上場M&A仲介会社、軒並み暴落! 政府の「M&A手数料透明化」について

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公開日:2024年6月10日 /最終更新日:2024年6月11日

6月10日ショック!? 上場大手M&A仲介会社の株価暴落

ロイターが以下の通り報じておりますが、M&A総合研究所を皮切りに株価が大幅下落しています。

[東京 10日 ロイター] – Ⅿ&A(買収と合併)関連銘柄が大幅安となっている。政府がⅯ&A仲介事業者に手数料の開示を求めると伝わり、嫌気する売りが先行している。

個別では、M&A総研ホールディングス(9552.T)が15%超安、M&Aキャピタルパートナーズ(6080.T)が10%超安、ストライク(6196.T)が12%超安、日本M&Aセンターホールディングス(2127.T)は8%超安。いずれの銘柄もプライム市場の値下がり率上位に入っている。

市場では「初期反応としては売りが強まっているが、各企業の業績への影響が軽微にとどまるようであれば、目先は買い戻しの動きもみられるのではないか」(国内運用会社・ポートフォリオマネージャー)との声が聞かれた。

政府は7日、岸田文雄政権が2022年に看板政策として掲げた「新しい資本主義」の実行計画を再改丁し、中小・小規模企業の事業承継やM&A・グループ化を進めるため、仲介事業者の手数料の開示やM&Aの際の経営者保証を見直す枠組みを導入すると表明した。

結果として終値ベースの各社の株価終値は

・M&A総合研究所3,440円(-465円 11.91%安)
・MACP2,070円(-157円 7.05%安)
・ストライク4190円(-385円 8.42%安)
・日本M&Aセンター736円(-31円 4.03%安)

となりました。

ロイター記事にもありますが、株価下落の要因として、政府が7日金曜日に出した「新しい資本主義実現会議」の中で、近くM&Aに関する過度な仲介手数料の請求を防止するため、手数料について情報開示を要請することを義務付けたことが挙げられています。

ただこの話は唐突に出てきたものではなく、今年の3月には政府与党で検討されてましたし、5月末にも時事通信で報道されています。

また与党自民党の中堅実力派代議士の小林史明議員も、Twitter(X)で以下のように6月8日にポストしていることから、

先日我々から提言した、価格転嫁対策やM&A仲介事業の手数料・サービス内容の透明化、公務員年金40兆円の運用高度化などが盛り込まれています。実行に向けて引き続きフォローアップしていきます。

丁寧にM&A仲介の業界動向を観察していた投資家からすると予測されてきた流れであるといえるでしょう。
なお6月9日にダメ押し的な形でFACTAにも記事が掲載されていますが、発行部数や影響力などを考えると、7日の政府発表を受け土日で売りの方向に圧力が働いたとみるのが一般的でしょう。

政府の問題意識

では岸田政権でなぜこのような動きが起きたのでしょうか

まず岸田政権の大きな柱である「新しい資本主義」について、巷間、「よくわからない」と評されていますが、アベノミクスをベースとしたうえで、政府からも市場に影響を与え、成長と分配のうち分配にも力を入れていこうと考えている政策と理解しています。

その中でも、特に中小企業のM&Aについては、後継者難や経営の悪化などで会社が倒産・廃業し、経営資源が散逸することを避けるため、政府は力を入れています。

今後も中小企業の倒産・廃業は増えることが予想されており、政府としては中小企業M&Aを活発に行うことで中小企業の経営体力を強くしていきたいと考えております。

ただし仲介手数料が高額であることなどでM&Aが進まないことなどがボトルネックになっており、その点を解消したいという考えがあると思われます。

手数料が高いだけなら当事者だけの話でその仲介会社とM&Aを行わなければいいだけなのですが、手数料基準をごまかしたり、強引に契約するためにあえて「不透明」にしている仲介会社が問題だと思われたのかもしれません。

上記はクレジオ・パートナーズ様が作成した各社手数料表ですが、確かに各社で手数料はまちまちです(許可を得て掲載しております)。

実はM&A支援機関に登録し、かつガイドライン第二版に対応しているM&A仲介会社は、ホームページなどに手数料を明示化することが求められています。

しかし中小企業庁肝いりで作られたM&A支援機関に登録しているにもかかわらず、上記のように手数料基準が一部不明瞭な会社があるというのは、まだM&A仲介業界が政府が考えているように是正されていない状況なのでしょう。

株価の暴落状況について

さて今更感がある政府の発表ですが、各社の株価は下落している中、下落率が違うところが興味深いです。

本来はM&A仲介手数料に依存している収益体質なので、市場が効率的であるなら各社均等に株価が下落しないとおかしいからです。

もう一度、2024年6月10日終値を見てみましょう。

・M&A総合研究所    3,440円(-465円 11.91%安)

・MACP         2,070円(-157円 7.05%安)


・ストライク           4190円(-385円 8.42%安)

・日本M&Aセンター 736円   (-31円 4.03%安)

これらの企業を株価の下落率順に並べると

M&A総合研究所>ストライク>MACP>日本M&Aセンター

となります。

以前、別の記事でも説明したかと思いますが、中小企業M&A市場は後継者不足やマクロ環境の大きな変化(円安や物価高、人手不足など)が変わらなければ、当面の間は拡大し続けるでしょう。

つまりM&A仲介業界は基本的に成長産業であると考えるのが自然です。

また政府自一部の仲介会社に対して是正が必要と考えていると思いますが、M&A自体は必要と認識しているはずです(全面禁止や大きな規制などしていないのがその証左でしょう)。

そして政府の介入も「手数料の明確化」(他に迷惑営業の指導などの話もありますが)であり、営業規制ではないことがポイントです。
(なお余談ですが、M&A仲介会社の迷惑営業にお困りの方は右記:M&A支援協会の情報提供窓口まで通報されることをお勧めします)

つまり業界は維持したうえで、ボトルネックになっている企業を排除・もしくは是正したいと考えていると推論できると思います。

すこし話が脱線しますが、日本M&Aセンターの下落率が低いのはさすが、今までの実績があるからでしょう(この前の不祥事でダウンサイドの下落要因が出尽くした可能性もありますが)。

日本M&Aセンターが手数料を明示化したとしても、今まで通り提携金融機関や税理士から紹介で案件が流入し、今まで築いたストロングバイヤーとリレーションが保たれていれば、基本的に現在と同程度の売り上げの予測が立つと思われるからです。

逆にそのリレーションがない、もしくは「手数料明示化」の影響が大きいと思われている仲介会社ほど下落率が高くなっているのかもしれません。

また余談ですが、固有名詞はあげないものの、弊社も上記に上げた仲介会社とかかわった売り手様や、買い手様から手数料などについて愚痴ともつかない相談を受けたことがあるので、何かしら上記の会社の一部についてM&A支援機関情報提供受付窓口などに相談が入っているのかもしれません

本来、手数料なんて言うのは事前に説明を行っておけば手数料でもめることはないはずです(売り手も買い手も説明を受けた前提で売買を進めるため)。

ただ今後、実際のトラブル事例としてどんなやり取りがあったのかについて、そのうち政府から悪質事例の説明が出る可能性がありますから、発表されたらまたご紹介したいと思います。

M&A仲介業界の今後

繰り返しになりますが、M&A仲介業界自体は、政府としても、また後継者難で必要とされていることから無くなることは当分ないと思います。

ただ手数料明確化など、売り上げに直結する手数料の下落圧力は業界全体として受けており、最低報酬が高い仲介会社で、かつ案件の継続的な流入がない会社は厳しくなるでしょう(迷惑営業も規制されるのでダブルパンチです)。

コンサルタント(営業マン)のマンパワーに依存していた会社ほど、固定費の高止まりで経営に悪影響があるでしょう。

また基本給を下げてインセンティブ率を高めることでそのジレンマを解消しようとすると、従業員によるモラルハザードが起きてしまう可能性が否定できません。

特に上場している会社は良いときはいいですが、ダウントレンドに陥った際に、経営の悪化が可視化されてしまい、「市場の暴力」にさらされてしまいます。

株主から経営陣が詰められ、経営者は営業マン(従業員)を詰め…と詰めハラというか、責任の所在を求められるデフレスパイラルに陥ってしまうかもしれません(サラリーマンあるあるです)。

また売り上げを極度に重視する会社は、M&A支援を行う際に「回転率」を重視し、売り手(買い手)に「スピード重視れ売れたらいいや」と接する可能性もあるため、果たしてそういう会社に依頼するのが売り手として正解なのか…という問題も出てくるかもしれません。

10年前~コロナ前のようにひっそりとM&A仲介会社が動いているうちはまだよかったのでしょうが、仲介会社が2000者を超える勢いで増えています。また高給がもてはやされたり、高給を得るためにえげつない営業振りがフィーチャーされたことで、昔のようなマーケット環境ではなくなってしまったようです。

そのような中では政府が業界に介入してくるのも仕方のないことかもしれません。

各社各営業担当者のモラルが低下したことで、売り手や買い手を守るためには仕方がないと考えるからです。

ここに興味のある方は旧Twitter現在XでM&A仲介と思しきアカウントをフォローして、たまに開催されるスペースなどを聞いてみると、以下にカネの話がメインになるか実感できるのではないでしょうか。

M&A仲介業界の中にいる人の今後

当職の周りでは評価が高い人たちは、取引先の取締役や社外取締役に就任したり(それはそれで今まで利益相反だったのでは…、とは思いますが)、会社を買ってオーナーになったりし始めています。

そう考えると今から中小M&A業界に参入や転職することはあまり推奨できないのですが、これから中小企業M&A業界に参入しようとする人たちは、上記の環境変化をよく理解したほうがいいと思います。

また可能であれば新卒では銀行など汎用性のある業界に入ったり、転職するにしても日本M&Aセンター等のような研修体制が整っていそうなところを目指した方がいいのでは…と考えてしまいます。

外部要因に頼ろうとする人はこの業界、そもそも向かないという説もありますが、どうせなら少しでもリスクが少ない方がいいのではと考えます。

また投資先としてM&A仲介会社の株を買うことを考える際は、アップサイドを見るより、金融株やインフラ株のようにあまり収益が変動しないことを前提に運営している会社に投資したほうが固い気もしますが、皆様の自己判断でお願いします。

以上、長くなりましたがM&Aに関連してご不明、ご不安な方は弊社までご遠慮なくお問い合わせください。

また下記のコラムも参考にしてください。

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