差とばらつき。右上は当たれば大きいが外すと沈む曲(クリックで拡大)出典:株式会社日本財務戦略センター 独自集計(2023-2026)

エルガーの1番は、当たれば+420席、外せば−434席。平均の−56席だけ見ていると、この幅が見えません。

(参考)の2曲は、演奏した団体が4つと2つしかありません。1公演動くと数字が変わる層なので、参考までに置いています。英雄の生涯は+328席と−334席の2公演で、平均すると−3席になってしまいます。ばらつきの方が本体です。

安定して沈む曲

曲団/公平均差ばらつき上/下
ベートーヴェン7番11/11−118席175席1/10
ブルックナー4番6/9−68席162席1/8
シベリウス2番10/10−98席77席1/9
《エニグマ変奏曲》9/9−46席149席3/6
シェエラザード7/7−117席94席1/6

ベートーヴェンの7番は11団体11公演で1勝10敗、ブルックナーの4番は6団体9公演で1勝8敗です。シベリウスの2番はばらつきが77席しかなく、安定して沈みます。

沈む曲には、2種類ある

ただし、これらを「入らない曲」と読むのは早いかもしれません。

同じ団体が、その曲をやる回にどんなホールを取っているかを見ると、こうなります。

曲平均差いつもの箱との差
ベートーヴェン7番−118席−13席
ドヴォルザーク8番−56席−77席
ブルックナー4番−68席−68席
シェエラザード−117席−139席
ベートーヴェン《運命》−19席−214席

沈む曲の多くは、その団体がいつもより小さいホールを取った回に置かれています。ブルックナーの4番もシェエラザードも、いつもより小さい会場の回でした(いつもの箱との差は−68席と−139席)。大きな編成を揃えられない回に、これらの曲が選ばれている。曲のせいというより、回の規模のせいかもしれません。

ただし、ベートーヴェンの7番は違います。いつもの箱との差は−13席しかなく、ほぼいつもの会場で、11公演のうち10公演が団の平均を下回っています。こちらは箱では説明できません。

一方で、逆の曲もあります。

曲平均差いつもの箱との差上/下
《死の舞踏》−175席+64席1/5
《エニグマ変奏曲》−46席+18席3/6
エルガー1番−56席+77席4/6
サン=サーンス《オルガン付き》−36席+73席4/5

いつもより大きいホールを取って、沈んでいます。こちらは箱では説明できません。気合いを入れて大きな会場を押さえた回で、選曲が外している。

サン=サーンスの《オルガン付き》は9団体9公演で4勝5敗、平均で−36席。オルガンのあるホールを取る必要がある曲で、実際にいつもより大きい箱を取っているのに、動員には結びついていません。

よく演奏される曲が、よく入るわけではない

演奏回数の多い曲を並べると、成績はばらばらです。

曲団/公平均差上/下
ブラームス4番17/17+24席8/9
ブラームス1番14/14+115席9/5
サン=サーンス《オルガン付き》9/9−36席4/5
《祝典序曲》14/14+137席10/4
マーラー《復活》12/12+277席11/1
ブラームス2番11/11−36席2/9
ベートーヴェン7番11/11−118席1/10

同じ「定番」でも、《復活》と第九と《祝典序曲》は勝ち、ブラームス2番とベートーヴェン7番と《オルガン付き》は負けます。演奏され慣れているかどうかでは、割れません。

前プロにも、差がある

メインは決めても、前に何を置くかは毎回考えるところです。ここにも差がありました。

序曲・組曲団/公平均差上/下
《祝典序曲》(ショスタコーヴィチ)14/14+137席10/4
《フィガロの結婚》序曲7/7+66席4/3
大学祝典序曲10/10+43席6/4
《コリオラン》序曲3/3−22席2/1
《ルスランとリュドミラ》序曲5/5−111席2/3
《エニグマ変奏曲》9/9−46席3/6
《死の舞踏》6/6−175席1/5

ショスタコーヴィチの《祝典序曲》は社会人オーケストラで最もよく演奏される前プロで、14公演10勝4敗。一方《死の舞踏》は6公演1勝5敗でした。

なお、フィンランディアは団の平均との差が出せる3公演で平均+127席ですが、中身は+680席、−128席、−172席で、1勝2敗です。平均は1公演の大きな数字に引っ張られたものです。平均とばらつきを一緒に見ないと、読み違えます。


8. 効かなかったもの

版

ブルックナーの交響曲には複数の版があり、どれを使うかを公演名やプログラムに明記する団体があります。

社会人オーケストラでは、版を明記した16公演が集客率36.1%、書かなかった15公演が47.1%。書いた方が低いという結果でした。版を明記することが動員に結びついている様子はありません。

曜日

土日祝が372公演で±0席、平日が7公演で−3席でした。祝日を土日の側に数えると、平日に開かれた公演はほとんどありません。曜日で動員が変わるかどうかは、このデータでは測れません。

同じ日に他のオーケストラがやっていること

同じ日に社会人オーケストラが1公演だけの日と、3公演以上ある日を比べました。1公演の日が−13席、2公演の日が+15席、3公演以上の日が−2席。共食いは起きていません。

指揮者

319公演のうち、指揮者の名前が本文から取れたのは251公演(78.7%)、手元の指揮者名簿に当たったのは249公演(78.1%)でした。名前が取れた回は、2公演を除いてすべて名簿に当たっています。

名簿では、指揮者ごとに、プロオーケストラの公演とアマチュアオーケストラの公演のどちらに多く名前が出てくるかで3つに分けています。名簿に当たらなかった回を基準にすると、プロオーケストラの公演の方に多く名前が出てくる指揮者の回は−15席、両方に同じくらい出てくる指揮者の回は+12席、アマチュアオーケストラの公演の方に多く出てくる指揮者の回は+27席でした。どれも誤差の中です。

名簿にほぼ当たったうえで、区分による差は誤差の中でした。測れなかったのではなく、測ったうえで差が出なかった、ということです。


9. 早く売り出した回ほど、入っている

発売日から本番までの日数で分けると、こうなります。

発売から本番まで公演数団平均との差
31〜60日58−56席
61〜90日121−11席
91〜150日140+13席
151日〜51+58席

同じ団体の中での比較です。早く売り出した回ほど入っている。31〜60日と151日超では114席の差があります。

ただし、これも順序が逆の可能性があります。気合いの入った回だから早く準備を始め、結果としてよく入った、という順序です。早く売り出せば増えるかどうかは、このデータでは決められません。


10. 宣伝は、どれくらい効くのか ── 大学オーケストラで測る

ここまで、会場と曲が大きく動き、値段は動かない、という結果が続きました。では宣伝はどうなのか。SNSをまめに更新する、部員が手売りをする、知り合いに声をかける。こうした努力は、何席ぶんの話なのか。

これを直接測る方法はありません。どの団体がどれだけSNSに力を入れたかというデータが、外からは取れないからです。

そこで、大学オーケストラを使います。

大学オーケストラは、動員の道具立てがどこも似ています。部員が友人に声をかけ、学内にビラを置き、団のアカウントで告知する。社会人の団体のように「広報担当がプロ級」と「誰もやっていない」が並ぶことは、比較的起きにくい。団体のあいだで道具の使い方がだいたい揃っている集団、と仮定できます。

この仮定を置くなら、大学オーケストラの中に残るばらつきを、宣伝の巧拙だけで説明するのは難しくなります。それがどれくらいの大きさなのかを見れば、宣伝の効き目の見当がつきます。

本編と同じ条件(2023年以降・有料・指定席・オンラインに出た席が300以上)で残った大学オーケストラは203公演・33団体(OBオーケストラは社会人の側)、そのうち会場の定員が分かる200公演・33団体をこの節で使います。付録Aは定員の分からない回も含めて数えているので、日本大学管弦楽団だけは本文の数字と少し違います(定員を確かめられなかった会場での3公演を含むため)。

音楽大学は外しました。演奏を職業にする人が母体なので、他の大学オーケストラと同じ集団として扱えません。高校生の団体(高校の管弦楽団と、高校生の連盟のオーケストラ)も、大学の話ではないので外しています。

団体によって、16倍ひらく

大学どうしを比べるときは、その大学の公認の、昔からあるオーケストラ1団体だけで揃えます。同じ大学に本流の公認オーケストラが別にある場合のそれ以外の団体、OBの団体、連盟や学部のオーケストラは、比較の数字には入れず、参考として付録Aに載せました。他大学の学生が入っているかどうかは基準にしていません(京都大学交響楽団や一橋大学管弦楽団も、他大学の学生が在籍しています)。この規則で2公演以上ある大学のオーケストラは25あります。大学オーケストラは、公演の回数そのものが動員力の差です。1公演あたりの平均で並べると、公演の少ない団体が上に来てしまいます。そこでこの節では、年間の延べ動員(売れた席の合計を、公演のあった年の数で割ったもの)を物差しにします。上から11団体(25団体のうち)を、公演数の層ごとに並べます。層の中は年間の延べが多い順です。

層団体公演数1公演あたり集客率年あたりのべ
5公演以上早稲田大学交響楽団211,313席72.7%6,893席
5公演以上慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ131,406席72.8%4,569席
5公演以上東京大学音楽部管弦楽団161,045席55.8%4,179席
5公演以上京都大学交響楽団121,076席58.6%3,229席
5公演以上明治学院大学管弦楽団71,334席71.4%2,334席
5公演以上上智大学管弦楽団61,114席63.5%1,671席
5公演以上一橋大学管弦楽団7948席55.2%1,659席
5公演以上明治大学交響楽団8828席52.8%1,657席
5公演以上東京科学大学管弦楽団8771席46.9%1,542席
3〜4公演立命館大学交響楽団4969席69.9%1,938席
3〜4公演東北大学交響楽団4764席58.7%1,528席

25団体の全体では、年間の延べで上と下が15.7倍ひらいています(1公演あたりでは4.0倍)。全団体の数字は付録Aに載せました。同じ大学に複数のオーケストラがあることがあります。早稲田大学のフィルハーモニー管絃楽団(年1,488席)と、東京大学のフォイヤーヴェルク管弦楽団(年1,500席)は、同じ大学に本流の伝統オーケストラ(早稲田大学交響楽団・年6,893席、東京大学音楽部管弦楽団・年4,179席)が別にあるので、参考として付録Aにだけ載せています。ここに出てくるのは、券をオンラインで売り出した団体だけです。載っていない大学に楽団が無い、という意味ではありません。

ばらつきは、どこにあるか

200公演の動員は、平均921席、標準偏差429席です。この429席がどこから来ているかを分けると、こうなります。ここからの3つの見出しは、宣伝がひとつの公演の動員をどれだけ動かすかを見るので、1公演ごとの動員を物差しにしています。

標準偏差割合
団体のあいだ(団体平均の散らばり)309席52%
同じ団体の中(回ごとの散らばり)297席48%

標準偏差は、二乗して足すと全体の429席になるように割り振っています。5割強は団体のあいだの差です。残りが、同じ団体が回ごとに動く分です。

何を足すと、説明がつくか

説明する材料を1段ずつ足していきます。

使った材料説明できた割合まだ説明できない分
何も使わない(全体平均だけ)0.0%429席
+会場の定員だけ27.9%365席
+合唱つきかどうか27.9%366席
+曲・値段・曜日・年(15項目)50.8%313席
+団体そのもの69.9%269席

会場の定員だけで27.9%です。どの大きさのホールを取ったかを知るだけで、動員のばらつきの3割近くが説明できてしまう。そこに曲と値段と曜日と年を全部足しても50.8%までしか伸びず、団体そのものを入れて69.9%。

残った269席が、宣伝の巧拙が入りうる場所です。ただしそこには、当日の天気も、その年の部員数も、たまたまも一緒に入っています。

条件を揃えても、社会人とそう変わらない

もうひとつ、角度を変えて見ます。

同じ団体が・同じ会場で・同じ値段でやった回だけを取り出して、それでも何席動くかを数えました。団体も会場も値段も揃っているので、動くとすれば曲か、宣伝か、その他です。

組数公演数動員の最大差(中央値)最大÷最小(中央値)
大学24組67171席1.21倍
社会人69組182211席1.29倍

差は40席です。

もし宣伝の巧拙が動員を大きく左右するなら、道具の使い方が揃っているはずの大学オーケストラの方が、揃っていない社会人オーケストラより、残る幅がはっきり小さくなるはずです。実際には171席と211席。向きは確かにそちらですが、40席しか違いません。残差269席と並べると、宣伝の巧拙だけでこの幅を説明するのは難しそうです。

では何が動かしているのか。原文を見ると、曲です。

団体・会場・値段回動員
京都大学交響楽団/京都コンサートホール/1,500円ベートーヴェン1番+ブラームス4番1,579席
〃ドヴォルザーク7番+交響詩「英雄の歌」835席
明治大学交響楽団/すみだトリフォニー/1,000円ラフマニノフ2番+祝典序曲+白鳥の湖1,450席
〃ショスタコーヴィチ10番+プロコフィエフ836席
法政大学交響楽団/すみだトリフォニー/1,000円ショスタコーヴィチ5番+ハイドン「軍隊」914席
〃ブラームス1番559席

団体も会場も値段も同じで、曲だけが違う。そして本編の社会人オーケストラで出た結論と、向きが同じです。

「団体そのもの」の正体を、測ってみる

説明率を50.8%から69.9%へ押し上げた「団体そのもの」が何なのかは、上の表では分かりません。学校の規模なのか、OBの数なのか、伝統なのか。

ここからは、また大学ごとの年間の延べ動員を物差しに戻します。大学が特定できて2公演以上ある25大学について、外から取れる数字を当ててみました。学部学生数(旺文社『大学の真の実力 情報公開BOOK』)、設置者の区分、そして河合塾Kei-Netのボーダー偏差値です。偏差値は、学科・方式ごとのボーダー偏差値を学科ごとにまとめ(中央値)、学科の在籍学生数で重み付けした平均です。学生数は大学ポートレート(国立大学は大学基本情報)の2025年度の値で、学科別の数が無い学部は、入学定員×修業年限で学科に割り振りました。学部や学系でまとめて募集している学部は、学部単位で数えています。東京大学は科類を学部に対応させました(医学部医学科は理科三類、健康総合科学科は理科二類)。

大学ごとの数字は、ここでもその大学の公認の、昔からあるオーケストラ1団体だけで出します。別の団体の動員を足し合わせると、物差しが歪むからです。早稲田大学は早稲田大学交響楽団、東京大学は東京大学音楽部管弦楽団、慶應義塾はワグネル・ソサィエティー・オーケストラ、京都大学は京都大学交響楽団です。同じ大学の本流ではない団体(早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団、東京大学フォイヤーヴェルク管弦楽団)と、医学部やOBのオーケストラは入れていません。ほかの大学にも複数の楽団があるはずですが、券をオンラインで売っていない団体はここに出てきません。

当ててみた数字相関(25大学)
河合塾のボーダー偏差値+0.652
学部学生数+0.341

2つを同時に入れると、こうなります。

推定差
学部学生数(10倍あたり・年間)+1,933席
偏差値(1ポイントあたり・年間)+221.4席
説明できた割合61%

2つとも1%水準で有意でした(p値は、偏差値0.0001未満、学生数0.003)。

動員力を分けていたのは、学生数より偏差値でした。偏差値1ポイントで、年に221席です。日本大学1校を抜いても(偏差値のt値4.53)、早稲田大学を抜いても(5.06)、延べ動員を対数にしても(6.37)、偏差値は1%水準で残りました。いわゆる四大の4校を抜いた21大学では、偏差値は5%水準まで弱まり(t値2.42)、学生数は5%水準に届きません(t値1.98)。偏差値を以前の定め方(大学ごとに、学部・学科・方式のボーダー偏差値を全件並べた中央値)に戻して数えても、相関は+0.599、偏差値1ポイントで年に207.2席(t値4.63)、説明できた割合は55%で、同じ向きでした。

もう一段、分けてみます。国公立10校では、偏差値との相関が+0.775、学生数が+0.690で、どちらも強く出ます。ただし国公立の中では偏差値と学生数そのものの相関が+0.410あり、どちらが効いているのかは切り分けられません。私立15校では、偏差値が+0.724、学生数が+0.239で、差がはっきり開きます。日本大学を除いた私立14校では、学生数も+0.437まで上がります。偏差値と学生数のずれは、主に規模の大きい私立で起きています。

学生1万人あたりに直すと、こうなります。

大学国公立/私立偏差値学部学生数年間の延べ学生1万人あたり
一橋大学国公立66.84,348人1,659席3,816席
東京大学国公立67.814,058人4,179席2,973席
京都大学国公立65.512,752人3,229席2,532席
東京科学大学国公立64.36,242人1,542席2,471席
明治学院大学私立56.212,478人2,334席1,871席
早稲田大学私立67.238,029人6,893席1,813席
東京外国語大学国公立60.13,786人639席1,688席
学習院大学私立57.38,924人1,479席1,657席
慶應義塾大学私立67.028,789人4,569席1,587席
東北大学国公立60.810,720人1,528席1,425席
上智大学私立62.112,352人1,671席1,353席
横浜市立大学国公立59.94,279人522席1,220席
神戸大学国公立61.011,460人1,397席1,219席
東京学芸大学国公立53.24,399人480席1,092席
青山学院大学私立59.919,677人1,475席750席
筑波大学国公立60.19,634人655席680席
成蹊大学私立54.07,634人438席574席
立命館大学私立55.734,600人1,938席560席
立教大学私立60.019,808人1,088席550席
関西学院大学私立54.424,737人1,354席547席
中央大学私立58.926,669人1,384席519席
明治大学私立61.832,731人1,657席506席
法政大学私立59.028,619人1,434席501席
同志社大学私立60.026,514人799席301席
日本大学私立48.466,871人506席76席

2公演以上がそろわない本流の大学オーケストラが、ほかに3つあります。1公演のみのため、相関からは外しました。参考までに並べます。

大学国公立/私立偏差値その1公演の売れた席
千葉大学国公立58.6368席(第一生命ホール・2024年12月)
東洋大学私立51.4190席(和光市民文化センター サンアゼリア・2023年6月)
熊本大学国公立52.332席(熊本県立劇場 コンサートホール・2026年3月)

学生数が2万人を超える私立のうち、早稲田大学と慶應義塾大学を除く6校(明治・法政・中央・立命館・関西学院・同志社)は、学生1万人あたりの年間の延べが301〜560席で、早稲田大学・慶應義塾大学(1,587〜1,813席)の3分の1以下です。日本大学は、オンラインで券を売った3公演の数字で、明治など5校のさらに約7分の1でした。偏差値は、大学の知名度や、オーケストラ自体の歴史と看板の代わりとして効いているのかもしれません。ただし、このデータでは確かめていません。例外は明治学院大学で、偏差値56.2・学生1.2万人ながら、1万人あたりでは早稲田大学・慶應義塾大学を上回る1,871席でした。

学生数も効いています。ただし学生数がいちばん多い日本大学は66,871人で年に506席と、いちばん下の方にいます。人数がそのまま動員になるわけではありません。学生数と偏差値の相関は−0.14で、2つはほぼ無関係です。つまりこの結果は、似た数字を2つ入れたせいで出たものではありません。

国立か私立かは、ほとんど何も言いませんでした。

OBの数や伝統の影響もあるはずですが、外から取れる数字の中では、学部学生数より河合塾の偏差値の方がはっきり効いていた、ということです。

ひとつ、範囲を間違えないでください。これは大学オーケストラの中での話で、社会人オーケストラには及びません。社会人の団体に偏差値はありませんし、本編の434公演では測っていません。

そしてもうひとつ。客が大学の偏差値を見て来ている、という話ではまずありません。大学名を調べてから演奏会に行く人は、まずいない。

偏差値が効いているように見えるのは、それが何か別のものを代理しているからだと考える方が自然です。中高で楽器をやっていた部員の割合かもしれませんし、OBがどこに住んでいるかかもしれません。それが何なのかは、このデータでは特定できません。このうち、中高で楽器を経験した部員の多さについては、この節の後のコラムで入口の側から確かめました。

ここで数えたのは、有料の指定席で券を売った大学だけです。自由席の公演は売れた枚数が取れないため、外しています。外した側も確かめました。同じ期間に、有料でも自由席の公演しかない大学が28校、無料の公演しかない大学が14校ありました。同じ定め方で偏差値を出すと、中央値は自由席だけの大学が50.9、無料だけの大学が50.3で、標本の25大学の60.0より低く出ました(標本と、この2つを合わせた42校の差は、順位の検定でp<0.001)。大学ごとの平均で比べても、学生数で重み付けした平均で比べても、差は7〜10ポイントで変わりません。学部学生数の中央値も約6,800人で、標本の12,752人より少なめです。

標本は、偏差値の高い側に寄っていることになります。ただ、これで偏差値との相関が作られたとは考えにくいです。偏差値で標本が絞られているだけなら、偏差値1ポイントあたりの傾きは歪みません。指定席で売るかどうかが動員の多さとも結びついているなら、偏差値の低い大学のうち客の多いところだけが標本に入っていることになり、その場合、相関はむしろ弱めに出ます。ただし外した大学の売れた枚数は取れないため、確かめてはいません。

なお、独自調査のため限界があり、そもそも売れた席を取得できていない大学・団体があります。

ただし、社会に出ると消えます

大学オーケストラのOB・OGが作った楽団が、今回のデータに5つあります。母体の楽団が公式サイトなどで確認できるものだけを並べます。5つとも卒業生の団体なので、本編の社会人オーケストラの側で数えています。会場の大きさが団体ごとに違うので、集客率で比べます。

母体の大学偏差値現役OB・OGの団体差
慶應義塾大学67.072.8%(13公演)ワグネル・ソサィエティー・OBオーケストラ 61.3%(7公演)−11.5pt
上智大学62.163.5%(6公演)上智大学OB管弦楽団 57.1%(2公演)−6.4pt
早稲田大学(フィルハーモニー管絃楽団)67.239.7%(9公演)フィルハーモニア・ブルレスケ 56.3%(3公演)+16.6pt
一橋大学66.855.2%(7公演)水星交響楽団 51.8%(7公演)−3.4pt
東京大学67.855.8%(16公演)Orchestra Da Vinci 42.5%(1公演)−13.3pt

OB・OGの団体の集客率が高い順に並べました。差の方で並べてはいません。現役でよく入っている団体ほど下がり幅は大きく出ます。元の水準が高いので、そうなるのが自然だからです。

ここでは偏差値が効いていません。偏差値66.8〜67.2の3校が−11.5pt、+16.6pt、−3.4ptとバラバラです。

水準で見ると、いちばん入っているのは慶應義塾のワグネル・ソサィエティー・OBオーケストラで61.3%です。7公演あって、この5組の中ではもっとも数字が厚い。現役が13公演で72.8%、OB・OGが7公演で61.3%、しかもOB側の7公演はどれも1,800〜2,000席級のホールです。現役とOBの両方がこれだけ厚いのは、この5組では慶應義塾と一橋大学でした。

はっきりしているのは散らばりの方です。現役5団体の集客率は39.7%から72.8%まで開いていて、標準偏差12.2pt。OB・OGの5団体は42.5%から61.3%で、7.2ptです。社会に出ると、大学ごとの差は縮みます。

在学中に大学の名前まわりで集まっていたものが、卒業後は同じようには働かない。残るのは同期や仲間のつながりで、そこで効くのは偏差値ではなく、その大学のOB同士の結びつきの強さかもしれません。

ただしこれは5組の話で、Orchestra Da Vinciは1公演(1,200席のホール)、上智大学OB管弦楽団は2公演しかありません。たまたまで動く数です。確かめたとは言えません。

この節の限界

みっつ、断っておきます。

ひとつ。「大学オーケストラのあいだでは宣伝の道具の使い方が揃っている」というのは、こちらが置いた仮定です。測って確かめたわけではありません。この仮定が外れていれば、上の論証は成り立ちません。

ふたつ。「団体そのもの」を入れた段の上げ幅には、その団体が代々宣伝が上手いという要素も入りえます。だとすれば宣伝の取り分は269席より大きいことになります。ただしその場合でも、それは「今年から頑張れば増える分」ではなく「その団体に積み上がっているもの」です。

みっつ。偏差値や学生数との相関はあくまで相関で、順序は決まりません。説明できたのは61%で、残る4割は説明できていません。四大の4校を抜くと、説明できるのは28%まで下がります。なお、ここでは会場の定員が分かる回だけを数えています。定員の分からない会場の回も含めて数え直しても、偏差値との相関は+0.639、学生数は+0.357で、結論は変わりません。また2026年は9月23日までの途中の年ですが、2023〜2025年の3年だけで数えても、+0.675と+0.331でした。参考までに、本流ではない団体も含めて同じ大学の楽団を全部足して数えた場合も+0.640と+0.321で、同じ向きです。

コラム:「偏差値」の高い大学には、中学・高校の経験者が集まっている

ここからは動員ではなく、演奏する側の顔ぶれの話です。本節で偏差値が代わりに表しているものの候補に挙げた、中学・高校で楽器を経験した部員の多さを確かめました。技量を直接測ることはできないため、入口の側から見ています。

ここで高校のオーケストラ部に着目したのは、大学オーケストラにとって確保が難しいのが弦楽器だからです。管楽器の奏者は吹奏楽部からも入ってきますが、吹奏楽部には弦楽器がありません。中学・高校で弦楽器を続けられる場は、オーケストラ部・弦楽部か個人のレッスンに限られます。特にヴァイオリンは、幼いころから続けてきた経験が重視されます。慶應義塾大学のワグネル・ソサィエティー・オーケストラは、2018年度の入団オーディションの時点でヴァイオリンを「初心者不可」とし、面接と課題曲・自由曲のオーディションで選考していました。2026年度の募集では、チェロ・ファゴット・ホルンも「初心者不可」に改めています(同団の新入生向けの公式アカウントの告知、2026年4月3日)。早稲田大学交響楽団も2026年9月現在、ヴァイオリンを経験者に限って募集しています。

まず高校の側です。全国の高校4,882校(文部科学省の学校コード、2026年5月時点)について、Wikipediaの学校記事の部活動の記述からオーケストラ部(管弦楽部・弦楽部などを含む)の有無を拾い、偏差値の帯ごとに数えました。

高校の偏差値オーケストラ部がある割合
40未満0.5%
40台2.4%
50台4.7%
60台13.8%
70以上29.0%

帯が上がるごとに、およそ倍になっています。偏差値60以上の高校は、偏差値が分かる高校の4分の1ほどですが、オーケストラ部の約7割がここにあります。

次に大学の側です。大学ごとに合格者の出身高校を見て、オーケストラ部のある高校から来た合格者の割合を出しました。東京大学は33%、早稲田大学は40%、一橋大学は36%でした。本節の28大学で見ると、この割合と大学の偏差値の相関係数は+0.75で、強い相関です。

団員の高校時代の部活を公表している大学オーケストラもあります。早稲田大学交響楽団の公表データ(2026年4月1日時点)では、高校時代に管弦楽部・弦楽部だった団員が37%、吹奏楽部だった団員が33%で、楽器を始めて1年に満たない団員は6%ほどでした。ワグネル・ソサィエティー・オーケストラの新入生向けサイトでは、オーケストラ以外の部活の出身が全体の半分とされています。つまり、およそ半数が管弦楽部の出身です。全国の高校でオーケストラ部があるのは1割に満たないことを考えると、これらの団体には中学・高校からの経験者が際立って多く含まれています。

大学ごとの合格者の構成と、団体自身が公表している数字を合わせると、偏差値の高い大学のオーケストラが、中学・高校でオーケストラや吹奏楽を経験した学生の受け皿になっている蓋然性は高いと考えられます。演奏の技量が経験者の多さに左右されるのであれば、偏差値の高い大学のオーケストラほど技量も高い傾向がある可能性は、かなり高いと言えます。本節で偏差値が動員と結びついていた理由の一部も、ここにあるのかもしれません。

一方で、京都大学交響楽団は、すべてのパートで楽器の経験を入団の条件にしていません。中学・高校で楽器に触れてこなかった人にも、門戸を開いている大学オーケストラはあるということです。ただし、その舞台に立つには、まず京都大学の入試を越えなければなりません。

ここで数えたのは「オーケストラ部のある高校からの合格者」です。本人がオーケストラ部員だったか、大学でもオーケストラを続けたかまでは分かりません。合格者には、実際には入学しない人も含まれます。偏差値と経験者の多さは一緒に動いているため、動員にどちらがどれだけ効いているかも切り分けられません。なお、一橋大学管弦楽団と京都大学交響楽団は他大学の学生も受け入れているため、団員の顔ぶれは大学の合格者の構成とは一致しません。京都大学交響楽団の定期演奏会(第219回)の名簿では、他大学の学生と客演の奏者が約3割を占めていました。その大学の学生だけで組む東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学のオーケストラに比べると、大学の偏差値との結びつきは弱まると考えられます。ただし京都大学交響楽団では、首席奏者の席にも他大学の学生が座っていました(第219回の名簿では14席中4席)。東京大学と京都大学の合格者の出身高校を比べると、オーケストラ部のある高校から来た合格者の出身高校の偏差値に、大きな差はありませんでした。内部の層が同じくらいの水準であるうえで、首席の席を他大学の奏者と実力で争っているのであれば、首席の水準は、京都大学の学生だけで組んだ場合より高くなっている可能性があります。数え方の詳細と大学ごとの数字は、付録Fに載せました。

コラム:「四大学生オーケストラ」は、数字で裏づくのか

学生オーケストラの世界には、東京大学音楽部管弦楽団・京都大学交響楽団・早稲田大学交響楽団・慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラを「四大」と呼ぶ言い方があるようです。今回の数字で確かめられるところまで見てみます。

2公演以上ある25の大学オーケストラ(各大学の本流の公認オーケストラ。OB・連盟などの団体を除く)の中で、この4団体がどこに位置するか。物差しを5つ並べます。

物差し東大京大ワセオケワグネル
年あたりのべ動員3位4位1位2位
1公演あたりの動員7位6位4位1位
集客率9位8位2位1位
最大動員4位8位1位2位
使うホールの大きさ4位7位8位3位

ひとつの物差しでだけ、4団体が上位4つを独占します。年あたりのべ動員です。早稲田大学6,893席、ワグネル4,569席、東京大学4,179席、京都大学3,229席。5位の明治学院大学は2,334席で、ここに900席近い段差があります。

ところが1回あたりの動員で並べると、東京大学は7位、京都大学は6位です。中央大学管弦楽団(1,384席)や明治学院大学管弦楽団(1,334席)に抜かれます。集客率で見ると東京大学は9位まで落ちます。

差をつくっているのは回数でした。東京大学は16公演、京都大学は12公演で、どちらもこの集計の中では多い方です。

ただし「回数を稼いでいるだけ」ではありません。回数そのものが需要の結果だからです。売れなければ次の年は減らすので、年に何度も開ける団体は、それだけの需要を持っていることになります。

実際、年あたりの公演数で分けると、こうなります。年あたりの公演数は、公演数をその団体が演奏した年の数で割り、端数を切り上げました(4年で7公演なら年2回)。

年あたりの公演数団体1公演あたり集客率
年1回4702席43.8%
年2回17795席49.7%
年3回11,076席58.6%
年4回以上31,255席67.1%

年1回と年2回はほぼ同じで、年3回以上の団体で1回あたりが上がっています。

年あたりの公演数と1公演あたりの動員。相関は+0.541で、回数を重ねる団体ほど1回あたりも多い
図7 年あたりの公演数と1公演あたりの動員。相関は+0.541で、回数を重ねる団体ほど1回あたりも多い(クリックで拡大)出典:株式会社日本財務戦略センター 独自集計(2023-2026)

年あたり公演数と1回あたり動員の相関は+0.541、集客率とは+0.490。たくさんやる団体ほど1回あたりが薄まる、という関係は出ていません。回数は需要に支えられている、と読むのが自然です。

早稲田大学とワグネルは、回数と1回あたりの両方で前に出ています。4団体が同じ理由で「四大」なのではなく、早稲田大学・ワグネルと、東京大学・京都大学とでは、前に出ている理由が違うということになります。

回数の差は、経済圏の差ではない

東京の団体が有利で、京都の団体が不利、という見方があるかもしれません。会場の所在地を都市圏でまとめて、人口を当ててみました。東京の商圏は東京都だけではなく神奈川・千葉・埼玉まで、京都の商圏も京都府だけではなく大阪・兵庫・奈良・滋賀まで広がっているからです。

都市圏人口団体1団体あたりの年間の延べ集客率
首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)3,704万181,886席51.3%
京阪神(京都・大阪・兵庫・奈良・滋賀)1,928万51,744席49.2%
茨城281万1655席52.2%
宮城226万11,528席58.7%

人口が半分の京阪神でも、1団体あたりの年間の延べは首都圏とほぼ同じです(1,886席と1,744席)。都市圏人口との相関は+0.142、集客率とは−0.065。どちらもゼロに近い。

京都大学交響楽団は、年間の延べで全体の4位、京阪神の中では1位です。1回あたりで6位にとどまるのも、関西だからではありません。市場の大きさで説明できる差ではありません。

とはいえ、四大のうち在京でないのは京都大学だけです。その1団体のぶんだけ、人口で割った数字を添えておきます。京阪神1,928万人は首都圏3,704万人の半分ですから、同じ動員なら到達している割合は倍ということになります。

年あたりのべ都市圏人口人口100万人あたり
京都大学3,229席1,928万167.5席
早稲田大学6,893席3,704万186.1席
ワグネル4,569席3,704万123.4席
東京大学4,179席3,704万112.8席

割っても割らなくても、京都大学は四大の一角に残ります。素の年あたりのべで4位、市場の大きさで割れば早稲田大学に次ぐ2位。非在京であることは、この団体にとって不利に働いていません。

なお割り算は、分母の小さい都市圏ほど数字が大きく出ます。たとえば東北大学交響楽団は人口100万人あたり676席で、この物差しでは全体1位になりますが、素の年あたりのべは1,528席で四大とは桁が違います。順位の細かい上下より、首都圏の半分の市場で、首都圏の3団体と同じ桁の動員を積んでいるという読み方が妥当です。

首都圏の外で、素の数字から四大に届きうる団体はほかにありませんでした。京都大学の次は立命館大学の1,938席で京都大学の6割、その次の東北大学の1,528席は京都大学の半分以下です。

誰が指揮台に立っているか

もうひとつ、四大のあいだで差がはっきり出たものがあります。指揮者です。

取れた公演異なる指揮者いちばん多い人形
東京大学16公演3人14公演常任指揮者(田代俊文、当団常任指揮者)
京都大学12公演5人4公演すべて客演
ワグネル13公演8人6公演冬の定期演奏会は同じ指揮者(川本貢司)、ほかは客演
早稲田大学21公演6人11公演ミュージック・アドヴァイザー(寺岡清高)が21公演中11公演、ほかは客演

東京大学は、16公演のうち14公演を常任指揮者の田代俊文が振っています。

京都大学は12公演で5人、大友直人・飯森範親・円光寺雅彦など、すべて客演の指揮者でした。ワグネルは13公演で8人ですが、冬の定期演奏会(2023年から2026年までの4回と、2023年の大阪公演、2026年の演奏旅行の福岡公演)は毎回川本貢司で、それ以外は秋山和慶・原田慶太楼・角田鋼亮などの客演です。早稲田大学は21公演のうち11公演を、ミュージック・アドヴァイザーの寺岡清高が振っていました。ほかの10公演は曽我大介・大山平一郎・尾高忠明・キンボー・イシイ・平塚太一の客演です。

常任指揮者を置く東京大学から、すべて客演の京都大学まで、同じ四大でもやり方が分かれます。東京大学は常任指揮者のもとで回数を重ねるベルリン・フィル型、京都大学は毎回ちがう客演指揮者を迎えるウィーン・フィル型と言えるかもしれません。早稲田大学はミュージック・アドヴァイザーの寺岡清高が21公演中11公演を振り、ほかは客演を迎える形で、ワグネルに近いと言えます。ワグネルは冬の定期演奏会を同じ指揮者が振り、それ以外は客演です。この2団体は、その中間の形です。

早稲田大学は、販売データから指揮者が取れなかったため、公式の公演アーカイブと新入生向けサイトの過去の演奏会、保存されていたチラシ、サントリーホールの公演アーカイブ、楽団の公式SNSで補い、21公演すべての指揮者を確かめました。2025年の初夏の演奏会は、主な曲目を確かめました(告知に「ほか」とある分は未確認です)。京都大学の4公演とワグネルの3公演も、販売ページに指揮者の名前が出ていなかったので、それぞれの公式サイトの演奏会記録で補いました。付録Bの指揮者一覧には、こうして補った分は含めていますが、京都大学とワグネルの販売ページで名前が読めなかった回は入れていません。

みっつ、断っておきます。ひとつ、これは2023年以降にオンラインで券が売られた公演だけの話で、窓口や学内で配られた分は入っていません。

ふたつ、海外公演が入っていません。早稲田大学交響楽団と慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラは海外ツアーを行っていますが、何人が聴いたかの公式な数字が公開されていないため、数えようがありませんでした。この2団体については、ここに出ている数字が活動の全部ではありません。

みっつ、「四大」という言い方が何を指してきたのか——演奏の質か、歴史か、規模か——は、この数字では決められません。ここで見たのは動員だけです。


11. この数字から、何が読めるか

社会人オーケストラについて、今回の434公演から言えることを並べます。

値段を下げても、客は増えません。同じ団体の中では、値段(券種の平均)が1,000円高い回の方がむしろ+93席入っていました。値下げで客が増える向きは出ていません。そもそも86.9%が500円から2,000円の間にあり、動かす余地がほとんどありません。

値段を上げても、客が減った形跡はありませんでした。始めて間もない団体(第19回まで)でも同じです。若い団体では高い回ほど入っていましたが、合唱つきや大ホールなどの特別な回を揃えると、その差は半分以下に縮みます。回を重ねた団体ほど入っているのは、続けられなかった団体がこの集計から消えているせいかもしれません。それでも、続けるほど客が増える形であるなら、はじめから、続けられる値段を付けることを考えてよいのではないでしょうか。

いちばん大きく動いたのは会場です。サントリーホールで+558席。同じ2,000席級のホールの間でも差が開き、定員を入れても差が残ります。効いているのは箱の大きさより、どのホールかです。

曲では、《復活》と第九です。+296席と+271席。合唱つきでもその他の曲は−16席で、24公演8勝16敗でした。合唱を入れれば入るという話ではありません。

それが難しければ協奏曲です。+94席。大きくはありませんが、符号は安定しています。

独奏者は、若い回の方が入っている傾向があります。年齢と動員の相関は−0.309で、5%水準には届きません。40歳以上で−70席。会場と曲を揃えると、この傾向はさらに弱まります。そして「女性だから」とも言えません。

そして、当たり外れの大きい曲があります。エルガー1番は当たれば+420席、外せば−434席。平均の−56席だけでは見えない幅です。



付録:数えたものの全部

本文で使った数字の元になった一覧です。公演数が1〜2の団体や、1〜4団体しか演奏していない曲は、1公演動くだけで数字が変わります。そのつもりで見てください。CSVでも配っています(社会人の団体・大学の団体・指揮者・曲目・作曲家)。

APPENDIX A. 調査対象の団体(全件)

本編に入った公演を持つ団体を、すべて挙げます。5公演以上の団体は、1公演あたりの動員が多い順に数字つきで並べました。4公演以下の団体は、1公演で数字が大きく動くため団体名のみ掲載し、層全体のまとめだけを示します(50音順。英字で始まる名前は末尾にアルファベット順)。

社会人オーケストラの団体ごとに、公演数と1公演あたりの売れた席を並べました(1点が1団体)。

公演数と1公演あたりの売れた席(社会人オーケストラ150団体、1点が1団体)。4公演以下の団体の数字は、5公演以上の団体より広く散らばる
図8 公演数と1公演あたりの売れた席(社会人オーケストラ150団体、1点が1団体)。4公演以下の団体の数字は、5公演以上の団体より広く散らばる(クリックで拡大)出典:株式会社日本財務戦略センター 独自集計(2023-2026)

4公演以下の120団体は、中央の半分が319〜937席に広がるのに対し、5公演以上の30団体は628〜1,052席に収まります。

団体ごとの1公演あたりの売れた席の分布。5公演以上の団体と4公演以下の団体を並べた
図9 団体ごとの1公演あたりの売れた席の分布。5公演以上の団体と4公演以下の団体を並べた(クリックで拡大)出典:株式会社日本財務戦略センター 独自集計(2023-2026)

売れた席の延べで団体を並べると、上位10%の15団体で全体の34.9%、上位20%の30団体で55.7%を占めます。

社会人オーケストラ150団体を、2023-2026年の売れた席の延べが多い順に並べた累積の割合。上位10%の団体で全体の34.9%、上位20%で55.7%を占める
図10 社会人オーケストラ150団体を、2023-2026年の売れた席の延べが多い順に並べた累積の割合。上位10%の団体で全体の34.9%、上位20%で55.7%を占める(クリックで拡大)出典:株式会社日本財務戦略センター 独自集計(2023-2026)

社会人オーケストラ ── 150団体・434公演

「直近の第N回」は、期間内の公演名から取った演奏会の通し番号の最大です(取れない団体は「—」)。

並びは1公演あたりの動員の多い順です。参考として年間の延べ動員(売れた席の合計を、公演のあった年の数で割ったもの)の列を添えました。公演の回数が多い団体ほど、この列が大きく出ます。2026年は9月までの途中の年ですが、1年として数えています。

厚い層 ── 5公演以上(2023年1月〜2026年9月の通算)

30団体・198公演

見出しをクリックすると並べ替えられます。値段の列は、最安=大人が入れる一番安い券、最高=いちばん高い席、平均=大人向けの有料の券種の平均(席種ごとに1つ)で、それぞれ公演ごとの値の中央値です。最安値・最高値は、期間中の全公演での一番安い券の最小と、いちばん高い席の最大です。

団体公演直近の第N回1公演平均年間の延べ(参考)最大最小集客率平均定員最安(中央)最高(中央)平均(中央)最安値最高値
フィルハーモニア・エテルナ5第31回1845席2,306席2012179398.1%1883席1,000円3,000円2,000円1,000円6,000円
プロースト交響楽団6第43回1406席2,110席1773107372.2%1937席1,000円2,000円1,500円1,000円2,000円
アウローラ管弦楽団5第35回1294席2,156席158067274.3%1718席1,000円1,000円1,000円1,000円1,000円
ワグネル・ソサィエティー・OB オーケストラ7第98回1212席2,121席156797161.3%1977席2,000円2,000円2,000円2,000円2,000円
フィルハーモニック・ソサィエティ・東京7第16回1144席2,003席170669857.7%1974席1,500円1,500円1,500円1,000円3,000円
フライハイト交響楽団8第57回1140席2,280席173961965.2%1732席1,000円2,000円1,500円1,000円2,000円
新交響楽団14第274回1104席3,862席154176957.0%1950席1,500円3,000円2,500円1,500円4,000円
ザ・シンフォニカ6第80回1068席1,603席123985156.5%1899席2,500円2,500円2,500円2,500円2,500円
水星交響楽団7第71回1002席1,753席142259751.8%1913席1,500円2,000円1,750円1,500円2,000円
横浜シティ・フィルハーモニック5第80回1001席1,668席130466457.9%1706席1,000円1,000円1,000円1,000円1,000円
Orchestra Ha'mon6第52回978席1,956席130583752.3%1867席1,000円2,500円2,000円1,000円4,000円
ル スコアール管弦楽団5第59回968席1,210席119173053.8%1801席1,000円1,000円1,000円1,000円1,000円
ユニコーン・シンフォニー・オーケストラ7第20回898席1,572席142166448.8%1862席1,500円1,500円1,500円1,000円2,000円
東京アマデウス管弦楽団7第101回897席1,569席118467646.4%1952席2,000円2,000円2,000円2,000円2,000円
東京アカデミッシェカペレ7第70回870席1,522席115073846.3%1885席2,000円2,000円2,000円2,000円2,000円
ユーゲント・フィルハーモニカー6第20回865席1,297席125752848.0%1807席1,000円1,000円1,000円1,000円1,000円
品川区民管弦楽団5—834席1,389席86774382.9%1006席500円500円500円500円700円
ポロニア・フィルハーモニー管弦楽団5第11回801席1,002席116943943.0%1828席1,000円1,000円1,000円1,000円2,000円
ブルーメン・フィルハーモニー6第58回795席1,192席98657956.3%1434席2,000円2,000円2,000円2,000円2,000円
ブロカートフィルハーモニー管弦楽団7第52回794席1,390席149838554.4%1456席700円700円700円700円700円
Orchestra Canvas Tokyo11第17回767席2,110席114437041.4%1855席1,000円1,000円1,000円1,000円1,500円
Orchestra of Spring6第7回728席1,093席92252540.4%1820席500円500円500円500円500円
東京ユヴェントス・フィルハーモニー7第30回594席1,040席69848830.1%1969席3,000円3,000円3,000円2,000円3,000円
Polaris Philharmoniker7第6回549席961席94537343.6%1367席1,000円1,000円1,000円1,000円1,500円
Orchestra Failte7第26回536席938席82324034.5%1634席1,000円1,000円1,000円1,000円1,000円
Orchestra HAL6第29回487席974席61439039.3%1256席500円500円500円500円500円
お茶の水管弦楽団5第118回481席802席64111728.1%1816席800円800円800円500円800円
足立シティオーケストラ7第76回359席628席42230439.9%900席1,000円1,000円1,000円500円1,000円
Orchestra EROICA5第14回309席772席6648423.9%1301席1,000円1,000円1,000円500円1,500円
町田フィルハーモニー交響楽団6第95回299席448席4517027.2%1101席1,000円1,500円1,250円1,000円2,500円

調査対象(通算4公演以下)

120団体・236公演。1公演あたりの動員は中央値630席(最小33席〜最大1886席)。

麻布学園OB+オーケストラ、アトリエ弾、アマービレフィルハーモニー管弦楽団、アマデウス・ソサイエティー管弦楽団、アロハ合奏団、アンサンブル・コルマ、アンサンブル・メゾン、アンサンブル≪ヴェネラ≫、樹フィルハーモニー管弦楽団、ウィンクルムフィルハーモニー管弦楽団、エスポワールオーケストラ、エセンツ・フィルハーモニカー、エバーグリーンフィルハーモニーオーケストラ、オーケストラ・シンフォニカ・フォレスタ、オーケストラ・セレーナ、オーケストラ・ゾルキー、オーケストラ・ダスビダーニャ、オーケストラ・ダヴァーイ、オーケストラ・チェルカトーリ、オーケストラ・ディマンシュ、オーケストラ・ファンダメンタルズ、オーケストラ・フェリア、オーケストラ・ミュズニック、オーケストラ・ラム・スール、オーケストラ・ルゼル、オーケストラ和響、大阪市民管弦楽団、大宮シンフォニーオーケストラ、荻窪祝祭管弦楽団、オルケストル デ ベル、神奈川交響楽団、かのやオーケストラ、カマクラシックオーケストラ、管絃戯画 Kangen-giga、関西シティフィルハーモニー交響楽団、合奏集団『新しい音楽生活』、合奏団ZERO、国立マーラー楽友協会、倉敷管弦楽団、クレド交響楽団、グローバル・フィルハーモニック・オーケストラ、交響楽団はやぶさ、煌・フィルハーモニック オーケストラ、サファリオーケストラ、ザッツ管弦楽団、ザ・ファインアーツ・フィルハーモニック、シェーナークライスフィルハーモニー管弦楽団、芝交響楽団、清水宏之祝祭管弦楽団、白金フィルハーモニー管弦楽団、新日本交響楽団、シンフォニックアンサンブルブーケ、上智大学OB管弦楽団、墨田区交響楽団、セブンスターオーケストラ、全日本医家管弦楽団、千葉フィルハーモニー管弦楽団、テネラメンテフィルハーモニー管弦楽団、一般社団法人 東京21世紀管弦楽団、東京アカデミーオーケストラ、東京セラフィックオーケストラ、東京楽友協会交響楽団、東京六大学OBオーケストラ連盟、戸塚区民オーケストラ、都民交響楽団、トラオム祝祭管弦楽団、ドリームフィルハーモニーオーケストラ、中野区民交響楽団、名古屋市民管弦楽団、名古屋昭和交響楽団、名古屋シンフォニア管弦楽団、夏に捧げるオーケストラin2023、西宮交響楽団、ニューシティオーケストラ、針の音楽、フィルハーモニア・ブルレスケ、フェローオーケストラ、保土ケ谷コミュニティオーケストラ、丸の内交響楽団、みなとフィルハーモニー交響楽団、みなとみらい21交響楽団、目白フィルハーモニー管弦楽団、メロスフィルハーモニー、横浜シンフォニックアンサンブル、横浜フィルハーモニー管弦楽団、ラスベート交響楽団、リアンフィルハーモニックオーケストラ、ロマン派音楽研究会ROMUVE、Alle Orchester、Alte管弦楽団、Beethoven Frühling Orchester、Carpe diem Philharmony、C交響楽団、Der ferne Klang、Ensemble Blumentöne、Ensemble Diverso、Ensemble Musica Sincera、ESMT祝祭管弦楽団、FAF管弦楽団、ISP、J orchestra、Kleine Harmonie Orchester、Kプレミアムオーケストラ、Liberal Ensemble Orchestra、L’orchestre de femme fatale、Mahler Project -マーラープロジェクト-、MAXフィルハーモニー管弦楽団、New Epoch Orchestra、NSシンフォニーオーケストラ、Orchestra Da Vinci、Orchestra Largo、Orchestra Palette、Orchestra W、Orchestre de SAVEUR、Resonanz Philharmoniker、Sonore Philharmonic Orchestra、STフィルハーモニー管弦楽団、Tokyo Ring Orchestra、一般社団法人 VariOrchestra、YAO管弦楽団

大学オーケストラ(音楽大学と高校生の団体を除く。OBオーケストラは社会人の表に) ── 33団体・203公演

大学オーケストラは、公演の回数そのものが動員力の差なので、年間の延べ動員(売れた席の合計を、公演のあった年の数で割ったもの)の多い順に並べました。

「直近の第N回」は、期間内の公演名から取った演奏会の通し番号の最大です(取れない団体は「—」)。

「(参考)」の印は、大学どうしの比較(本文10節)に使っていない団体です。比較には、各大学の本流の公認オーケストラ1団体だけを使いました。

厚い層 ── 5公演以上(2023年1月〜2026年9月の通算)

21団体・176公演

見出しをクリックすると並べ替えられます。値段の列は、最安=大人が入れる一番安い券、最高=いちばん高い席、平均=大人向けの有料の券種の平均(席種ごとに1つ)で、それぞれ公演ごとの値の中央値です。最安値・最高値は、期間中の全公演での一番安い券の最小と、いちばん高い席の最大です。

団体公演直近の第N回年間の延べ1公演平均最大最小集客率平均定員最安(中央)最高(中央)平均(中央)最安値最高値
早稲田大学交響楽団21第218回6,893席1313席199351272.7%1790席1,500円2,500円2,000円500円3,500円
慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ13第248回4,569席1406席195769272.8%1925席1,000円2,000円1,500円500円2,500円
東京大学音楽部管弦楽団16第110回4,179席1045席175846355.8%1906席1,500円2,000円1,750円1,000円2,500円
京都大学交響楽団12第219回3,229席1076席157952758.6%1846席1,500円2,000円1,750円100円2,000円
明治学院大学管弦楽団7第107回2,334席1334席183287371.4%1858席700円700円700円700円1,000円
上智大学管弦楽団6第122回1,671席1114席159766363.5%1734席1,000円1,000円1,000円1,000円2,000円
一橋大学管弦楽団7第73回1,659席948席162255555.2%1748席500円1,000円750円500円1,500円
明治大学交響楽団8第102回1,657席828席145052252.8%1577席1,000円1,000円1,000円500円2,000円
東京科学大学管弦楽団8第174回1,542席771席160539746.9%1606席1,000円1,000円1,000円500円1,500円
東京大学フォイヤーヴェルク管弦楽団(参考・本流以外)6第55回1,500席1000席115182564.1%1585席1,000円2,000円1,500円500円3,500円
早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団(参考・本流以外)9第94回1,488席661席102630639.7%1744席1,000円1,000円1,000円500円1,000円
学習院輔仁会音楽部6第69回1,479席986席132663755.5%1783席1,000円1,000円1,000円500円1,000円
青山学院管弦楽団7第128回1,475席843席111146654.4%1525席1,000円1,500円1,250円500円1,500円
法政大学交響楽団7第155回1,434席819席125555943.7%1861席1,000円1,500円1,250円1,000円1,500円
神戸大学交響楽団7第75回1,397席798席108558240.7%1957席1,000円1,000円1,000円1,000円1,000円
関西学院交響楽団8第147回1,354席677席96036738.4%1744席1,250円1,500円1,500円500円2,500円
同志社交響楽団5第97回799席639席78841038.4%1674席1,200円2,000円1,567円800円2,300円
日本大学管弦楽団6第107回755席503席69636542.2%1225席1,000円1,000円1,000円500円1,000円
筑波大学管弦楽団5第95回655席524席63143252.2%1004席1,000円1,000円1,000円1,000円1,000円
東京外国語大学管弦楽団6第111回639席426席54831737.9%1262席800円800円800円800円1,000円
横浜市立大学管弦楽団6第56回522席348席49525724.7%1450席500円500円500円500円800円

調査対象(通算4公演以下)

12団体・27公演。1公演あたりの動員は中央値741席(最小32席〜最大1560席)。

熊本大学フィルハーモニーオーケストラ、慶應義塾大学医学部管弦楽団(参考・学部)、成蹊大学管弦楽団、全日本医科学生オーケストラ(参考・合同)、千葉大学管弦楽団、中央大学管弦楽団、東京学芸大学管弦楽団、東京六大学オーケストラ連盟(参考・連盟)、東北大学交響楽団、東洋大学管弦楽団、立教大学交響楽団、立命館大学交響楽団


APPENDIX B. 指揮者(本文から名前が取れた全件)

公演の「指揮:◯◯」欄から取れた分です(一部の公演は、公式の記録・保存されたチラシ・ホールの公演アーカイブ・楽団の公式SNSで補った分を含みます)。670公演中 522公演(77.9%)でしか名前が取れていません。チラシには出ているはずで、取れていないのはこちらの取り込みの限界です。登板回数は下限だと思ってください。

指揮者登板団体数
田部井剛229
寺岡清高187
田代俊文162
汐澤安彦125
阿部未来119
冨平恭平105
坂入健司郎103
金山隆夫103
和田一樹95
山上紘生95
松岡究94
森口真司85
海老原光86
清水醍輝82
齊藤栄一83
井﨑正浩74
佐藤雄一72
出口大地76
吉川武典71
キンボー・イシイ64
中田延亮65
小林雄太62
山本音弥64
村上史昂62
村本寛太郎61
松井慶太65
米田覚士64
長田雅人62
尾高忠明52
山口琢也51
川本貢司52
木許裕介52
橘直貴55
鈴木優人52
佐藤寿一42
前澤均42
大井剛史44
新田ユリ43
曽我大介41
榊真由44
水戸博之43
湯川紘惠43
田中一嘉43
田中雄樹41
石川征太郎44
石﨑真弥奈42
米津俊広41
角田鋼亮44
高井優希43
ユベール・スダーン32
三石精一32
下野竜也32
原田幸一郎31
大山平一郎31
太田弦32
小田野宏之32
平林遼32
平石章人32
東貴樹31
横島勝人33
櫻屋敷滋人31
神成大輝33
秋山和慶33
須藤裕也31
飯森範親32
高橋勇太33
井田勝大22
伊藤翔22
佐々木新平22
佐藤有斗22
円光寺雅彦21
北原幸男22
吉川和孝21
喜古恵理香21
園田隆一郎21
塩月陽人21
大井駿22
大友直人21
寺本義明22
小森康弘21
山田慶一21
岡本陸22
松尾葉子22
松川智哉22
松本直人21
柴田真郁22
梶原拓真21
河上隆介21
清水宏之22
益田雄真21
矢崎彦太郎22
碇山隆一郎22
篠崎史紀22
篠﨑靖男21
豊平青21
阪哲朗22

※ 表には2回以上の方だけを載せました。1回の方を含む全190名はCSVにあります。


APPENDIX C. 曲目(全件)

社会人オーケストラのうち、会場の定員が分かり、2公演以上ある団体の379公演から取れた197曲です。「差」は同じ団体の平均との差。ばらつきは、その差の標準偏差(標本標準偏差)で、大きいほど当たり外れが激しい曲です。演奏団体が少ない曲は、たまたまで動きます。

読める層 ── 5団体以上が演奏した43曲

曲団体公演平均差中央差ばらつき最大最小勝/負
マーラー 第2番《復活》1212+277席+298席262席+664-28811/1
ベートーヴェン 第9番《第九》910+271席+287席216席+680+4410/0
《祝典序曲》(ショスタコ)1414+137席+109席236席+680-22510/4
ブラームス 交響曲1番1414+115席+68席231席+602-1809/5
展覧会の絵55+84席+84席219席+368-2344/1
ベートーヴェン 第3番《英雄》77+76席+29席242席+602-1265/2
マーラー 第1番《巨人》57+73席+75席106席+208-785/2
《フィガロの結婚》序曲77+66席+31席294席+562-2994/3
マーラー 交響曲6番58+59席+93席188席+340-1584/4
チャイコフスキー 交響曲4番66+50席+97席229席+310-3374/2
ショスタコーヴィチ 交響曲5番88+50席+38席149席+353-1316/2
ベートーヴェン 第6番《田園》88+45席+38席292席+602-4094/4
大学祝典序曲1010+43席+66席134席+268-2256/4
ブルックナー 交響曲8番55+42席+191席256席+244-3183/2
アルプス交響曲58+33席-5席209席+377-1583/5
ブラームス 交響曲4番1717+24席-2席151席+392-2438/9
ベートーヴェン 交響曲2番55+22席-68席368席+602-3972/3
ブルックナー 交響曲7番77+20席-9席131席+274-1243/4
マーラー 交響曲9番58+18席-37席164席+340-1583/5
ラフマニノフ 交響曲2番66+17席-73席230席+386-2472/4
チャイコフスキー 第6番《悲愴》1010+10席-5席114席+237-1443/7
《惑星》56+3席-1席114席+172-1092/4
マーラー 交響曲5番1013-3席+0席219席+340-4056/7
ベートーヴェン 第5番《運命》55-19席+3席79席+81-1193/2
幻想交響曲1010-22席-12席138席+217-2413/7
チャイコフスキー 交響曲5番1010-30席+0席231席+286-3574/6
サン=サーンス 第3番《オルガン付き》99-36席-18席228席+277-3644/5
ブラームス 交響曲2番1111-36席-59席251席+602-3972/9
《エニグマ変奏曲》99-46席-32席149席+172-2513/6
エルガー 交響曲1番1010-56席-24席250席+420-4344/6
《マイスタージンガー》前奏曲77-56席-59席224席+274-4403/4
ドヴォルザーク 交響曲8番88-56席-4席281席+355-6223/5
ブラームス 交響曲3番1013-59席-98席255席+392-4405/8
ブルックナー 交響曲4番69-68席-115席162席+340-2191/8
《ローエングリン》前奏曲55-78席-47席158席+92-3341/4
メンデルスゾーン 交響曲5番66-94席-94席104席+86-2091/5
シベリウス 交響曲2番1010-98席-93席77席+18-2211/9
《ルスランとリュドミラ》序曲55-111席-131席169席+102-2962/3
シェエラザード77-117席-120席94席+18-2181/6
ベートーヴェン 交響曲7番1111-118席-105席175席+258-3551/10
ベートーヴェン 交響曲8番55-160席-113席112席-86-3550/5
《死の舞踏》66-175席-123席218席+66-5591/5
我が祖国/モルダウ55-206席-172席195席+9-5211/4

細い層 ── 2〜4団体の83曲(1公演動くと順位が変わります)

曲団体公演平均差中央差ばらつき最大最小勝/負
ショスタコーヴィチ 交響曲4番22+302席+437席191席+437+1672/0
ベートーヴェン 交響曲1番33+233席+66席320席+602+313/0
ラフマニノフ 協奏曲2番22+231席+386席219席+386+762/0
ブラームス ヴァイオリン協奏曲33+222席+78席333席+602-152/1
マーラー 交響曲7番22+195席+355席226席+355+352/0
《エグモント》序曲44+191席+130席280席+602-13/1
モーツァルト 交響曲35番22+176席+377席284席+377-251/1
ベートーヴェン 交響曲4番22+159席+268席153席+268+512/0
シベリウス ヴァイオリン協奏曲33+157席+167席245席+396-932/1
火の鳥44+149席+214席126席+277-133/1
《牧神の午後》22+141席+368席321席+368-861/1
《リエンツィ》序曲22+140席+194席76席+194+862/0
ブラームス 協奏曲1番22+137席+288席213席+288-141/1
ショスタコーヴィチ 交響曲9番44+129席+30席373席+680-1112/2
フィンランディア33+127席-128席480席+680-1721/2
ドヴォルザーク チェロ協奏曲33+118席+106席180席+303-552/1
ベートーヴェン 協奏曲5番22+115席+268席216席+268-381/1
ドヴォルザーク 交響曲6番22+112席+303席270席+303-781/1
ブルックナー 交響曲6番22+99席+165席93席+165+332/0
チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲33+99席+218席223席+237-1582/1
《くるみ割り人形》33+94席+160席124席+172-492/1
《アルルの女》組曲33+92席+74席157席+258-552/1
《スター・ウォーズ》33+88席+172席197席+229-1372/1
モーツァルト 交響曲31番44+87席+156席103席+194-183/1
モーツァルト 交響曲39番22+86席+328席342席+328-1561/1
プロコフィエフ 協奏曲3番44+60席+85席226席+368-1442/2
ショスタコーヴィチ 交響曲10番44+56席+94席131席+176-1313/1
ハイドン 交響曲103番33+42席-29席207席+274-1201/2
シベリウス 交響曲5番33+20席+104席204席+167-2132/1
マーラー 交響曲3番34+12席+41席81席+96-963/1
SF交響ファンタジー33+10席+109席229席+172-2522/1
《ハイドンの主題による変奏曲》44+7席+57席241席+268-3143/1
英雄の生涯22-3席+328席467席+328-3341/1
モーツァルト 交響曲40番33-4席-113席227席+258-1561/2
《マ・メール・ロワ》47-4席-83席236席+340-3423/4
《ばらの騎士》組曲47-5席-52席163席+340-1583/4
《交響的舞曲》(ラフマニノフ)22-6席+81席122席+81-921/1
ショスタコーヴィチ 交響曲12番22-9席+30席55席+30-481/1
《はげ山の一夜》33-12席-37席86席+84-821/2
シベリウス 交響曲7番22-14席+78席130席+78-1061/1
《フィンガルの洞窟》33-18席+16席107席+68-1372/1
マーラー 交響曲10番33-22席-56席69席+57-681/2
《コリオラン》序曲33-22席+97席292席+191-3552/1
モーツァルト 交響曲41番22-22席+156席252席+156-2001/1
《威風堂々》33-28席-25席96席+66-1251/2
《タンホイザー》序曲22-28席+15席62席+15-721/1
《ローマの謝肉祭》序曲44-30席+160席358席+217-5593/1
プロコフィエフ 交響曲5番44-30席-25席82席+81-1111/3
《魔笛》序曲33-33席+17席107席+39-1562/1
ドヴォルザーク 第9番《新世界より》44-35席+21席76席+32-1282/2
シューマン ピアノ協奏曲33-37席+5席131席+68-1842/1
《レオノーレ》序曲33-38席-93席176席+158-1801/2
《ドン・ファン》44-41席+73席185席+154-2412/2
メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲33-44席-52席38席-2-780/3
グレート(シューベルト)44-47席-53席172席+185-2291/3
《カルメン》組曲33-55席-156席370席+355-3641/2
シベリウス 交響曲1番22-58席+160席308席+160-2761/1
メンデルスゾーン 交響曲4番44-59席-10席67席+2-1371/3
ローマの松/祭33-60席-96席120席+74-1561/2
《ロメオとジュリエット》幻想序曲33-60席-66席73席+15-1311/2
《海》(ドビュッシー)22-67席-8席84席-8-1270/2
ブルックナー 協奏曲1番22-70席-47席32席-47-930/2
シューマン 交響曲3番22-71席-18席75席-18-1240/2
ラプソディ・イン・ブルー23-75席-228席269席+236-2341/2
ドヴォルザーク 交響曲7番44-79席+5席172席+102-2962/2
ブルックナー 交響曲3番22-82席-72席15席-72-930/2
未完成44-97席-52席113席+38-2161/3
《トリスタン》前奏曲と愛の死44-98席+0席274席+244-3491/3
シューマン 交響曲2番33-107席-163席106席+15-1721/2
《たそがれ》/交響詩その他33-113席-128席115席+9-2191/2
ショスタコーヴィチ 交響曲7番33-114席-15席280席+104-4301/2
《ウィリアム・テル》序曲44-121席-68席156席+33-3371/3
フランク 交響曲33-123席+62席379席+128-5592/1
エルガー チェロ協奏曲22-125席-24席143席-24-2260/2
ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲22-130席+76席292席+76-3371/1
モーツァルト 交響曲25番22-135席+46席255席+46-3161/1
《カレリア》組曲33-145席-97席115席-62-2760/3
ブルックナー 交響曲9番33-153席-234席342席+223-4461/2
《コケイン》序曲33-156席-218席114席-24-2260/3
《死と変容》22-167席-53席162席-53-2820/2
シベリウス 交響曲6番22-191席-106席120席-106-2760/2
メンデルスゾーン 交響曲3番33-197席-150席123席-106-3370/3
シューベルト 交響曲4番22-293席-176席165席-176-4090/2

※ 1団体しか演奏していない曲を含む全197曲はCSVにあります。


APPENDIX D. 作曲家ごとの効き(回帰)

本文の回帰(同じ団体の中で比べる。会場・合唱つき・協奏曲・値段・指揮者・年を同時に入れる)に、その回に各作曲家の曲が入っていたかを加えたときの係数です。社会人オーケストラ319公演・65団体、残差の標準偏差194席。「公演」はその作曲家の曲が入っていた回の数。5%水準で残ったのはマーラーだけです。ただし《復活》を別の変数に分けて同じ回帰をやり直すと、《復活》が+237席(誤差の幅±104席)、それを除いたマーラーは+73席(±50席)で、マーラーの方は有意でなくなりました。マーラーの効きは、ほぼ《復活》の分です。

作曲家公演同じ団体のほかの回との差誤差の幅有意性
マーラー36+111席±47席5%水準
チャイコフスキー30+65席±45席有意でない
ベートーヴェン53+45席±40席有意でない
フランス物39+37席±44席有意でない
ブラームス46+22席±40席有意でない
ショスタコーヴィチ23+10席±49席有意でない
ドヴォルザーク21+0席±52席有意でない
ブルックナー25−18席±52席有意でない

※「フランス物」はラヴェル・ドビュッシー・ベルリオーズ・フォーレ・サン=サーンスのいずれか。1つの回に複数の作曲家が入っていれば、それぞれに数えています。


APPENDIX E. 大学・高校のOBが母体の楽団

社会人の150団体のうち、名前に学校名とOBの語が入っている楽団が4団体、名前には出ていなくても、団体の紹介文に特定の学校のオーケストラの卒業生が母体・中心だと書かれている楽団が13団体ありました。紹介文は1団体ずつ読んで判定し、指揮者や独奏者の経歴に出てくる学校名や、「いろいろな大学の出身者が在籍」程度の書き方は数えていません。

楽団母体見分け方
ワグネル・ソサィエティー・OBオーケストラ慶應義塾大学(ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ)名前
上智大学OB管弦楽団上智大学名前
東京六大学OBオーケストラ連盟東京六大学(複数校)名前
麻布学園OB+オーケストラ麻布学園(中学・高校)名前
Liberal Ensemble Orchestra立教大学交響楽団紹介文
Orchestra Da Vinci東京大学音楽部管弦楽団紹介文
Orchestra of Spring千葉大学紹介文
エセンツ・フィルハーモニカー一橋大学管弦楽団紹介文
エバーグリーンフィルハーモニーオーケストラ東京農業大学農友会管弦楽団紹介文
オーケストラ・フェリア一橋大学管弦楽団紹介文
オーケストラ・ルゼル電気通信大学管弦楽団紹介文
フィルハーモニア・ブルレスケ早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団紹介文
ブロカートフィルハーモニー管弦楽団東京電機大学(「東京電機大学OB管弦楽団」として創立)紹介文
ポロニア・フィルハーモニー管弦楽団桐蔭学園高校紹介文
横浜シンフォニックアンサンブル横浜国立大学管弦楽団紹介文
水星交響楽団一橋大学管弦楽団紹介文
白金フィルハーモニー管弦楽団明治学院大学管弦楽団紹介文
団体数公演数1公演の売れた席(中央値)集客率(団体の平均)
名前にOBの語がある4141,064席60.1%
紹介文にOBが母体とある1347782席50.2%
それ以外132370625席43.6%

会場の定員・値段・年を揃えて団体単位で比べると、OBが母体の17団体は、それ以外の団体より1公演あたり180席多く入っていました(誤差の幅±90席)。有意とは言い切れませんが、有意に近い差です。2つの群を分けて見ると、名前にOBの語がある4団体は+340席(4団体しかないため傾向と見るのにとどめます)、紹介文にOBが母体とある13団体は+128席で、どちらも誤差の幅の中でした。集客率に直すと+9.3ポイントです。本編の回帰は団体ごとの差を丸ごと取り除いて比べているので、OBが母体かどうかのように団体の中で変わらない性質は、そこでは測れません。ここでの比較は、団体どうしを並べたものです。

券を売った公演のうち、自由席で売った割合も数えました。本編に入らない自由席や無料の公演も含めて、2023年以降の全公演で数えています。名前にOBの語がある楽団は60.6%、紹介文にOBが母体とある楽団は63.9%、それ以外は70.2%で、ほぼ同じくらいで、OBが母体の楽団の方がやや指定席が多い、という程度でした(差ははっきりしません)。自由席を選ぶ理由は動員の見込みだけではなく、指定席にすると販売の手数料が上がること、会場費、座席の割り当ての手間も効くため、これは補助的な読みにとどまります。

なお、紹介文から母体を判定できたのは、紹介文を公開している楽団だけです。独自調査のため限界があり、母体があっても紹介文に書いていない楽団は「それ以外」に入っています。また、音楽大学の学生・卒業生が母体の1団体(3公演)は判定を保留し、この表と回帰から外しました。本編の150団体・434公演との差はこの分です。

APPENDIX F. 高校のオーケストラ部と、大学の合格者

本文10節のコラム「『偏差値』の高い大学には、中学・高校の経験者が集まっている」の数え方と、大学ごとの数字です。

高校の側

対象は、文部科学省の学校コード(2026年5月時点)に載っている全国の高校と中等教育学校のうち、本校で現存する4,882校です。

オーケストラ部の有無は、各校のWikipediaの記事の部活動の記述から判定しました。管弦楽部・オーケストラ部・弦楽部・室内楽部などを「あり」とし、「ウィンドオーケストラ」「ギターオーケストラ」「マンドリンオーケストラ」のような吹奏楽や撥弦楽器の合奏は数えていません。記事に部活動の記述がある2,905校を分母にしています。

高校の偏差値は、民間の受験情報で公表されている値を使い、学科が複数ある高校は最も高い学科の値を取りました。高校からの募集がない中高一貫校は、中学入試の偏差値(四谷大塚の合格可能性80%偏差値、関西などは日能研の結果R4)から換算しました。中学と高校の両方から募集している学校で両方の偏差値を並べると、差は一律ではなく、中学の偏差値が高い学校ほど小さくなっていました(四谷大塚の値で45未満は+22、65以上は+8)。そこで、中学の偏差値の帯ごとに、この差の中央値を足しています。どの表にも載っていない中等教育学校6校は、進学実績を同じ県の上位校と並べて帯を決めました。一律に+14を足した場合や、手で決めた6校を1つ上の帯に動かした場合も数えましたが、結果は変わりません。

高校の偏差値高校数部活動の記述ありオーケストラ部あり割合
40未満40218610.5%
40台1,637932222.4%
50台1,199786374.7%
60台9036699213.8%
70以上2391865429.0%
偏差値が分からない50214632.1%

偏差値が分からない高校の多くは通信制の学校です。オーケストラ部がありながら偏差値が分からないのは3校でした。

Wikipediaの記述には漏れがあります。帯ごとに、Wikipediaで「オーケストラ部なし」とした高校を約30校ずつ学校の公式サイトで確かめたところ、偏差値50台以下では漏れが見つからず、60台で32校中3校、70以上で28校中2校に漏れがありました。漏れは上の帯にだけ出ているので、実際の差は上の表より開いている可能性があります。ただし1つの帯で確かめたのは30校前後で、下の帯の「漏れなし」も、この数では確かとは言えません。

大学の側

大学ごとの高校別の合格者数(2026年入試、民間の集計)のうち、各大学の上位50校を使いました。上位50校の合格者のうち、オーケストラ部のある高校から来た合格者の割合です。国立大学と、本文の四大を含む上位6校は大学名を、それ以外は頭文字を示します。

大学偏差値オーケストラ部のある高校からの合格者
東京大学67.833.3%
早稲田大学67.240.1%
慶應義塾大学67.033.7%
一橋大学66.836.3%
京都大学65.526.5%
東京科学大学64.337.7%
神戸大学61.019.1%
東北大学60.828.5%
筑波大学60.125.1%
東京外国語大学60.128.2%
横浜市立大学59.941.9%
千葉大学58.629.5%
東京学芸大学53.222.7%
熊本大学52.313.9%
私立大学(頭文字・割合の高い順)オーケストラ部のある高校からの合格者
MG大学33.2%
J大学32.0%
M大学29.9%
A大学24.1%
R大学22.3%
H大学21.4%
KG大学17.7%
D大学13.9%
C大学11.4%
G大学8.8%
RM大学7.9%
S大学5.1%
N大学4.4%
T大学3.3%

28大学で、大学の偏差値との相関係数は+0.75でした。国公立12校では+0.61、私立16校では+0.81で、どちらでも正の相関が出ます。

限界を4つ挙げます。

参考:東京大学音楽部管弦楽団

東京大学音楽部管弦楽団は、団員の高校時代の部活を公表していません。代わりに、名簿にある出身地から逆算してみます。2026年夏の演奏会の名簿106名では、1都3県の出身が72.6%でした。東京大学の上位50校の合格者で見ると、1都3県の出身は、オーケストラ部のある高校からの合格者で81.8%、ない高校からの合格者で64.4%です。団員がこの2つの集団の混ざったものだとすると、72.6%になるのは、オーケストラ部のある高校の出身が約47%のときです。

ただし、上位50校に入らない高校から来た団員は考えていません。吹奏楽部の出身者や、学内のほかのオーケストラに流れる人の動きも考えていません。早稲田大学交響楽団やワグネル・ソサィエティー・オーケストラと同じくらいの水準と見ても矛盾しない、という程度の参考値です。


よくある質問

Q. 何を「売れた席」として数えていますか

オンラインで押さえられた席です。実際に代金が支払われた席とは限らず、主催者の押さえや招待席が含まれている可能性があります。ここではこれらをまとめて数えました。窓口や別のプレイガイドで売られた分は入っていないため、いずれも下限です。

Q. なぜ大学オーケストラを本編から外したのですか

学内の動員が効くので、市場として別物だからです。同じ項目でも符号が変わります。合唱つきは社会人で+218席ですが、学生では−62席でした。混ぜると、どちらの実態でもない平均が出ます。

ただし捨ててはいません。大学オーケストラは団体のあいだで宣伝の道具の使い方が揃っていると仮定できるので、宣伝の効き目を測る材料として10節で使っています。

Q. 大学オーケストラでは、いちばん入っているのはどこですか

集計できた203公演・33団体の中では、年間の延べ動員で早稲田大学交響楽団の6,893席、慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラの4,569席、東京大学音楽部管弦楽団の4,179席、京都大学交響楽団の3,229席です。1公演あたりでは、ワグネルの1,406席(13公演)、中央大学管弦楽団の1,384席(3公演)、明治学院大学管弦楽団の1,334席(7公演)、早稲田大学の1,313席(21公演)の順です。音楽大学は外しています。

Q. SNSをやれば客は増えますか

大きくは増えない、という結果でした。団体・会場・値段を揃えた後に残る動きの幅は、宣伝の道具立てが揃っているはずの大学オーケストラで171席、揃っていない社会人オーケストラで211席。向きは「揃っている方が狭い」ですが、差は40席です。残差269席と並べると、宣伝の巧拙だけでこの幅を説明するのは難しそうです。動いているのは曲でした。詳しくは10節に書いています。

Q. 大学オーケストラの動員は、大学の偏差値で決まるのですか

大学が特定できる25大学で、大学ごとの公認の伝統あるオーケストラ1団体の年間の延べ動員を物差しにすると、河合塾Kei-Netのボーダー偏差値(学科の在籍学生数で重み付けした平均)との相関が+0.652、学部学生数が+0.341でした。2つを同時に入れると両方が1%水準で残り、偏差値1ポイントあたり年に+221席、学生数は10倍あたり年に+1,933席です。動員力を分けていたのは、学生数より偏差値でした。日本大学や早稲田大学を1校抜いても偏差値は残りますが、四大の4校を抜くと5%水準まで弱まります。説明できたのは61%です。そしてこれは大学オーケストラの中での話で、社会人オーケストラには及びません。

Q. なぜ2022年以前を外したのですか

感染症の影響で客席の使い方そのものが違っていた時期で、同じ物差しに乗らないためです。この記事は2023年以降の670公演(うち社会人434公演)を使っています。

Q. 値段を上げれば客が増えるということですか

そうは言えません。同じ団体の中では高い回の方が入っていましたが、特別な回に値段を上げていることの表れである可能性があります。確認できたのは、値下げによる集客の増加が見られないということです。そもそも値段(大人向けの有料の券種の平均)は86.9%が500円から2,000円の間にあり、中央値は1,500円。動かす余地がほとんどありません。

Q. 「ばらつき」とは何ですか

団の平均との差の標準偏差(標本標準偏差)です。2公演以上ある団体の回で計算しています。同じ+40席でも、毎回+40席の曲と、+400席と−320席を行き来する曲では意味が違います。平均だけでは、この幅が見えません。

Q. 会場を大きくすれば客が増えますか

大きさだけでは決まりません。同じ2,000席級でもホールによって差が大きく、定員を回帰に入れても、サントリーホールは+474席、東京芸術劇場は+278席残りました。ただし会場の係数には、会場そのものの効果以外のものも入っています。特定のホールを取る回は、その団体にとって特別な回であることが多く、そこは分けきれていません。

Q. 独奏者は若い人を呼べばいいのですか

年齢と動員の相関は−0.309(25公演)で、向きは「若いほど入っている」ですが5%水準には届きません。会場と曲を揃えると−0.169まで弱まります。若い独奏者を迎える団体が、たまたま大きな会場でよく入る曲をやっている可能性が残ります。

Q. 指揮者は動員に関係しますか

今回のデータでは差が出ませんでした。指揮者の名前が本文から取れたのは319公演のうち78.7%で、手元の指揮者名簿に当たったのは78.1%です。名前が取れた回は、ほぼすべて名簿に当たっています。そのうえで、プロオーケストラの公演とアマチュアオーケストラの公演のどちらに多く名前が出てくる指揮者かで分けても、差は誤差の中でした。測れなかったのではなく、測ったうえで差が出なかった、ということです。


ここまで数えてきて、ひとつ残ることがあります。

動員との関係がはっきり見えたのは、どのホールか、《復活》や第九という特定の曲。明確な差を確認できなかったのは、値下げ、版の指定、指揮者の区分、独奏者の知名度。

前者は「その公演に行く理由」に関わるもので、後者は「演奏そのもののスペック」に近いものです。

客は、良い演奏を買っているのか。それとも、行く理由を買っているのか。

434公演の数字は、そこまでは教えてくれません。

五十嵐悠一
監修・執筆責任者
株式会社日本財務戦略センター 代表取締役。京都大学経済学部経営学科(マーケティングゼミ専攻)卒。損害保険ジャパン本店営業部(企業リスク・法務)を経て、東証上場M&A仲介会社にて多数の成約に従事。2020年に株式会社日本財務戦略センターを創業し、M&A・事業承継・財務戦略を専門としています。日本CFO協会認定 プロフェッショナルCFO M&Aエキスパート/中小企業庁 M&A支援機関登録事業者/一般社団法人M&A支援機関協会 正会員/中小M&Aガイドライン第3版 遵守宣言済です。

この記事は公演ごとに押さえられた席数を機械的に集計したものであり、特定の楽団や演奏についての評価ではありません。数えているのは押さえられた席であって、代金が支払われた席とは限りません。オンライン以外で売られた席は集計に含まれないため、集客率はいずれも下限です。
相関は因果を示しません。
集計や記載に誤りがある可能性があります。お気づきの点がありましたら、お問い合わせよりご連絡ください。速やかに確認のうえ対応いたします。

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