時事通信「政府、私的整理の条件緩和 コロナ債務対応、銀行は警戒感」について

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公開日:2021年6月25日 /最終更新日:2021年6月25日

弊社では企業再生・事業再生についての取り組み支援を行っております
今回はそれに関連し、時事通信の記事で面白い記事がありましたのでご紹介したいと思います。

以下は、時事通信の記事の引用です

政府は、新型コロナウイルス禍で企業債務が増加傾向にあることを受け、金融機関同士の話し合いで返済猶予や減免を行う「私的整理」を利用しやすくなるよう対応策を検討する。私的整理ガイドラインの活用条件緩和など企業が事業再生や廃業に踏み出しやすい環境を整え、景気回復や生産性向上を図る。一方、銀行は安易な債権カットが増えかねないとして警戒感を強めている。

 企業の債務残高は2020年12月末に622兆円となり、前年同期比で52兆円増えた。実質無利子・無担保融資などコロナ禍での政府の資金繰り支援策で倒産件数は低水準に抑えられているものの、今後倒産が急増したり過剰債務に陥った企業が成長分野への投資を控えたりすれば、経済の停滞を招きかねない状況だ。

コロナ破綻、1500件 緊急事態、増勢強まる恐れ―商工リサーチ

 そこで政府が成長戦略実行計画に盛り込んだのが私的整理の活用促進策の整備だ。私的整理は民事再生など法的整理と比べて事業価値を維持しやすく、将来の事業再構築につながりやすい。ただ、中小企業再生支援協議会が関わる私的整理は年1000件程度にとどまる。コロナ収束後に企業再編は増加するとみられ、スピード感のある債務処理策の検討が課題となっている。
政府は今後、大企業や中堅企業を念頭に法制面での抜本的な対応を検討。中小企業向けには、現行の私的整理ガイドラインで示されている3年以内の債務超過解消の要件を5年以内に緩和するなど、新たな指針策定を検討する。
これに対し、全国銀行協会の三毛兼承会長は「真に苦しんでいる事業者の再生につながる骨太の議論が必要だ」と指摘。銀行業界からは、政府の資金繰り支援策を担う中、将来的な債権カットの案件が増えかねない制度の検討は「矛盾している」(関係者)と戸惑いの声が上がる。見直しの内容次第では金融機関の財務基盤に影響を与えかねず、議論の難航が予想される。

現在、政府はコロナ対策のため、金融機関に対して融資を行う際に補助を行うなど、融資による資金繰り政策を行い、倒産や廃業を増加を避けようとしています。
融資が継続して行われているうちは問題ないと思いますが、とはいえどこかで融資を受けるにも限界がくるでしょう。
実際、今まで借換えができていた保証協会から、今後の借換えができないと言われた事業者の話も耳に入ってきています。

もちろん飲食や宿泊など、人の流れが再び活発になり需要の増加が見込まれる事業者であればいいのでしょうが、現状では倒産の先送りになっている企業もあるのではないでしょうか。
というのも、以前のコラムでも指摘した通り、コロナ対策ができている企業と比べスタートダッシュが遅れ、競争劣位に立たされてしまっているため、売り上げの回復がコロナ前までに至らない可能性があるからです。

さてその場合、どうするかという事が今回の記事の趣旨の一つだと考えられますが、政府の意図としては「私的整理」を行いやすくすることにより、負債を軽くして、再生を図りやすくしようと考えているようです。
私的整理とは、「私的整理に関するガイドライン」というものを政府が主導し、銀行協会や各金融機関と定め、各行ともこのガイドラインを基準として債務整理を検討しようという事を定めています。
今回の記事では今まで3年で事業再生を図ろうとしていたものを、期間を延長して5年以内に債務超過が解消できるようにしようと考えているようです。

裏を返すと、債務超過の企業であっても「今まで3年相当で返済できるところまで貸し付けていたところ、コロナの影響があるため5年相当まで貸すようにしよう」とも読めるのですが、銀行からしたら債務超過の企業に対して貸付けが大きくなればなるほど、何かあった時の損失が大きくなりますし、引当ても積む必要があるでしょう。
ましてや私的整理の場合、債権カットが前提となってくることが多いので、金融機関が損失を被る制度ありきで議論されるのは迷惑である、ということが「戸惑いの声が上がる」という部分につながっているのではないでしょうか。
(実際にコロナ前のPL前提で5年相当で返せるくらい融資を行ったとして、コロナ後、そのPLに戻らなければ、見込みが甘かった分は債権カットせざるを得ないでしょう)
政府からコロナ後を見据えた私的整理のガイドラインの積極活用というメッセージ発信されたことにより、金融機関は債権カットを積極的に行わざるを得ない可能性を感じ、かえって貸し出しに消極的になるような印象も受けます。

また借りる側からしても現状厳しい中で、融資の拡大を考えることは確かにやむを得ないことではあると思いますが、やはり従業員や取引先のことを考えた場合、企業をどうやって存続させるのかという事も併せて考える必要があると思います。

その場合、融資の拡大だけではなく、事業投資、経営方針の転換、M&Aによるシナジー効果の増大、あるいはある程度先が見えてしまったところでの企業再生(事業再生)などの方法も考える必要があると思います。
弊社ではM&Aや事業再生(企業再生)による経営支援を行っておりますので、将来についてお悩みの方はお気軽にご相談ください。

 

なお私的整理などに関する事業再生(企業再生)については以下のコラムも参考にしてください。

企業再生スキームとM&A
債務超過企業と企業再生(準則型私的整理編)
【事業再生】特定調停スキームとは
【事業再生】事業再生ADR制度について
地域経済活性化支援機構(REVICとは)
事業承継時の「経営者保証に関するガイドライン」の特則
「経営者保証に関するガイドライン」とは

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