【日経】中小M&A、過大な仲介手数料抑止 経産省が指針改定へ

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公開日:2024年5月31日 /最終更新日:2024年6月10日

今度こそ本当に終焉? M&A仲介業界

2024年5月30日に日本経済新聞社より「中小M&A、過大な仲介手数料抑止 経産省が指針改定へ」という記事が出ました。
本コラムでもたびたびご案内してきましたが、中小企業庁がM&A仲介業界に対してどのように考えているか、今後どう規制などが展開されるかが読めると思いますので紹介したいと思います。

まず以下は一部抜粋です(太字筆者)。

中小企業は経営者の高齢化や人手不足などで円滑な事業承継が課題になっている。

経済産業省は中小企業のM&A(合併・買収)に関わる仲介事業者に手数料の開示を求めるよう指針を改定する。算定基準をガラス張りにして、サービスに比べて過度な手数料を請求されるといったトラブルを抑止する。中小が安心して仲介事業者を利用できる環境を整え、事業承継や有力企業への事業集約を後押しする。

今秋をメドに「中小M&Aガイドライン」を改定し、2025年4月頃から手数料の開示を始める。経産省が31日に開く有識者会議で指針の改定に向けた議論を始める。

中小企業のM&Aでは売り手や買い手の企業が、仲介事業者やアドバイザーに手数料を支払う。指針では仲介事業者らに対し、手数料が売却金額のどの程度の割合となるかや手数料の最低水準を示すことを求める方針だ。各社の手数料を比較できるようにし、過度に高額な手数料を設定できないようにする狙いだ。

東京商工会議所が中小企業を対象に23年夏に実施した調査では、M&Aを検討しない理由として12.9%の企業が「手数料が割高だ」と答えた。売り手側に最適な取引先を紹介しないまま、特定の買い手側企業から追加で手数料を徴収して優先的にマッチングさせる例もあるという。

現行の指針では手数料の水準を事例と一緒に紹介したり、仲介事業者の最低手数料の水準の分布を示したりすることにとどまっていた。手数料は計算式や支払う時期などの料金体系が会社によって異なり、中小企業などからは「分かりにくい」といった声があがっていた。

経産省は指針の内容を順守する仲介会社を「M&A支援機関」として登録する制度を設けている。指針の改定後は、手数料を開示しない仲介会社は登録の取り消し対象となり、中小M&Aに関する政府の補助金の支給要件から外れる。登録制度を通じて指針の実効性を高める。

 

同制度には現在、仲介事業者や行政書士事務所など3089社が登録しており、2021年の2278件から増加傾向にある。国が設置する「事業承継・引継ぎ支援センター」には22年度に2万2361人から相談が寄せられ、1681件のM&Aが成約した。経営者の高齢化などを背景にいずれも過去最高だった。

利益相反にあたる行為の禁止も検討する。リピーター企業を優先的に成約させる行為などが対象になり得る。現行の指針にある「両当事者間において利益相反のおそれがあるものと想定される事項」を具体的に明示する。すでに買い手がいるかのように装う虚偽の勧誘など、過剰な営業や広告も禁止する方針だ。

不適切な事業者の排除も焦点となる。債務超過で経営が困難な企業が売り手側になる場合などでは買い手側に信用調査の実施を求める。経営者自身が会社や事業の連帯保証人になっている場合に、事業売却後にその連帯保証の扱いをどうするかも当事者間で話し合うよう促す。

 

M&A仲介会社の手数料

クレジオパートナーズ社様がまとめられたM&A仲介会社の手数料比較表をご覧ください(許可をいただいて掲載しています)。

これをご確認してわかるように、M&A仲介会社各社による手数料設定はまちまちであり、かつ「最低手数料」が実質的な報酬になっていることもあり、大変わかりづらいものがありました。
そこで中小企業庁は2023年9月にM&A仲介会社に対して指針を改定し、手数料の明確化を図るようにしてきました。

ただこのガイドラインを出しても遵守している企業が乏しく、実際に「ガイドラインに対応しました!」と宣言しても、実際の社内研修は宣言後に行うなどの会社が一般社団法人M&A仲介協会の幹事会社を務めていたりと、脱法、というか実質骨抜きになっている状況でした。
そのような状況に中小企業庁がしびれを切らせたこと、また前回コラムでもお伝えした通り、M&A仲介会社の迷惑営業などの苦情も絶えなかったことがあり、それらを踏まえて第三次改定に踏み切ることになったのでしょう。

M&A仲介会社への影響は?

日経が発表された2024年5月30日段階では上場各社の影響についてはまちまちでした。
しいていうとM&A総合研究所社の下落率が5%と大きく、ストライク社がむしろ反発しているので、最低手数料が低い方が影響が少ないとみられたのかもしれません。
日本M&Aセンター社もやや下げましたが下落幅がM&A総合研究所に比べて小さかったのは売り案件の獲得ネットワークを築いているので、大型案件の流入が今後も見込める(そのため最低手数料「額」にはあまり影響されない)と思われているのかもしれません。

迷惑電話などの営業が封じられ、かつ売り上げに直結する手数料額も下がってしまうと、固定費が高く差別化が図れないM&A仲介会社には厳しくなるかもしれません。
別のコラムでも書きましたが、今後新規で参入する企業や営業担当者はかなり厳しくなる可能性があるでしょう。

利益相反にあたる行為の禁止も検討する。リピーター企業を優先的に成約させる行為などが対象になり得る。

との記載もありました。
また後程詳しく出てくるでしょうが、仲介会社が特定企業に優先的に紹介を行うことで売り手が不利益を被る可能性があると示唆されています。
特定の買い手に仲介会社が優先的に紹介することで、仲介会社は早く制約ができるため、売り上げを早く立てられて資金繰りがよくなりますし、買い手は仲介会社と癒着することで買収価格や条件など有利な契約がしやすくなるということでしょう。
この点についてはケースバイケースであると思うので、一概に特定の買い手に紹介すること自体が悪いとは思いませんが、売り手から見た際に他によりいい買い手がいるのではないかという、公平性への懸念が沸いてしまう可能性があるのかもしれません。

中小企業庁もセカンドオピニオンサービスを行うよう業界に通達を出していますが、いまいち浸透していないようにも思えます。

また過去に別の売り手とトラブルがあった買い手について、どこまで情報を開示したらいいのかという実務的な問題もあると思います。
単にそりが合わなかったという感情的なトラブルなのか、債務不履行などの重要な問題が発生していたのか、トラブルの発生原因は当時の売り手にあったのか買い手側に恒常的に発生していたかによって、またトラブルのレベル感によっても開示の必要性が変わってくるでしょう。
この点について具体的に中小企業庁からリリースが出るのを待ちたいと思います。

M&A仲介会社は無くなるのか?

結論として、M&A仲介業界は厳しくなる(利益率が他業界へ収斂していく)ことになると思いますが、M&A仲介業界は無くならないと思います。

2021年の2278件から増加傾向にある。国が設置する「事業承継・引継ぎ支援センター」には22年度に2万2361人から相談が寄せられ、1681件のM&Aが成約した。経営者の高齢化などを背景にいずれも過去最高だった。

とありますが、2万2千人以上が相談して成約件数は1700件弱と、わずか7パーセント強であることから、自治体などが提供するサービスだけでは需要は消化できないということが数時から明らかではないでしょうか。
反面、「高額」な手数料の指摘もあることから、より透明化を行っていく中で、情報の非対称性から利益を上げていた会社は淘汰されていくのではないでしょうか。
特に人海戦術でやってきたような会社は非常に厳しくなると思いますし、固定費の削減のため基本給を下げてインセンティブ率をあげる、という手当をすると今度は従業員のモラルハザードが起きる可能性があるため、コンプライアンスリスクを抱えてしまうでしょう。

今後半年程度で更に具体的な動きが出てくると思いますので、本コラムでも都度お伝えしていきたいと思います。

2024年5月31日15時半追記

と、書いていたら上記時刻にM&A支援機関登録事務局から以下のようなメールが来ました(太字筆者)。

【 (2) 手数料体系報告について】

受付期間:2024年5月31日(金)~2024年6月30日(日)23:59

※登録継続にあたっては、上記(1)共通報告・実績報告/活動報告の他、手数料体系報告フォームの提出が必須となります

※昨年度に手数料体系を報告いただいた場合も、今年度改めて報告が必要です

 

登録継続に際して、登録FA・仲介業者は、普段顧客に提示している標準的な手数料体系、料金算定根拠について提出する必要があります。

なお、令和6年度の新規登録、登録継続にあたっては手数料体系の提出・登録支援機関データベースにおける公表の同意が必要です。

報告いただいた手数料体系は、事務局における公表準備が整い次第、提出が完了した登録支援機関から順次公表予定です。

 

文頭で述べたように、手数料をごまかして記載している仲介業者の居心地が悪くなるような制度です。
敢えて手数料をぼやかして錯誤ともいえるような請求を行うことは難しくなるでしょう。
そういう業者は公明正大に対応し正々堂々と手数料請求を行うか、手数料水準を下げるか、脱法するために地下に潜るか(登録しなくなる)の3択になるのかなと思います。
このあたりの動きについてもまた具体的な流れが見えてきましたらこら三無でご紹介したいと思います。

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